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ビアン・ゾルダーク リュウセイルート ~ 第13話 ~

《アイドネウス島》

[不明 (DC総司令部・回想)]

カイル「我々のプロジェクトが中止!?  何故です!?」
ロレンツォ「理由は、先日のテストだ」
カイル「……!」
ロレンツォ「模擬戦中に ODEシステム搭載機が暴走し、 12名のパイロットが死亡した」
ロレンツォ「それも同士討ちによってな」
カイル「あ、あれは副総帥の指示で、 システムにパイロットの頭脳を 無理に直結させたせいで……!」
ジジ「あの時、パイロット達は 他者との感覚共有に耐えられず、 互いを拒絶してしまったのです」
ロレンツォ(確かに、 副総帥の横槍が直接の原因なのだろうが…… あのシステムは危うい)
ロレンツォ(少なくとも、今の段階ではな)
ユルゲン「現状のODEシステムは、 完全な物ではありません……。 クリアしなければならない問題点があるのです」
ユルゲン「ですから、 現段階であのようなテストを実施されても……」
ロレンツォ「ユルゲン博士…… 君は、副総帥の判断に誤りがあったと言うのか?」
ユルゲン「無論です。 私のODEシステムは、人間を兵器の部品に するためのものではありません」
ユルゲン「むしろ、人的損失を減らすための……」
ロレンツォ「……ビアン総帥は、 総合的な観点からODEシステムが 危険だと判断された」
ジジ「総帥が……!」
ユルゲン「ま、待って下さい!  我々にもう一度チャンスを!」
ロレンツォ「その必要はない。 君達のプロジェクトは中止だ。 以後の処置は追って通達する」
(扉が開閉する・ロレンツォが立ち去る)
ユルゲン「………」
カイル「じょ、冗談じゃない!  副総帥の横槍が入らなければ、 あんな事故は起きなかったんだ!」
ジジ「……あの老人の根回しは 万全だったようですね」
ユルゲン「うむ……もう手遅れだ……」
カイル「まさか、博士…… このまま引き下がるつもりですか!?」
ユルゲン「我々のプロジェクトは、 副総帥のゲイム・システムと相対するものだ。 抵抗しても、さらなる妨害を受けるだろう」
カイル「ならば、イスルギに あのシステムを持ち込んで……!!」
ユルゲン「……同じだ、カイル君。 ビアン総帥から中止命令が出ている以上はな」
カイル「くっ……!」
カイル(こんなことが納得できるか……!  納得してたまるものか……!)

[DC総司令部]

アードラー「遠路はるばるご苦労だったな、 テンペスト少佐」
テンペスト「副総帥、 あの後、ウェーク島はハガネによって 陥落したと聞きましたが…」
アードラー「フン、耳が早いな。 テンザンに任せたのが失敗だったと言いたいのか?」
テンペスト「…いえ」
アードラー「…ビアン総帥が 先程からお待ちじゃ。行くがいい」
テンペスト「………」
(扉が開閉する・テンペストが立ち去る)
アードラー(あの顔…。 総帥のご命令にも、ワシの命令にも 納得がいっておらぬようじゃな…)
アードラー(上手くすれば、 こちら側に引き込めるかも知れんのう…)
イーグレット「アードラー…」
アードラー「イーグレット・フェフか。 『アースクレイドル』の建造の 進行具合はどうじゃ?」
イーグレット「遅れている。 ビアンとマイヤーが月側の作業を 優先させているおかげでな」
イーグレット「それに加え…」
アードラー「ソフィア・ネートが アースクレイドルの軍事利用に 反対しておるのじゃな?」
イーグレット「ああ。 あの巨大な地下人工冬眠施設が、DCの戦力 拠点となる事に嫌悪感を抱いている」
アードラー「フン…。 今は地球の武力統一を成し遂げることが 最優先の課題じゃというのに…」
イーグレット「ビアンやマイヤーのやり方では 手ぬるいと?」
アードラー「うむ。連邦の中枢部や 主要基地への打撃を最小限に抑える戦略では、 戦乱が長引くばかりじゃ」
イーグレット「…と言いつつ、 ユルゲンのODEシステム開発計画を 止めたのはお前だろう」
アードラー「ふん…確かにあれは優秀じゃったが、 ワシらのゲイム・システムの妨げになるでのう」
イーグレット「周到なことだ」
アードラー「とは言え、事は急がねばならん」
アードラー「もし、今、 エアロゲイターが本格的な侵略を 開始したら、我らは敗北する…」
イーグレット「そんな時のためのアースクレイドルだ。 ほんの一握りの優秀な種さえ生き延びれば…」
イーグレット「人類は 新たな未来を手にすることが出来る」
アードラー「そうじゃな」
イーグレット(フン…愚かな老人に 未来など必要ない。お前達の命など、 異星人共にくれてやる…)

