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仮面の潜伏者 パリへ向かう ~ 第23話 ~

《地球連邦軍南欧方面軍 アビアノ基地》

[アビアノ基地 内部(格納庫)]

サイカ「ジークさん、サリーさん。 ここでしばらくお待ち下さい。 直に迎えが来ますから」
ジーク「ああ、わかったぜ」
サイカ「なお、この基地でもあなた達には常時監視が付き、 行動は大幅に制限されます」
サリー「構いません。 本来なら、拘束具を付けられても おかしくないですし」
アキミ「………」
(足音)
ヒューゴ「この基地を出てから、そんなに経ってないのに…… 懐かしい感じがするな」
ミナキ「もしかして、少尉は ここの部隊のご出身なんですか?」
ヒューゴ「ああ」
アクア「私もこの基地にいたことがあるのよ。 その時、カイ少佐とラミア少尉に初めて会ったの」
トウマ「そうだったんですか」
アキミ「じゃあ、アクア少尉。 基地の食堂で何が美味しいか知ってます?」
アクア「ええ。オッソ・ブーコ……仔牛スネ肉の煮込みね」
アキミ「それって、テイクアウト出来るんですか?」
アクア「出来たと思うけど……どうして?」
アキミ「ほら、イタリア料理って美味しいじゃないですか。 フェアリさんやあの2人に食べてもらいたいと 思って……」
サリー「……それって、私達のこと?」
アキミ「あ、ああ」
サリー「どうして?」
アキミ「俺とアケミはフェアリさんと喋ってたから…… 何ていうか、その……」
ジーク「同情ならいらねえぜ」
アキミ「いや、そうじゃないんだ。 アリアードを発見して回収したのは親父の会社だし…… 縁みたいな物を感じてさ」
サリー「あなた、いい人ね。 あんまり優しくすると、惚れちゃうぞ?」
アキミ「え!?」
サリー「ふふっ、冗談よ、冗談」
アキミ「そ、そうかい」
ミナキ(こんな会話が成立するなんて…… メンタリティは私達地球人とよく似ているのね)
(足音)
保安員「サイカ・シナガワ少尉はおられますか」
サイカ「はい、私です」
保安員「自分はマッシモ・ビジオ軍曹であります。 ジーク・アルトリート、サリー・エーミル両名の 身柄を引き取りに参りました」
サイカ「了解です。 じゃあ、ジークさん、サリーさん……」
サリー「わかりました」
ジーク「俺達のレオニシスを雑に扱ってくれるなよ」
サイカ「この後、ハガネから丁重に搬出します。 貴重なサンプルですから」
サリー「アキミ……あなたの気持ち、嬉しかったわ。 フェアリにまた会おうねって、伝えてくれる?」
アキミ「あ、ああ」
サリー「それじゃあね」
(足音・サリー達が立ち去る)
アキミ「………」
アクア「……惚れちゃった?」
アキミ「そ、そんなことないですよ!」
トウマ「あの2人、これからどうなるんだろうな」
アキミ「この基地で事情聴取されるそうですよ」
トウマ「その後は?」
ヒューゴ「鋼龍戦隊に戻ってくるかも知れん」
アキミ「え……?」
ミナキ「アリアードやフェアリさんと 同じ扱いになるということですか」
ヒューゴ「ああ。統合参謀本部は、敵の狙いを可能な限り 鋼龍戦隊に絞らせようとしているからな」
ヒューゴ「それに、ガディソードとゴライクンルの 出方次第では、俺達が先鋒として ラブルパイラへ送り込まれる可能性が高い」
ヒューゴ「その時、彼らに水先案内をさせることになるかもな」
アキミ「………」
(通信)
アクア「パイロット総員呼び出しだわ。行きましょう」

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

シャイン「怪談でございますか?」
アケミ「ええ。さっき、この基地の人が教えてくれたんです」
アラド「つーか、何でそんなことを?」
アケミ「基地の見学者と勘違いされたみたいなの」
リオ「それで、どんな話?」
アケミ「この基地の一角は昔、処刑場で…… 罪人達の霊が仲間を求め、血塗られた鎌を持って 夜な夜なうろついているそうです」
シャイン「……ありがちな話でございますわね」
アラド「ラマリスと戦ってんのに、 鎌を持った幽霊って言われてもなあ」
アケミ「うん、私もそう思ったわ」
ヒューゴ「……そのは少し間違っているな。 以前、俺が見た亡霊は処刑人風で、 鎌は持っていなかった」
アケミ「えっ?」
シャイン「どういうことでございますの?」
アラド「まさか、ホントに見たんスか?」
ヒューゴ「ああ。基地に出入りする人間は 軍人だろうと軍属だろうと、所属がわかる物を 明示しなければならない」
ヒューゴ「だが、その処刑人達は頭から足下まで 真っ黒な外套に身を包み、中央司令塔に現れた。 インスペクター事件の頃の話だ」
リオ「少尉、それって……」
アヤ「あなた達、私語はそこまでよ。司令が来られたわ」
(扉が開く)
マイルズ「……全員集まっているか?」
アヤ「はい」
マイルズ「では、ブリーフィングを始める。 このアビアノに到着した後、半舷休息となっていたが、 現時刻をもって解除する」
マイルズ「先程、基地司令カルロ・サッキ少将より 作戦の依頼があり、これを受けることになった。 カイ少佐、概要を説明したまえ」

