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災い、彼の地より 宇宙ルート ~ 第3話 ~

《L1宙域(鋼龍戦隊)》

[ハガネ 艦内(ラウンジ)]

リオ「それで、どうなったの?」
リュウセイ「イルム中尉が アンノウンとの交戦データを引き出すためと言って、 上から許可をもらったんだけどさ……」
リュウセイ「メンテナンス・モードじゃ立ち上がったが、 通常起動は出来なかったんだ」
リオ「カルヴィナ元少尉でも?」
リュウセイ「ああ、何回やっても駄目だった」
リオ「じゃあ、生体認証じゃないのかしら」
リョウト「セキュリティ・モードか、 あるいは自閉モードの一種なのか……」
イング「あの子……テニアはその場にいたんですか?」
リュウセイ「いや」
イング「もしかして、彼女が同乗していなければ、 起動しないのでは?」
リュウセイ「ああ、俺達もそういう結論になった。 カルヴィナ元少尉も薄々気づいてたみたいだし……」
リオ「じゃあ、あの子を乗せて試したの?」
リュウセイ「それがさ……」
リオ「あ、もしかして、司令NG?」
リュウセイ「当たり。民間人……しかも子供を戦闘区画に 入れちゃ駄目だとさ」
リョウト「正論だけどね……」
リュウセイ「まあ、テニアのことを考えればな」
リオ「でも、二人乗らなきゃ起動しないって…… 龍虎王みたいな超機人ならともかく、 機動兵器としては大きな欠点じゃない?」
リョウト「後で量産化が予定されてるならね。 でも、ベルゼルートは新機軸のマン・マシン・ インターフェース、サイトロン・システムや……」
リョウト「動力源のオルゴン・エクストラクターを搭載した 実験機みたいだし、パイロットとシステム・ オペレーターが必要だったんじゃないかな」
リュウセイ「じゃあ、二人乗りっていう起動条件は?」
リョウト「実験機ならではの セキュリティの一種かも知れないね」
リオ「ところで、テニアはどこにいるの?」
リュウセイ「今、アヤとマイが面倒見てるよ」

[ハガネ 食堂]

アヤ「ねえ、テニアは食べ物で何が一番好きなの?」
テニア「う~ん……あり過ぎて、一つに決めらんない」
マイ「逆に、嫌いな物は?」
テニア「ないよ。何でも食べるもん」
アヤ「じゃあ、マイは見習わないと駄目ね」
テニア「何が嫌いなの?」
マイ「……納豆……」
テニア「えっ、美味しいのに。父さんと同じだね。 日本食が好きなのに、納豆が……」
テニア「………」
アヤ「テニア?」
テニア「父さん…… あの日、ベルゼルートのテストが終わったら、 母さんと一緒に美味しい日本食の店へ行こうって……」
アヤ「………」
(足音)
カルヴィナ「テニア、食事はもう済ませたの?」
テニア「ううん、これから……」
カルヴィナ「なら、終わってからでいいわ。 ちょっと付き合ってくれる?」
テニア「え?」
アヤ「カルヴィナ、あなた、もしかして……」
(アラート)
テツヤ「全艦に告げる。 レンジ4に所属不明の機動兵器群を確認した。 第一種戦闘配置にて、これを迎撃する。繰り返す……」
アヤ「テニア、あなたはここにいなさい」
テニア「う、うん」
アヤ「カルヴィナ、あなたもよ。くれぐれも自重してね」
カルヴィナ「これでも、しているつもりだけど」
アヤ「……マイ、行きましょう!」
マイ「わかった!」
(速い足音・アヤとマイが走り去る)
カルヴィナ(所属不明の機動兵器……もしかしたら)
カルヴィナ「テニア……あんた、知りたくない?」
テニア「え? 何を?」
カルヴィナ「あの事件の真相よ」
テニア「!」
カルヴィナ「知りたいなら、ついてきなさい」
テニア「だけど、見張りの兵隊さんがいるよ」
カルヴィナ「あたしが何故、リンクス……大山猫と呼ばれていたか、 その理由を教えてあげるわ」


