back index next


ラース・エイレム 地上ルート ~ 第10話 ~

<月>

[ガウ=ラ・フューリア 内部(玉座の間下)]

フー=ルー「グ=ランドン様、 フー=ルー・ムールー、参上しました」
グ=ランドン「うむ。 フー=ルー、貴様に玉座機奪還の任を与える」
フー=ルー「あら、それはアル=ヴァンの役目ではありませんの?」
グ=ランドン「あの男は、エ=セルダ絡みとなると非情に徹し切れぬ。 そして、ル=クク・ヴォーデュ……ヴォーダの門が 再び開かれた今、ヴァウーラがいつ現れるかわからん」
グ=ランドン「故に、玉座機を取り戻す術を選んではいられんのだ」
フー=ルー「もしや……騎士の禁忌を破れと仰いますの?」
グ=ランドン「出来るか?」
フー=ルー「………」
フー=ルー「……私という存在が不要なのでしたら」
グ=ランドン「ふ……戯れ言だ。忘れよ。 かの大戦を生き延びた騎士は、私を含めて3名のみ」
グ=ランドン「貴様には私の補佐役、 そして、若き準騎士や従士達の指南役を 務めてもらわねばならぬ」
フー=ルー「承知しておりますわ」
グ=ランドン「だが、早急に玉座機を奪還せねばならぬのは事実」
フー=ルー「アル=ヴァンの報告では、 エ=セルダ様の息子がグランティードに乗り込み、 バスカー・モードまで起動させたとか」
グ=ランドン「それが何だと言うのだ?」
フー=ルー「優れた騎士の素質がなければ、 成し遂げられぬことですわ。さほどの実戦経験もなく、 アル=ヴァンを下がらせたのなら、尚更」
グ=ランドン「エ=セルダの計画の産物を認めるわけにはいかぬ。 創世神フューレイムから連綿と受け継いできた 血統を否定する存在だからな」
フー=ルー「利用する価値もないと?」
グ=ランドン「そうだ」
グ=ランドン「紛い物より、玉座機だ。 神竜バシレウスが残っていても、 あれなくして我が計画は成就せん」
フー=ルー「はっ、私にお任せ下さいませ」
グ=ランドン「成功を期するために、ある者を呼んでいる。 ……参れ、ソ=デス・ズォー」
(足音)
ソ=デス「どうも」
フー=ルー「その態度……グ=ランドン様に失礼ですわよ」
ソ=デス「騎士の理は、僕ら諜士には関係ないことでね」
フー=ルー「もしや、グ=ランドン様…… この者に使わせるのですか、禁忌の術を」
グ=ランドン「察しがいいな。その通りだ」
ソ=デス「玉座機のラースエイレムは、 カロ=ラン様によって壊されています。 つまり、向こうに防ぐ手立てはないんですよ」
フー=ルー「ラフトクランズは?  そちらには諜士長のカロクアラしかないでしょう」
ソ=デス「仰る通りですが、 聖騎士団から提供してもらえるんですよ」
フー=ルー「グ=ランドン様、本当ですの?」
グ=ランドン「うむ」
フー=ルー(なるほど、それでカロ=ランは 今回の話を引き受けたのね……)
フー=ルー(こちらからラフトクランズを出せば、 カロクアラのエイテルムを温存できるもの)
ソ=デス「いやぁ、身に余る光栄ですよ。 本来なら、士長級の者か騎士でなければ 扱えない機体ですから」
ソ=デス「それに、僕はラースエイレムを使うことに 何の躊躇いもありません。あなた方騎士と違ってねぇ」
フー=ルー「皇女殿下のお許しがなくとも?」
ソ=デス「それはさすがに……」
フー=ルー(……嘘ね。 後で咎められても、ソ=デスの一存で押し切るつもり?  それでよくあのカロ=ランが納得を……)
フー=ルー(いえ、向こうは向こうでグ=ランドン様に 貸しを作りたかったということかしら)
ソ=デス「フー=ルー様、 あなたは鋼龍戦隊と玉座機を誘き出して下されば いいんです。あとの事は、僕がやりますから」
フー=ルー「騎士が諜士のために囮役を務めるなんて…… あべこべではなくて?」
グ=ランドン「フー=ルー、お前に騎士の誇りを捨てよと 命じるつもりはない。だが、早急な玉座機の奪還が、 我らの悲願達成に大きく関与すると知れ」
フー=ルー「……承知致しました」

