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迫り来る惨事 ~ 第10話 ~

〈ヤルダバオトのHP25%以下〉

フォルカ「くうっ……!  奴らが強いのか、それとも俺の中の 迷いが拳を鈍らせているのか……!」
(ヤルダバオトが撤退)
???(ラリアー)「デスピニスから 聞いた以上に手強い……」
???(ラリアー)「一度戻って、 作戦を立て直した方がいいかも……」
(ヒュポクリシスが撤退)
アリオン「っと! これ以上、 ここにいたら貧乏クジを引きそうだぜ。 俺も帰らせてもらうか!」
(アガレスが撤退)
コウタ「チッ、逃がすかよ!!」
ロア「待て、コウタ!」
コウタ「あ!?」
ロア「俺達だけで彼らを追うのは危険だ」
コウタ「なに言ってやがる!  OGセンサーもあるんだ、今あいつらを 追わなくてどうする!?」
ロア「敵は、俺が思っている以上に 力を増強させているようだ」
ロア「だから、 俺達にはそれに対抗する力が…… 共に戦う仲間が必要だ」
コウタ「それって…… もしかして、あいつらのことか?」
ラウル「………」
ロア「ああ」
コウタ「……なあ、お前ってさ…… 孤高の戦士とか一匹狼じゃねえの?」
ロア「そういうわけじゃない。 現に俺はお前の力を必要としている」
ロア「それに…… かつて俺は多くの仲間達と共に旅をし、 様々な敵と戦っていた……」
コウタ「………」
ロア「コウタ、OGセンサーが 指し示すものはこの先にある」
ロア「それは、彼らがヘルゲートと呼ぶ 宇宙要塞かも知れん」
コウタ「何っ!?」
ロア「敵の手掛かりは…… そこにあるはずだ」
コウタ「………」
スレイ「……とりあえず、片付いたか」
レーツェル「行くのか、 スレイ・プレスティ?」
スレイ「私の居場所は ここにはないからな……」
レーツェル「そうだ。 君の帰るべき場所は……」
スレイ「言うな……!  ……全ては自分が招いたことだ……」
(カリオンが撤退)
レーツェル(星への翼、 未だ両翼が揃わず、か……)
レーツェル(フィリオ…… それでも君は微笑を浮かべ、 ただ時を待つのか……)
ゼンガー「………」
ゼンガー(あの異形の者達と 宇宙でも遭遇するとはな。 やはり、これは……)
ラウル「ゼンガー少佐、 俺達もヘルゲートへ急ぎましょう!」
ゼンガー「………」
ラウル「ODEシステムの マスターコアの在り処がわかった今、 後はそれを叩き潰すのみです!」
カーラ「でも、どうしてバルトールは あっちのオカルト軍団に攻撃を 仕掛けなかったの?」
ユウキ「それも気になるが、 俺がはっきりさせたいのは……」
ユウキ「あの異形の者達が クロガネを襲ってくる理由だ」
ラウル「………」
ユウキ「もはや偶然とは思えん。 俺は……」
レーツェル「ユウキ」
ユウキ「すみません。 これ以上は互いの関係のためにも 良くありません」
ユウキ「ラウル……話してもらうぞ。 お前の……いや、エクサランスの秘密を」
ラウル「え……」
ユウキ「連中は明らかに お前のエクサランスに 標的を定めている……」
ユウキ「そのマシンは…… いや、時流エンジンには 何が隠されている?」
ユウキ「返答次第では、 こちらにも考えがある」
ラウル「………」
ユウキ「答えろ、ラウル」
ラウル「そ、それは……」
ラージ「やめなさい、ラウル。 答える必要や義務はありませんよ」
ラウル「しかし……!」
ユウキ「ラウル。 俺達はお前の同胞ではないのか?」
ユウキ「共に死線をくぐりぬけてきた 俺達にも話せないことなのか?」
ラウル「……すまない……」
ユウキ「………」
ラウル「でも……聞いてくれ、ユウキ」
ラウル「確かに、時流エンジンには 秘密がある。そして、俺達にはそれを 守らなきゃならない使命がある」
ユウキ「………」
ラウル「だから、俺達は……」
ラージ「いけません、ラウル。 約束を忘れたのですか?」
ラウル「ラージ…… 俺は……俺はクロガネの仲間を信じたい。 これ以上隠し通すのは……」
ラージ「それがどういう結果を招くか、 あなたは知っているはずです」
ギリアム「……そこまでだ、二人共」
ラウル「ギリアム少佐……」
ユウキ「………」
ギリアム「ユウキ。 これからの戦いは君の疑念を晴らし……」
ギリアム「同時にラウル達には 選択を迫ることになる」
ラウル「俺達が選択……?」
ユウキ「どういうことです、少佐?」
ギリアム「答えはヘルゲートにある。 先を急ごう。彼らもそのつもりの ようだからな」
コウタ「………」
ロア「………」