第3話
災い、彼の地より

〔戦域:地球近傍宙域〕

(南東端にハガネがいる。ハガネにアラート)
エイタ「目標群、さらに近づく!  レンジ2侵入まで、あと10秒!」
ギント「副長、 前部副砲とVLSミサイルランチャーで迎撃せよ」
テツヤ「了解! 前部副砲、1番から4番!  上部両舷VLSミサイルランチャー、攻撃用意!」
エイタ「目標群、インレンジ!」
(北西側に敵機が出現)
テツヤ「撃て!」
(南東側の何機かを撃墜)
アヅキ「SRXチーム、PTXチーム、順次発進どうぞ!」
(出撃準備)
リュウセイ「新顔は全機回避しやがったか」
リオ「新型機だから、高性能ってこと?  それとも、パイロットの腕?」
リョウト「それ以前に……本当にゾヴォークの新型なのかな。 どうも系統が違うような……」
イルム「連中の国にも、色んなメーカーがあるはずだ。 毛色の違う機体がいて当然だろうよ」
従士「あれが、ヴァウーラを封印した鋼龍戦隊か……!」
従士「手柄を焦って突出するなよ。 フー=ルー様がヴォーダの門を偵察する間、 連中の足止めすればいい」
従士「ただし、生きて虜囚(りょうしゅう)の辱めを受けてはならん。 我らの素性を、今しばらく伏せるためにもな」
従士「はっ!」
ヴィレッタ「スピリア0より各機!  散開し、敵機を迎撃せよ!」
アヤ「了解! 行くわよ、みんな!」
リュウセイ「おう!」
(作戦目的表示)

〈3PP or 敵機6機撃墜 or 北中央のドナ・リュンピーを攻撃〉

ライ「……あの新型に乗っているのは、 バイオロイドではないようだな」
リュウセイ「ああ。奴ら独特の、動きの違和感がねえ」
リョウト「ゾヴォークの量産型に人間が乗ってるのは、 レアなケースだね」
イルム(色々と怪しいな。 新型をろ獲した方がいいか……?)
(ハガネにアラート)
エイタ「0時方向に重力震反応! 数は5!」
テツヤ「敵の増援か!?」
エイタ「該当するESウェーブ・パターンなし!  まもなく転移出現します!」
(北西端にラフトクランズ・ファウネアとカレイツェドが4機転移出現)

<銃を構えるラフトクランズ・ファウネア>

フー=ルー「あらあら…… やはり、平易(へいい)な相手ではありませんわね、 鋼龍戦隊は」
カルヴィナ「!!」
テニア「あ、あれ、色は違うけど……!」

〔戦域:地球近傍宙域〕

カルヴィナ「あの時の奴と同タイプ! 急ぐわよ、テニア!」
テニア「でも、どこへ…… あ、もしかして、ベルゼルート!?」
カルヴィナ「当たり前よ! 手掛かりを逃がしはしない!」
フー=ルー「……あの紛い物は出ていませんわね。 ハガネに搭載されているはずだけど」
従士「フー=ルー様、何故、こちらへ……!?」
フー=ルー「従士のあなた達には、荷が重いでしょう。 下がりなさい」
従士「し、しかし、フー=ルー様は ヴォーダの門へ……」
フー=ルー「鋼龍戦隊が出て来たのなら、話は別ですわ。 さあ、あなた達はオルゴ転送基の 転移出現ポイントへ向かいなさい」
フー=ルー「まもなく、アル=ヴァンも駆け付けましょう。 彼に合流するのです」
従士「は、はっ!」
(ドナ・リュンピーが全機撤退)
アヤ「味方を下がらせた……?」
イルム「ゾヴォークだったら、俺達のことは知ってるはずだ。 それなりの自信があるみたいだな」
フー=ルー(赤い母艦……そして、『鍵』もいませんわね。 もっとも、『鍵』がないのは 今の私達も同じですが……)
ヴィレッタ「スピリア0より各機。 クロスゲート宙域への到達が急務だ。 新型機を集中して狙い、ハガネの突破口を開く」
フー=ルー(……本音を言えば、騎士として 彼らと一度手合わせをしてみたかったのです)
フー=ルー(ヴァウーラを封じたあなた達の力、 直に確かめさせていただきますわ)
(作戦目的表示)

