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ジュア=ム激進 パリへ向かう ~ 第26話 ~

[ガウ=ラ・フューリア 玉座の間]

シャナ=ミア「アル=ヴァンが……? 誠ですか?」
ダ=ニーア「左様……カラチでの玉座機奪還任務失敗の 責任を問われてのことでございます」
シャナ=ミア「しかし、あまりにも重過ぎる処分でありましょう」
ダ=ニーア「グ=ランドンからの報告によれば、 アル=ヴァンは地球人との内通を 画策していたそうです」
シャナ=ミア「忠義に厚き彼の者が、 そのようなことをするはずがありません」
ダ=ニーア「ですが、御身の側近くに仕えていた 聖禁士長エ=セルダ・シューンは、 あろうことか玉座機を奪って逐電しました」
シャナ=ミア(それは……)
ダ=ニーア「そして、その弟子たるアル=ヴァンも背任を…… 同化計画の主要人物が揃って反逆したのです」
ダ=ニーア「彼らは、地球人と接触している内に 感化されてしまったのかも知れませぬ」
シャナ=ミア「ならば、アル=ヴァンに会い、直接問い質します」
ダ=ニーア「なりませぬ」
シャナ=ミア「私の意に逆らうのですか、宰士長」
ダ=ニーア「僭越ながら、申し上げます。 騎士総代であるグ=ランドンの立場もお考え下さい」
ダ=ニーア「皇女殿下が反逆者に温情を掛けられますと、 準騎士や従士達に示しが付きませぬ」
シャナ=ミア「………」
ダ=ニーア「そして、グ=ランドンが下した処分は、 ごく一部の者しか知らぬ同化計画の情報漏洩を 防ぐためでもあります」
ダ=ニーア「もし、あれが明るみに出れば、暴動が起きかねません。 ヴォーダの門が開かれたこの非常時に そのような事態は避けねばならぬのです」
ダ=ニーア「それでもアル=ヴァンとお会いになると仰るのなら、 このダ=ニーアめが得心するまで ご理由をお話し下さいませ」
シャナ=ミア(これ以上は無理ですね……)
ダ=ニーア(これを機に、皇女殿下には同化計画を 断念していただかなければ……)

[ガウ=ラ・フューリア 内部(執務室)]

ジュア=ム「ジュア=ム・ダルービ、お召しにより参上致しました」
グ=ランドン「ジュア=ムよ、聞くがいい。 貴様を騎士に叙することにした」
ジュア=ム「そ、それは本当ですか!?」
グ=ランドン「うむ。正式の叙任式は後日となるが、 貴様専用のラフトクランズはこの後で授ける」
グ=ランドン「貴重な騎士機だ。 心して用いよ。そして、フューリア聖騎士団の栄光を いや増すよう努めるがよい」
ジュア=ム「は、ははっ!」
フー=ルー「おめでとう、ジュア=ム。立派な騎士になりなさいな」
ジュア=ム(これで親父やおふくろ、クド=ラが目覚めた後、 いい暮らしをさせてやれる……!)
グ=ランドン「騎士となった貴様に与える最初の任務は、 グランティードの奪還とベルゼルートの破壊である」
ジュア=ム「……!」
グ=ランドン「準騎士と従士を編成し、出撃せよ」
ジュア=ム「お言葉ですが、グランティードの奪還任務は アル=ヴァン様が……」
グ=ランドン「あの男は騎士の資格を剥奪された」
ジュア=ム「なっ……!?」
グ=ランドン「今は獄中にあり、もはやラフトクランズに乗ることも、 栄輝ある戦場に立つこともなかろう」
ジュア=ム「な、何故です!?  アル=ヴァン様が騎士の資格を失うなど……!」
グ=ランドン「彼奴はカラチでの玉座機奪還任務に 失敗するだけでなく、地球人との内通を目論んだのだ」
ジュア=ム「地球人……!?  もしや、カルヴィナ・クーランジュ!?」
フー=ルー「……その通りよ」
グ=ランドン「ジュア=ムよ、 貴様は騎士団の栄誉を取り戻すため、 全身全霊を以て任務を果たすがいい」
ジュア=ム「な、ならば、玉座機を奪還し、 ベルゼルートを破壊した暁には アル=ヴァン様の名誉回復を……」
グ=ランドン「それはならん」
ジュア=ム「ですが、あまりにも!」
グ=ランドン「彼奴のこれまでの功績を踏まえ、 騎士の資格剥奪、幽閉という処分で止めておる」
グ=ランドン「本来ならば、それ以上の罰を与えて然るべきなのだ」
ジュア=ム「う……」
グ=ランドン「では、準備が整い次第、出撃せよ」
ジュア=ム「はっ……!」

[ガウ=ラ・フューリア 内部(転送室)]