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[伊豆基地 司令部]

サカエ「司令、ヒリュウ改が ビスケー湾上経由で帰港しました」
レイカー「ブライアン・ミッドクリッド特使は、 無事にパリへ到着したのかね?」
サカエ「最新のタイム・スケジュール通りならば」
レイカー「向こうで何があったか、話を聞きたい所だが……」
サカエ「統合参謀本部からヒリュウ改の全クルーに対し、 箝口令が出たようですな」
レイカー「では、後日の報告書待ちか」
サカエ「いえ、マイルズ准将から会議の申し出があります。 その際、任務内容の報告を受けるかも知れません」
レイカー「そうか。では、前向きの話であることを祈ろう」

[伊豆基地 桟橋]

リュウセイ「いや~、色々あったけど、帰りはスムーズだったな」
リオ「ホント、呆気ないくらい」
タスク「いやいや、行きに三度もドンパチやったんだぜ。 帰りにも何かあったら、たまんねえっつーの」
アイビス「……結局、すっきりしないことが多かったね。 火星軌道近くまで行ったのに」
クスハ「肝心の結果は機密事項ですもんね」
マイ「もしかして、 ガディソードとも戦うことになるのか……」
イング「今の所、その可能性は低いと思う」
タスク「だな。 ラブルパイラから追い出されたわけでもなければ、 逃げ帰ったわけでもねえんだし」
アヤ「あなた達、箝口令が敷かれているのよ。 ヒリュウから降りた後は気をつけてね」
マイ「うん、わかってる」
リュウセイ「ん? 出迎えがいるな」
クスハ「ギリアム少佐ね。何かあったのかしら」
ヨン「……多分、私に用があるのだと思います」
(足音)
ギリアム「ヨン少尉……ヒリュウ改での任務、ご苦労だった」
ヨン「いえ……内容については話せませんが」
ギリアム「その件だが……統合参謀本部の命令で、 私の立ち合いの下、メキボス・ボルクェーデに 報告してもらいたい。彼の意見を聞きたいそうだ」
ヨン「マスターの……。わかりました」

[伊豆基地 内部(食堂)]

