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眠れる敵 宇宙ルート ~ 第5話 ~

《クロスゲート監視艦隊(クロスゲート監視艦隊)》

[クロスゲート監視艦隊旗艦 ストロング・アーク]

オペレーター(男性)「司令、クロスゲートのエネルギー反応が 通常時と同量まで下がりました」
ハンフリー「通常時、か。 あのゲートが低軌道上に現れてから、 まだ日は浅いのだがな」
オペレーター(男性)「正直言って、拡散光現象は予想外でした。 クロスゲートからは、ルイーナのような物体が 多数出現するものだと……」
ハンフリー「少数は現れただろう。 レーダーやセンサーが障害を受けたため、 こちらでは正体がわからずじまいだったが」
オペレーター(男性)「はっ……」
ハンフリー「何にせよ、クロスゲートのデータは圧倒的に少ない。 封印戦争時の鋼龍戦隊のレポートだけでは、 何が起きるか予測しにくい」
オペレーター(男性)「本格的な調査が始まろうかという時に、 あの拡散光現象でしたから……」
オペレーター(女性)「こ、これは……!  ウォリアー1、応答せよ! 何をやっている!?」
ハンフリー「どうした? 情況を報告せよ」
オペレーター(女性)「ビーカム小隊全機が母艦を、ブルーグリンを 攻撃しています!」
ハンフリー「確かにビーカム小隊なのか?  ゾヴォークなどの敵性体である可能性は?」
オペレーター(女性)「ビーカム隊は、 先程ブルーグリンから発進したばかりです!」
ハンフリー「ならば、小隊挙げての反乱か……!?  コックピット内の映像は出ないのか!?」
オペレーター(男性)「司令!  イバ小隊全機とレート小隊全機が、エリア3から離脱!  こちらの呼び掛けに応答せず!」
ハンフリー「うぬっ、いったい何が起きているのだ……!?」

《クロスゲート宙域(鋼龍戦隊)》

[ハガネ ブリッジ]

アヅキ「副長、よろしいですか?」
テツヤ「何だ?」
アヅキ「クロスゲート監視艦隊の通信を傍受したのですが、 どうも様子がおかしくて……PT小隊同士で 戦闘を行っているようなのです」
テツヤ「戦闘だと……?」
エイタ「模擬戦や訓練じゃないのか?」
テツヤ「この情況下で、そんなことをするわけがないだろう」
エイタ「それは確かに……」
アヅキ「通信を聞いた限りでは、 監視艦隊はかなり混乱しているようです」
テツヤ「わかった。 司令と艦長をブリッジに呼び出してくれ」
アヅキ「了解」
(警告シグナル)
エイタ「友軍機接近、2時方向、俯角3より真っ直ぐ。 IFFによれば、監視艦隊のAM部隊です」
テツヤ「妙だな。迎えが来るとは聞いていないぞ。 アヅキ、彼らに接近目的を……」
(アラート)
エイタ「AM部隊よりシーカー波!  ロックオンされました!」
テツヤ「仕掛けてくる気か!? アヅキ、応答は!?」
アヅキ「ありません!」
テツヤ「やむを得ん、対空防御用意!  機動部隊各機はスクランブル発進!」

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

ヴィレッタ「SRXチーム、スクランブルよ」
ライ「敵はゾヴォークですか?  それとも、クロスゲートから出現したものですか?」
ヴィレッタ「そのどちらでもない。監視艦隊のAM部隊よ。 ハガネは既にロックオンされたわ」
リュウセイ「マジかよ!?」
マイ「どうして味方がそんなことを……」
ヴィレッタ「その理由を知るため、 マイとアヤはT-LINKシステムで パイロットの様子を探りなさい」
ヴィレッタ「もっとも、乗っていればの話だけど」
マイ「わかった」
アヤ「行きましょう、みんな」
リュウセイ「おう!」
(速い足音・SRXチームが走り去る)
リオ「……ねえ、リョウト君。クロスゲート監視艦隊で 無人のアーマードモジュールを使っていて、 それらが暴走したってことはあり得るかしら」
リョウトバルトール事件の時みたいに?  それはどうかな……」
リオ「でも、クロスゲートから出た光のシャワーは、 大規模な通信障害やネット障害を もたらしたんでしょう?」
イルム「詮索は後にしろ。 PTXチームもスクランブル発進だ。 イングはもう行ったぞ」
リオ「わかりました」
テニア「……ねえ、カルヴィナ。 連邦軍同士で戦うことになるの?」
カルヴィナ「向こうが本気で こっちをどうにかするつもりならね」
テニア「何であたし達が狙われなきゃならないのよ?」
カルヴィナ「さあね。でも、相手が何だろうと、 あたしの目的を邪魔するのなら、容赦はしない。 あんたもそのつもりでいて」
テニア「う、うん」
テニア(あたしだって、こんな所で立ち止まれるもんか。 カルヴィナと一緒に行くしかないんだ……!)


