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共鳴 地上ルート ~ 第9話 ~

《日本 伊豆付近 上空(輸送機)》

[輸送機 内部(コックピット)]

連邦軍兵「ドクトル・クリフ、伊豆から着陸許可が出ました」
クリフォード「ようやくか。戦闘は終わったのかい?」
連邦軍兵「そうですが、予断を許さぬ情況です」
クリフォード「やれやれ……ファブラ・フォレースの件と言い、 クロスゲート・バーストと言い、 束の間の平穏だったな」
リム「……ねえ、この間みたいな戦争になるのかな」
ジョッシュ「まだわからないさ」
グラキエース「もしそうなったら、私は戦う」
ジョッシュ「いや、それは俺だけでいい」
リム「アニキ……」
グラキエース「何故だ?」
ジョッシュ「違う生き方をしてみたいと……そう言ったろう」
グラキエース「その通りだが、お前が戦うのであれば……」
ジョッシュ「使用許可が下りたのは、俺のマシンだけだ。 お前達が戦う必要はない」
リムシュンパティアのことなら、 オフにすればいいでしょ」
ジョッシュ「そういう問題じゃない。 お前に万一のことがあったら、クリスはどうなる?  あいつは、どこへ戻ればいい?」
リム「う……」
ジョッシュ(それに、ラキには残された時間が……)
リム「でも、リスクはアニキだって同じじゃない」
ジョッシュ「俺だって、こうも早くジェアン・シュヴァリアーの 封印が解かれることになるとは思ってなかった」
ジョッシュ「だけど、ファブラ・フォレースが あんなことになって……」
ジョッシュ「元凶のクロスゲートが俺達の頭上で ああいうことをしでかせば、 連邦軍だって考えを変えるさ」
リム「だけど、あたしとラキは……」
ジョッシュ「もし、軍が俺達を危険視していたら、 こうやって一緒にいられない。封印戦争の後、 南極へ戻ることも出来なかったはずだ」
クリフォード「ジョッシュの言う通りだな。お前達がいなければ、 ルイーナペルフェクティオは倒せなかった。 連邦軍もそのことを理解している」
リム「うん……」
クリフォード「それに、鋼龍戦隊がいれば、 もうお前達が戦う必要はないさ」
グラキエース「………」
連邦軍兵「着陸態勢に入ります。 着席して、シートベルトを装着して下さい」
クリフォード「ああ、わかった」

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[伊豆基地 格納庫]