エクセレン「わお! 伊豆に来てたのね、ジョッシー」
ジョッシュ「ええ。リムやグラキエース、クリフも一緒です」
エクセレン「ふ~ん、南極で何かあったの?  もしかして、それでジェアン・シュヴァリアーを 取りに来たとか?」
ジョッシュ(鋭いな、エクセレン少尉……)
カイ「ヒリュウ改の任務内容と同じで、機密事項だ。 それ以上聞くな」
エクセレン「あららん」
キョウスケ(……余程のことが起きたらしいな、南極で)
エクセレン「ごめんね、ジョッシー」
ジョッシュ「いえ」
キョウスケ「日本でも色々あったようだな」
ラミア「ええ。東京、横浜、千葉が ゾヴォークの同時攻撃を受けたのですが…… それらは陽動で、本命は伊豆でした」
カルヴィナ「そう……ここにソーンが現れたのよ」
ライ「俺達が宇宙で遭遇したタイプか?」
カルヴィナ「違うわ。忘れもしない、あいつ…… アシュアリー・クロイツェルを壊滅させた 灰色のソーンよ」
イルム「つまり、仇と遭遇したってわけか。それで?」
カルヴィナ「………」
イルム(やれやれ、返り討ちにでもされたかのような顔だな)
キョウスケ「カイ少佐もソーンと交戦を?」
カイ「いや、教導隊はその場にいなかった。 交戦したのはギリアムとカルヴィナ、メルア、 アカツキ姉弟にトーヤとカティア」
カイ「特にトーヤはグランティードの力を解放し、 ソーンを撃退したそうだ」
イルム「ほう……俺達は宇宙であいつと戦って、 そこそこ手を焼いたんですけどね」
カイ「本人はサイトロン・コントロール・システム…… グランティードのマン・マシン・インターフェースの おかげだと言っているが、それにも謎が多くてな」
ジョッシュ「俺の機体に組み込まれている シュンパティアと共鳴したんです」
エクセレン「え? どうして?」
ジョッシュ「実は、サイトロン・コントロール・システムは、 概念や構造がシュンパティアに似ていて……」
ジョッシュ「いや、あのシステムを簡略化すれば、 シュンパティアになると言った方がいいですね」
リョウト「え……?」
イルム「本当かよ」
ライ「何故、それがわかった?」
エクセレン「もしかして、ファブラ・フォレースと 何か関係があったりして」
ジョッシュ「ええ。グランティードのコックピット内を 調べた所……」
ジョッシュ「そこで表示される文字は、ファブラ・フォレースに 刻まれていた物と同じでした」
エクセレン「じゃ、じゃあ……」
リョウト「ファブラ・フォレースを建造した知的生命体が グランティードを作った……」
ジョッシュ「おそらくな」
イルム「やれやれ、そんな接点があったとは」
ジョッシュ「ワン博士によれば、グランティードは 少なくとも千年以上前に作られた物だそうです」
リョウト「まるで超機人だ……」
カイ「……伊豆に現れたソーンのパイロットは、 グランティードを自分達の物だと言った」
カイ「あれとソーンを有する者達…… トーヤの父親、セルドア・シウンが所属していたと 思われる組織はゾヴォークと無関係かも知れんな」
キョウスケ「その根拠は?」
カイ「ギリアムから聞いた話だが…… 封印戦争末期、ゼゼーナン達が使っていた ゾヴォークの兵器が宇宙で放棄され……」
カイ「それらが別勢力によって ろ獲された可能性があるらしい」
ライ「別勢力……バルマーですか?」
カイ「断定は出来ん。別の異星人かも知れん」
エクセレン(ガディソード……ってことはなさそうね)
イルム「もし、ファブラ・フォレースを造った連中が 地球圏のどこかにいるとしたら……」
イルム「リ・テクが遺跡を見つけた時や 封印戦争でルイーナが現れた時、 ノーリアクションだったのが気になるな」
ジョッシュ「父達がファブラ・フォレースを発見し、 シュンパティアやレース・アルカーナを 得たように……」
ジョッシュ「何者かがどこかでグランティードを手に入れ、 使っていただけなのかも知れません」
イルム「トーヤがサイトロン・システムを使えるなら、 誰がいつ、どこで作ったのか調べられないのか?  そういうデータ、機体の中にもあるだろう」
ジョッシュ「俺達もそう考えて、 彼らに試してもらったんですが、駄目でした」
イルム「何故だ?」
ジョッシュ「これはクリフの推測ですが……機体側に 何らかの制限が掛かっていて、トーヤ達には 必要最低限の情報しか伝えていないんじゃないかと」
イルム「口が堅いってわけね」
カイ(ソーンの搭乗者はトーヤのことを一方的に知っていた。 そして、セルドア・シウン……彼らは異星人と 関わり合いがある地球人なのか、あるいは……)

[伊豆基地 内部(医務室)]

