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セレンディピティ ~ 第20話 ~

<ラブルパイラ>

[ラブルパイラ 格納庫]

サリー「兄さん、そろそろ時間よ」
ジーク「……任務中にそう呼ぶのは止めろ。 何度言えばわかるんだ」
サリー「ごめん。2人だけだと、つい口に出ちゃって」
ジーク「他の連中に示しがつかねえだろうが。 もっとも、こういう状況にならなきゃ、 お前と同じ部隊になりはしなかったがよ」
サリー「そうね……」
ジーク「で、そろそろってのは頭官からの発表か」
サリー「ええ。作戦会議室に行きましょう」

[ラブルパイラ 作戦会議室]

ヘルルーガ「ラブルパイラの同胞達よ。 私は諸君に悲しむべき知らせを伝えねばならない」
ヘルルーガ「二日前のことだ。 敬愛するマルム・クイスード頭領長閣下が 病に倒れた」
(ざわめき)
ヘルルーガ「頭領長閣下は心臓を患っていたのだ。 そのような病状を隠し、ガディソード星脱出以後の 激務に耐え続けた彼に、感動せずにいられぬ」
ヘルルーガ「幸い、頭領長閣下は一命を取り留めたが…… 意識を失う前、側近にこう言ったそうだ」
ヘルルーガ「ラブルパイラの恒星サンへの落下を防ぎ、 地球人と対等の交渉を続けるためにも、 政治的空白を作ってはならない」
ヘルルーガ「そのために、このヘルルーガ・イズベルガを 頭領長代行に据えよ、と……」

ジーク「おいおい、本当かよ……!?」
サリー「騎長、頭領長閣下が心臓病だったって話は 事実なんですか?」
ヴォート「……ああ」
サリー(おかしい…… 前にフェアリが言ってたことと違う……)

ヘルルーガ「私は頭領長閣下の意志を尊重し、 快癒されるまでの間、代行を務めることにした」
ヘルルーガ「さて、ここである人物を諸君に紹介したい。 我らに大いなる幸福をもたらしてくれる英傑だ」
(足音)
ゴモウドッカ「やあ、こんにちは。 僕の名はゴモウドッカ・ゴライクンル……」
ゴモウドッカ「君達から見れば、新たな異星人ってことになるかな」
(ざわめき)
ゴモウドッカ「つまり、僕は地球人じゃない。 ゾヴォーク……星間共和連合からやって来たんだ」

ジークゾヴォークだと!?  こないだ地球人の戦艦が来た時、 襲ってきやがった連中じゃねえか!」
サリー「どういうことなの、これは……!?」
ヴォート「お前達、黙れ」
ジーク「だがよ、騎長!」
ヴォート「黙って話を聞け、ジーク」
ジーク「………」

ゴモウドッカ「地球は僕達から見れば、辺境の未開地…… しかも、地球人は闘争心が旺盛な蛮奴なんだ。 そんな奴らと交渉しても、ろくなことにならない」
ヘルルーガ「私は諸君の命運を預かる身として、 地球より文明的な星間国家であるゾヴォークに 協力を仰ぐべきだと判断した」
ゴモウドッカ「僕達の国は、 異なる星の種族との接触に慣れてるからね」
ヘルルーガ「彼らからの資材や技術提供があれば、 ラブルパイラの推進装置や空間転移装置を 修理することが可能であり……」
ヘルルーガ「恒星へ落ちていく悲劇から 逃れることが出来るだろう」
ゴモウドッカ「それに、僕らがいれば、 前にここを襲った連中も手出し出来ないしね」

ジーク(あいつらは別の勢力だって言うのか……。 なら、ヘルルーガ頭官とゴモウドッカは いつ、どこで接触したんだ?)
サリー(マルム・クイスード頭領長閣下は 地球との和平交渉を進めていたのに……)

《月軌道外宙域(ゼラニオ級戦闘空母)》

[ゼラニオ級戦闘空母 ブリッジ]