第5話
眠れる敵

〔戦域:地球低軌道近傍宙域〕

(北端にハガネがいる。出撃準備)
エイタ「友軍機群、減速しつつ、レンジ3に侵入!」
(南側に敵機が出現)
ギント「彼らからの応答は?」
アヅキ「依然、ありません。 こちらの警告を無視し続けています」
マイルズ「ストロング・アークとの連絡は まだ取れんのか?」
アヅキ「呼び掛け続けているのですが、 こちらも応答ありません」
マイルズ「艦隊内で反乱でも起きたというのか。 いずれにせよ、統合参謀本部の指示を仰がねば……」
テツヤ「もしや、指示が出るまで待機ですか?」
マイルズ「そうだ」
テツヤ「せめて、彼らと距離を取るとか、 ハガネを迂回させるとか……」
マイルズ「それだと、クロスゲート宙域への到達が 遅れるだろう。そもそも、機動部隊の出撃についても 私の指示を仰ぐべきだったのだ」
テツヤ「……申し訳ありません」
カルヴィナ「イルム中尉、あいつらはこっちをロックオンしてる。 つまり、やる気ってことよ。 なのに、どうして攻撃命令が出ないの?」
イルム「上の判断待ちだろ。 それが吉と出るか、凶と出るか……」
カルヴィナ「冗談じゃないわ。 そんなので撃たれたら、たまらないわよ」
イルム「同感だね」
カルヴィナ(……障害となるものは、何であろうと排除する。 それがあたしの命を狙うなら、尚更よ)
ヴィレッタ「アヤ、マイ。何かわかるか?」
マイ「この感じ……もやが掛かったような……」
アヤ「念の気配が……ないわ」
ヴィレッタ「パイロットが乗っていないということか?」
アヤ「その可能性はあります」
ヴィレッタ「スピリア0よりスティール2。 クロスゲート監視艦隊に無人機動兵器が 配備されているかどうか調べて欲しい」
アヅキ「了解。照会します」
ヴィレッタ「その間に、もう少し接近して 生体反応のチェックを……」
(味方機の直前に爆煙多数)
エイタ「友軍機が発砲!」
マイルズ「何っ!?」
ギント「司令。現時刻を以て あの友軍機群を攻撃目標と認識しますが、 よろしいか?」
マイルズ「や、やむを得ん。許可する」
カルヴィナ「自動操縦ってわけじゃなさそうね。 亡霊にでも取り憑かれてるとでもいうの?」
アヤ「その表現、正しいかも知れないわ」
イング「彼らは何者かに操られているような…… 迂闊に近づくのは危険だと思います」
アヤ「そうね。私も嫌な予感がする」
ヴィレッタ「スピリア0より各機。友軍機を行動不能にする。 ただし、機体には接触するな」
リュウセイ「要は相手に近づいちゃ駄目だってことだな」
ヴィレッタ「ええ。中、遠距離からの射撃で 推進装置を破壊しなさい。 ただし、撃墜しては駄目よ」
(作戦目的表示)

〈敵機が味方機に隣接〉

(隣接された味方機が『戦闘不能』になる)
エイタ「目標と接触した機体が、 行動不能に陥ったようです!」
マイルズ「何だと!? どういうことだ!?」
ギント「……該当機と交信は可能か?」
アヅキ「はい、パイロットには異常がないようです」
ギント「ならば、他機に援護させろ。本艦からも牽制攻撃。 目標の制圧を急げ」

