back index next


押し寄せる悪意 ~ 第11話 ~

《ヘルゲート近辺宙域》

[ハガネ ブリーフィングルーム]

マサキ「ヘルゲートに核をブチかますだぁ!?  冗談じゃねえ! 捕まった人間を見捨てる気かよ!」
アヤ「だから、 それは時間切れになった場合の話よ」
リョウト「……統合参謀本部は、 ヘルゲートに捕らえられている人達が 既に死亡していると判断したんでしょうか?」
ライ「そうかも知れんな」
イルム「敵の本拠地が判明しているんだったら、 多少の犠牲を払ってでも早めに潰す。エアロゲイターや インスペクターとの戦いから学んだ教訓だな」
リオ「だからと言って、 ラミア少尉やクスハ達を見捨てるなんて…… そんなこと、絶対に出来ません!」
イルム「猶予があるだけマシさ。 それに、上がその気なら とっくに核やH-MAPWを撃ってるよ」
リオ「……!」
アヤ「イルム中尉の言う通りね……」
リュウセイ「だったら、今出てる待機命令は何なんだ?  俺達にヘルゲートへ突撃しろって言ったくせに、 何で止めてるんだ?」
エクセレン「う~ん…… ヘルゲートとODEシステムを壊すか否か…… 上の方でまだもめてるって考えるべきかもね」
リュウセイ「え?」
エクセレン「要するに、 ODEシステムがもったいないってことで、 今回の作戦に反対してる人がいるんじゃない?」
リュウセイ「そんな馬鹿な……」
ライ「少尉の言う通りかも知れん。 最初に出た命令は、ユルゲン博士のだ捕と システムの停止……破壊命令じゃない」
リュウセイ「………」
イルム「ヘルゲート……いや、スカルヘッド自体が 相当うさん臭い経緯で作られたみたいだし……」
イルム「政府の偉いさんの中に あれの今後の利用価値を見出した奴が いてもおかしくはないな」
ブリット「最悪の場合、 作戦中止命令が出るかも知れない、と?」
イルム「上とユルゲン博士の間で、 交渉が成り立つんならな」
リオ「それじゃあ、 クスハやラミア少尉達はどうなるんですか?」
イルム「死亡していると判断されたら、 それまでだろうな」
マイ「それまでって……」
イルム「ヘルゲートへ核が撃たれて、終わり」
マイ「……!」
ブリット「そんな風に クスハやラミア少尉達が見捨てられるなんて…… 自分は絶対に納得がいきません」
リオ「そうです。 みんなはまだ生きてます。必ず……」
リュウセイ「……必ず助け出してみせるさ」
マサキ「ああ。 作戦中止命令が出ても、俺は行くからな」
リューネ「あたしも付き合うよ」
セルシア「………」
アイビス「大丈夫ですよ、セルシアさん。 あたしも……ううん、ここにいるみんなが マサキと同じ気持ちです」
(扉が開閉する)
ヴィレッタ「……みんな、揃っているわね」
カイ「今から、ヘルゲート攻略作戦についての ブリーフィングを始める」
リシュウ「……心して聞けい」
ブリット「せ、先生……!  先生も作戦に参加されるんですか?」
リシュウ「うむ。乗りかかった船じゃからのう」
カイ「……紆余曲折はあったが、 先程、統合参謀本部で最終決定が下された」
カイ「これより、 ハガネとヒリュウ改はヘルゲートへ突撃し、 ODEシステムを停止させる」
リョウト「破壊ではなく、停止なんですね?」
カイ「そうだ。 その後、捕らわれた人々を救出する」
マサキ「ヘッ、 あんたらの上も少しは話せるじゃねえか」
