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オーバー・ザ・ライン リュウセイルート ~ 第14話 ~

《アイドネウス島》

[DC総司令室]

テンザン「なあ、爺さん。 そろそろハガネを何とかした方が いいんじゃねえか?」
アードラー「ウェーク島基地を失っておいて、 何を言うか。この馬鹿者めが…!」
テンザン「チッ… あん時に『バレリオン』さえありゃあ 奴らを片づけられてたっての」
アードラー「口を慎まんか。 誰のおかげで、今の地位にいられると思っておる」
アードラー「他の軍人がお前に従っているのも、 全てワシのおかげじゃぞ」
テンザン「別に頼んだ覚えはねえよ。 そもそも、俺をDCに入れたのはあんただろうが」
アードラー「…テンザン、 貴様にバレリオンをくれてやる。 直ちに出撃し、ハガネへ攻撃を仕掛けろ」
テンザン「ホ! いいのかよ!?」
アードラー「うむ。総帥は今後の戦いのために あの艦を手に入れようと考えておられるが…。 ワシ側にはすでに参番艦がある」
アードラー「奴らにこれ以上鼻先をうろつかれるのは 目障りだ。最悪の場合、沈めても構わん」
テンザン「ようし…じゃあ、行ってくるぜ!」
(扉が開閉する・テンザンが立ち去る)
イーグレット「今の男がテンザン・ナカジマか…?」
アードラー「そうじゃ」
イーグレット「見たところ、ただの子供だが…」
アードラー「じゃが、動態視力、反応速度、 機体への順応能力は人並外れて高い」
イーグレット「彼の戦闘データを見る限りでは、 突出した実力を持っているわけではないようだが…」
アードラー「一切の投薬措置や インターフェイスなしで…しかも、 短期の訓練期間で、その数値じゃ」
イーグレット「ほう…」
アードラー「機動兵器なら何に乗せても短期間で、 操縦や戦闘のコツをつかみおる」
アードラー「無論、お前が研究を進めておる 人造人間の類ではないぞ?」
イーグレット「フン…。 天然の素材ということか」
アードラー「うむ。 アドバンスド・チルドレンという奴じゃ」
イーグレット「………」
アードラー「言わば、高度に発展した アミューズメントマシンが生み出した異端児… 一種の突然変異じゃな」
イーグレット「………」
アードラー「スパイの手を通じ、 テンザンの他にも何人かサンプルを入手しておる」
アードラー「奴らに経験を積ませ、 データを集めれば…完璧な戦闘用の 人工知能が完成する」
アードラー「そして、それらは アースクレイドルの守護神となるのじゃ、 フヒヒヒ…」
イーグレット「つまり、連中は 第二のスクールのメンバーだということか」
アードラー「フン…。 連中をスクールの試験体達と 一緒にしてもらっては困る」
アードラー「奴らは、 投薬措置と精神操作、強化訓練に 頼りきった欠陥品じゃったからのう……」

《太平洋 マーシャル諸島近海(移動中・ハガネ)》

[ハガネ ブリーフィングルーム]