《地球周辺宙域(移動中・ヒリュウ改)》

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ユン「ハガネとのランデブー、完了しました」
レフィーナ「では、 ハガネとの通信回線を開いて下さい」
ユン「了解」
(モニターオン)
テツヤ「お久しぶりです、レフィーナ艦長」
レフィーナ「ええ。 艦長職が板に付いてきたようですね、少佐」
テツヤ「いえ…… ダイテツ中佐の足下にも及びませんよ」
レフィーナ「経験を積んでいけば、大丈夫です。 私もそうでしたから……」
テツヤ「はっ。 ……それで、ヘルゲートの件ですが、 所在ポイントが判明したというのは本当ですか?」
レフィーナ「ええ。 それについての詳細を述べる前に……そちらに フィリオ・プレスティ少佐はいらっしゃいますか?」
テツヤ「はい。今、代わります」
フィリオ「お初にお目にかかります、 レフィーナ艦長。妹がお世話になったことを 感謝いたします」
レフィーナ「いえ……助けられたのはこちらです。 そして、何より彼女は貴重な情報を 私達にもたらしてくれました」
フィリオ「スレイは、その情報源について 何か語っていませんでしたか?」
レフィーナ「確か、雇い主と言っていました」
フィリオ「そうですか……」
レフィーナ「何か心当たりが?」
フィリオ「はい……。 おそらく、イスルギ重工のことでしょう」
ショーン「スカルヘッドの修復を行っていたのは、 イスルギとウォン重工業だと聞いておりますから……」
ショーン「その位置や仕様を知っているのは、 当然と言えば当然ですな」
レフィーナ「でも、そのイスルギが こちらに情報を渡したということは……」
フィリオ「今回の件は 彼らにとって望ましくない……というか、 不測の事態だったのかも知れません」
レフィーナ「それで後始末を私達に……」
ショーン「ついでに証拠が隠滅されれば、御の字と」
レフィーナ「え?」
ショーン「激しいですからな、我々の部下は。 ホワイトスターと同化したアインストを 破壊するぐらいに」
レフィーナ「はあ……」
ショーン「何にせよ、イスルギ側も 事態を収拾する姿勢を見せておきたいのでしょうな。 ……後々のために」
フィリオ「ええ……」
ショーン(とは言え、彼らにとって戦乱は金の卵を産む鶏。 知っていて、放っておいたという線もありますが……)
テツヤ「……イスルギが提供したヘルゲートの情報は、 信憑性が高いと判断してよろしいのですね?」
レフィーナ「偽りであっても、 今の所の手掛かりはそれだけです。 指定された宙域へ急ぎましょう」
テツヤ「了解です。それでは」
(通信切れる)
ユン「艦長…… お話中に統合参謀本部から指令が来ました」
レフィーナ「では、ファイルをこちらに」
ユン「はっ」
(通信)
レフィーナ「………」
レフィーナ「……副長、 本艦とハガネにヘルゲート攻略命令が出ました」
ショーン「我々だけで、ですか?」
レフィーナ「はい。他の艦隊は、 バルトール襲撃に備えて月やコロニーの 防衛に回るそうです」
ショーン「なるほど」
レフィーナ「私達の任務は、 ヴィルヘルム・V・ユルゲン博士をだ捕し、 ODEシステムを停止させることです」
レフィーナ「与えられた時間は12時間。 それを過ぎれば……ヘルゲートに対し、 宇宙軍が核攻撃を行うそうです」
ユン「えっ……!?  あそこには捕らわれた民間人がいるかも 知れないんですよ!?」
ショーン「上は最小限の犠牲で 事を収めるつもりですか」
ユン「そ、そんな!  それじゃ、ラミア少尉達は……!」
レフィーナ「………」
ショーン「時間が経てば経つほど、 バルトールはその能力を向上させます」
ショーン「つまり、 ラミア少尉以上の能力を持った敵が 群れを成して襲いかかってくるのです」
ショーン「並の部隊では太刀打ち出来ません。 それに、彼らが盾を使ってくる可能性もあります」
ユン「盾……!?」
レフィーナ「……捕らえた民間人を 生体コアにするということですね」
ショーン「ええ。 そうなったら、手が付けられませんぞ」
レフィーナ「だから、 今の内に核で大本を焼き尽くす……」
ショーン「そう……最小限の犠牲を払って」
レフィーナ「正しい判断でしょう。 ですが、それを容認するつもりはありません」
レフィーナ「私達は、 人の命を道具にするODEシステムとは違います。 必ず制限時間内に任務を成功させましょう」
ショーン「了解です。 それこそが、民を守るために存在する軍の あるべき姿でしょうからな」

[修羅城内]

(扉が開閉する)
フォルカ「………」
ショウコ「お帰りなさい、フォルカ……」
フォルカ「お帰りなさい?  何だ、その言葉は……」
ショウコ「何って…… 無事に帰って来られてよかったね、って 意味だけど」
ショウコ「でも、おかしいね。 あたしをさらった人にそんなことを言うなんて」
フォルカ「………」
ショウコ「ねえ……誰と戦ってきたの?  連邦軍? それとも……」
フォルカ「軍か……。 すぐにそんなものは意味がなくなる」
ショウコ「それ……どういうこと?」
フォルカ「もうすぐ時が来る……。 そして修羅が動き出し、この世界は真の闘争に包まれる」
ショウコ「真の闘争……!?  あなた達、何をするつもりなの!?」
フォルカ「この世界を……新たな修羅界とする」
ショウコ「えっ……!?」
フォルカ(そこに修羅の未来があるのなら、 俺は迷いを捨てる……)
フォルカ(だが、何故だ……?  この少女の語る言葉は俺の迷いを加速させていく……。 俺に……俺に何が起きているんだ……?)


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