[DC総司令部 総帥執務室]

ビアン「テンペスト… お前は、このアイドネウス島で中枢制圧作戦に 投入する部隊の再編成を行うのだ」
テンペスト「…了解しました」
ビアン「…何か言いたいことがあるような顔だな」
テンペスト「総帥、 どうか自分を前線へお送り下さい」
ビアン「ならん。 今の私が必要としているのは…」
ビアン「連邦軍やエアロゲイターとの戦いで、 精鋭部隊を率いることの出来る優秀な指揮官だ」
テンペスト「…今の自分は、 連邦軍への復讐を遂げるために生きています」
テンペスト「…それが… 今回のように後方へ送られては…」
ビアン「お前が『ホープ事件』で 妻と子供を失い…連邦軍を激しく 憎悪していることは知っている」
テンペスト「ならば、 せめて自分にハガネの迎撃任務をお任せ下さい」
ビアン「………」
テンペスト「あの艦は このアイドネウス島を目指していると思われます。 放置しておくべきではないかと」
テンペスト「…全体的な戦況は我が軍が 優勢と言えど、ハガネは我々の寝首をかく 刺客になるかも知れません」
ビアン「ふむ…。 エルザムとお前を退けたハガネ… 一度この目で見ておくべきか」
テンペスト「は…?」
ビアン「前線の雰囲気もつかんでおきたいのでな…」
テンペスト「………」

《太平洋 マーシャル諸島近海(移動中・ハガネ)》

[ハガネ ブリッジ]

ラトゥーニ「…DCは、AMの他に 連邦軍の機体を使っていることがあるから、 気をつけて…」
クロ「大体は所属基地や部隊コードで、 敵味方を識別すればいいニャ?」
ラトゥーニ「うん…」
シロ「じゃあ、このAGXってのは ニャんニャんだ?」
ラトゥーニ「それは エアロゲイターの機体識別コード…」
リオ(…ラトゥーニが、ジャーダ少尉や ガーネット曹長以外の人と こんなに喋るなんて珍しいわね)
リオ(…と言っても、相手は猫だけど)
テツヤ「お前達、何をやってるんだ?」
ラトゥーニ「………」
リオ「クロとシロに敵機のデータを 用意してあげてるんです」
テツヤ「敵機のデータ?」
リオ「ええ。サイバスターには 連邦軍とDCの機体データがないようなので…」
テツヤ(…やはり、サイバスターは この世界の機体ではないのか…?)
シロ「このデータをサイバスターの コンピュータに入れれば、 戦闘がやりやすくなるニャ」
テツヤ「…猫がコンピュータにデータを…。 ゆ、優秀なんだな、お前達は」
クロ「ただの猫じゃニャいわよ。 あたし達はマサキをサポートするファミリアニャの」
テツヤ「ファミリ…?」
シロ「一言でいうと、使い魔だニャ」
テツヤ「つ、使い魔…?」
ラトゥーニ「…使い魔は、 主に西洋の魔女が使役する下級悪魔のこと…」
クロ「でも、あたし達は 悪魔ニャんかじゃニャいわよ」
ラトゥーニ「…うん、わかってる…」
テツヤ「魔女…悪魔…う、う~む…」
リオ「うふふ… テツヤ大尉って、そっち方面の 話には免疫ないみたいですね」
テツヤ「あ、ああ… そんなこと、士官学校では教わらなかったからな…」

