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希望の行方 ~ 第29話 ~

[ガウ=ラ・フューリア 内部(執務室)]

グ=ランドン「ジュア=ム・ダルービよ。 貴様は騎士として不相応と判断し、 騎士団から除名する」
グ=ランドン「以後は、宰士として禁士達の監視役を務めよ」
ジュア=ム「そっ、そんな!  玉座機の奪還には失敗しましたが、 ベルゼルートは破壊したのです!」
グ=ランドン「だが、貴様は己の命惜しさに禁忌を破り、 貴重な天上物質エイテルムを消耗させた」
ジュア=ム「し、しかし、チャージが出来ていなかったため、 ラースエイレムの使用時間は最低限で……」
グ=ランドン「そういう問題ではない」
ジュア=ム「う……!」
フー=ルー「でも、すぐに撤退したのは、いい判断でしたわ。 ラースエイレムの使い方を誤れば、最悪の場合は 機体が動かなくなるから」
グ=ランドン「本来ならば、従士や準騎士達への手前、 最も重い刑罰を与えねばならぬ所だ」
ジュア=ム「うう………」
グ=ランドン「それを除名に止めたのは、私の温情だと思え」
ジュア=ム「グ、グ=ランドン様!  どうか、どうか除名だけはお許しを!!」
グ=ランドン「宰士となっても、同化計画の口外は(まか)り成らぬ。 話は以上だ。下がれ」
ジュア=ム(うっ……く、くうう……!)
フー=ルー(ジュア=ム……)

[ガウ=ラ・フューリア 刻旅の杜]

ジュア=ム(あの時……あいつに追い詰められた時、 親父達の顔がよぎった……)
ジュア=ム(俺は……俺は死ぬわけにはいかねえ…… だから……身体が動いちまった……)
ジュア=ム(全てはあの女だ……あの女のせいだ……!  あいつが……くそっ、くそっ、くそおっ!!)
ジュア=ム「殺してやる! 殺してやる!!  殺してやるぞ、カルヴィナァァァ!!」
ソ=デス「おやおや、荒れてますねえ。 ここは刻旅の杜……ガウ=ラの中で最も静寂なる場所。 無粋ですよ」
ジュア=ム「ソ=デス!?」
ソ=デス「それに、あの地球人を殺すと言っても 君は騎士団から除名されたんでしょう?」
ジュア=ム「てめえっ、諜士の分際で!!」
ソ=デス「騎士でも従士でもなくなった君に そのようなことを言われる筋合いはありませんが……」
ソ=デス「僕ら諜士が情報を集め、騎士団が勝利できるよう 情況を整えていることを忘れないで下さいよ」
ソ=デス「……おっと、失敬。君にはもう関係ない話ですね」
ジュア=ム「ソ=デスゥゥ!!」
ソ=デス「まあ、落ち着いて下さい。 実は僕、君を呼びに来たんですよ」
ジュア=ム「!?」
ソ=デス「さあ、カロ=ラン様の所へ行きましょう……」

[ガウ=ラ・フューリア 玉座の間]

ダ=ニーア「度重なる玉座機奪還任務の失敗……宰士の長として もはや看過できませぬ」
ダ=ニーア「次は諜士が擁する2機のラフトクランズを出し、 確実に事を成し遂げるべきかと」
シャナ=ミア「………」
グ=ランドン「我ら騎士団を(そし)られるのか、宰士長」
ダ=ニーア「矜持を重んじるそなたらの立場はわかるが、 玉座機の不在は従士や準騎士の士気に 関わるだけでなく、民達の不安を煽る」
ダ=ニーア「それに、地球人がこれまでの戦で得た情報から ラースエイレムの対抗策を講じるおそれもあろう」
グ=ランドン「今や、そのようなことは……」
カロ=ラン「ないとは言い切れぬ。 いつぞやの反応を忘れたか」
グ=ランドン「だが、前の大戦では感知されておらん」
ダ=ニーア「とは言え、鋼龍戦隊が健在である以上、 不安要素の一つとなる」
グ=ランドン「…………」
カロ=ラン「我らだけで出ても、騎士団との共同作戦となろう。 ソ=デスのラフトクランズは、 そちらから貸与された物だからな」
ダ=ニーア「皇女殿下、どうかご認可を」
シャナ=ミア「………」
ダ=ニーア「現状のままでヴォーダの門に何か起きましたら、 対処のしようがございませぬぞ」
シャナ=ミア「わかりました。ラースエイレムの使用を許諾します。 ただし、玉座機の搭乗者は生かしたまま 連れ帰るように」
ダ=ニーア「それは……」
シャナ=ミア「シャナ=ミア・エテルナ・フューラの名において 厳命します」
カロ=ラン「……承知致しました」
グ=ランドン(いかに玉座機を乗りこなしていようと、 エ=セルダの息子は抹殺しておきたい所だが…… 皇女殿下に対する手として使いようはあるか)
カロ=ラン「ところで、皇女殿下。 此度の任務にて、私のラフトクランズの エイテルムが消耗致します」
カロ=ラン「玉座機を奪還した暁には、禁士団が所有する クストウェル・ブラキウムをご貸与いただきたい」
グ=ランドン(こやつ……)
カロ=ラン(……こちらのエイテルムが尽きれば、 我らの立場が悪化しかねんからな)
シャナ=ミア「現状、クストウェルに相応しい乗り手はおりません。 諜士達にあれが使えましょうか?」
カロ=ラン「いざとなれば、この私が」
シャナ=ミア「……玉座機の搭乗者に危害を加えず ガウ=ラへ連れ帰りなさい。 さすれば、検討致しましょう」
カロ=ラン「はっ」
グ=ランドン(カロ=ランめ…… これを機に諜士の権限を拡大する気か)