ジュア=ム(あの女だ。アル=ヴァン様は奴と再会してから 消極的になられた。だが、あれは俺達が利用した ただの地球人に過ぎないじゃないか)
ジュア=ム(あの女が生きていて、しかもあれに乗ってるから いけないんだ。アル=ヴァン様が出来ないのなら、 俺が始末する。このラフトクランズで)
ジュア=ム(そうすれば、あの方だって 元へ戻られるに違いないんだ……)
(足音)
フー=ルー「ジュア=ム」
ジュア=ム「フー=ルー様……」
フー=ルー「アル=ヴァンのことで一つ言っておくわ。 彼は、直属のあなた達に累が及ばぬようにするためにも 処罰を受ける決意をしたのよ」
ジュア=ム(……そうだ、そういう方なんだ。 それ故に、あの女が尚更許せない……!)
フー=ルー「昂ぶっているようね。それは、怒りのせい?」
ジュア=ム「………」
フー=ルー「ラースエイレムの使用が 騎士の禁忌となっている理由…… あなたは知っていて?」
ジュア=ム「正々堂々とした勝負を尊ぶ騎士には 相応しくない戦法だからです」
フー=ルー「そう……過去の教訓から、余程の危機的な情況下で 皇帝陛下の許可がない限り、使用は許されない」
フー=ルー「もっとも、今は入手不可能になってしまった ラースエイレムのコア、天上物質エイテルムの 問題もあるけれど……」
フー=ルー「切り札を持ちながら、敢えてそれに頼ることなく 戦うことも騎士の矜持の一つなのよ」
ジュア=ム「……はっ」
フー=ルー「勝利に固執するあまり、禁忌を破って ラースエイレムを使えば、騎士の資格が剥奪される」
フー=ルー「どんなに困難な任務でも、 あれを使わずに果たすよう心掛けなさい。 さすれば、真の強者になれるでしょう」
ジュア=ム「……肝に銘じます」

《地球連邦軍南欧方面軍 アビアノ基地》

[アビアノ基地 格納庫]

ラウル「……やっぱり、 アビアノ基地の整備区画は充実してるな」
デスピニス「広くて迷いそうです……」
フィオナ「スペースノア級の専用ドックがあるぐらいだものね」
(足音)
ツグミ「あら、あなた達も見学?」
フィオナ「ええ、滅多にない機会ですから」
アイビス「レフィーナ支隊の方も色々あったみたいだね。 スカルナイトやデブデダビデと交戦したんでしょ」
ラウル「そうです。後者はカラチに現れ、 ラマリス・カーナを捕獲しました」
デスピニス「パリでも同じことをしたんですよね……?」
ツグミ「ええ、オペレーション・トリオンフの ファイナル・フェイズでね」
フィオナ「あたし達はその後、フューリーのアル=ヴァンに 襲撃されたんです」
ツグミ「じゃあ、例の手を使ってきたの?」
フィオナ「いえ。アル=ヴァンの狙いは グランティードじゃなく、ベルゼルートで…… カルヴィナ少尉の誤解を解こうとしていました」
スレイ「誤解?」
ラウル「ええ、アシュアリー・クロイツェルを 襲撃したのは自分じゃないと……」
ツグミ「でも、カルヴィナ少尉の話じゃ、 彼は現場にいたんでしょう?」
フィオナ「なので、少尉は信じていませんでしたが…… アシュアリーではフューリーに新たな未来を もたらす計画が進められていたそうです」
アイビス「何なの、それ?」
フィオナ「アル=ヴァンが途中で撤退したので、 わからずじまいでした」
ラウル「けど、アシュアリーで開発されていたベルゼルートと そのテストを行うために呼ばれたカティアやメルア、 テニアに関係があるんじゃないかって……」
スレイ「だが、本人達に心当たりはないのだろう?」
ラウル「ええ」
フィオナ「あと、アル=ヴァンは『ヴォーダの門』と呼ばれる 物からもたらされる災厄を払拭するために、 グランティードが必要だと言っていました」
アイビス「門って、もしかして……」
ツグミクロスゲートのことなの……?」

[ハガネ 格納庫]

エリック「セイバーブースターが 無事に届いて良かったの」
ジンプウ「日本からここまでかなりの距離があるからな…… 輸送途中で敵に襲われやしないかと 冷や冷やしてたぜ」
(複数の速い足音)
アキミ「ジンプウさん!」
ジンプウ「おう、来たか。セイバーブースターは 見ての通りの仕上がりだぜ」
アケミ「あっ、オミットする予定だった スタビライザーが付いてる。 それに、あのキャノピー……」
アキミ「コックピットの取り付けまで間に合ったのか」
ジンプウ「ああ、本社の連中が頑張ってくれたおかげだ」
アキミ「じゃあ、出力の問題もクリアしたのか?  強化武装は全部使えるのかよ?」
ジンプウ「FF装備の方は何とか……。 GG装備は一つだけ要調整で使えねえ」
アケミ「そうなの……」
アキミ「でも、ソウルセイバー自体の出力は上がるんだろ?」
ジンプウ「その通りだが、 フルパワーとなると問題が出てくるだろうな。 元々、そこらを調べるための試作機なんだしよ」
アキミ「だったら、 セットアップとフィッティングを急ごうぜ」
ジンプウ「言われるまでもねえが、 次の作戦には間に合わねえぞ」
アキミ「ああ、わかってる」
エリック「ワシも手伝ってやるでの」
アケミ「ええっ!?」
エリック「何じゃ、嫌かの?」
アケミ「い、いえ、あのグランゾンの開発に関わっていた ワン博士に手伝ってもらえるなんて……光栄です」
ジンプウアリアードの解析はいいのかよ?」
エリック「今、眠り姫に機体各部のマークや警告文を 調べて、訳してもらっている所での。 ワシの手は空いてるでの」
エリック「あと、クリフォードとミナキにも手伝ってもらうでの。 皆でやれば、早く終わるでの」
ジンプウ「助かるぜ。 まずはFF装備でブースターを取り付ける。 早速、取り掛かろう」