テツヤ「先程、極東支部から報告があった」
テツヤ「それによると…DCの大部隊が 中欧へ移動を開始したそうだ」
イルム「やっぱり、奴らの狙いは 連邦政府があるジュネーブか」
ライ「それに対する連邦側の戦力は?」
テツヤ「現在、連邦軍は 南欧アビアノ基地を中心とし、 戦力を結集している」
テツヤ「だが、偵察衛星や 攻撃衛星をコロニー統合軍によって 抑えられている現状で…」
テツヤ「DCの対部隊相手に、 苦戦するのは必至だと言える」
テツヤ「よって、我々はDCの中欧侵攻が 開始される前に何としてもアイドネウス島へ たどり着かねばならない」
イルム「やれやれ、 ただでさえも俺達の作戦は 無謀極まりないってのに…」
イルム「敵の本拠地に 正面から突っ込むなんてな」
ガーネット「あら、攻めるんだったら やっぱり正面からよね、ジャーダ」
ジャーダ「…何言ってんだ、お前」
マサキ「俺一人でアイドネウス島へ 行った方が、マシだったかも知れねえな」
シロ「けど、マサキだけだったら 目的地にたどり着けニャいニャ」
アヤ「そうねえ。 マサキはいまだに艦内で迷ってるもんね」
イルム「こうなったら、 首に鈴かヒモでもつけとくか?」
マサキ「俺は猫じゃねえっつーの!」
クロ「ニャニよ!  その言い方、全世界の猫に失礼ニャ」
シロ「ホントだニャ」
ダイテツ「では、 イングラム少佐、テツヤ大尉… これからの航路と作戦の説明を」
テツヤ「現時刻より2時間後… 本艦は赤道を通過することになる」
テツヤ「航路上の赤道海域は、 クリスマス島とフェニックス諸島の 中間へ位置することになる」
テツヤ「特にクリスマス島には、 シャトルの発射施設が存在しており… 現在、そこはDCに制圧されている」
イングラム「よって、敵は あの島を経由し、大規模な機動部隊を ハガネに送り込んで来ると思われる」
イングラム「さらに、ハガネの 航路上の海域には島がないため、 今回の作戦では…」
イングラム「飛行が可能な機体を中核にし、 赤道を一気に突破する」
イングラム「なお、リュウセイ曹長は ビルトラプターで作戦に参加しろ」
リュウセイ「了解…」
リュウセイ(俺、空中戦には自信がねえんだけど… そんなことは言ってられねえか)
リュウセイ(俺達がDCの総司令部を 早く破壊しなきゃ、被害は増える一方だからな…)
イングラム「…赤道付近の海域に差し掛かるまでは、 第3種戦闘配置のまま待機せよ。以上だ」

[ハガネ 艦内]

ライ「…空戦のコツだと?」
リュウセイ「ああ。 俺、ラプターのフライヤーモードが イマイチ扱いきれてねえから…」
ライ「自覚は…していたわけか」
リュウセイ「ロブの話じゃ、 R-1も飛行機に変形するって言うし… 今の内に弱点を克服しておいた方がいいと思って」
ライ「イングラム少佐には相談したのか?」
リュウセイ「…自分でその方法を見つけるのも 訓練の内だ、って言われた」
ライ「それで俺の所へ来たというわけか…」
リュウセイ「嫌味の一つや二つ、 言われるのを覚悟で来ました!  コツを教えて下さい!」
ライ「………」
リュウセイ「ダ、ダメ?」
ライ「別に嫌味など言うつもりはないが… イングラム少佐の言葉にも一理ある」
リュウセイ「え?」
ライ「まず、戦闘機のマニューバーデータを集め、 その中から応用できそうなものを自分で 選出するんだな」
ライTC-OSへの組み込みは、 俺が手伝ってやってもいい」
リュウセイ「つまり…材料を集めてこい、と?」
ライ「ああ。 ラトゥーニあたりからデータを貸してもらえ」
ライ「彼女は元々戦闘機に乗っていたし… データの解析能力も高いからな」
リュウセイ「お前のデータを借りる…ってのはダメ?」
ライ「貸してやってもいいが…まあ使えんだろう。 お前と俺では、色々と勝手が違うからな」
リュウセイ「わかった。 じゃあ、ラトゥーニに相談してくらあ。 ありがとよ!」
(速い足音・リュウセイが走り去る)
ライ「フッ… 闇雲に戦っているだけではなくなってきたか」

[ハガネ 格納庫]

ラトゥーニ「………」
リュウセイ「…っていうわけなんだ。 すまねえけど、お前のマニューバーデータを 貸してくんないかな」
ラトゥーニ「………」
(足音・ラトゥーニが立ち去る)
リュウセイ「あ、行っちゃったよ…」
リュウセイ(こないだのコスプレ事件から、 少しは打ち解けてくれるかと思ったけど…)
リュウセイ(でも、あいつ… なんであそこまで無口なんだろ…?)