《ドイツ アシュアリー・クロイツェル支社》

[アシュアリー・クロイツェル支社]

フランツ「ようこそ。 こうしてお目に掛かるのは初めてですな、 ギリアム・イェーガー少佐」
ギリアム「ええ」
フランツ「そちらは……カルヴィナ・クーランジュだね。 私は第3開発部部長のフランツ・ツェッペリンだ」
カルヴィナ「あたしを知っているのね」
フランツ「ああ、月から送られてきたデータでね」
カルヴィナ「こっちは知らないことだらけ。 聞きたいことが色々あるわ」
フランツ「気持ちはわかるが、質問は簡潔にしてくれたまえ」
カルヴィナ「簡潔にね、了解。 フランツ、あんたはフューリーなの?」
ギリアム(……簡潔という以上に短絡的ですらあるな)
フランツ「以前、ギリアム少佐にも同じことを聞かれたが…… 答えは否だ。彼らの詳細は知らない」
カルヴィナ「セルドア・シウンから聞いていないの?」
フランツ「私は彼からベルゼルートの設計図を託され、 ここで秘密裏に作り上げただけでね」
カルヴィナ「怪しいと思わなかったのかしら?」
フランツ「セルドアやアリスター・リンクスと 直に接していた君はどうだったのだ?」
カルヴィナ「………」
フランツ「彼らは資金や技術を提供する際、 事情や出所を詮索してはならないという条件を出した。 そして、我々はそれを受け入れた」
カルヴィナ「だからって……」
フランツ「我々のような企業がイスルギ重工マオ・インダストリーとの差を埋めるためには、 彼らの条件を飲み、協力を得るべきだと思ったのだよ」
カルヴィナ「あんた達はフューリーに荷担した。 それで、月のアシュアリーは壊滅し…… 社員も大勢死んだわ」
フランツ「……わかっている。 その償いはしなければならないが、 今、急務とされているのは……」
フランツ「ベルゼルート・ブリガンディを完成させ、 君に託すことだ」
カルヴィナ「ベルゼルート・ブリガンディ……」
ギリアム「月の事件が発覚した後、軍情報部はアシュアリー全社の 強制捜査を行った。その結果、ここでもう1機の ベルゼルートが開発されていることが判明したのだ」
フランツ「かなり厳重にガードしていたのだがね…… 3度目の強制捜査で、ついに見破られてしまったよ」
カルヴィナ(……隠し通すつもりだったの?)
フランツ「本来ならば、我々の身柄は拘束、 機体は没収されて然るべきなのだが…… 軍からある取引が持ちかけられてね」
カルヴィナ「だいたいの想像はつくわ。 ここで機体を完成させた後、全データと共に 連邦軍へ引き渡す。そうすれば……」
フランツ「その後のことは、君がこれからもたらす結果次第だ」
カルヴィナ「……どんな機体なの、ベルゼルート・ブリガンディは」
フランツ「簡潔に言えば、ベルゼルート1号機のデータを基にして 改修を施した2号機と、可変武装ユニットである バスター・アーマーを組み合わせた物だ」
フランツ「そのため、1号機より大型化しているが、 火力や運動性、耐久性は大幅に向上している」
カルヴィナ「完成するのはいつ?」
フランツ「組み上げは既に完了している。 後は1号機のサイトロン・コントロール・システムを 移植し、調整を行えばいい」
カルヴィナ「あのシステムは提供されていなかったの?」
フランツ「データはもらっていたが、実物は手許にない」
ギリアム「では、予定を繰り上げ、 ベルゼルート・ブリガンディを引き取ります」
フランツ「わかりました」
カルヴィナ「あと二つ聞きたいことがあるわ。 何故、セルドアは地球でベルゼルートより 優秀な機体を開発させていたの?」
フランツ「彼から理由は聞いていないが、今にして思えば…… 現在のような状況を想定していたのではないだろうか」
カルヴィナ「………」
フランツ「もう一つの質問は?」
カルヴィナ「ここのスタッフ以外で、 ベルゼルート・ブリガンディの存在を 知っていた者は?」
フランツ「おそらく、セルドア・シウンと アリスター・リンクスだけだと思う」
カルヴィナ(フューリーがここのことを知っていれば、 とっくの昔に襲撃していたはず……)
カルヴィナ(セルドアはともかく…… 何故、アル=ヴァンはベルゼルート・ブリガンディの 存在を看過していたの?)
フランツ「では、早速、移送準備を始めよう」
ギリアム「あなたと主要スタッフも同行願います。 上の許諾は得ています」
フランツ「わかりました」
カルヴィナ「フランツ、さっき言ったことを訂正するわ。 フューリーに荷担していたのは、あたしも同じ」
カルヴィナ「だから、落とし前をつける。 あんた達が作ったベルゼルート・ブリガンディでね」