[ハガネ ブリーフィングルーム]

イングラム「では、 君がどこから来たのかという 質問には答えられないと?」
マサキ「ああ。どうせあんた達には 信じられねえ話だろうからな」
アヤ「でも、一応話してもらえないかしら…?」
マサキ「………」
アヤ(話したくない理由があるみたいね…)
イングラム「ならば、質問を変えよう。 君は何故、シュウ・シラカワを追っているのだ?」
マサキ「あいつを放っておけば、 必ず地上にもロクでもねえことが 起きるに決まってる」
イングラム(…地上にも、か…)
アヤ「それって、あの南極の事件みたいな…?」
マサキ「ああ。だから、俺はそれを止めるために あの野郎を追ってるんだ」
イングラム「…シュウ・シラカワという人物は 十指に及ぶ博士号を持つ若き天才科学者…」
イングラム「さらに、EOT解析の第一人者であり、 グランゾンのテストパイロットだと聞いているが…」
マサキ「………」
イングラム「君の話しによると、 別の側面も持っている人物のようだな」
マサキ(…このイングラムって奴、何者なんだ?  どこか得体の知れねえ感じがしやがる…)
マサキ(シュウと同じで 油断のならねえ野郎だな…)
イングラム「………」

[ハガネ ブリーフィングルーム]

イングラム「調査結果はどうだった?」
アヤ「マサキ・アンドーのIDは、 政府のデータベースに存在していました」
アヤ「正真正銘の日本人であることに 間違いはありませんが…ここしばらく 行方不明になっていたようです」
イングラム「ほう…」
イングラム「ならば、彼はこの世界から 魔装機神を作り出した別の世界へ行き…」
イングラム「またこの世界へ帰って来たという 見方も出来るな」
アヤ「別の世界…ですか?」
イングラム「ああ。 古来より、そういう世界は地球のいずこかに 存在していると言われている」
イングラム「シャンバラ、アバロン、 アガルダ、桃源郷、常世之国など… 例を挙げればきりがない」
イングラム「数年前には、古代文明の 再調査を行っているLTR機構の マコト・アンザイ博士が…」
イングラム「新たな視点から見た 地球内空洞説を発表している」
アヤ「空洞…?  地球の中にそんなものがあるというんですか?」
イングラム「アンザイ博士の論文によれば、 実際に存在する空洞というわけではないらしいが…」
イングラム「マサキ・アンドーは、 博士が仮定した地球内部に存在する 異世界から来たのかも知れんな」
アヤ(…地球内部の異世界…)

[ハガネ 格納庫]

シロ「あ、マサキ。 ラトゥーニとリオからもらったデータを、 サイバスターに入れといたニャ」
クロ「ついでに地上世界の地図データもね」
マサキ「ふ~ん。 気が利くじゃねえか、クロ」
クロ(それでマサキの方向オンチが 治るとは思えニャいけどニャ)
シロ「それより、マサキ… こないだの戦闘から、顔色があまり良くニャいニャ」
マサキ「なに、気にすんな。大丈夫だって」
クスハ「あ、あの…」
マサキ「ん?  あんた、確か俺を手当してくれた…」
クスハ「はい。クスハ・ミズハです」
マサキ「俺に何か用かよ?」
クスハ「こないだの診断結果で、 マサキ君の体調が良くなかったので…」
クスハ「これを持って来たんです」
マサキ「何だこりゃ?」
クスハ「私が作った特製の栄養ドリンクです」
マサキ(栄養ドリンク…?  な…何か凄い色してんだけど…)
クスハ「見た目は悪いですけど、 効き目はありますから…」
マサキ(その見た目って奴が問題なんだよな… 怪しげな粒々が入ってるし…)
シロ「マサキ、 人の好意を無にするのは良くニャいニャ」
クロ「そうニャ。 せっかくクスハがマサキのために 持って来てくれたのに…」
マサキ「わ、わかったよ。 飲むよ、飲みゃあいいんだろ!」
マサキ「………」
クスハ「…あの、味はどうですか?」
マサキ「…んぐ!? んぐぐ…!」
クロ「マ、マサキ! 大丈夫!?」
(アラート)
クスハ「な、何なの!?」