第14話
オーバー・ザ・ライン

〔戦域:海上〕

テツヤ「艦長、本艦は 赤道付近海域に進入しました」
ダイテツPT及び戦闘機を発進させろ」
(ビルトラプターとラトゥーニ機が出撃、出撃準備)
ダイテツ「敵の反応は?」
エイタ「敵戦艦、戦闘原潜、AM… 全て反応はありません。 進路クリアです」
ダイテツ「よし…周辺を警戒しつつ、 この赤道海域を突破する。 本艦の目的地はここだ」
(南端を指す)
ダイテツ「進路このまま、 第三戦速前進!」
テツヤ「第三戦速前進、よーそろ!」
(アラート)
エイタ「!! 本艦に 高速で接近する物体あり!!」
テツヤ「何っ!?」
(ハガネに爆煙)
テツヤ「ぐうっ!  被害状況を報告しろ!!」
エイタ「右舷側面に被弾!  第1外殻、小破!!」
テツヤ「どこから撃って来た!?」
エイタ「11時の方向です!  おそらく、戦艦の砲撃かと…!」
テツヤ「戦艦だと!?  そんなものはこの海域に いなかったはずだろう!」
リオ「た、大尉! AMと 思われる敵機が急速接近中です!」
(敵機が出現)
テンザン「ほ~う… さすがだな、このバレリオンは。 なかなかの砲撃能力だぜ」
テンザン「しかも、重装甲。 リオンやガーリオンより、 こいつの方が俺の性に合ってるな」
テツヤ「何だ、あの機体は…?  DCの新型AMか!?」
エイタ「は、はい…先程の砲撃は あの新型機によるものと思われます」
テツヤ「砲撃戦用のAMか…!」
イングラム「しかも、他機種と同じく テスラ・ドライブを搭載し… 飛行が可能な上に、重装甲…」
イングラム「さしずめ、 空飛ぶ戦車といったところか」
テンザン「さあて、ハガネ…。 こないだのウェーク島の借りを たっぷりと返してやるぜ…!」
ダイテツ「大尉、リュウセイ曹長達に 本艦の進路を確保させろ!」
テツヤ「了解!」
ダイテツ「各砲座、射撃用意!  エネルギーフィールド展開準備!  機関、最大戦速!」
ダイテツ「何としてもこの海域を 突破し、赤道を超えるのだ!!」

〈2EP〉

テンザン「わりぃが、 あんた達に赤道は越えさせねえぜ。 大型対艦ミサイルを発射しろ!」
テンザン「ただし、艦首部分は 狙うなよ。巻き添えを食って 死にたかねえからな」
DC艦長「しかし、他の部分に 命中させても、周辺にいる友軍機が 爆発に巻き込まれてしまいます!」
テンザン「逃げられない奴ぁ、 腕前と運が悪いんだっての!  さっさと撃ちやがれ!」
(ミサイル出現)
リオ「敵戦闘原潜より、 大型ミサイルが発射されました!」
テツヤ「こんな至近距離で…!  味方も巻き込むつもりか!?」
ダイテツ「各砲座!  何としてもミサイルを叩き落とせ!」
テンザン「悪く思うなよ。 こいつが俺のやり方なんでな」
リュウセイ「てめえ、テンザンか!!」
テンザン「よう、リュウセイ。 このゲーム、楽しんでるかい?」
リュウセイ「相変わらず ふざけた真似をしやがって… 人の命を何だと思ってんだ!?」
テンザン「そんなもん、 駒に決まってンだろうが」
リュウセイ「何ぃっ!?」
テンザン「お前はゲームで駒を なくした時、いちいち悲しむのか?  そんなことねえだろ?」
リュウセイ「て、てめえ…!」
テンザン「偽善者面して、 もっともなことを言うんじゃねえっての」
リュウセイ「こ、この野郎…!」
マサキ「待ちな、リュウセイ。 あの手の奴には口で言ったって 無駄だぜ」
リュウセイ「マサキ…!」
マサキ「だから、身体で わからせてやりゃあいいのさ」
マサキ「ゲームと現実の違いを… 俺達は駒じゃねえってことをな!」
テンザン「そう言えば、 てめえにも借りがあったな。 まとめて叩き落としてやらあ!」
マサキ「俺とサイバスターを 甘く見るんじゃねえっ!!」
マサキ「てめえとは背中に しょってるもんが違うんだよ!!」