イラドーヤ「さっき、ゴモウドッカ様から連絡があったわよぉ。 クーデター、成功したって」
ビルゴー「クーデター? 違うな。 ラブルパイラの開発責任者はヘルルーガ様…… あのお方が最高頭官になって然るべきなのだ」
イラドーヤ「でも、頭領長の方が上なんでしょ」
ビルゴー「元々、マルムは環境開発閣臣だった。 運良くラブルパイラに逃げ込み、頭領長権限の 継承順位が繰り上がっただけに過ぎん」
イラドーヤ「せっかく生き残れたのに、 地球との交渉を強引に進めちゃったのが 運の尽きだったわけねぇ」
ビルゴー「後は、奴の護衛官を始末するだけだ」
イラドーヤ「今回はそこまでやらないわよぉ。 鋼龍戦隊の位置は特定できてる?」
ビルゴー「ああ。ハガネとヒリュウ改は別々の所で停泊中だ」
イラドーヤ「あはっ、ラッキーじゃなぁい。 アリアードが積まれてる可能性は、 どのくらいなのかしらぁ?」
ビルゴー「回収された後、イズ基地に運ばれたのは確実だ。 以後、あれを収容可能な大型艦で、基地から発ったのは ハガネとヒリュウ改を含む8隻」
イラドーヤ「あらあらぁ、引き当てるのはかなり難しそうねぇ。 その8隻がどこかで積み荷を降ろして、別の所へ 移送されちゃったケースもあり得るでしょ」
イラドーヤ「それに、輸送車や輸送機で こっそり運び出したっていう可能性もあるし…… 全部はチェック出来てないわよねぇ?」
ビルゴー「……そうだ」
イラドーヤ「しかも、ジーベ・ドライブが動いてなかったら、 感知できないんだし……」
ビルゴー「それでも見つけ出さねばならん。 今、イズは手薄だ。そこから確かめるか?」
イラドーヤ「あそこにはないような気がするわねぇ。 前にビルゴーちゃんが攻めたこともあって」
ビルゴー「では、イズから出た8隻の大型艦を当たる」
イラドーヤ「じゃあ、 ハガネとヒリュウ改に狙いを絞ってみましょっかぁ」
ビルゴー「その根拠は?」
イラドーヤ「女の勘♥」
ビルゴー「………」
イラドーヤ「冗談よぉ、冗談。 ある意味、安全な隠し場所だからよぉ。 高性能機が揃ってるしねぇ」
ビルゴー(それは……一理あるか)

《インドネシア ジャカルタ近郊(鋼龍戦隊)》

[ハガネ ブリッジ]

テツヤ「司令、ラマリスの殲滅から3時間が経過しました。 コバヤシ博士の仮説は正しかったようですね」
マイルズ「その判断は、統合参謀本部が下すだろう」
テツヤ「とは言え、ラマリスの殲滅……浄化の方法が 判明したのは大きな一歩だと思いますが」
ギント「まだ完全に浄化できたと決まったわけではない。 彼らが人口密集地に淀む雑多な念を糧にすると いうのであれば……」
ギント「大都市とそこに住まう人間がいる限り、 長い時間を経て再出現する可能性は ゼロではないのだ」
マイルズ「そうだな。駆除方法はわかったものの、現状では T-LINKシステムやシュンパティア搭載機を 有する我々しかそれを成し遂げられん」
マイルズ「また、ラマリスの出自は未だに不明…… 依然として予断を許さぬ情況であることを忘れるな」
テツヤ「……はっ」
マイルズ「私は報告書を統合参謀本部へ提出する。 艦を市街地外へ移動させ、命令あるまで待機せよ」
ギント「了解」

[ハガネ 艦内個室]

アキミ「それで、マイティウォーカーの試作1号機の 名前を決めようってことになってさ。 親父の案が『モガミ1号』……どう思う?」
フェアリ「……よくわからないわ」
アキミ「いやいや、ダサいって。 ロボット魂の欠片も感じられないよ」
フェアリ「ロボット……魂? どういうこと?」
アキミ「鋼鉄のボディに宿る、燃える正義と熱い勇気…… すなわち鋼の魂、スーパーロボット・スピリッツ、 スーパーロボット・ソウルさ」
フェアリ「………」
サイカ「それで、ソウルセイバーという名前にしたの?」
アキミ「ええ、地球を守るための魂の剣って意味を込めて。 おかしいですか?」
サイカ「ううん、そんなことないわよ」
アケミ「もう、アキミったら、ソウルセイバーの話ばっかり。 フェアリさん、困ってるんじゃないの?」
アキミ「だって、何の話でもいいって言われたからさ……。 ごめん、フェアリさん」
フェアリ「いえ、気にしないで。 あなたの話を聞いているのは、楽しいわ。 懐かしい感じもして……」
アキミ「それって……やっぱ、俺がフェアリさんの 知り合いに似てるから?」
フェアリ「………」
サイカ「ええっと……今日はここまでにしましょう」

[ハガネ 艦内(通路)]

サイカ「ありがとう、二人共」
アキミ「あれで役に立ったかどうか、わかりませんけど……」
アケミ「あの……一つ聞いていいですか?」
サイカ「何かしら?」
アケミ「どうして直接じゃなく、 モニター越しの面会なんですか?」
サイカ「……ドクターからそういう指示が出てるのよ」
アケミ「ジンプウさんが会う時もそうなんですか?」
サイカ「……ええ」
アケミ「わかりました」
アケミ(フェアリさんの名前は社員名簿に載ってたから、 うちの社員だっていうのは本当みたいだけど…… やっぱり、怪しいのよね)
サイカ「じゃあ、またお願いするわね。 こちらから声を掛けるから」
アキミ「はい。それじゃ」

