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ラース・エイレム ~ 第10話 ~

〈ラフトクランズのHP40000以下〉

ソ=デス「くうっ、パワーが上がらない!  ラースエイレムが仇になるなんて!」
ソ=デス「こ、この屈辱、忘れないぞ!」
(ラフトクランズが撤退。北東端にクロガネが出現)
レーツェル「……敵は退いたか」
クルト「追撃しますか?」
レーツェル「いや。あの機体を保護した後、フィオナ達から 鋼龍戦隊に連絡を入れてもらってくれ」
クルト「了解しました」

[クロガネ ブリッジ]

クルト「レーツェル様、ヒリュウ改が接近中です」
レーツェル「では、例の機体とエクサランス・レスキューを この場に残し、我々は離脱する」
クルト「先程出現した巨大な半球体について 問い合わせなくていいのですか?」
レーツェル「ここでは避ける。 鋼龍戦隊の新司令は相当な堅物だ…… 我らの存在を快く思っていまい」
クルト「迂闊に接触すれば、レフィーナ中佐が 咎められることになると?」
レーツェル「ああ。 半球体に関しては、何かわかり次第共有するよう 私からギリアムへ申し入れておく」
クルト「了解です。では、本艦は現海域より離脱します」

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[伊豆基地 内部(ブリーフィング・ルーム)]

カイ「お前達がグランティードを 発見してくれたのは幸いだった」
フィオナ「情報部のサイカ・シナガワ少尉から 南極での仕事の依頼を受けていて……」
フィオナ「クリフォード・ガイギャクス博士達と 伊豆基地で合流してから、現地へ行く 予定だったんです」
ラウル「俺達は日本の近くまで クロガネに便乗させてもらっていて……」
ラウル「伊豆基地へ向かうために発艦した直後、 水鳥島方面で謎の巨大な半球体を確認し…… 現場へ向かう途中でグランティードを見つけました」
カイ「そうか……」
アラド「少佐、巨大な半球体って?」
カイ「それは後で説明する」
イルム「トーヤ、メルア。 あの時、グランティードに何が起きたんだ?」
トーヤ「それが、俺達にもよくわからなくて……。 目の前が真っ白になった後、気を失ったみたいで……」
メルア「気づいたら、別の場所にいました……」
イルム「俺達の方は白い光と共に グランティードとソーンが消えたように見えた」
ゼオラ「そう、まるで時間が飛んだみたいで……」
タスク「俺は時間を止められたような気がしたなあ」
アラド「あ、それ、わかるッス」
ラッセル「でも、現実的にそんなことが可能なんだろうか……」
ラージ「不可能ですよ。仮に時間を止められたとしても、 その状態ではあらゆる物理法則が適用しません。 また、全ての運動や仕事が停止します」
ラージ「つまり、時間が静止した世界で ロボットが移動することなど あり得ないということです」
イルム「じゃあ、時流エンジンに関わっていた お前さんなら、あの現象をどう説明する?」
ラージ「………」
(成功シグナル)
ラトゥーニ「カイ少佐、許可が出ました」
カイ「では、モニターに出して、皆に説明を」
ラトゥーニ「はい」
(モニターオン)
タスク「何だ、ありゃ……!?」
ゼオラ「マーブル柄の半球体……」
ミズホ「あ、あれは……」
ラウル「ああ、俺達が見た奴だ」
ラトゥーニ「これは水鳥島で強い発光現象と エネルギー反応があった後、出現した物です」
ラトゥーニ「見ての通り、表面は不透明で 外から中の様子は窺えません」
カイ「……アラド、俺達はあの中にいたのだ」
アラド「えっ!?」
ラトゥーニ「少佐の言う通りよ。 実際には球体で、直径は約1.5キロメートル。 出現していた時間は約3分」
アラド「3分? でも、おれ達は……」
ラッセル「中にいたのに気づいてなかった……」
ゼオラ「もしかして、あの光が……。 私達にとっては、一瞬の出来事だった……?」
イルム「あの球体……いや、結界か。 あれはソーンが展開したんだな?」
ラトゥーニ「そうだと思います」
トーヤ「………」
ラトゥーニ「なお、球体は南西方面へ移動した後、 一気に収縮し、消えました」
ラトゥーニ「もしかしたら、小さくなった状態で ある程度は移動していたかも知れませんが……」
フィオナ「南西方面……その先にあるのは……」
ラウル「グランティードとアンノウンがいた島か」
ラージ「イルム中尉、先程のご質問に答えましょう。 これはあくまで僕の推測ですが……」
ラージ「結界内部に存在する物体…… つまり、あなた達を取り巻く時粒子が、限りなく 停滞状態に近づいていたのではないでしょうか」
イルム「あの中で……俺達の時間の流れが 異常に遅くなっていたと?」
ラージ「ええ。そして、その中でソーンだけは 通常と同じ速度か、それ以上で動けるのでしょう」
カイ「何を用いて、そんなことが出来ると思う?」
ラージ「……すみませんが、まだ何とも言えません」
イルム「しかし……限定空間内とは言え、 時間を止めるに等しい攻撃か。 こいつは厄介って言葉じゃ済まないな」
タスク「そうッスよ。 下手すりゃ初手で、しかも一瞬で勝負が決まっちまう」
ラッセル「ソーンが転移出現した直後にあれを使い、 大型爆弾を置かれたりしたら……」
アラド「そ、そりゃ、一溜まりもねえッス!」
ラッセル「他にも色々なケースが……例えば……」
タスク「いや、言わなくていいって」
カイ「……何にせよ、早急に対策を考えなければならんな」
ラージ「………」
ミズホ(ラージさん……)