カルヴィナ「……あたしの機体は、すぐに使えるようになるの?」
ロバート「強制排除された両脚は、さほど壊れていない。 再接続して、サーボ・モーターとシンクロナイザーの 調整にどれだけの時間が掛かるか、だな」
カルヴィナ「じゃあ、今すぐ作業をお願いするわ」
ロバート「ちょっと待ってくれ。 他に急ぎでやらなきゃならない仕事があるんだ」
カルヴィナ「さっきの連中がまた現れるかも知れない。 その時に出られる機体は、1機でも多い方が いいでしょう?」
ロバート「それはそうだが、今は人手が足りなくて……」
(足音)
ジンプウ「脚の接続ぐらいなら、俺がやってやるよ」
カルヴィナ「あんたは確か、モガミ重工の……」
ジンプウ「ジンプウ・カワニシだ。 マイティウォーカーの開発と整備を担当してる」
カルヴィナ「ベルゼルートも扱えるというの?」
ジンプウ「人型のマシンの根本ってのは、だいたい同じだ。 人間を模倣した物だからな。他社の製品でも ノウハウはある程度適用する」
カルヴィナ「エンジニアとして、 アシュアリー・クロイツェルのマシンに 興味があるってこと?」
ジンプウ「それだけじゃねえ。 ベルゼルートには、あの3人の嬢ちゃんの内、 誰か1人が乗るんだろ」
カルヴィナ「そうよ」
ジンプウ「だったら、ちゃんと戻ってこられるように 機体をメンテしておいてやりてえ」
カルヴィナ「それ、遠回しにあたしを非難してる?」
ジンプウ「何でそうなる?」
カルヴィナ「テニア達が不憫だって言いたいんでしょう。 けど、あんただって、あの2人がソウルセイバーで 戦うことを認めてるじゃない」
ジンプウ「諸手を挙げて賛成してるわけじゃねえ。 今でもテストパイロット以上のことは して欲しくねえと思ってるよ」
カルヴィナ「だったら、兵器なんて開発しなければいいじゃない」
ジンプウ「地球を攻めてくる連中がいなけりゃな。 だが、アインスト修羅ルイーナみてえな連中は こっちの都合なんざ知ったこっちゃねえ」
ジンプウ「今の世の中、力がなけりゃ、座して死を待つことに なりかねん。そこで俺と社長は、自分達に出来ることを やろうと決めた。地球人類が生き残るためにな」
カルヴィナ「それこそ方便よ」
ジンプウ「そうだな。商売にしてるのは事実だ。 でなきゃ、マイティウォーカーは作れなかった。 だから、罰が当たったんだ」
カルヴィナ「罰……?」
ジンプウ「形はどうあれ、自分の子供も同然の2人を 戦場へ送り出すことになっちまった」
カルヴィナ「……言っておくけど、 あたしは好きこのんでテニアやメルアを ベルゼルートに乗せてるわけじゃない」
カルヴィナ「あたしの仇との接点、手掛かりの あれが、あの子達なしでは動かないからよ。 子供を自分の都合で利用しているのは百も承知……」
カルヴィナ「でも、奴らを討つのに手段は選んじゃいられない」
ジンプウ「あんたの事情に口を挟む気はねえ。 ただ、俺に出来ることをやっておきてえだけだ」
ジンプウ「ソウルセイバーだけじゃねえ、 ベルゼルートやグランティードも 無事に戻ってこられるようにな」
カルヴィナ「……修理を任せるわ。 いいでしょう、オオミヤ博士?」
ロバート「ああ」
ジンプウ「じゃあ、早速取り掛かるぜ」

[伊豆基地 地下格納庫]