〈NEXT TURN PP or ラフトクランズ・ファウネアのHP70%〉

テツヤ「……何だと?  いや、出撃許可は出していない。 ……ああ、こちらからも呼びかける」
マイルズ「どうした、副長?」
テツヤ「カルヴィナ・クーランジュと フェステニア・ミューズがベルゼルートに搭乗し、 発艦するつもりのようです」
マイルズ「何だと!? この情況で逃げる気か!」
テツヤ「艦外に出た方が危険だと思いますが」
マイルズ「フン、民間人に勝手な真似を許すとは……!  まだ弛みがあるようだな、この艦には」
テツヤ「……申し訳ありません」
マイルズ「民間人を機体から降ろし、身柄を拘束しろ。 非常時だ、実力を行使しても構わん」
テツヤ「了解。民間人2名の身柄を拘束します。 出来るだけ穏便に、かつ迅速に」
マイルズ「うむ、ベスト・アンサーだ」
テツヤ「アヅキ、ベルゼルートにつないでくれ」
アヅキ「了解、つなぎます!」
(通信)
テツヤ「副長のテツヤ・オノデラだ。 応答せよ、カルヴィナ・クーランジュ元少尉」
カルヴィナ「……ああ、ちょうどいいわ。 あたし達は出撃する。ハッチを開けてちょうだい」
マイルズ「出撃だと……?」
テツヤ「本艦は戦闘中だ。許可できない。 直ちに機体から降りろ」
カルヴィナ「このベルゼルートはあんた達の物じゃないわ。 どう使おうが、あたしの勝手でしょ」
テツヤ「艦を出て、どうする気だ?」
カルヴィナ「緑色の新型……あれは、 アシュアリー・クロイツェルを襲った奴の同型機よ」
テツヤ「!」
カルヴィナ「つまり、あたしの仇の手掛かりってこと。 見逃すつもりはないわ」
テツヤ「………」
マイルズ「副長、民間人の出る幕ではない。 彼女の身柄は今、我が隊の管轄下にある」
マイルズ「こちらの命令に従わないのであれば、 実力を以て拘束せよ」
テツヤ「司令、意見を具申してもよろしいでしょうか?」
マイルズ「何だ?」
テツヤ「ベルゼルートを出撃させましょう。 それで、敵の正体と目的の手掛かりが 得られるかも知れません」
カルヴィナ(……!)
マイルズ「何を馬鹿なことを!  今のカルヴィナ・クーランジュは 軍人ではないのだぞ!」
テツヤ「その通りですが、以前はエースでした。 さらに、我が隊は民間人との共同作戦展開において、 実績があります」
マイルズ「それは私が着任するまでの話だ!  だいたい、民間人を軍事作戦で登用すること自体に 大きな問題があるのだよ!」
マイルズ「しかも、彼女らとベルゼルートは、 アシュアリー・クロイツェル襲撃事件の 重要参考人及び証拠物なのだ!」
テツヤ「ベルゼルートを出せば、敵が何らかの反応を 見せるかも知れません。現状では、敵の素性と目的に 関する手掛かりを少しでも得ることが必要かと」
テツヤ「自分は、これがこの情況において 最も穏便かつ迅速な処理手段だと判断します」
マイルズ「そんなもの、ベスト・アンサーでは……!」
カルヴィナ「早くハッチを開けてもらえないかしら?  でなきゃ、手荒に行くわよ。不本意だけどね」