カイ「はっ、それでは」
カイ「2時間程前、 モンテ・ディルーポへ向かった調査団が消息を絶った。 護衛として同行したAM部隊も同様だ」
カイ「なお、彼らの調査対象は、 現地に落着したと思われる未確認物体だった」
カイ「それは、山中深くで巨大な孔を発見した 登山者からの通報で発覚したのだが…… いつ、どこから、何が落下したのかは不明だ」
(ざわめき)

リオ「……もしかして、超常現象?」
リョウト「フューリーやガディソード絡みじゃないかな……」
ラミア「アレス・ガイストという可能性もある」
ハーケン「おっと待った、シスター17。 ダークブレインの手下かも知れないぜ?」
アイビス「どのみち、鋼龍戦隊向きの仕事ってわけだね」
リュウセイ「でもさ、何かが宇宙から落ちてきたんだとしたら、 どうしてその時に感知されなかったんだ?」
ライ「もしかしたら、 クロスゲート・バースト発生直後の混乱に紛れて 落下したのかも知れん」
イルム「だったら、発見が遅れることもあり得るか」

カイ「我々はモンテ・ディルーポへ赴き、 調査団の捜索と現場検証を行う」
カイ「ハガネは60分後に空間転移を敢行する。 パイロット各員は、第一種戦闘配置にて待機せよ」


第23話
仮面の潜伏者

〔戦域:モンテ・ディルーポのクレーター周辺〕

(南端にハガネが転移出現)
テツヤ「艦長、目的地への転移を完了しました」
ギント「情況はどうか?」
エイタ「落下孔の中に物は見当たりません。 周辺にアーマードモジュールの残骸を確認…… 調査団の護衛機だと思われます」
エイタ「なお、生命反応は感知できません」
テツヤ「調査団と護衛部隊は全滅か……」
ギント「司令。 機動部隊各機を出し、現場検証を行わせますが、 よろしいか?」
マイルズ「うむ」
テツヤ「機動部隊各機、発進せよ」
(ヴィレッタ機、イング機が出撃、出撃準備)
イング「……この感じ……何かがいるような気がする」
アラド「え? レーダーやセンサーに反応はないけど」
ヴィレッタ「私も感じる。アヤ、お前は?」
アヤ「ええ、11時方向に気配が……」
リュウセイ「これって、いつぞやの……」
マイ「ああ、あの時と同じだ」
ライ「もしや、それは……」
ヴィレッタ「スピリア0よりスティール2。 ポイント1109付近に何者かが潜んでいる 可能性あり。攻撃許可を求む」
テツヤ「スピリア0、その根拠は何だ?」
ヴィレッタガイアセイバーズのアーマラ・バートンと 初めて接触した時の感覚に似ている」
テツヤ「何だと……!?」
マイルズ「どういうことなのだ?」
テツヤ「彼らは、封印戦争時に交戦した敵と 似たような気配を感じているようなのです」
マイルズ「だが、レーダーやセンサーには 反応がないのだろう?」
テツヤ「その通りですが、彼らの感覚は信用に値します」
ギント「自分も同意見です。 攻撃許可を出しますが、よろしいか?」
マイルズ「まあいい、許可する」
ヴィレッタ「スピリア0、了解」
(ヴィレッタ機から攻撃、クレーターの北側に爆煙後、敵機が出現し、宙に浮かぶ)
アキミ「な、何だ、あいつら!?」
ラトゥーニ「キャニスと……該当データがない機体」
ギリアム「彼らは高度なステルス技術を用い、 姿と気配を消していたようだな」
???(スペクトラ)「……よりにもよって、 鋼龍戦隊が転移してくるとはね」
ヴィレッタ(私が感じた気配は……あの機体か?)
???(スペクトラ)「しかも、見破られるとは…… あの女と呼び合う何かがあるなどと、 思いたくはないが」
ヴィレッタ(……可能性は否定できないわね)
???(スペクトラ)「……アイン、お前達は回収物を運びなさい。 鋼龍戦隊は私達で足止めしておく」
所属不明兵「了解」
(中央のヴァルク・ベン4機が宙に浮かんだ後、北端へ移動し、撤退)
エイタ「アンノウン4機、戦域から離脱!」
???(スペクトラ)「さて……しばらくの間、相手をしてもらうわ」
エイタ「アンノウン残存機、 こちらへ攻撃を仕掛けてくる模様!」
カイ「エレーブ1より各機!  アンノウンを迎撃するぞ!」
(作戦目的表示)

