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護剣の欠片 宇宙ルート ~ 第7話 ~

衛星軌道上(鋼龍戦隊)》

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ショーン「艦長、衛星軌道上への空間転移が終了しました」
レフィーナ「予定転移出現ポイントとの誤差は?」
ショーン「マイナス002です」
レフィーナ「前回より縮まりましたね。 では、慣性航行を続行しつつ、空間転移装置の点検を。 次は長距離ですから、念入りに」
ショーン「了解です」
ブライアン「ふむ……空間転移そのものは、本当に一瞬なんだね」
レフィーナ「その通りです、ミッドクリッド特使閣下」
ブライアン「ゾヴォークが何故、宇宙で版図を広げようとするか、 その理由が頭だけでなく、身体でも理解できたような 気がするよ」
ブライアン「貴重な体験をさせてもらった。 政治家の身としては、こういう機会がなければ 無理な話だからね。ありがとう」
マイルズ「では、特使閣下、お部屋にお戻り下さい。 本来であれば……」
ブライアン「僕の存在は、まだクルーに知られちゃいけない。 わかっているよ」
ユン(やっぱり、そういうことだったのね)
ブライアン「相変わらず美しい艦長の指揮ぶりも見られたことだし、 僕は引っ込むことにするよ」
マイルズ「ご理解いただき、感謝致します。 今夜の夕食は、司令公室で。私と艦長が同席します」
ブライアン「僕としては、艦長と二人きりがいいんだが」
マイルズ「は?」
レフィーナ「特使閣下、それは……」
ブライアン「冗談だよ、冗談。 では、目的地までの無事な航海を祈っている」
(扉が開く・ブライアンが立ち去る)
マイルズ「ブリッジ・クルー諸君に告ぐ。転移前にも伝達したが、 ブライアン・ミッドクリッド特使閣下が 乗艦していることは、指示あるまで極秘とせよ」
ユン(特使って……元大統領のミッドクリッド氏が どういうわけで?)
ユン(今回の任務……どう見ても試験航海じゃないわね)
レフィーナ「では、司令。 第1ブリーフィング・ルームにお願いします」
マイルズ「うむ」

[ヒリュウ改 ブリーフィング・ルーム]

リュウセイ「もう宇宙に出ちまったなんてな」
アイビス「呆気ないというか、拍子抜けって感じ」
クスハ「重力を振り切らないと、 宇宙に出たっていう実感がないですか?」
アイビス「そうだね」
エクセレン「だけど、時間が短縮できていいじゃない」
ブリット「そうですね。空間転移は敵に使われると厄介だけど、 自分が使うとなると便利だと思います」
リュウセイ「でもさ、今回は長距離転移の実験なのに どうして一度軌道上に出るんだ?  一気に火星へ行けばいいじゃん」
リョウト「空間転移を行うには、転移先の観測と空間確保が 必要とされてる。大質量物体が存在した場合、 融合してしまう危険性があるし……」
リョウト「重力バランスも事前観測しておくことが望ましいんだ。 そして、それには地上よりも衛星軌道上の方が 好都合なんだよ」
ブリット「……って言うか、命令書に書いてあっただろ。 読んでなかったのか?」
リュウセイ「だってさ、いつもの半分ぐらいの時間で 機体を搬入しろって言われたんだぜ。 じっくり読んでる暇なんてねえよ」
エクセレン「確かに、フルメンバーで急かされて出てきて、 単なる試験航海だなんて、変な話よね」
カチーナクロスゲート・バーストとか色々あって キナ臭えのに、あたしらが地球圏を離れてどうすんだ」
イルム「実は、行く先にかなりの面倒事があるんじゃないの」
スレイ「別に驚きはしない。ヒリュウ改に空間転移装置を 取り付けたのは、激戦地や敵中枢へ送り込み 易くするためだと思っていたからな」
レオナ「何かあればあったで、すぐに戻れるものね」
タスク「いやいや、そんな他人事みたいにさぁ……」
(扉が開く)

レフィーナ「全員、着席して下さい。 これよりブリーフィングを始めます」
マイルズ「惑星間長距離転移試験航海の概要について 説明するが、その前に紹介しておきたい人物がいる。 SRXチームやPTXチームは初対面だろうからな」
マイルズ「では、少尉。自己紹介を」
ヨン「はい。私はガヤットーバ・スチェッカ…… ゾヴォーク枢密院特使補佐官です」
ヨン「訳あって地球連邦軍の軍籍を有しており、 ヨン・ジェバナという地球人名も持っています」

エクセレン枢密院特使って、メキボスのことよね)
イルム(話には聞いていたが……可愛いじゃないの)

マイルズ「ヨン少尉は、ゾヴォークからもたらされた 空間転移装置運用のオブザーバーでもある。 今回の試験航海の説明は、彼女にしてもらう」
ヨン「事前にお渡しした資料にも記載されていますが、 安全な空間転移を行うには、転移先の観測が 欠かせません」
ヨン「ですが、既に観測済みの中継点の情報が 蓄積されていれば、観測は省略できます」
ヨン「この中継点を結んだルートを ゾヴォークでは『転移航路』と呼んでいます」
ヨン「これまでに我々は太陽系、地球圏への 転移航路を何ルートか構築しており…… 今回はその中の1本を使います」
ヨン「現状、ゾヴォーク枢密院は 地球圏への干渉を禁じており、機動兵器を投入しての 戦闘行為など、あり得ない話なのですが……」
ヨン「誠に遺憾ながら、枢密院の決定に逆らう者達が 存在しているのは、皆さんもご存じの通りです」
ヨン「よって、転移航路の中継点で『敵』と遭遇する 可能性が高いと思われます」
レフィーナ「そこで、敵襲を想定し、以後の空間転移は 総員が第一種戦闘配置についた状態で行い、 転移直後はエネルギー・フィールドを展開します」