[ハガネ 艦内(通信室)]

ギリアム「……そうか。鋭いな、彼女は」
サイカ「翻訳機を通す必要があると答えるわけにはいかず、 その場は何とか誤魔化しましたが……」
ギリアム「彼らに翻訳機を付けて面会させれば、 フェアリの素性に気づきかねんか。 社員名簿の方は?」
サイカ「カワニシ氏に掛け合って、処置済みです」
ギリアム「アケミはアクセスしたか?」
サイカ「はい」
ギリアム「調べた上で君に質問したとなると、 彼女の疑念は晴れていないな」
サイカ「ええ、このまま隠し続けるのは困難だと思います」
ギリアム「上からの命令とは言え、第三者から見れば、 フェアリの措置に無理があるのは事実だからな」
サイカ「あの2人には真実を話した方がいいのでは ないでしょうか」
ギリアム「そうだな……フェアリの記憶回復に 進展がないのであれば、別の手を考えねばならんか。 俺の方から上に掛け合ってみよう」

[ハガネ 格納庫内(ドリフト・ウィング前)]

(エンジン起動)
ジンプウ「博士、メイン・エンジンを起動させたぜ」
エリック「じゃ、データを取り始めるでの」
ジンプウ「ジャカルタでのラマリス殲滅作戦でも 反応があったし、確定でいいんじゃねえのかい」
エリック「いや、そうは思わんの」
ジンプウ「じゃあ、ラマリスが反応するらしい念動力絡みの システムっていう線は?」
エリック「だったら、もっと早く結果が出てたでの。 伊豆基地もこの艦も、念動力者T-LINKシステムは傍にあるでの」
ジンプウ「ああ、確かにな」
エリック「そもそもの話だがの。 ラマリスに反応するシステムだとして、 何に使うのか、よくわからんでの」
ジンプウ「あいつら、鋼龍戦隊が行ってねえ場所だと 時間が経てば湧いて出てくるんだろ。 それをエネルギーに転用するんじゃねえのかい」
エリック「場所と時間が限定されるでの。効率が悪いでの」
ジンプウ「じゃあ、何だってんだ」
エリック「ワシは、ラマリスが発する何かに似た何かに 反応しているだけだと思うでの」
ジンプウ「……つまり、本命は別に存在するってことかい」
エリック「んむ。これはワシの勘じゃが、ブラック・ボックスは 何か大きなエネルギーを吸収するか、変換するための システムだと思うのでの」
ジンプウ「コンパチブルカイザーのOGエンジンや、 ガルムレイドやサーベラスのTEエンジンみてえな?」
エリック「んむ」
ジンプウ「なら、どうやって本命を見つけ出すんだ?」
エリック「とりあえず、色々なシチュエーションで ドリフト・ウィングのメイン・エンジンを 起動させてみるでの」
ジンプウ「なるほど、それで今回のテストってわけかい」
エリック「まぁ、フェアリが記憶を取り戻せば……」
(アラート)
ジンプウ「!?」

[ハガネ ブリッジ]

エイタ「重力震反応を感知!  1時方向、仰角30、レンジ5!」
ギント「総員、第一種戦闘配置。機動部隊を出撃させろ」
テツヤ「了解!」
エイタ「まもなく転移出現する模様!」
テツヤ「友軍部隊が配備されていないエリアを 目指してきたか……!」
ギント「このタイミングで ここへ転移してくる以上、狙いは本艦だろう」
エイタ「転移出現しました! 数は1!  識別…………ゼラニオ級!」
ギント(ゴライクンルか。 ならば、彼らの目的は……)