クリフォード「それで、スキャンの結果は?」
ケンゾウ「セルドア・シウンの大脳半球…… 頭頂葉の脳溝に違いが見られた」
クリフォード「頭頂葉……」
ケンゾウ「空間の知覚機能を司り、皮膚感覚や深部感覚など 身体の各部からの情報を統合する脳葉だ」
クリフォード「では、脳溝の違いとは?」
ケンゾウ「脳溝は俗にいう脳のしわ…… これは深さや曲がり方に個人差があるが、 位置は完全に決まっている」
ケンゾウ「だが、セルドアの頭頂葉の脳溝の位置は 常人の物と少し異なっていた」
ケンゾウ「これはあくまでも推測だが…… その部分がサイトロン・コントロール・システムの 運用に関わっているのではないだろうか」
クリフォード「そもそも、トーヤ達が口にするサイトロンという言葉が 何を指すか、曖昧なんですがね」
ケンゾウ「脳のニューロン活動電位に影響を与える何か…… いや、脳外に存在する物かも知れんな」
クリフォード「では、セルドア・シウンのような者が サイトロン・コントロール・システムの機能を フルに発揮した場合、どうなると思います?」
ケンゾウ「まずは、現時点でもトーヤ達が行っている マシンとの同調、情報交換が より高度なレベルへ移行する」
ケンゾウ「次に考えられるのは、自分を中心とした 特定空間内における認識力の向上……」
ケンゾウ「そして、同じシステムを使う者との交感。 ここまではシュンパティアと同じだろう」
クリフォード「オリジナルである サイトロン・コントロール・システムには さらなる機能が備わっていると?」
ケンゾウ「ああ。それが何なのか、断定は出来んが」
クリフォード「推測だけでも」
ケンゾウ「……自意識のさらなる拡大、長距離間の精神交感、 起こり得ることの予見。そして……」
ケンゾウ「いや、止めておこう。 私の研究に関わることだからな」
クリフォード「……そうですか。 では、最後の質問をさせて下さい。 セルドア・シウンは異星人だと思いますか?」
ケンゾウ「何とも言えんな。 現時点での調査結果だと、頭頂葉の脳溝を除いて 地球人と変わりがないのだから」

[伊豆基地 内部(執務室)]