マイルズ「脅迫する気か! これは立派な犯罪だぞ!」
テニア「……カルヴィナ、本気なの?」
カルヴィナ「ブラフよ。それより、ベルゼルートの通常起動を。 出来るわね?」
テニア「うん。 イグニッション・シーケンス、始めるよ」
マイルズ「私が司令である以上、このような暴挙は許さん!」
アヅキ「ベルゼルート、起動!」
マイルズ「お、おのれ、図に乗りおって!」
ギント「司令、 このままでは格納庫内部が損壊しかねませんが、 よろしいか?」
マイルズ「貴様……副長の肩を持つ気か?」
テツヤ(艦長……)
ギント「この艦を預かる身として、そう判断したまで。 損害を出さなければ、釈明のしようはありましょう」
マイルズ「ぬ……」
ギント「私の独断、事後報告という体でも結構」
マイルズ「そうまでして、責を逃れるつもりはないが…… やむを得ん、ベルゼルートを出せ」
テツヤ「了解です」
(ベルゼルートが出撃)
イルム「ベルゼルート……!」
テニア「サイトロン・リンケージ率、許容範囲。 システム・オール・グリーン。行けるよ、カルヴィナ」
カルヴィナ(本当にテニアが乗らなきゃ動かないなんてね……)
イルム「カルヴィナか?」
カルヴィナ「ええ、もちろん」
イルム(よくあの堅物が出撃を許可したもんだ)
ヴィレッタ「カルヴィナ・クーランジュ、 お前の助けは必要ないわ。戻りなさい」
カルヴィナ「そちらを助ける気なんてない。 あたしの目的は、緑色の新型を捕まえることよ。 あいつは、仇の手掛かりだから」
ヴィレッタ「何……?」
カルヴィナ「あの機体は、アシュアリー・クロイツェルを 壊滅させた奴と同型なのよ。絶対に逃がさない。 このベルゼルートで追い詰める」
リオ「でも、あの機体はカルヴィナ元少尉だけじゃ 動かせないはずなのに……!」
アヤ「もしかして、テニアも!?」
テニア「うん、そうだよ」
アヤ「カルヴィナ、あなた!」
カルヴィナ「勘違いしないで。 無理矢理乗せたわけじゃないから」
テニア「そう、あたしは自分の意志でこれに乗ってる。 あの事件の真相を知って、父さんや母さん達の仇を 討つために……!」
マイ「テニア……」
フー=ルー「やはり、ベルゼルートは ハガネに収容されていましたわね」
フー=ルー「紛い物とは言え、鋼龍戦隊の手許に置いておくのは 得策ではありません……」
フー=ルー「私がここで始末して差し上げます」
(ラフトクランズ・ファウネアが少し南東に移動)
リュウセイ「あいつ、ベルゼルートを……!?」
ヴィレッタ(向こうにも狙う理由がある……?)
カルヴィナ「テニア、サイトロン・システムを使えると言っても、 邪魔だけはしないで」
テニア「そんな言い方……あたしだって!」
カルヴィナ「あなたは単なる鍵よ、この機体を動かすためのね。 戦闘はあたしに任せなさい」
テニア「………」
ヴィレッタ「敵新型機の狙いはベルゼルートだ。 近くにいる機体は援護しなさい」
(作戦目的表示)