ギリアム「遙々と南極からご苦労だったな、ジョッシュ」
ジョッシュ「いえ、俺の機体は特殊ですから。 直接取りに来れば、結果的に手間や時間が 掛からずに済みますし」
エリック「エール・シュヴァリアーとジェアン・エールは シールを解き、ドッキングさせてドックの中に 置いてあるでの」
エリック「封印されて時間が経ってないからの、 通常のチェックで問題なく動くと思うがの」
ジョッシュ「わかりました。ありがとうございます」
ギリアム「申し訳ないが、君達が乗ってきた輸送機は、 すぐに別任務へ回されることになった。 非常時なのでな」
リム「ということは、 ジェアン・シュヴァリアーで南極まで……?」
クリフォードジェアン・エールにもコックピットはあるが、 それでも四人乗りとなると、厳しいな」
リム「そうね……アニキとラキはいいかも知れないけど」
サイカ「ご心配なく。私の方からL&Eコーポレーションに 依頼を出しておきました。エクサランス・レスキューが 南極まで同行してくれます」
クリフォード「それは助かる。あの機体にはキャビンがあるからね」
サイカ「彼らは明日1030、伊豆に到着予定です」
クリフォード「となると、時間があるな」
ギリアム「ドクトル・クリフ、 ファブラ・フォレースの件について、 後で直接ヒアリングさせてもらいたい」
クリフォード「わかりました」
グラキエース「……ジョッシュ、あそこにある機体は何だ?」
ジョッシュ「いや、知らないな。 特機と……パーソナルトルーパーか?」
エリック「小さい方はベルゼルート…… アシュアリー・クロイツェルという メーカーの人型機動兵器での」
エリック「大きい方はグランティード……出自は不明での。 地球の機体ではない疑いがあるでの」
クリフォード「ほう……」
ジョッシュ「異星人のマシンだとでも?」
エリック「グランティードの機体構造や関節駆動方法なんかは、 地球の人型機動兵器と似ておるが……」
エリック「エンジンやマン・マシン・インターフェースは 未知のテクノロジーが用いられておって、 不明な点が多いでの」
エリック「さらに、マーキング類やコックピット内部に 表示される言語は、地球の物ではないようでの」
エリック「ほんで、ベルゼルートはグランティードを 参考にして地球で作られた物だと思うでの」
クリフォード「未知のエンジンやインターフェースを 組み込んだ人型兵器……エール・シュヴァリアーや ブランシュネージュと概念が似ていますね」
エリック「いや、それどころの話じゃないでの」
ジョッシュ「どういうことです?」
エリック「時間があるのなら、 後でお主らにグランティードを見て欲しいでの」
ジョッシュ「ええ……」
リム「でも、そんな謎めいたマシンが どうしてここに……」
ギリアム「グランティードの前にいる少年…… トーヤ・シウンが父親から委ねられ、 その後、この伊豆基地に持ち込まれた」
ジョッシュ「彼が……? 民間人ですよね?」
ギリアム「ああ、高校生だよ」
トーヤ(? あの人達は……)
ジョッシュ「彼の父親は? 何者なんです?」
ギリアム「連邦政府の戸籍を持つ地球人……セルドア・シウン。 アシュアリー・クロイツェルのスタッフだ」
ギリアム「しかし、出自不明のグランティードに 乗っていたことから、それが本当かどうか疑わしい」
ギリアム「もっとも、調べようとしても、 月のアシュアリー・クロイツェルは 所属不明の敵に襲撃されて壊滅……」
ギリアム「その後、セルドアも死亡した。 息子のトーヤはグランティードを託されたものの、 諸々の事情については、何も知らないも同然だ」
ジョッシュ「彼は……自分の意志でグランティードに?」
ギリアム「ああ、戦わざるを得ない情況でね。 それについては我々にも一因があるのだが……」
ジョッシュ(トーヤ・シウン、か。 似ているな、境遇が……俺と)
グラキエース「………」
リム「どうしたの、ラキ?  さっきからグランティードを見てるよね。 何か気になるの?」
グラキエース「あのマシンは……」
(アラート)
リム「!!」
ギリアム「敵襲か!?」


第9話
共鳴

〔戦域:伊豆基地〕

オペレーター「上空の重力震反応、強まる!  予想転移出撃時間まで、40秒!」
レイカー「反応は一つのままか」
オペレーター「はっ!」
サカエ「こうも間髪入れず襲撃してくるとは……!  こちらは対空兵装が使えんというのに」
レイカー「それを狙ってのことならば、 敵戦力は想定以上に厚そうだな」
サカエ「敵の標的は、またグランティードでしょうか?」
レイカー(それならば、凌ぐ方法はあるが…… 敵の目的がこの基地の殲滅であったなら、 防ぐ手はないに等しい)
レイカー「鋼龍戦隊は、あとどれぐらいで戻る?」
オペレーター「およそ5分後です!」
レイカー「出撃可能な機体は全て出せ。 鋼龍戦隊が到着するまで、何としても凌ぐのだ」
オペレーター「目標の転移出現まで、あと3秒! 2! 1!」
(基地の東端の海上にゼラニオが転移出現)
オペレーター「目標は、ゼラニオ級戦闘母艦です!」
ビルゴー「フッ、基地の守りが手薄だからこそ、 こういう強引な手が使える。機動部隊を出せ」
親衛隊兵「はっ! 機動部隊を出撃させます!」
(敵機が出現)
レイカー(またも最初に決定打を出してこなかったか)
オペレーター「敵は全てゾヴォークの機体です!」
サカエ「では、前回の連中と違うのか……!?」
(ゲシュペンスト・タイプRV、ソウルセイバー、ベルゼルート、グランティード、 量産型ヒュッケバインMk-IIが3機出撃)

グランティードとベルゼルートのサブパイロットは

グランティードがカティア、ベルゼルートが テニア
メルア

グランティードがテニア、ベルゼルートが カティア
メルア

グランティードがメルア、ベルゼルートが カティア
テニア


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