ライ「ODEシステムの停止方法については?」
カイ「それに関しては、 フィリオ少佐とタカクラチーフから 説明してもらう」
フィリオ「……ODEシステムには、 マスターコアが存在しています」
フィリオ「データによれば、 その位置はヘルゲートの中心部…… ユルゲン博士もそこにいると思われます」
ツグミ「博士がシステムの開発者であり、 オペレーターである以上……ODEシステムと “同化”している確率は低いでしょう」
リューネ「だから、捕まえて…… システムを停止させろって言うの?」
ツグミ「それがベストですが…… 他にはODEシステムとヘルゲートのジェネレーターを 遮断するという方法もあります」
フィリオ「いずれにせよ、 皆さんがヘルゲートの中枢へたどり着けば、 状況に応じて我々が指示を出します」
カイ「……タイムリミットは 作戦開始から3時間後。それを過ぎれば……」
カイ「我々の後方にいる艦隊が、 ヘルゲートに対し、核攻撃を敢行する」
イルム「……やれやれ、その保証は生きたままか」
ブリット「ですが、チャンスは与えられました」
キョウスケ「……まとめて吹き飛ばすのは、 勝負を投げるのと同じだ。 ここは勝ちにいくぞ」
イルム「毎度のこととは言え、 もう少し余裕のある勝負をしたい所だけどな」
アイビス「こんな時、ギリアム少佐やレーツェルさん、 ゼンガー少佐達がいてくれたら……」
リシュウ「アイビス…… 誰かに頼る弱さは己が剣を曇らせるぞ」
ツグミ「先生の言う通りよ、アイビス。 私達にヘルゲートの情報を知らせてくれた スレイのためにも頑張らないと」
アイビス「うん……。 あたし……もう弱音は吐かないよ」
フィリオ「そうだよ、アイビス。 あきらめからは何も生まれない。 それをどんな時も忘れないでくれ」
アイビス「うん……」
ツグミ(フィリオ……。 あなたもそのボロボロの身体で 戦うと言うのね……)
フィリオ「セルシア。 僕達はハガネで敵の動きの解析を行おう」
セルシア「わかりました、フィリオ少佐。 よろしくお願いします」
カイ「全員、直ちに機体へ搭乗しろ」
リュウセイ「了解!」
エクセレン「ん? どうしたの?  普段からムッツリ顔なのに、 よりムッツリな顔しちゃって」
キョウスケ「大きなお世話だ。これは生まれつきだ」
キョウスケ「……ODEシステムの中枢。 つまりそこには……ラミアがいる」
キョウスケ「だが、システムを停止させることを 最優先するならば……」
エクセレン「は~い、そこまで。 ……ちょっと、らしくないんじゃない?」
エクセレン「そんなことじゃ、 賭博黙示録キョウスケの名が泣くわよん?」
キョウスケ「今回は、 懐に飛び込めれば勝ちという戦いじゃない。 勝つためには……代償が必要になる可能性がある」
キョウスケ「それも、取り返しのつかないものをな」
エクセレン「ふふ……私の時は? キョウスケ。 そんなにウジウジ悩んだりした?」
キョウスケ「……あの時は、ああするしかなかった」
エクセレン「そういうこと。 その結果、私はここにこうしているわけ」
エクセレン「つまり、今は賭け時じゃないってことよ。 ……その時が来たら、あなたは止めても大勝負に いっちゃうんだから、ね?」
キョウスケ「フッ……そうだな。 つまらんことを言った。……いくぞ」
エクセレン「はいは~い。 とりあえずは……ラミアちゃんのとこまで たどり着かなきゃね」