〈vs フー=ルー〉

[リュウセイ]

リュウセイ「俺もリョウトの意見に賛成だな!  あのアウトラインは、ゾヴォークの物じゃねえ!」
フー=ルー(ラフトクランズ・ファウネアの力、 あなたに見せて差し上げますわ)

[イルム]

イルム「さて、奴はゾヴォークの新型か、あるいは……」
フー=ルー(フューリーの騎士として、 あなた達と戦える機会を待っていましたわ)

[イング]

イング(違和感を感じる…… 奴らはゾヴォークじゃないのか?)
フー=ルー(私達は、あなた達のことを良く知っていますのよ)

[リョウト]

リョウト「やっぱり、これまでに接触したゾヴォーク機との つながりが見えない。あの機体は特に……」
フー=ルー(地球軍の中でも随一の戦力…… さあ、存分に振るってみせなさい)

[カルヴィナ]

カルヴィナ「お前は! お前達は何者だ!?  何故、アシュアリー・クロイツェルを襲った!?」
フー=ルー(悪運が強いようね。 でも、私を相手にして、それが通用するかしら?)

〈6PP or ラフトクランズ・ファウネアのHP30%〉

フー=ルー「……そろそろアル=ヴァンから 連絡が来ていいはず。手間取っているのかしら?」
(ラフトクランズ・ファウネアに警告シグナル)
フー=ルー「これは……!」
(ハガネにアラート)
エイタ「強力な中性子線、重イオン線、ガンマ線を感知!  クロスゲートより放出されたと思われます!」
テツヤ「何っ!?」
エイタ「しかも、ルイーナ決戦時の観測データに 近しい数値です!」
テツヤ「まさか、奴らがゲートから現れる前兆か!?」
マイルズ「ど、どういうことだ!?」
ギント「メイン・スクリーンにクロスゲートの映像を出せ。 アヅキ曹長、監視艦隊とコンタクトを取れ」
アヅキ「りょ、了解!」
エイタ「クロスゲートの望遠映像、出ます!」

<クロスゲート>

(クロスゲートがバースト現象を起こし、光の束が地球に降り注ぐ。閃光)

〔戦域:地球近傍宙域〕

マイルズ「な、何だ……何が起きている……!?」
テツヤ「地球に降り注がれた物は、いったい……!?」
ギントMOSSとサテライト・リンクを用い、 情況を調査せよ」
エイタ「先程の現象の後、アクセスを試みていますが、 接続不可! さらにレーダーやセンサー類も まともに機能しなくなりました!」
エイタ「まるで、強力なEAを受けたかのような……」
マイルズ「なっ……!」
ギント「アヅキ曹長、監視艦隊とのコンタクトは?」
アヅキ「取れません! 他所との相互通信も不可能です!」
テツヤルイーナの次元断層と似たような…… いや、地球が見えているだけマシか)
フー=ルー「よもや、こんなに早くヴォーダの門が開くとは……!  事態は思っていた以上に深刻ですわね」
フー=ルー「かくなる上は、私も……」
(ラフトクランズ・ファウネアが撤退。残った敵機が撤退)
カルヴィナ「逃がしはしない!」
イルム「待て、カルヴィナ!」
カルヴィナ「あたしに構うな!」
イルム「冷静になれって。 この情況で飛び出せば、奴どころか 帰る所まで見失うぞ」
イルム「それに、敵は奴だけじゃない。補給も必要だろう。 たった1機じゃ、どうしようもないぜ。 普段のあんたなら、すぐにわかることじゃないか?」
カルヴィナ「………」
カルヴィナ(あいつはベルゼルートを狙ってきた。 これに乗っていれば、チャンスはあるか……)

《L1宙域(鋼龍戦隊)》

[ハガネ ブリッジ]

マイルズ「……統合参謀本部とは、まだつながらんのか?」
アヅキ「はい……」
テツヤ「司令、MOSSの機能は復帰しつつあります。 クロスゲート方面や月、L4宙域での 爆発光は、以前として確認できません」
マイルズ「監視艦隊は無事か。 だが、あの光のシャワーが降り注いだ地球は……」
テツヤ「目視での異常も見当たりません」
マイルズ「だが、あれだけのことが起きたのだぞ。 地球に何も影響がないとは到底思えん」
テツヤ「………」
テツヤ(いつかはあのようなことになるかも知れないと 思っていたが……さほど前兆もなく……)
(雑音)
アヅキ「司令、統合参謀本部とコンタクトが取れました!」
マイルズ「おお、つないでくれたまえ」
(モニターオン)
ダニエル「ダニエル・ハウエルだ。 マイルズ准将、諸君らも無事だったようだな」
マイルズ「ということは、クロスゲート監視艦隊も?」
ダニエル「ああ、健在だ。 諸君らは彼らとの合流を目指してくれたまえ」
ダニエル「先程の発光現象後、 クロスゲートは沈黙しているそうだが…… この後、何が起きるかわからんのでな」
ギント「はっ。本艦はクロスゲート宙域へ急行し、 監視艦隊と合流します」
ダニエル「では、そちらの報告を聞こう……」

[ハガネ 艦内(ラウンジ)]