〈敵機全て撤退〉

エイタ「目標、全て行動を停止しました!」
ギント「各機は全周警戒を厳となせ。 副長、目標を1機選出し、艦外で調査を行え。 接触には充分留意せよ」
テツヤ「了解。目標を1機選出し、調査を行います」

[ハガネ 格納庫]

リュウセイ「結局、パイロットは乗ったままだったのか……」
ライ「ああ。そして、外部からの操作を可能とする装置や ハッキングやウィルス感染の形跡もなかったそうだ」
テニア「じゃあ、本気であたし達に仕掛けてきたってこと?」
アヤ「いえ。 パイロットは回収された時、全員が昏睡状態だった。 つまり、戦闘中、彼らは眠っていたのよ」
テニア「ええっ」
アヤ「今は目覚めているけど、 何があったか誰も覚えていないそうよ」
カルヴィナ「とんだ催眠術ね」
リュウセイ「けど、証拠を綺麗さっぱり消しちまうなんてさ、 催眠術師というより、手品師だな」
イング「もしかしたら、証拠になる物なんて 最初からなかったのかも知れませんね」
リュウセイ「なら、魔術師だぜ。 魔法でもかけたのかよ、ビビデバビデブーってさ」
アヤ「それじゃ、シンデレラでしょ」
カルヴィナ「大層な力を持ってるかも知れないけど、 押しは弱かったわね。ハガネを沈める気なら、 もっとギリギリまで接近すれば良かったはず」
リュウセイ「確かに、俺達は上の命令待ちだったもんな。 黙って近づいて来られたら、手を出せなかったぜ」
リオ「下手をすれば、私達も操られてたかもね」
リョウト「でも、彼らは先に撃った……。 撃たざるを得なかったのか、 元からそのつもりだったのかな」
リュウセイ「こっちをやっつけるつもりじゃなく、 操る気もなかったってんなら、 何が目的だったんだ?」
ライ「俺達へ仕掛けたこと自体に意味があるとしたら…… 足止めか、時間稼ぎだな」

[ハガネ ブリッジ]

ハンフリー「……こちらは誠に遺憾ながら、 ペレグリン級1艦を失う結果となりました」
マイルズ「そこまで混乱していたのか……」
ハンフリー「パイロット達には反乱を起こしたという自覚がなく、 意識を失っている間、機体が勝手に 動いていたようです」
マイルズ「こちらと同じだな。 戦闘中、クロスゲートに異変は見受けられたか?」
ハンフリー「事態収拾のため、各艦はゲートから 離脱せざるを得ませんでしたが…… 事件前と特に変わりはありませんでした」
(通信)
アヅキ「司令、統合参謀本部のダニエル議長より 通信が入っています」
マイルズ「ハンフリー大佐、聞いての通りだ」
ハンフリー「はっ。それでは、失礼します」
(通信が切れる)
マイルズ「では、議長とつないでくれ」
アヅキ「了解。つなぎます」
(モニターオン)
ダニエル「奇妙な事態に遭遇したようだな、マイルズ准将」
マイルズ「はっ、原因については調査中です」
ダニエル「実は、地上でも類似事件が発生した」
マイルズ「!」
ダニエル「例の拡散光現象…… 以後はクロスゲート・バーストと呼称するが、 その混乱に乗じて暗躍する敵勢力が複数いる」
ダニエル「そして、 日本地区を中心に彼らとの小競り合いが頻発…… 伊豆基地も既に二度襲撃されている」
テツヤ(そんな……!)
ダニエル「そうした事態を鑑みて、 ハガネをクロスゲート監視艦隊の増援にあてる 指令は撤回する」
ダニエル「諸君らは直ちに伊豆へ帰還せよ。 試験航行中のヒリュウ改も繰り上げで戻らせる」
マイルズ「では、鋼龍戦隊の全戦力を 伊豆に結集させるのですな」
ダニエル「そうだ。 新たな指令は、諸君らが伊豆へ帰還した後に出す。 他に何か質問はあるかね?」
マイルズ「敵勢力が複数いるとのことですが…… ゾヴォークやアレス・ガイスト以外には何が?」
ダニエル「北海道で交戦した特殊戦技教導隊の報告では、 ダークブレインの残党だそうだ」
マイルズ「なっ……!」
テツヤ(ダークブレインの残党……!?  そんな連中が存在していたのか……!)


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