《ヘルゲート》

[ヘルゲート内部]

ゼオラ「う、ううっ……!」
ゼオラ「!!」
ゼオラ「か、身体が動かない!」
ゼオラ「こ、ここはどこ!? 他のみんなは!?」
クスハ「う……」
ゼオラ「クスハ少尉!!」
ラトゥーニ「………」
ゼオラ「ラト! しっかりして!!」
ラトゥーニ「ゼ、ゼオラ……?」
アラド「う、う~ん……」
ゼオラ「アラド! 起きて、アラド!!」
アラド「も、もう腹一杯…… でも、焼きソバならまだ……」
ゼオラ「バカ! なに寝ぼけてんのよ!!」
アラド「!? こ、ここはどこだ!?」
クスハ「私達、どうなったの……!?」
ラトゥーニ「あ、あれを見て……!」
アラド「ゲ! バ、バルトール!?」
(ハッチ開放、液体があふれる)
クスハ「ハッチが……!」
ラミア「………」
ゼオラ「ラ、ラミア少尉!!」
ラトゥーニ「バルトールに取り込まれて……!?」
ラミア「……お前……達……」
ラミア「……ここ……から……逃げ……ろ……」


第11話
押し寄せる悪意

〔戦域:ヘルゲート周辺宙域〕

(ハガネとヒリュウ改は出撃済み、出撃準備、バルトールが出現)
タスク「出てきたぜ!  ウジャウジャとゴキブリみたいによ!」
レオナ「あれがヘルゲート…… 敵の本拠地……!」
(ヘルゲートを指す)
マイ「あそこにラトゥーニ達が 捕らえられているのか」
カイ(アラド達がバルトールへ 乗せられていなければいいが……)
レフィーナ「……ユン、 バルトールから生体反応は?」
ユン「検出されていません。 無人機だと思われます」
レフィーナ「この期に及んで、まだ……」
フィリオ「バルトールが 生体コアを必要とするのは、 初期段階だけの話かも知れません」
レフィーナ「どういうことです?」
フィリオ「ある一定量のデータを 収集・蓄積し、最適化した後……」
フィリオ「マスターコアから バルトール各機へ転送すれば いいわけですから」
ショーン「なるほど……」
リュウセイ「バルトールが無人だと わかっただけでも、気が楽だぜ」
マサキ「ああ。 アラド達はまだヘルゲートの中に いるってことになるからな」
リュウセイ「よし……!  こうなったら、徹底的にやってやる!」
テツヤ「これより 本艦とヒリュウ改はヘルゲートに対し、 正面突破を仕掛ける!」
エイタ「突入ポイントのデータを 各機に転送します!」
(突入ポイントを指す)
アイビス「ハガネとヒリュウ改が あの地点にたどり着けばいいんだね!」
テツヤ「内部での作戦行動時間を 考慮すれば、5分で突入ポイントへ 到達するのが望ましい」
テツヤ「各機は 本艦とヒリュウ改の針路上の 敵機を排除しろ!」
ブリット「待っていてくれ、みんな!  今、助けにいく!!」
カイ「教導隊はまだこれからだ。 必ず取り返す……俺の部下達を!」
エクセレン「さて、と。ここからね」
キョウスケ「……ああ、 なんとしても引きずり出す」
キョウスケ「ヴィルヘルム・V・ ユルゲン……お前のジョーカーをだ。 その上で、おれ達が勝つ……!」
(作戦目的表示)

〈戦艦がヘルゲートに近づく〉

(バルトールが4機出現)
ライ「敵の増援か……!」
マサキ「4機ぐらい増えたって、 屁でもねえぜ!」
(ブリットに精神感応)
ブリット「うっ!」
イルム「どうした、ブリット!?」
ブリット「あ、あのバルトールに クスハが乗っています!」
イルム「何っ!?」
ラーダ「あの子の念を感じたの!?」
ブリット「は、はい!  かすかにですが……間違いありません!」
ラーダ「念を感じられるということは…… あの子は自我を保っている……」
ラーダ「ODEシステムに 取り込まれたわけじゃない……!?」
フィリオ「……!」
エイタ「艦長!  あのバルトールからクスハ少尉の PBS反応が!」
テツヤ「ブリットが言ったことは事実か。 なら、残りの3機にも……!?」
クスハ「………」
ブリット「クスハ!  俺の声が聞こえるか!?」
クスハ「………」
ブリット「気絶して…… いや、眠らされているのか!?」
ユン「艦長! 残り3機のバルトールから、 アラド、ゼオラ、ラトゥーニ3名の PBS反応が検出されました!」
レフィーナ「や、やはり……!」
アラド「………」
ゼオラ「………」
ラトゥーニ「………」
リュウセイ「ラ、ラトゥーニ…… アラド、ゼオラ……!」
ショーン「やはり、 その手を使って来ましたか……!」
(アラド、ゼオラ機がハガネに、ラトゥーニ、クスハ機がヒリュウ改に隣接、攻撃後もとの位置へ戻る)
ブリット「こ、こちらに攻撃を!!」
ラーダ「機体ごと操られているの……!?」
リューネ「フィリオさん!  どうすれば助けられるの!?」
フィリオ「彼らがODEシステムに 取り込まれていないのであれば、 救出方法は簡単だ」
フィリオ「バルトールを行動不能にし、 コックピットブロックを排除すればいい」
タスク「と言われても、あのバルトールは メチャすばしっこいワケで……」
エクセレン「じゃあ、 おとなしく落とされる?」
タスク「それもカンベン。 ……やるしかないッスね」
リシュウ「専心あるのみ、じゃな。 成せば成る、成さねば成らぬじゃ」
ブリット「は、はい!」
エクセレン「……っていうか、 ラミアちゃんだけいなくない?」
キョウスケ「……ここにいなければ、 考えられる場所はひとつしかない」
エクセレン「ヘルゲート……!」
キョウスケ「まだ先がある。 クスハ達を助ければ、嫌でも最後には あいつを出さなければならなくなる」
エクセレン「了解。 その上で……総取りってわけね」
セルシア「でも、気をつけて下さい。 機体を破壊してしまっては、 元も子もありません」
カチーナ「寸止めにしろってか。 オーライ、タスク相手で慣れてっからな」
レオナ「カチーナ中尉、 ブレイクポイントはかなり微妙です。 くれぐれも気をつけて下さい」
カチーナ「言われるまでもねえ。 失敗しましたじゃ、済まないからな」
カイ「アラド達の救出と ヘルゲートまでの到達…… 両方ともやり遂げるぞ!」
ブリット「了解です!」
リュウセイ「みんな、 もうしばらくの辛抱だ!  すぐに助け出してやるからな!」
(作戦目的表示)