〈vs ???(スペクトラ)〉

[ヴィレッタ]

ヴィレッタ(あの機体の動き……もしかして……)
???(スペクトラ)(こんな所で邂逅するとはね。想定外だったわ)

[イング]

イング(何故、今頃になって現れたんだ……!?)
???(スペクトラ)(あの機体のパイロットは……)

〈敵機24機以上撃墜 or ヴァルク・ベンのHP30%以下 or 6PP〉

???(スペクトラ)「……アイン達は完全に離脱したようね。 こちらも撤退する」
(ヴァルク・ベンが撤退、残った敵機が撤退)
ヴィレッタ(あの機体のパイロットは……)
イング(彼らはガイアセイバーズの残党じゃない……)
エイタ「戦域内の敵機反応、全て消失!」
ギント「司令、敵機を追撃しますか?」
マイルズ「統合参謀本部の指示を仰ぐ。 それまでは、現地点で待機せよ」
ギント「……了解です」

(戦艦 ブリッジ)

???(キャリコ)「……結果はどうだった?」
???(スペクトラ)「残念ながら、私達が求めていた物ではなかったわ」
???(キャリコ)「そうか……さすがにそう上手く事は運ばんな」
???(スペクトラ)「だけど、可能性はわずかながら高まった」
???(キャリコ)「うむ。 パーツだった物はこちら側へ戻っているからな」
???(スペクトラ)「望みは捨てない……」
???(キャリコ)「ああ……ゴラー・ゴレムとしての務めを果たす」

《モンテ・ディルーポ(鋼龍戦隊)》

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

ギリアム「……彼らはガイアセイバーズの残党では なかったようだな」
ヴィレッタ「ええ……あのアーマラ・バートンと同じく、 バルシェム・シリーズ……」
ヴィレッタゼ・バルマリィ帝国ユーゼス・ゴッツォによって 生み出された人造人間……私の弟妹とも言える存在よ」
ラーダ「あの場にいた全員がそうだったの?」
ヴィレッタ「それは……どうかしらね」
イングラブルパイラへ行く前に交戦した 敵部隊のパイロットは、バルシェムでもマシンナリー・ チルドレンでもなかったような気がします」
ラミア「だが、お前と同じというわけではあるまい」
イング「ええ……」
ラミア「人造人間Wシリーズには、 私やアシェン姉様のようなナンバーズと 量産タイプが存在していたが……」
ヴィレッタ「バルシェムもそうなもかも知れないわね」
リュウセイ「それにしても、あの連中…… 今頃、何をしに地球まで来やがったんだ?」
イルム「ユーゼスの仇討ちってのは真っ先に浮かぶが…… やり方が消極的なんだよな」
マイバルマーが地球に攻撃してくる前触れ……?」
イルム「だとしても地味過ぎるぜ」
ギリアム「今回に限って言えば、 落着物の調査と回収だったようだが」
アヤ「ひょっとして、最初に撤退した4機が……?」
ライ「彼らはあそこに落ちた物が何なのか 知っていたのでしょうか?」
ギリアム「それは定かではないな。知らぬが故に 調査を行っていたということもあり得る」
ギリアム「いずれにせよ、バルシェム達の目的の一つは 天から落ちてくる何かを探すことのようだな」
ヴィレッタ「そして、それはユーゼスに関わる物である 可能性が高い……」
イング(天から落ちてきて、あの男と関わりがある物……)
(アラート)
イング「!」

[ハガネ ブリッジ]

マイルズ「よもや、ダークブレインの残党が アビアノ基地を襲撃するとは……!」
テツヤ「我々の留守を狙ってのことでしょうか……!?」
ギント「戦力の大半はパリ方面へ回されている。 それは昨日今日の話ではない。 むしろ、敵の狙いは……」
(通信)
アヅキ「アビアノからの続報です!  クリスタルドラグーンだけでなく、 ラマリスの大群も出現したそうです!」
マイルズ「な、何だと!?」
ギント「司令。準備が整い次第、空間転移を行います」
マイルズ「ああ、作業を急がせろ!  あの基地に万一のことがあれば、 今後の作戦に支障が出るぞ!」


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