[ハガネ ブリッジ]

エイタ「降下カプセル3基、 上空から降下して来ます!!」
テツヤ「宇宙から降りて来たのか?  ならば、連中は…」
エイタ「カプセルよりAMが出現!  識別は…コロニー統合軍です!」
テツヤ「やはり、そうか!」
エイタ「敵AMが数機、 本艦へ接近して来ます!」
ダイテツ「総員、第1種戦闘配置!  PT部隊、出撃せよ!」


第13話
ビアン・ゾルダーク

〔戦域:小島〕

(ガーリオンが多数出現)
レオナ「よろしいのですか、隊長?  我々の任務は、降下部隊の護衛と 新型AMの受け取りです」
ユーリア「………」
レオナ「それに、任務が終わり次第、 すぐに宇宙へ帰還せねばなりません。 ここで時間を無駄にするわけには…」
ユーリア「私は、 エルザム様から報告があったハガネと、 それの所属PT部隊に興味がある」
ユーリア「彼らが どれだけの力を持っているか、 この目で確かめたい」
レオナ「しかし、 早くDC部隊と接触しなければ…」
ユーリア「フフ…融通の 利かない所は相変わらずだな、 レオナ・ガーシュタイン」
ユーリア「やはり、血筋は争えんか」
レオナ「…私は、 総司令から与えられた任務を 確実に遂行したいだけです」
ユーリア「いいか、レオナ…」
ユーリア「我がトロイエ隊は、 マイヤー総司令官をお守りするために、 いかなる敵とも戦わなねばならない」
ユーリア「だから、新たな敵との 戦闘は、我らの力を向上させる またとない機会だと思え」
レオナ「…わかりました、隊長」
ライ「…あの部隊は…まさか」
リュウセイ「ライ、知ってんのか?」
ライ「おそらく、 コロニー統合軍の親衛隊…トロイエ隊だ」
リュウセイ「親衛隊…?  そ、それってかなり強い奴らじゃ…」
ラトゥーニ「…データによれば、 トロイエ隊は…」
ラトゥーニ「コロニー統合軍総司令直属… 女性パイロットのみで構成された エリート部隊…」
ジャーダ「へえ、女だけの部隊かよ。 そりゃ相手するのが楽しみ…」
ガーネット「ジャーダ、何か言った?」
ジャーダ「い、いや、別に…」
ライ(…トロイエ隊は、 総司令に付き従っているはずだ。 それが何故、こんな所に…?)
テツヤ「各機、出撃せよ!」
(出撃準備・サイバスターは出撃不可)
ユーリア「出て来たな」
レオナ「試作機や試験機を 前線に投入するなんて…」
レオナ「それほどまでに 彼らは戦力に困窮していると…?」
ユーリア「フッ…中間戦闘仕様機で 出撃している我らに言えた台詞ではないが… 実験台にされているのだ」
レオナ「実験台? SRX計画ATX計画など、対異星人戦用の 兵器を開発するための…ですか?」
ユーリア「そうだ。 お互いが仮想敵なのだよ」
テツヤ「サイバスターはどうした?  マサキは何故、出撃せん!?」
リオ「そ、それが…。 気分が悪くて出撃できないと…」
テツヤ「気分が悪いだと?  何か変な物でも食ったのか!?」
リオ「さ、さあ…?  今、クスハが看病しているみたい ですけど…」
テツヤ「やむをえん!  各機、攻撃を開始しろ!」

状況選択

レオナがライの存在に気づいた
レオナがライの存在に気づかなかった


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