〈vs クスハ〉

[いずれかの味方]

(精神感応)
ブリット「!!」
マイ「!!」
アヤ「こ、これは……!?」
ブリット「クスハの念じゃない……!」
リュウセイ「別の思念……!?」
マイ「巨大な……暗い影が見えた……!  何だ、いったい……!?」

[HP10%以下]

クスハ「きゃあっ!!」
ブリット「クスハ!?」
クスハ「ブ、ブリット君……!」
ブリット「正気に戻ったのか!」
クスハ「わ、私、いったい……?」
ブリット「身体は……大丈夫なのか!?」
クスハ「う、うん。このバルトールに 乗せられてただけみたい……」
ブリット(じゃあ、さっきの強力な念は 何だったんだ……!?)
クスハ「ブリット君?」
ブリット「いや、何でもない。 ハガネから回収機を出してもらう。 それまで待っていてくれ」
クスハ「うん……わかったわ」
(クスハ機が撤退)

〈vs アラド〉

[いずれかの味方]

アイビス「は、速い……!  前よりスピードアップしてるよ!」
ツグミ「前回の交戦時の 125%……! パターンも アレンジされているわ!」
ラーダ「カイ少佐、これは……」
カイ「アラドが操縦しているわけではな なさそうだな」
カイ「ならば、 まだODEシステムには……!」

[HP10%以下]

アラド「う、うわっ!!」
ラーダ「アラド!」
アラド「ラ、ラーダさん……!  お、おれは……!?」
ラーダ「良かった……正気に戻ったのね」
アラド「そ、そっか。 おれ、バルトールに乗せられて……」
ラーダ「身体は大丈夫? 頭は痛くない?」
アラド「強いて言えば……腹減ったッス」
ラーダ「なら、大丈夫ね。 回収機をそちらに回してもらうから、 もう少し待ってて」
アラド「了解ッス」
(アラド機が撤退)

〈vs ゼオラ〉

[いずれかの味方]

エクセレン「あらら?  ラミアちゃんにゼオラちゃん…… どっちのパターンデータでもない?」
キョウスケ「こちらでも確認した。 理由はわからんが……」
キョウスケ「ゼオラ達は ODEシステムに取り込まれている わけではないということになるな」

[HP10%以下]

ゼオラ「ううっ!!」
カイ「ゼオラ! 俺の声が聞こえるか!?」
ゼオラ「カ、カイ少佐!?」
カイ「やはり、 ODEシステムには取り込まれて いなかったようだな」
ゼオラ「え、ええ……。 ここに乗せられていただけのようで……」
カイ「よし……回収機をそちらに回す。 もうしばらく待て」
ゼオラ「は、はい!」
(ゼオラ機が撤退)

〈vs ラトゥーニ〉

[いずれかの味方]

アヤ「あのバルトールは、 こちらの動きを読んでいる……!」
アヤ「でも、 相手の予測を上回りさえすれば!」
マイ「待ってて、ラトゥーニ……!」
リュウセイ「すぐに その操り人形から解放してやる!」

[HP10%以下]

ラトゥーニ「ううっ……!!」
マイ「リュウ、ラトゥーニが!」
リュウセイ「正気に戻ったのか!?  ラトゥーニ、聞こえるか!?」
マイ「返事をして……!」
ラトゥーニ「リュウセイ……マイ……!」
リュウセイ「ラトゥーニ、大丈夫か!?  動けるか!?」
ラトゥーニ「う、うん……」
マイ「良かった……」
リュウセイ「今、そっちに回収機を 回してもらうからな。少しの間、 待っててくれ」
ラトゥーニ「うん……」
(ラトゥーニ機が撤退)

〈クスハ、アラド、ゼオラ、ラトゥーニ機を全て収容した〉

エイタ「4人が乗ったバルトールの 回収完了!」
テツヤ「よし! ヘルゲート内部への 突入ポイントへ急ぐぞ!」
(作戦目的表示)

〈敵機10機以下〉

(バルトールが出現)
リオ「ま、まだ出てくるの!?」
ヴィレッタ「ヘルゲートでは、相当数の バルトールが製造されているようね」
エクセレン「こうなったら とことんまで付き合うんだから!」
キョウスケ「だが、 もたもたしてはいられん……!  速攻をかけるぞ!」

先に指定ポイントに到達したのは
ハガネ ヒリュウ改


back index next