ライ(想定ではなく、前提であるかのような態勢だな)
ヴィレッタ「艦長、質問が。よろしいか?」
レフィーナ「構いません。どうぞ」
ヴィレッタ「敵襲の可能性は、既存の転移航路を使うが故のこと。 こちらで独自の中継点を見つけ出し、 転移すればいいのでは?」
レフィーナ「それは……」
マイルズ「その質問には答えられん」
ヴィレッタ(何か急がなければならない理由があると いうことか……)
イルム「自分からも質問を。 あ、艦長ではなく、ヨン少尉に」
ヨン「何でしょうか」
イルム「敵が何者か、見当は付いているのか?」
ヨン「枢密院の意向を無視して、地球圏で軍事行動を 取るとなると、最も可能性が高いのは ゴライクンルだと思われます」
イルム「確か、封印戦争ゼゼーナンに協力していた ゾヴォークの戦争商人だよな」
ヨン「はい」
イルム「それがまた、どうして禁を破って地球に?」
ヨン「……彼らの目的は、現時点では不明です」
マイルズ「いいか。我が戦隊の任務は 可及的速やかに長距離転移のデータを集め、 実績を積み上げていくことだ」
マイルズ「パイロット諸君は、その過程における ヒリュウ改の安全確保に専念してもらいたい」
イルム(こりゃ、上は確実に何かを隠してるな……)
キョウスケ(この試験航海、ただでは済まなさそうだな)
マイルズ「空間転移実験は、1600より開始する。 パイロット各員は1520より第一種戦闘配置にて 待機せよ」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

レフィーナ「司令、まもなく1600です。 空間転移シーケンスを開始しますが、 よろしいでしょうか?」
マイルズ「うむ」
レフィーナ「では、空間転移シーケンス、 ファースト・フェイズを……」
(アラート)
ユン「レーダーに感あり!  アンノウン接近、2時方向、仰角10より真っ直ぐ!  レンジ3!」
レフィーナ「空間転移シーケンスは続行!  機動部隊各機は直ちに出撃!」
マイルズ「くっ、ヨン少尉の予想が早速的中したか!」


第7話
護剣の欠片

〔戦域:地球近海宙域〕

(東側にヒリュウ改がいる)
ユン「アンノウン群の識別終了!  量産型のキャニスです!」
マイルズ「キャニス…… 確か、ガイアセイバーズの機体だったな。 彼らの残党がいたとは」
ショーングランド・クリスマスならともかく、 それ以外の所にいた戦闘要員を全て逮捕するのは 困難だろうと思っておりましたが……」
マイルズ「本隊が解体されてもなお、 こんな所で我らに仕掛けてくるとは……。 意趣返しのつもりか」
ショーン「気になるのは、キャニスの搭乗員ですな。 イング・ウィッシュ少尉の話によれば、あれには マシンナリー・チルドレンが乗っていたそうですから」
マイルズ「アルテウル・シュタインベックと イーグレット・フェフが死亡した今となっては、 ただの敗残兵に過ぎん」
ショーン「ですが、あれだけの数…… しかも、マシンナリー・チルドレンとなると、 それなりの拠点や母艦が必要ではないでしょうか」
マイルズ「その詮索は、我らの任務ではない。 最優先すべきは、第二中継点への空間転移だ」
マイルズ「万一、遅延でもしたら大問題になるぞ。 私も統合参謀本部に弁明できん」
マイルズ「我らには大役が課せられていることを忘れるな。 本艦に損害を出してはならん。 可及的速やかに敵を排除せよ」
レフィーナ「了解です、司令」
(イング機が出撃、出撃準備)
ヴィレッタ「スピリア0より各機。 ヒリュウは、空間転移シーケンスのフォース・ フェイズが終了するまで動けない」
ヴィレッタ「足が速い機体は前に出て敵機を迎撃、 遅い機体は艦の直掩に回れ」
ヴィレッタ「ただし、300秒後までに帰艦せよ。 でないと、ここに置いていかれることになるわよ」
エクセレン「深入り注意って訳ね。 キョウスケ、突っ込み過ぎちゃ駄目よ」
エクセレン「ま、もし、置いてけぼりになっちゃったら、 私も付き合ってあげるけど」
キョウスケ「お前と二人で宇宙遊泳をする気はない」
エクセレン「あららん」
スレイ「アイビス、ハイペリオンのスピードを活かせば、 時間ぎりぎりまで粘れる。だが、置き去りなどという 無様な真似をさらすな」
アイビス「わかってるよ。 ツグミ、帰艦限界ラインの算出を……」
ツグミ「もう終わったわ。 そちらのモニターに出すわね」
ヨン(もし、空間転移のタイミングを見計らって 仕掛けてきたとしたら……)
イルム「無茶をするなよ、ヨン。 本来なら、お前さんはオブザーバーだからな」
ヨン「どうかお気遣いなく。 マスターから出来るだけの協力をするよう 命令されておりますので」
イング(……あのキャニスには、 マシンナリー・チルドレンの生き残りが 乗っているのか?)
イング(でも、この違和感は……)
ヴィレッタ「各機、散開!  敵機をヒリュウに近づけるな!」
(作戦目的表示)

〈3PP〉

ユン「ドラゴン2より各機!  本艦の空間転移シーケンス、フォース・フェイズ 終了まで、あと180秒!」

〈4PP〉

ユン「ドラゴン2より各機!  フォース・フェイズ終了まで、あと120秒!」

〈5PP〉

ユン「ドラゴン2より各機!  フォース・フェイズ終了まで、 あと60秒! 直ちに帰艦せよ!」

状況選択

敵機を全滅させた
味方機を全機収容した


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