メキボス「ラブルパイラでの任務、ご苦労だったな」
ヨン「いえ、マスター」
メキボス「向こうのトップは?」
ヨン「マルム・クイスードという文官です。 他に、ラブルパイラの責任者である ヘルルーガ・イズベルガという人物にも会いました」
メキボス「どういう印象を受けた?」
ヨン「クイスード氏は温厚な穏健派、 イズベルガ氏は好戦的な野心家だと思います」
メキボス「そうか……。 じゃあ、連中が太陽系へ来た経緯を教えてくれ」
ヨン「ガディソード人は母星において いくつかの勢力に分かれ、 長らく内戦状態にあったようですが……」
ヨン「宇宙要塞であるラブルパイラが 戦いを終結させるきっかけの一つになったようです」
メキボス「映像を見たが、先端にでかい大砲が付いてるな。 ウユダーロ級制圧砲艦の主砲より 威力がありそうだ」
ヨン「あれが武器かどうか確認は出来ませんでしたが、 多数の機動兵器を保有しているようです」
ヨン「また、ラブルパイラには空間転移装置が 備え付けられています」
ヨン「もっとも、それは非常に大掛かりな物で、 量産は不可能だとか」
メキボス「つまり、空間転移技術に関しては 俺達ゾヴォークより数段下ってことだな」
ヨン「はい」
メキボス「続けてくれ」
ヨン「内戦が終結した後、ガディソード星は 正体不明の機動兵器群に突如襲撃されたそうです」
ヨン「ラブルパイラの人々は、 別勢力によって開発され、事故で暴走した新型兵器や 異星人の侵略兵器などと推測しているようですが……」
ヨン「彼らはガディソード星全体を瞬く間に混乱させ、 その結果、多くの人々の命や都市が失われました」
ヨン「そんな中、マルム・クイスード氏が搭乗していた 宇宙船は敵集団に襲われ、臨戦態勢のラブルパイラへ 避難せざるを得なかったそうです。そして……」
ヨン「ラブルパイラは首都を防衛すべく、 空間転移を敢行したのですが……装置の暴走で 太陽系へ跳ばされてしまったそうです」
メキボス「……妙な話だな」
ヨン「ええ。ゾヴォークでも認知されていない、 どこにあるかわからないほど遠くの星系から、 たった1回の転移で太陽系へ来るなんて……」
ヨン「彼らの空間転移装置が特殊なのか、 あるいは何らかの力が作用したのか……。 ともかく、普通ではあり得ないことです」
ギリアム「……並行世界からの来訪者という 可能性はあるがな」
ヨン「………」
メキボス「ガディソードが地球との和平締結を望む 本当の理由はわかったか?」
ヨン「ラブルパイラの推進装置と空間転移装置は 著しく破損しており、備蓄してあった物資だけで 修理することは不可能……」
ヨン「そのため、今は太陽への落下軌道にあります」
メキボス「先端の大砲を撃った時の反動で 軌道を変えられそうだが…… 出来ねえ理由があるのか」
メキボス「ま、太陽への落下を免れたとしても、 それで全ての問題が片付くわけじゃねえが」
ヨン「ガディソード側の要求は三つ……太陽系内の滞在許可、 地球連邦政府への難民申請、そしてラブルパイラの 推進装置や空間転移装置の修理に必要な物資です」
メキボス「さて、地球政府がどういう判断を下すか……。 いっそのこと、俺達ゾヴォークで引き受けた方が いいかも知れねえな」
ギリアム「それは内政干渉になるのではないか?」
メキボス「まあな」
ギリアム(……連邦政府の中にも、今回の厄介事を ゾヴォークに押し付けたがる者はいるだろうが……)
ヨン「マスター……実は、ラブルパイラで ゴライクンルと思われる機動部隊に襲撃されたのです」
メキボス「何だと……」
ギリアム「彼らもガディソードの存在に気づいていたのか」
メキボス「逆にガディソード側は?  ゴライクンルのことを知っていたのか?」
ヨン「その様子は見受けられませんでしたが、 疑いの余地はあります」
メキボス「……こいつは面倒事になりそうだな。 諸々まとめて本国へ確認するぜ」
ギリアム「頼む」
メキボス「ヨン、お前はそのまま鋼龍戦隊と行動を共にしろ。 何かあったら、知らせてくれ」
ヨン「了解です、マスター」
ギリアム「メキボス、統合参謀本部から依頼されている ハガネの空間転移装置の件だが……」
メキボス「ああ……今回のゴライクンルの件で 抗議を受ける前に用意せざるを得ねえだろうな。 俺からも上にプッシュしておく」

[伊豆基地 内部(通路)]

(扉が開く)
サイカ「ギリアム少佐」
ギリアム「少尉……外で待っていたのか」
サイカ「ええ、ご報告したいことがありまして」
ヨン「では、少佐……私は先に行きます」
ギリアム「ああ」
(足音・ヨンが立ち去る)
ギリアム「それで、報告とは?」
サイカ「眠り姫が意識を取り戻しました。 今の所、体調に異常はないそうです」
ギリアム「そうか……事情聴取は可能か?  もちろん、言葉が通じればの話だが」
サイカ「……眠り姫が用いている言語は、 地球の物ではないようです」
ギリアム「やはりな。では、彼女の所へ行き、監視を。 そして、出来得る限りのコミュニケーションを取り、 我々が敵ではないという意思表示を試みてくれ」
サイカ「身振り手振りで、ですか?」
ギリアム「方法は任せる。 会議が全て終わり次第、私も行く」
サイカ「了解です」

[ハガネ 格納庫(グランティードの前)]

