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ギリアムの一手 ~ 第21話 ~

[ガウ=ラ・フューリア 謁見の間

グ=ランドン「……ジェヴィルンは我々でも撲滅できますが、 ゾヴォークの動きも顕著になっており、 情況は予断を許しませぬ」
グ=ランドン「よって、諜士と共にラースエイレムを用いた 玉座機奪還作戦のご許可をいただきたい」
シャナ=ミア「既に敢行しているものと思っていましたが」
グ=ランドン「滅相もない」
シャナ=ミア「グ=ランドン、我らが戦うべき相手は、 ヴォーダの門より現れるヴァウーラです」
シャナ=ミア「玉座機グランティードが地球人の手許に あるのならば、あれを解析することによって 我らの素性に少しは気づいておりましょう」
グ=ランドン「否定はできませぬな。 アシュアリー・クロイツェルがゾヴォークの襲撃を 受けて壊滅したとは言え……」
シャナ=ミア「………」
グ=ランドン「玉座機を持ち去ったエ=セルダが、 地球人に我らの情報を与えた可能性もあります」
シャナ=ミア「ならば、我らフューリーの存在を 彼らに知らせる良き頃合いかも知れません」
グ=ランドン「何を仰る。地球人の凶暴性と排他性は、 彼ら自身の歴史が証明しております。 ここを知れば、攻め込んでくるでしょうな」
シャナ=ミア「それは、こちらの態度次第でありましょう」
グ=ランドン「いずれにせよ、玉座機の奪還は必須。 ラースエイレムを用いた作戦の ご許可をいただきたい」
シャナ=ミア「……一つ、条件があります」

[ガウ=ラ・フューリア 内部(ブリーフィング・ルーム)]

カロ=ラン「搭乗者を生かしたまま連れて帰れ、か。 どうやら、皇女殿下は気づいておられるようだ」
グ=ランドン「貴様が告げたのでなければな」
カロ=ラン「まさか。 今回も無断で敢行するのかと思っていたぞ」
グ=ランドン「前回詮索された以上、そうはいかん」
カロ=ラン「『鍵』の機嫌は取っておかねばならんか。 では、命じられた通り、連行するのだな」
グ=ランドン「ああ」
(足音)
アル=ヴァン「アル=ヴァン・ランクス、 ジュア=ム・ダルービ、参上しました」
グ=ランドン「ご苦労」
(足音)
ソ=デス「……この場に呼んでもらえるとは、光栄ですねぇ」
ジュア=ム(こいつ、諜士の……)
グ=ランドン「玉座機を奪還するにあたって、 次の作戦ではアイドリング状態の オルゴ転送基も同時に転移させる」
グ=ランドン「その後、ソ=デスのラフトクランズが ラースエイレムを用い、ステイシス・フィールドを 展開……玉座機を転送基の傍へ移送させる」
グ=ランドン「そして、フィールドが消滅した直後、 グランティードをこのガウ=ラ・フューリアへ 転移させるのだ」
ソ=デス「僕ばかりが働かなきゃならないようですが……」
カロ=ラン「それで前回の汚名を雪ぐのだな」
グ=ランドン「アル=ヴァン、 お前達はソ=デスのラフトクランズと オルゴ転送基を守れ」
アル=ヴァン「はっ」
ソ=デス「くふふっ、光栄ですねぇ。 この僕が騎士団の皆さんに守っていただけるなんて」
ジュア=ム「調子に乗るなよ、諜士ごときが」
ソ=デス「そういう君は、まだ準騎士じゃありませんか。 ラースエイレムを使う、使わない以前の問題でしょう」
ソ=デス「だって、ラフトクランズを 与えられていないんですから。 大口を叩いてもらっては困りますよ」
ジュア=ム「何だと、てめえ……!」
アル=ヴァン「止めよ、ジュア=ム」
ジュア=ム「……はっ」
グ=ランドン「なお、貴様らに伝えることがある。 玉座機の搭乗者は生かしたまま連行せよ。 これは皇女殿下のご命令だ」
ジュア=ム(何だって……!?)
アル=ヴァン「……ベルゼルートはどうするのです?」
グ=ランドン「何も言われておらん。故に私が命令を下す。 エ=セルダ亡き今、あの実験機は必要ない。 破壊し、搭乗者を抹殺せよ」
アル=ヴァン「………」
ジュア=ム(アル=ヴァン様……?)
カロ=ラン(こやつ、やはり……)
グ=ランドン「どうした、アル=ヴァン」
アル=ヴァン「いえ……決行はいつでしょうか」
グ=ランドン「貴様も承知の通り、鋼龍戦隊は今、 ジェヴィルンの討伐任務に就いている」
グ=ランドン「彼奴らが次の都市へ赴き、 戦闘を終えた直後に仕掛けよ」
アル=ヴァン「承知致しました」

