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惨劇の夜(前篇) ～ 第11話 ～

《日本近海(クロガネ)》

[クロガネ　ブリッジ]

クルト「レーツェル様、本艦は野島崎沖に着底しました」
レーツェル「うむ」
クルト「カイ・キタムラ少佐からのデータは、 ゼンガー少佐の消息の手掛かりになるでしょうか」
レーツェル「アクセルやコウタの例もある。 まだ何とも言えんな」
クルト「ところで、伊豆のレイカー・ランドルフ司令へ 一報を入れられたのですか？」
レーツェル「今回の目的については、ギリアムを通して伝えてある。 現状でこちらから直接コンタクトを取るのは 望ましくないのでな」
クルト「ですが、 彼らの上はまだ我々を利用する気でしょう？」
レーツェル「ああ、ギャスパル・ギラン元帥はな。 在りし日の父も言っていたが、食えん男だよ」
クルト「利用価値がなくなれば、そこまでですか」
レーツェル「世が平穏を迎えた結果、 そうなるのであれば望ましいことだがね」
クルト「クロスゲート・バーストのような事件が 起きているようでは、まだ先の話ですな」
レーツェル「さて……しばらくの間、日本に滞在する可能性が高い。 今の内に物資を補給しておいた方が良かろう」
クルト「了解です」

[クロガネ　艦内(食堂)]

カーラ「えっ、何？ 　アクセルさんとアルフィミィだけで東京へ行くの？」
アルフィミィ「そうですの」
アクセル「お尋ね者のおれ達が、表立って大々的に 調査をするわけにはいかんだろうが」
トウマ「で、でも、クロスゲート・バーストと 関係があるかも知れないんですよね？」
アルフィミィ「ええ。 あの時、何かが地球上へ降り注がれましたの」
ミナキ「なら、鋼龍戦隊に訳を話し、 調査してもらった方がいいのでは？」
アクセル「異星人共が動き出した現状で、 連中に余裕があるとは思えん」
ユウキ「だから、直接調べに行くというわけですか」
アクセル「ああ」
カーラ「だけど、何で東京なの？」
アルフィミィ「わかりませんが…… あの地で何かが起こりそうですの……」
ユウキ「アバウトだな」
カーラ「他ならぬアルフィミィが言うことだから、 信憑性はあると思うけどね」
トウマ「じゃあ、俺も行きますよ。 東京で何度もバイトをしたことがあるんで、 地理は詳しいです」
アクセル「いや、おれ達だけでいい。その方が身軽だからな」
カーラ（お土産は……頼めそうな雰囲気じゃないか）

《日本　東京・新宿地区》

[東京・新宿地区(繁華街)]

市民(茶髪の男性)「……飲み足りないなあ。あと１軒行こうぜ」
市民(男性)「いや、もう帰ろう。ほら、あれ」
市民(茶髪の男性)「ん？　軍の車か？」
連邦軍兵「現在、非常警戒態勢中につき、２１時以降の外出が 禁じられています。市民の皆さんは速やかに 帰宅して下さい。繰り返します……」
市民(茶髪の男性)「何だよ、まだ夜の８時だぜ」
市民(男性)「こないだ、渋谷が襲撃されただろ。そのせいだよ」
市民(茶髪の男性)「だけど、連邦軍が撃退したんだろうが。 今日日、宇宙人や怪物にビビッて やっていけるかよ。もう慣れっこだぜ」
市民(男性)「でもさ、 ブラック・スカイみたいな事件もあったんだ…… 年々、とんでもないことになってる」
市民(男性)「ネットじゃ、 世界の終末がいよいよ近づいてる証拠だって……」
市民(茶髪の男性)「そんなの、デカい戦争が 起きる度に言われてることじゃないか。 それで世界が終わったか？　違うだろ？」
市民(男性)「そうだけど、政府や軍は戦争の真相を 全て公表してるわけじゃない」
市民(男性)「噂じゃ、空の上に大きな門が現れて、 天国か地獄につながってるって……」
市民(茶髪の男性)「何だ、そりゃ？」
市民(男性)「他にもさ、色々と……」
市民(茶髪の男性)「あのな、それでも俺達は食ってくために 働かなきゃならないんだよ。 政府が金をくれるわけじゃないんだから」
市民(茶髪の男性)「で、働くために飲む。 それを邪魔する権利は、軍と言えど……」
市民(男性)「………」
市民(茶髪の男性)「おい、どうした？」
市民(男性)「な……何だ、あれ……！？」

＜満月の夜、街に瘴気が溜まっていて、瘴気の中からラマリスが出現する＞

〔戦域：夜の新宿市街〕

市民(スーツの男性)「う、うわあああっ！！」
市民(短髪の男性)「ばっ、化け物！？」
？？？「オォォォオン……」
（道路の上にいるラマリスが少し西へ移動）
市民(茶髪の男性)「こ、こっちに来るぞ！！」
（ラマリスが少し西へ移動）
市民(男性)「うああああ！！」
（ラマリスが人を取り込む）
アクセル「人を食った……奴らは、いったい何だ？」
アルフィミィ「……負の念の塊……みたいですの」
アクセル「負の念……もし、クロスゲートから湧いて出たのなら ルイーナだとでも言うか」
アルフィミィ「あれとは似て非なるモノ…… 強いて例えるなら、死霊や怨霊……ですの」
アクセル「ふん……ハロウィンにはまだ早い、これがな」
アルフィミィ「悪戯どころでは済みませんの」
アクセル「何にせよ、お前の懸念は当たったか」
（ラマリスの周りに爆煙）
アクセル「チッ、人を食うだけではないのか」
アルフィミィ「あれを放置すると危険ですの…… ペルゼインを呼び出しますの」
アクセル「この場に居合わせた以上、看過できんか。 いいだろう、やってくれ」
アルフィミィ「ラジャー了解ですの」