マイ「じゃあ、地球は無事……?」
リュウセイ「ああ。さっき、ブリッジにいるエイタが こっそりDコンにメッセージをくれた」
リュウセイ「広範囲で通信障害やネット障害が起きたものの、 大きな被害は出てねえって」
ライ「発端がクロスゲートだけに、 それだけで済むとは思えん」
リュウセイ「けど、ルイーナみてえのが 出てこなかっただけマシじゃねえか」
ヴィレッタ「私はライと同意見よ。 あれで終わりだという保証はないわ」
リュウセイ「じゃあ、今、ゲートは開いてるのか?  それとも、閉じてんのかよ?」
マイ「外から見れば、 いつも開いているように見えるけど……」
ヴィレッタ封印戦争後、無人偵察機が 何度かクロスゲートの中へ送り込まれたが、 その全てが消息を絶ったそうよ」
リュウセイ「でも、偵察機がゲートの向こうへ行けるってことは…… 開いてんだな」
イング「結局、あの中から戻ってこられたのは、 アダマトロンを倒した僕達だけなんですね」
ライ「今の所はな」
リュウセイ「その内、クロスゲートの中へ入れっていう 命令が出るかもな」
マイ「……嫌だ、それは。 あの中は気持ちが悪い……負の念が渦巻いてるから」
ヴィレッタ「リュウセイが言った通り、 発光現象の原因調査を命じられる可能性は高い。 覚悟をしておいた方がいいかも知れないわね」
リュウセイ「自分で言っといて何だけど、勘弁して欲しいぜ」

[ハガネ ブリッジ]

マイルズ「な、何ですと……!?  カルヴィナ・クーランジュを 再任官させるのですか?」
ダニエル「そうだ。 彼女とベルゼルートを鋼龍戦隊で運用せよ。 民間人の同乗者も込みでな」
テツヤ(まさか、俺の具申が現実になるとは……)
マイルズ「し、しかし……」
ダニエル「カルヴィナ・クーランジュも 民間人の少女も、自らの意志で ベルゼルートに乗り込んだのだろう?」
マイルズ「……その通りです」
ダニエル「戦闘区画への侵入、軍の管轄下にある機体の強奪、 無断出撃などの行為は、全て不問に付す」
ダニエル「なお、これは私の後ろで君の報告を聞いていた ギャスパル・ギラン元帥閣下が、 つい先程決断されたことだ」
マイルズ「!」
ダニエル「正式な手続きについては、 後で担当者から連絡させる」
マイルズ「元帥閣下が何故、一少尉の扱いなどに……」
ダニエル「詳細を説明せねばならんか?」
マイルズ「い、いえ。カルヴィナ・クーランジュ少尉と ベルゼルートを我が戦隊で運用し……」
マイルズ「アンノウンの反応を記録致します」
ダニエル「それでいい。では、以上だ」
(通信が切れる)
マイルズ「聞いての通りだ、艦長。編成案を述べよ」
ギント「では、彼女が最初に接触したPTXチーム預かりと いうことでいかがでしょう」
マイルズ「それでいい」
ギント(どうやら、囮役を押し付けられたようだな……)

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

イルム「……というわけで、 PTXチームで新人を預かることになった」
カルヴィナ「自己紹介しろとでも言いたげですね、中尉」
イルム「立場だけじゃなく、態度も改まったか」
リオ「まさか、究極のトップダウンで決まるなんて……」
リョウト「司令も驚いただろうね」
カルヴィナ「元帥閣下直々の命令だなんて、身に余る光栄だわ」
アヤ「カルヴィナ少尉、 あなたはそれでいいかも知れないけど、 テニアを巻き込む必要があるの?」
カルヴィナ「ご存じでしょう、大尉。 ベルゼルートはテニアが乗らないと起動しないんです」
アヤ「だからと言って……」
テニア「いいの」
アヤ「え?」
テニア「カルヴィナに言われたからじゃなく、 あたし……自分で乗りたいと思ったから」
テニア「ベルゼルートに乗って、 父さんや母さん、カティア達の仇を討ちたいから」
アヤ「………」
カルヴィナ「じゃあ、テニア。 ベルゼルートの整備に付き合ってもらうわ。 あたし達が生き残り、目的を果たすためにね」
テニア「……わかったよ」
カルヴィナ(これでいい。ベルゼルートのパーツは揃った)
カルヴィナ(後は……戦い続けるだけ)


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