[伊豆基地 格納庫]

アケミ「そう言えば、ジンプウさん」
ジンプウ「何だよ?」
アケミ「出撃のどさくさで有耶無耶になってたけど、 モガミの服を着たあの女の人は誰なの?」
ジンプウ(やっぱり、覚えてやがったか……)
アキミ「もしかして、親父の新しい秘書さん?」
ジンプウ「違う。ソウルセイバーの専属整備員見習いだ。 もっとも、先週、モガミ重工へ入ったばかりでな。 名前はフェアリ・ファイアフライだ」
アキミ「へ~え」
アケミ「ソウルセイバーの専属スタッフなら、 どうして入社する前とか直後に 教えてくれなかったの?」
ジンプウ「まあ、色々あってよ。 それに、フェアリはこないだ基地が襲撃された時、 頭を打っちまって……記憶を失っちまったんだ」
アケミ「えっ……」
ジンプウ「だから、今は基地内の病院に入院してる。 面会は許可されてねえから、興味本位で 会いに行ったりすんなよ」
アキミ「わかったぜ」
ジンプウ(ギリアム少佐と口裏を合わせてあるからな、 これで何とか……)
アケミ(あの時、一緒にいたのは看護師さんじゃなく、 ギリアム少佐とサイカ少尉よね……)
アケミ(どうも引っ掛かるなあ……)

[伊豆基地 内部(観葉植物のある個室)]

(扉が開く)
ラウル「失礼します。 L&Eコーポレーション、全員揃いました」
ギリアム「ああ、来てくれたか」
ラージ「僕らに話とは、ソーン絡みのこと…… 例の手の対策についてですか?」
ギリアム「そうだ。カイ少佐から、君が何かアイデアを 持っているようだと聞いてな」
ラージ(鋭いですね……)
ギリアム「トーヤの話から判断すれば、 ソーンはあの手を連続して使えないようだ」
ラージ「そうですね……連続使用が可能であれば、 最悪の結果が出ていたでしょう」
ギリアム「再使用には一定の間隔か、エネルギー・チャージが 必要ではないかと推測している」
ミズホ「同感ですが、もう1機のソーンが どうしてあの手を使わなかったのか…… そのことが気になっています」
ラウル(ソーン2機がそれこそ時間差で あれを使用していたら、鋼龍戦隊は……)
ミズホ「ただ単に、機体の仕様が違っているだけかも 知れないんですけど……」
ギリアム「緑色のソーンは今回を含めて二度交戦しているが、 あの手を使っていない」
ギリアム「以前、伊豆に現れたソーンも同様だ。 あれを使用できる機体が限られているのかも 知れないが……」
ギリアム「実際には、複雑な条件が 必要なのではないかと考えている」
ラージ「グランティードはどうなんです?  それらしい装置はあるんですか?」
ギリアム「あの機体は、我々の下へ来る前に いくつかの部分を損傷しており……」
ギリアム「その中に該当する物があるかも知れんが、 トーヤがマン・マシン・インターフェイスを通して 探ってみても、わからないそうだ」
ギリアム「故に、オペレーション・システムやデータごと 破損してしまっている可能性がある」
ラージ「そうですか……」
ギリアム「ともかく、早急に対策を立てなければならない。 彼らが我々の殲滅より、グランティードの奪還を 優先している間にな」
フィオナ(その点も疑問よね……)
ギリアム「そこで、時流エンジンを扱っていた君達に 頼みたいことがある」
ラージ(やはり、来ましたか……)
ギリアム「君達があれを破棄した理由は知っている。 だが、敵はその気になれば、我々を一瞬で倒せる。 実際の情況は、圧倒的にこちらが不利なのだ」
ギリアム「私も対策を思案中だが、少しでも可能性がある手は 実行すべきだと考えている」
ラウル「………」
ラウル「みんな……俺は、少佐の話を受けようと思ってる。 鋼龍戦隊の仲間達のために……そして、 俺達が生きていくと決めたこの世界を護るために」
フィオナ「異議はないわ。ソーンのあの攻撃は危険過ぎる…… 気づいたら、みんな死んでいたなんて御免だわ」
デスピニス「私はラウルさんの決定に従います」
ラージ「毒を以て毒を制す…… 僕達にしか出来ないことかも知れませんからね」
ラウル「ミズホ、君は?」
ミズホ「ラウルさんが前に言ってくれた言葉、 エクサランスの役目……それが答えです」
ラウル「戦うことで誰かを守れるなら、か」
ギリアム「では、ラウル……」
ラウル「南極の件はキャンセルし…… 俺達L&Eコーポレーションは、 少佐からの新しい依頼を承ります」


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