エリック「……あくまで地球での概念じゃがの、 オルゴンとは自然界に存在するエネルギーでの、 道教で定義される『気』みたいなものでの」
トーヤ「気……」
エリック「教導隊のヒューゴやアクアが乗っておる TEアブゾーバー……あれの動力として用いられる ターミナス・エナジーと似てるでの」
テニア「何なの、それ?」
エリック「自然界の4つの力……重力、電磁力、 強い相互作用、弱い相互作用の他にの、 その存在が予言されていたものでの」
テニア「う~、よくわかんない」
ロバート「……エクストラクターというからには、 自然界に存在するオルゴンを抽出するんだろうな」
カティア「それって…… エネルギーが供給され続けるということですか?」
ロバート「仮説が正しければの話だけどね」
メルア「凄いんですね、この子」
ロバート「っていうか、 サイトロン・コントロール・システムで 情報をもらっているんじゃなかったのか?」
カティア「使い方がわかっているだけで、 どういう原理なのかは……」
エリック「さて、そろそろ時間での。 4人でコバヤシ博士の検査を受けるでの」
トーヤ「……わかりました」

[ハガネ 戦隊司令公室]

ダニエル「……彼らの標的である可能性が高いトーヤ・シウン、 カティア・グリニャール、メルア・メルナ・メイア、 フェステニア・ミューズを軍属とし……」
ダニエル「鋼龍戦隊に同行させよ。 これはギャスパル・ギラン元帥閣下の命令である」
マイルズ(元帥閣下が、それほどまでに あの子供達を重視しておられるとは……)
ダニエル「トーヤ・シウンらが受け入れぬようであれば、 法的処置など然るべき手を打つ」
マイルズ「その必要はありません。 トーヤ以下4名は、自らの意志で我が戦隊への 協力を申し出ております」
ダニエル「では、彼らのグランティードへの搭乗、 戦闘も許可する。出撃に関しては一任するが、 敵に奪取されぬようにな」
マイルズ「つまり、元帥閣下は我が戦隊が囮となって アンノウン勢力の目を引きつけ、 逐次撃退せよと仰っているのですね」
ダニエル「それだけではない。 彼らの正体や目的を探り出すことも 期待されておられる」
マイルズ「はっ」
ダニエル「くれぐれもグランティードとベルゼルートを 失わぬように。また、カルヴィナ・クーランジュ 少尉を含む関係者5名の監視を怠るな」
マイルズ「了解しました」
ダニエル「では、頼むぞ。 君と鋼龍戦隊ならば、可能なはずだ」
(通信が切れる)
マイルズ(可能なはず、か。言われるまでもない。 あの厄介者の集団を引き受けた時から、 覚悟は出来ているのだ……)
マイルズ(たとえ囮役であろうともな)
(通信、モニターオン)
アヅキ「司令、レイカー少将とのブリーフィングの時間です。 基地第4会議室へおいで下さい」
マイルズ「ああ、すぐに行く」

[伊豆基地 内部(ブリーフィング・ルーム)]

レフィーナ「……以上が、ガディソードとの 和平交渉の顛末です」
テツヤ(そんなことが……)
ギント(レフィーナ支隊が 新たな異星人と接触していたとはな……)
マイルズ「なお、マルム・クイスード頭領長から ある人物の捜索依頼が出されている」
マイルズ「名前はフェアリ・クリビア。 頭領長の護衛官なのだが、戦闘機を奪って脱走し、 地球へ潜入したそうだ」
ギリアム(戦闘機……?)
マイルズ「脱走した理由は不明。 もっとも、彼女がスパイか破壊工作員なら、 堂々と我々に捜査を依頼しないだろうが……」
マイルズ「これがパーソナル・データだ」
(モニターオン)
レイカー「!」
サカエ「こ、これは!」
ギリアム(眠り姫……!)
レイカー「むう……他人のそら似には見えんな」
マイルズ「! 司令、彼女をご存じなのですか……!?」
レイカー「……この件は極秘にしてもらいたい。 実は、提示されたフェアリ・クリビアと 酷似する女性が、当基地内で保護されている」
マイルズ「なっ……!!」
レイカー「また、彼女が搭乗していた機体…… コードネーム、ドリフト・ウィングも保管している」
マイルズ「で、では、フェアリ・クリビアの尋問を……!」
レイカー「ギリアム少佐、彼女が目覚めたという報告は 受けているが、事情聴取は可能か?」
ギリアム「やってみましょう。 マイルズ准将、翻訳機は使えますか?」
マイルズ「ああ……ヨン・ジェバナ少尉から提供された ゾヴォークの高性能翻訳機とガディソードの 翻訳プロトコルによって、会話は容易になった」
ギリアム「では、早速」