〈4PP〉

テンザン「さあて、 これでチェックメイトだぜ!」
リュウセイ「くそっ…増援かよ!」
マサキ「ちっ…こうなったら、 サイフラッシュで一気に カタをつけるしかねえか!?」
イングラム「各機へ。 ハガネの進路確保を優先しろ」
リュウセイ「けど、ハガネの進路上には テンザンがいる! あいつを何とか しなきゃ、ハガネがやられちまう!」
イングラム「ならば、 テンザンを早急に撃墜しろ」
リュウセイ(今のビルトラプターじゃ、 データ不足で奴の新型機の動きに 対応しきれねえ)
リュウセイ(せめて、空中戦の パターンデータがありゃあ…!)
ラトゥーニ「………」
(通信)
リュウセイ「! な、何だ…!?  コンピューターにデータが 転送されて来る…!」
リュウセイ「こ、これは… マニューバーデータか!」
ラトゥーニ「…リュウセイ、 これを使って」
リュウセイ「ラトゥーニ!  ありがてえ、これで何とかなるぜ!」
テンザン「情けねえ奴だな。 そんな子供からデータをもらって 俺に勝とうっての?」
テンザン「ん? 何で子供が そんなものに乗ってるんだ?」
ラトゥーニ「………」
テンザン「そうか… アードラーに聞いたことがあるぜ。 お前、スクール出身のガキだな?」
ラトゥーニ「!」
テンザン「へへへ、図星か」
テンザン「でも、あわれなモンだな。 さんざん実験台にされて… 結局は奴に捨てられちまったんだろ?」
リュウセイ「実験台って… どういうことだ!?」
テンザン「何だ、てめえ…知らねえのか。 そのガキはな、人形なんだよ。 ゲームのアイテムみてえなもんさ」
リュウセイ「アイテム!?」
テンザン「強化パーツでもいいや。 もっとも、欠陥品だがな」
ラトゥーニ「……!!」
ガーネット「ちょっと、あんた!  ラトゥーニの気持ちも知らないで… 適当なこと言ってんじゃないわよ!」
テンザン「おお、こわ。 けど、スクール出身のガキの ほとんどは、実験が原因で…」
ジャーダ「それ以上言うな!!  言えばタダじゃすまさねえぞ!!」
テンザン「ヘッ、脇役が気分出すなよ。 やれるもんならやってみろっての」
ジャーダ「て、てめえっ!!」
リュウセイ「テンザン!!」
(ビルトラプターがテンザン機に接近、リュウセイに『気迫』『集中』『必中』『ひらめき』)
テンザン「!  こいつ、さっきと動きが違う…!」
リュウセイ「ああ、ラトゥーニが 送ってくれたデータのおかげでな!」
テンザン「ホ! あの短時間で 新しいパターンを作ったってのか?  やっぱ、お前は俺と同じ人種だぜ」
リュウセイ「テンザン!  人の心を踏みにじるてめえだけは 許せねえ!!」
テンザン「ほ~お、いつになく カッコをつけてくれるじゃないの」
テンザン「だがな… 所詮お前も俺と同類だってこと 忘れるんじゃねえぞ!」
リュウセイ「ああ、そうだろうよ!  だから、余計に腹が立つんだっ!!」

〈vs テンザン〉

[リュウセイと戦闘後・双方生き残っている場合]

テンザン「やるじゃねえか。 おかげで、このバレリオンの コツが早くつかめそうだぜ」
リュウセイ「そうやって、 余裕をブチかましていられんのも これまでだ!!」
テンザン「フン…。 今まではゲーマー同士のよしみで、 大目に見て来たが…」
テンザン「あまりイキがってると、 本気で殺しちまうぜ?」
リュウセイ「なら、 さっきジャーダに言った台詞を そっくり返してやるぜ!」
テンザン「何…!?」
リュウセイ「やれるもんなら、 やってみな、だっ!!」

[マサキ]

マサキ「そんな鈍そうな機体で、 サイバスターに追いつけると 思うんじゃねえ!」
テンザン「ヘッ、カッコつけやがって!  熱くなるんじゃないっての!」
テンザン「ここは赤道、ただでさえも 暑いんだからよ!」
マサキ「だったら、てめえの機体ごと 海水浴をさせてやるぜっ!!」

テンザンを撃墜したのは
リュウセイ リュウセイ以外


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