[シミュレーター・ルーム]

(扉が開く)
カルヴィナ(前回のアル=ヴァンの攻撃は、 完璧にかわせるようになった。 これなら、次は……)
イルム「休まずに1人で反省会か?」
カルヴィナ「そういう中尉は?」
イルム「部下のケアって所かな」
カルヴィナ「無用よ」
イルム「にべもないねえ。 実は、お前がここにいると教えてくれた奴がいてな」
カルヴィナ「誰?」
イルム「すぐに戻ると言ってたんだが……ああ、来たか」
(足音)
ジョッシュ「カルヴィナ少尉、少し休んで下さい」
カルヴィナ「前にグラキエースは対話を諦めるなと言った。 あんたはあたしに降りろと言うの?」
ジョッシュ「いえ、そういう意味じゃありません」
イルム「休めってのは同感だね。 根を詰め過ぎたって、ろくなことにならない」
カルヴィナ「心配は無用よ。死ぬつもりはない…… そう、誰が死ぬものか」
イルム「思い詰めるのも良くないぜ?」
カルヴィナ「ホワイト・リンクスと呼ばれてた頃は やれる所までやって、戦いの中で死ぬなら それでも別に構わないと思ってた」
カルヴィナ「でも、もう死ねない。死ぬわけにはいかなくなった。 あいつを殺すまでは。だから、あたしは負けない。 これまで以上に本気で戦ってみせる」
ジョッシュ「……わかりました。 じゃあ、これを置いていきます。 良かったら、飲んで下さい」
カルヴィナ「さっきから匂いがしていたけど……ココアか何か?」
ジョッシュ「ええ。それじゃ」
イルム(何だ、もう行くのかよ)
(足音・ジョッシュとイルムが立ち去る)
カルヴィナ「………」
カルヴィナ(……少し濃いわね。メルアは喜びそうだけど)

(戦艦の通路)

イルム「……あれで良かったのか?」
ジョッシュ「ええ……思っていることを少しでも吐き出せば、 内圧は下がるでしょう。その証拠に、 少尉は差し入れのココアを拒絶しませんでしたし」
イルム「フッ、お前はいいカウンセラーになるよ」
ジョッシュ「そんな柄じゃないです」
イルム「なら、どうしてあいつを気に掛ける?」
ジョッシュ「これはトーヤ達にも言えることなんですが…… シュンパティアとサイトロン・システムの関係も含め、 不思議な縁があるように思えて」
イルム「なるほどね」
ジョッシュ「それに……彼らはフューリーとの戦いの行く末を 大きく左右する存在ですから」
イルム「ああ、そうだな」

[ハガネ 戦隊司令公室]

マイルズ「……先程、グランティードがクロスゲートに 大きく関わる存在かも知れないという話を 統合参謀本部に伝えた」
レフィーナ「アル=ヴァン・ランクスの言葉通り、 クロスゲートからもたらされる災いを払拭するために グランティードが必要なのだとしたら……」
レフィーナ「私達がその検証を行うことになるのでしょうか」
マイルズ「フューリーの素性と目的が はっきりしない現状では、何とも言えん」
ギント「では、引き続き囮役を務めることになりそうですな」
マイルズ「うむ。今度、アル=ヴァン・ランクスが現れたら、 何としても捕らえろ」
マイルズ「カルヴィナ・クーランジュとのやり取りから判断して、 あの男からならば、フューリーの情報を 聞き出せそうだ」
ギント「了解です」
マイルズ「では、補給作業が終了次第、 ベルリンへ転移してラマリスを討伐する」
マイルズ「オペレーション・トリオンフよりは楽な任務だ。 迅速に遂行せよ」
レフィーナ「はっ」


第26話
ジュア=ム激進

〔戦域:ベルリン市街〕

(街の西側にラマリス・カーナとラマリスがいて、 中央の道の上にハガネ、ヒリュウ改、グランティード、ベルゼルートが出撃している。 出撃準備。正面のラマリス・カーナが爆発し、ラマリスに分離)

ベルゼルートのサブパイロットは
カティア テニア メルア


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