[伊豆基地 中庭]

サイカ「さあ、こっちよ、眠り姫さん」
???(フェアリ)「イー・ゾー・アウ・アー…… ロール・ドーグ……」
サイカ「喜んでる……みたいね」
???(フェアリ)「イー・ドノ・バメン・ミーパス…… ワーヒー・アーズ……」
サイカ「今度は何か困ってる?」
(足音)
ギリアム「ここにいたのか、少尉」
サイカ「あ、少佐……」
ギリアム「まさか、病室の外に連れ出していたとはな」
サイカ「先程の少佐のご命令を実践しようと思いまして……」
ギリアム「方法は任せると言ったが、大胆過ぎるな」
サイカ「も、申し訳ありません」
ギリアム「ところで、彼女の服は?」
サイカモガミ重工の関係者という設定で、私が用意しました。 周囲に溶け込みつつも、事情を知る者には 識別し易いということで」
サイカ「ジンプウ・カワニシ氏には伝達済みですが…… 軍服の方がよろしかったでしょうか?」
ギリアム「いや……それより、彼女を病室へ戻すぞ」
サイカ「了解です」
???(フェアリ)「………」
(足音)
アキミ「ギリアム少佐……その女の人は?」
アケミ「モガミの服を着てるけど……誰なんですか?」
???(フェアリ)「! フィーオ……ガグリー……」
アキミ「え?」
ギリアム「すまんが、先を急いでいるのでな」
???(フェアリ)「フィーオ……」
(足音・ギリアム、フェアリ、サイカが立ち去る)
アキミ「俺を見て、何て言ったんだ?」
アケミ「さあ……あの人、いったい誰なのかしら」
アキミ「俺は見たことないぜ」
アケミ「なら、ジンプウさんに聞いてみるわ」

[伊豆基地 特別病室]

サイカ「少佐、翻訳機を取り付けました」
ギリアム「よし……起動させよう」
フェアリ「………」
ギリアム「私の名前はギリアム・イェーガー。 君は……フェアリ・クリビアか?」
フェアリ「……私は……そう、私の名は……フェアリ……」
サイカ(確定ね……)
ギリアム「君はガディソードのラブルパイラから来た。 間違いないな?」
フェアリ「わ、わからない……」
ギリアム「!」
フェアリ「わからない……思い出せない…… わ、私はいったい……?」
サイカ「えっ……」
ギリアム(もしや……)
ギリアム「先程の場所から立ち去る時、 君は一人の少年を見て、言葉を発した。 あれはどういう意味だ?」
フェアリ「……フィーオ……生きていた……」
ギリアム「フィーオとは何だ? 人の名前か?」
フェアリ「誰だか……わからない……」
ギリアム(人名であるのは確かか?)
ギリアム「では、生きていたとはどういう意味だ?」
フェアリ「わからない…… 何故、あんなことを言ったのか……」
ギリアム(……記憶喪失か)

[伊豆基地 格納庫]

アケミ「ねえ、ジンプウさん。 さっき、モガミの服を着た女の人に 会ったんだけど、誰なの?」
ジンプウ「モガミの服……?」
アキミ「ショートカットの美人さんだったぜ」
ジンプウ(あっ、眠り姫のことか?  この2人と会ったのかよ……!?)
(アラート)
アキミ「!?」