《ドイツ ベルリン地区(鋼龍戦隊)》

[ハガネ ブリッジ]

アヅキ「……ギリアム少佐から入電。 アシュアリー・クロイツェル支社から出立、 到着は1時間後とのことです」
マイルズ「了解した。 ところで、統合参謀本部からの命令は?」
アヅキ「まだ来ていません」
マイルズ「むう……」
テツヤ「次の目的地はサンパウロではなさそうですね」
マイルズ「だが、あの地のラマリスは ダークブレインの残党によって 根こそぎ持って行かれただけだ」
マイルズ「浄化されていなければ、再出現する可能性がある」
テツヤ「ですが、まだその報告はありません」
マイルズ「ダークブレインの残党による捕獲が 浄化と同様の効果をもたらすなどと……」
(通信)
アヅキ「司令、統合参謀本部から命令が来ました。 鋼龍戦隊は伊豆へ帰還し、補修作業を行いつつ 待機せよとのことです」
マイルズ「了解した。 艦長、ギリアム少佐達が戻り次第、伊豆へ転移せよ」
ギント「はっ」

[ハガネ 艦内(個室)]

デスピニス「えっ、しばらく留守にするって……」
ラウル「日本へ戻り次第、俺とフィオナは テスラ・ライヒ研究所へ行く」
フィオナ「例の物が完成したのよ。 あたし達が直接取りに行って、 慣らし運転をしながら戻ってくるわ」
デスピニス「輸送じゃ駄目なんですか?」
ラージ「フューリーがいつ現れるかわかりません。 少しでも早くあれを使えるようにするため、 省ける時間は省きたいのです」
ミズホ「本当はハガネかヒリュウ改に 空間転移してもらえるといいんだけど……」
ミズホ「補修作業があるし、次の作戦がどうなるか まだわからないから」
デスピニス「じゃあ、エクサランス・レスキューも 一緒に行った方が……」
フィオナ「いえ、伊豆でレスキューの整備と点検を きっちりやって欲しいの。今後に備えるためにね」
デスピニス「……わかりました」
ラウル「デスピニス、 俺の代わりにエクサランス・レスキューの メインパイロットを務めてくれ。頼むぜ」
デスピニス「はい……頑張ります」

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[伊豆基地 内部(廊下)]

トウマ「……日本を出てからそんなに時間が経ってないのに、 久々に帰って来た感じがするなあ」
ミナキ「そうですね」
トウマ(短い時間だけど、外出許可が出てる……。 下田で雰囲気のいい店はイルム中尉から聞いた……。 誘うなら、今しかない)
トウマ「な、なあ、ミナキ」
ミナキ「何です?」
トウマ「この後、何か予定があったりするのか?」
ミナキ「ええ、スーパーソウルセイバーの調整を 手伝うことになっています」
トウマ「あっ……そ、そう」
ミナキ「それじゃ」
(足音・ミナキが立ち去る)
リシュウ「残念じゃったのう、トウマ」
トウマ「リシュウ先生……」
リシュウ「どうじゃ、基地の桟橋で釣りでも。 ゼンガー達も行っておるぞ」
トウマ「は、はあ」

ベルゼルートのサブパイロットは
カティア テニア メルア


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