《地球連邦軍極東方面軍　伊豆基地》

[伊豆基地　司令室]

オペレーター「アンノウンの出現情報、 また新たに確認されました！」
サカエ「今度はどこだ！？」
オペレーター「東京、池袋地区です！」
（扉が開く）
レイカー「情況を報告してくれたまえ」
サカエ「新宿、渋谷、池袋地区に２０メートル級の アンノウンが複数出現。彼らの破壊行動により、 市街地に損害が出ております」
サカエ「なお、各エリアのアンノウンの数は １０体ほどですが、徐々に増殖しているようです」
レイカー「増殖？　人が乗っている物ではないのか？」
サカエ「おそらくは。 映像を確認しましたが、機動兵器の類いではなく、 アインストや妖機人に近しい存在かと」
レイカー「横田のＡＭ部隊を緊急発進させたまえ。 アンノウンの撃破より、民間人の 避難ルート確保を優先するのだ」
サカエ「了解です。 なお、先程、新宿地区にレッド・オーガが出現し、 アンノウンと交戦中です」
レイカー「レッド・オーガ…… あれは今、クロガネの管轄下にあるはずだ」
サカエ「アンノウンと何か関係があるのでしょうか……？」
レイカー「パイロットとコンタクトは取ったか？」
サカエ「呼び掛けていますが、応答はありません」
レイカー「……鋼龍戦隊もスクランブル発進だ。 新宿に向かわせてくれたまえ」
サカエ「統合参謀本部からの命令でないと、 マイルズ准将は動かないと思われますが……」
レイカー「無論、パリの承認を得た上でだ。 なお、レッド・オーガは暫定的に 友軍として認識するように」
サカエ「了解です」

[ハガネ　ブリッジ]

マイルズ「……まだつながらんのか、統合参謀本部と」
アヅキ「呼び出しを続けていますが、応答はありません」
マイルズ（私と話す余裕などないということなのか……？）
テツヤ「もしや、向こうでも……」
マイルズ「各方面軍への指示は出ているのだろう？ 　ならば、大きな問題は……」
アヅキ「司令、パリ発信と思われる映像が アップされ始めました！ 　１０……２０……どんどん増えています！」
マイルズ「いくつかをこちらに回せ！」
アヅキ「了解！」
（モニターオン）
マイルズ「うっ、これは！」
テツヤ「同じアンノウンが映っている……！」
マイルズ「ヒリュウ改を直ちにパリへ転移させろ！」
テツヤ「司令、ヒリュウ改の空間転移装置は メンテナンス中のため、使用できません」
マイルズ「ならば、作業を早く終わらせろ！」
テツヤ「装置の一部を取り外し、分解整備しているのです。 今から組み立てても、使用可能になるのは ４８時間後であります」
マイルズ「出来ぬ理由を述べるな！　出来る方法を考えろ！」
テツヤ「……！」
エイタ（もっともな言葉だけど、 今の情況を考えて欲しいよ……）
ギント「司令、意見を具申してもよろしいか」
マイルズ「何だ！？」
ギント「空間転移装置は作戦行動の要となるため、 ここでメンテナンスを中止すれば、いざという時に 使用不能となるおそれがあります」
ギント「また、今後与えられるであろう任務を想定し、 伊豆基地司令部からの要請を受けて新宿へ急行……」
ギント「今の内にアンノウンとの交戦データを 取得すべきかと考えます」
マイルズ「う……むう。 今、出来ることをやると言うのか。 いいだろう」
ギント「了解。 総員、第一種戦闘配置。これより新宿へ急行する」

〔戦域：夜の新宿市街〕

（西端にリオンの分隊がいて、中央にラマリス群が出現する）
連邦軍兵「隊長、また数が増えました！」
連邦軍兵(隊長)「くっ！　民間人の避難状況は！？」
連邦軍兵「警察からの報告では、レベル５！ 　池袋と渋谷にもアンノウンがいるため、 明治通りが避難経路として使えません！」
（隊長機に警告シグナル）
連邦軍兵(隊長)「！　吉祥寺にも！？ 　これでは、青梅街道も……！」
（南東側にペルゼイン・リヒカイトがいる）
アクセル「奴らはどこから来ている？ 　重力震反応がない以上、転移しているわけでは なさそうだが……」
アルフィミィ「見ての通り、 地の底より湧いて出ているようですの」
アクセル「地獄からとでも言うか。 クロスゲートは関係ないのか？」
アルフィミィ「なくはないと思いますの」
アクセル「何にせよ、あの調子で増えていけば、 東京中が奴らだらけになるかも知れん」
アルフィミィ「あながち冗談ではございませんの」
アクセル「一気に焼き払えれば、あるいは……」
アルフィミィ「アクセル、援軍が来ましたの。鋼龍戦隊ですの」
（南端にハガネとヒリュウ改が出現）
ギント「司令、機動部隊を出撃させます」
マイルズ「うむ。民間人の避難支援は、あのＡＭ隊に任せる。 アンノウンをこのエリアから出すな」
ギント「了解。副長、機動部隊を出撃させろ」
テツヤ「了解！　各機、直ちに出撃せよ！」
（グランティードとベルゼルートが出撃、出撃準備）

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