《インドネシア ジャカルタ近郊(鋼龍戦隊)》

[ハガネ 艦内(ラウンジ)]

リュウセイ「よう、ライ。次に行く所がどこか、知ってるか?」
ライ「インドのデリーだろう」
リュウセイ「何だ、もう聞いてたのかよ」
ライ「いや、現在の情況から予測した」
シャイン「さすがでございますわ、ライディ様。 デリーの次にどこへ行くかもおわかりですの?」
ライ「ええ、見当は付いています」
カルヴィナ「大した自信ね。 その推理力でフューリーがいつ仕掛けてくるか、 当てて欲しいものだわ」
ライ「……彼らに関しては、 俺よりそちらの方が詳しいのではないか?」
カルヴィナ「あたしが内通しているとでも?  言っておくけど、フューリーの正体や本拠地を 知っていたら、こんな所にはいない」
カルヴィナ「あたしにとって、ラマリス討伐は時間潰しも同然だわ」
リオ「そんな…… ラマリスはどうでもいいって言うんですか?」
カルヴィナ「優先度の問題よ。 だけど、連中と戦う時に手を抜いたりはしていない。 つまらないことで死にたくないからね」
カルヴィナ「結果として、部隊の役に立つなら問題ないでしょう?」
リオ「ラマリスみたいな存在から人々を救うのは、 私達の本分じゃないんですか?」
カルヴィナ「……少尉の父親は、マオ・インダストリーの 重役だったわね」
リオ「どうして、それを……」
カルヴィナ「もし、フューリーに壊滅させられたのが アシュアリーでなく、マオだったら…… あんたはそこで、そうしていられる?」
リオ「………」
ライ「……個人では出来ることに限界がある。 仇が詳細不明の敵組織に属する者であれば、尚更だ」
カルヴィナ「あら、少尉も説教するつもり?」
ライ「俺自身の経験を語ったまでだ」
シャイン(ライディ様のご経験、それは……)
リュウセイ(……アーチボルド・グリムズのことか)
カルヴィナ「で、少尉は仇を討てたの?」
ライ「……俺だけで成し遂げたわけではない」
カルヴィナ「そう。ご忠告、ありがたく承っておくわ」

[ハガネ ブリッジ]

アヅキ「タンゴ13の補給物資の搬入作業が終了しました。 同機は10分後に発艦予定です」
テツヤ「了解した」
マイルズ「ヒリュウの方はどうか?」
アヅキ「空間転移装置修理作業の遅延報告はありません」
マイルズ「では、向こうもまもなく準備が整うか。 副長、機動部隊のパイロット達を召集し、 ブリーフィングを行え」
マイルズ「基本的な戦術は前回と同じだ。 T-LINKシステムシュンパティア搭載機、 グランティードを中核としてラマリスを殲滅せよ」
マイルズ「ブリーフィング終了後、 本艦とヒリュウ改はデリー郊外へ空間転移。 合流後、ラマリス集結地へ突入する」

[ハガネ 格納庫]

ラージ「これが例の……」
ギリアム「ああ。先程、輸送機が運んできた。 俺の機体に多目的ランチャーを取り付け、 そこから発射する」
ラージ「少佐の対抗策が成功した場合、彼らの反応から 何らかのヒントが得られればいいんですが」
ギリアム「そうだな。で、テスラ研の方はどうだ?」
ラージ「今の所、作業は順調です」
ギリアム「フレームは?」
ミズホ「性能面ではライトニングとエターナルが 一番なのですが、一から組み立てるとなると、 時間が掛かってしまいます」
ミズホ「今回は様々な面での安定性が要求されますから…… 基本的なフレームであるストライカーを 2つ作るのがベストだと判断しました」
ラージ「製作と調整が最も短時間で済むのは、 あのフレームなんですよ」
ギアリム「だが、ストライカーでは汎用性に やや欠けるのではないか?」
ミズホ「その対処策は、テスラ・ライヒ研究所へ伝達済みです」
ギリアム「了解した」
ラージ「しばらくの間、 フューリーが大人しくしてくれればいいんですがね」
ギリアム「それは……このマーカー次第かも知れんな」


第21話
ギリアムの一手

〔戦域:市街地〕

(市街地の南東端にハガネ、ヒリュウ改、ベルゼルート、グランティード、ギリアム機が出撃済み。 前方にラマリス群がいる。出撃準備)

ベルゼルートのサブパイロットは
カティア テニア メルア


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