[伊豆基地 司令室]

オペレーターS-AWACSより報告!  水鳥島に所属不明の機動兵器群が転移出現!」
サカエ「何故、この伊豆基地ではなく、 演習場しかない島へ……?」
レイカー「おそらく、陽動だろう。 鋼龍戦隊を二分して対応する。ハガネは伊豆で待機。 ヒリュウ改を水鳥島へ向かわせてくれたまえ」
レイカー「なお、グランティード、ベルゼルート、 ジェアン・シュヴァリアーは水鳥島へ。 それで敵の出方を窺う」
サカエ「この基地にあるドリフト・ウィングは ハガネの機動部隊が防衛するというわけですな」
レイカー「そう、敵の狙いを分散させるのだ」

[伊豆基地 格納庫]

ジンプウ「だから、テストパイロットとしての仕事は 終わったって言ってるだろうが!」
アキミ「けど、ソウルセイバーの評価試験は 先送りになったんだろ!」
ジンプウ「そういう問題じゃねえ!  戦場で戦う必要はねえって言ってんだ!」
アキミ「ジンプウさん、俺…… ソウルセイバーで戦うことが目的じゃない……!」
ジンプウ「地球を護るってんだろ。 それはプロの軍人に任せりゃいい」
アキミ「トーヤやカティア、テニア、メルアも戦ってる」
アケミ「………」
ジンプウ「あの4人には事情があって、 グランティードを動かせるからよ」
アキミ「俺にだって、ソウルセイバーがある。 それで今、出来ることを……やれることをやりたい」
アケミ「……そうね」
ジンプウ「アケミ、お前さんまで……」
アケミ「この間まで、私はテストパイロットとして 裏方に徹しようと思ってた」
アケミ「でも、襲ってくる敵がいて…… 護りたいもの、護らなきゃならないものがあって……」
ジンプウ「綺麗事だけじゃ済まねえぜ、 戦場に出るってこたぁ……」
アケミ「うん、怖いよ。自分だけじゃなく、 誰かの運命を変えてしまうことだって あるだろうし……それは覚悟してる」
アケミ「だけど、抗う力を持っていない人達が 酷い目に遭うのは……」
アキミ「頼む、ジンプウさん」
ジンプウ「………」
ジンプウ(やっぱり、これが罰か……)
アキミ「ジンプウさん……!」
ジンプウ「……わかった。わかったが、条件が一つある」
アキミ「何だ?」
ジンプウ「必ず2人で帰ってこい。いいな?」
アキミ「ああ! 行くぜ、アケミ!」
アケミ「ええ!」

REPORT
強化パーツ『スクリューモジュール』を入手しました。

REPORT
換装武器『G・レールガン』を入手しました。
換装武器『スピリットテイカー』を入手しました。
換装武器『スパイダーネット』を入手しました。

REPORT
換装武器『チャフグレネード』を入手しました。


第10話
ラース・エイレム

〔戦域:水鳥島〕

(敵機は北側に展開済み。ラフトクランズ・ファウネアに警告シグナル)
フー=ルー「……来ましたわね。各機、迎撃用意」
(南端にヒリュウ改が出現し、ジェアン・シュヴァリアー、グランティード、ベルゼルートが出撃。出撃選択)

出撃状況は

ソウルセイバーがFF換装で出撃し、グランティードとベルゼルートのサブパイロットは
 グランティードがカティア、ベルゼルートが テニア
メルア

 グランティードがテニア、ベルゼルートが カティア
メルア

 グランティードがメルア、ベルゼルートが カティア
テニア

ソウルセイバーがGG換装で出撃し、グランティードとベルゼルートのサブパイロットは
 グランティードがカティア、ベルゼルートが テニア
メルア

 グランティードがテニア、ベルゼルートが カティア
メルア

 グランティードがメルア、ベルゼルートが カティア
テニア


back index next