第20話
セレンディピティ

〔戦域:荒野〕

(東端にハガネがいる)
エイタ「ゼラニオ級から発進した敵機が接近!  1時方向より真っ直ぐ!  まもなく、レンジ3に侵入!」
(西側に敵機が出現)
テツヤ「機動部隊各機、出撃せよ!」
(出撃準備)
コウタ「前回と違って、マッドネットに 操られてるわけじゃなさそうだな」
ロア「ああ」
カルヴィナ(……またフューリーじゃなかった。 あいつが言っていた考える時間なんて、 もういらないのに)
ヨン「敵の中にライグ=ゲイオスがいます。 あれには人間の指揮官が乗っているかも知れません」
イルム「じゃあ、俺達相手のビジネスは 上手くいかないってことを教えてやるか」
ハーケン「ビジネス?」
イルム「ああ、あいつら……ゴライクンルは戦争商人でな。 特別な機体が揃っている鋼龍戦隊に興味を持ってる」
イルム「特に新型のゲシュペンスト・ハーケンと あんたの可愛い相棒は、高く売れると 判断するんじゃないか」
ハーケン「なるほど。そりゃ確かにビジネスだ。 ……アシェン、長い間、世話になったな」
アシェン「売り飛ばされる前に蹴り飛ばしやがります」
イラドーヤ「さぁてさて、運試し。 あの艦にお目当ての物があるかどうか…… まずは第1回戦、いってみようかぁ」
イラドーヤ「ビルゴーちゃん。 ガロイカをハガネに突っ込ませるわよ」
ビルゴー「了解だ」
ビルゴー(緊張感のない女め…… 指揮官たる者、レジアーネ様のように 凛々しくあるべきだ)
カイ「……ギリアム、プライベート通信だ」
ギリアム「どうぞ」
カイ「連中の狙いは、ドリフト・ウィングだと思うか?」
ギリアム「その存在を感知しているとは考えにくいですが…… 探りを入れに来た可能性は高いでしょう」
カイ「わかった」
カイ「エレーブ1より各機。 敵機を……特にガロイカを接近させるな。 最優先で撃破しろ」
(作戦目的表示)

勝利条件
1.ライグ=ゲイオスのHPを28000以下にする。
敗北条件
1.ハガネの撃墜。
SRポイント獲得条件
・ゲイオス=グルードの撃墜。
なお、ゲイオス=グルードはHPが23000以下で撤退する。

〈ガロイカを6機以上撃墜 or ガロイカを6機撃墜する前にハガネに取りつかれた〉

(ゲイオス=グルードに成功シグナル)
ビルゴー「! このデータは……!」
イラドーヤ「あらぁ?  もしかして、まさかまさかの大当たり?」
ビルゴー「ああ、ジーベ・ドライブの反応だ……!  間違いない、アリアードはハガネの中にある」
イラドーヤ「あはっ、こういう偶然ってあるんだねぇ。 もしかしてもしかすると、何かと不運な キナハちゃんがいないからかな?」
ビルゴー「すぐに増援を!」
イラドーヤ「急かない急かない。 今回の任務はこれにて終了。引き揚げるわよぉ」
ビルゴー「何を言う! この機にアリアードを奪還、 それが叶わずば……」
(ゲイオス=グルードが少し東へ移動する)
ビルゴー「破壊する!」
イラドーヤ「もしもし? 私達はあれも欲しいんだけどぉ?」
ビルゴー「地球人に解析されるぐらいなら、壊す!  ジーベ・ドライブにはガディソードの未来が 懸かっているのだ!」
イラドーヤ(まぁ、ビルゴーちゃん一人じゃ無理だろうし…… 敵の中に新顔もいるから、もうちょっと付き合って あげてもいっかぁ)

〈vs イラドーヤ〉

[ライ]

イラドーヤ(あらあらぁ、結構いい動きしてるじゃなぁい)
ライ(あのどこか一歩退いた動き……似ているな、 ラブルパイラで仕掛けてきた機体と)

[イルム]

イルム「あのライグ=ゲイオス、 ラブルパイラで仕掛けてきた奴と同じっぽいな」
イラドーヤ「ついでではあるけど、 少しは楽しませてもらうわよぉ」

[リョウト]

リョウト「間違いない、あの時の…… ラブルパイラを襲ってきたライグ=ゲイオスだ!」
イラドーヤ(さすが鋼龍戦隊……優秀なのが揃ってるわねぇ。 こっちにスカウトしたいぐらいよぉ)

[エクセレン]

エクセレン「ふ~ん、この感じ…… 前にどこかで会わなかったかしらん?  ちょっと気になるのよね」
イラドーヤ(あらあらぁ、もしかして気づかれた?  だとしても、答えてあげないけどねぇ)
エクセレン「う~ん、振られちゃったみたいだけど、 これって肯定なのか、無視なのか、どっちかしらね」

[アイビス(ハイペリオン搭乗時)]

アイビス「あのライグ=ゲイオスのマニューバ、 覚えがある……!」
ツグミ「そうね、スラスターの噴射間隔が ラブルパイラを襲撃した機体と似ているわ」
イラドーヤ(あの機体は高く売れそうだから、 出来れば無傷で手に入れたいんだけどねぇ)

[ヨン]

ヨン「あの動き……人間が乗っているのね。だったら!」
イラドーヤ「あらぁ?」
ヨン「ライグ=ゲイオスのパイロット!  あなたは枢密院の決定に反した行動を取っています!  直ちに戦闘を中止し、武装解除なさい!」
イラドーヤ(この声……キナハちゃんが言ってた ガヤットーバ・スチェッカ……だったっけ。 ちょっと面倒なのに当たっちゃったわぁ)

先に撃墜したのは
ゲイオス=グルード ライグ=ゲイオス


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