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泥人形の罠 地上ルート ~ 第3話 ~

《日本 札幌地区近郊》

[シウン家 リビング]

ジンプウ「そうか……事情はわかった。 色々と大変だったな」
アキミ「それで、グランティードって機体だけどさ…… どうしたらいいかな」
ジンプウ「街中で戦闘したんだ、 地球連邦軍に引き渡すしかなかろうよ。 先方には一報入れてあるんだよな?」
(ショウコはエミィ・アーマーのまま)
ショウコ「ええ」
ジンプウ「しかし、妙だな。 事が終わる前に千歳の部隊が 駆けつけても良さそうなもんだが」
アケミ「この辺り一帯……ううん、もっと広範囲で 通信障害やネット障害があったみたいだから、 そのせいかも。空港も混乱しただろうし」
ジンプウ「まあ、こうやって通信はできるようになったがな。 ともかく、連邦軍が来るのを待って、 グランティードとやらを引き渡せ」
トーヤ「あの、俺も……カティアやメルアも 一緒に行った方がいいんでしょうか」
ジンプウ「そうだな……事情聴取をされるだろうが、 それを嫌って逃げたり、下手に隠し事をするのは まずいぜ」
トーヤ(隠し事なんて…… 何もわからないのに、そんなの出来るわけがない)
カティア「尋問……ということもあり得ますよね」
メルア「えっ……」
(コウタはロア・アーマーのまま)
コウタ「心配すんな。お前らに妙な真似はさせねえよ。 極東方面軍には知り合いが何人かいるしな」
ジンプウ「なら、頼むぜ。 アキミ、アケミ、ソウルセイバー回収の手はずは こっちで整えとく。しばらくの間、そこで待ってな」
アケミ「わかったわ、ジンプウさん。 ところで、お父さんの方はどう?」
ジンプウ「ああ、さっき連絡が取れたぜ。 向こうは向こうでゴタついてるようだがよ」
アケミ「そう……大丈夫かな」
ジンプウ「海上プラントのことは、社長に任せときゃいい。 じゃあ、また後で連絡するぜ」
(通信が切れる)
コウタ「もうすぐ軍の連中が来るかも知れねえからな。 俺とショウコはカイザーに乗っとくぜ」
アキミ「ああ、わかった」
コウタ「行くぞ、ショウコ」
ショウコ「うん、お兄ちゃん」
(扉が開く・コウタとショウコが立ち去る)
トーヤ「……なあ、アキミ。お前達が忙しかった理由って、 あのロボットなのか?」
アキミ「ああ……モガミ重工が開発したマイティウォーカー、 ソウルセイバーだ。簡単に言えば、量産を前提とした スーパーロボット……その試作機さ」
トーヤ「お前とアケミがパイロットをやってたなんて……」
アキミ「俺さ、小さい頃からロボットに乗りたかったんだ。 それで、親父に無理言って、 こいつが扱いやすい機体だってことを……」
アキミ「極端な話、訓練すれば俺達みたいな高校生だって 操縦できるってことをクライアントに証明するため、 テストパイロットを買って出たのさ」
トーヤ「クライアントって……地球連邦軍か」
アキミ「そうさ」
アケミ「だから、秘密にしてたの。ごめんなさい」
トーヤ「あ、いや、それはいいんだ。 ただ、二人があんなのに乗って、 戦ってたことが驚きで……」
(飛行音)
アキミ「この音……連邦軍部隊が来たのか?」
アケミ「私達も行った方がいいわね。 トーヤ達はここに残ってて」
トーヤ「あ、ああ……」


第3話
泥人形の罠

〔戦域:シウン家周辺〕

(シウン家の西側にグランティード、ソウルセイバー、Gコンパチブルカイザーがあり、 南東にレリオン、リオン・タイプVが多数出現)
コウタ「やっと来てくれたか」
連邦軍兵(北のレリオン)「あの連中……俺達が出遅れたとは言え、 到着する前に敵を片付けるとはな」
連邦軍兵(南のレリオン)「隊長…… 3体の内、2体は該当するデータがありません」
連邦軍兵(北のレリオン)「ああ。上に話が行っているかも知れんが、 念のため、現場を押さえる。各機、直ちに……」
(北側のレリオンに術が掛かる)
連邦軍兵(南のレリオン)「隊長?」
(隊長機以外にも術が掛かり、ゆっくり西へ移動する)
コウタ「何でえ、フラフラ飛びやがって」
(リオン群が西へ移動)
ショウコ「ホント、様子が変……」
コウタ「通信を入れてみるか。カイザーに乗るぜ」
(リオン群が西へ少し移動)
ロア「……コウタ、彼らの接近を許すな。 迎撃態勢を取れ」
コウタ「へ? どうして?」
ロア「カイザー・スキャナーであの機体を調べた。 妙な反応がある。おそらく、これは……」
コウタ「何だってんだよ?」
ロア「あの時の連中だ。すぐに身構えろ!」
コウタ「あ、ああ」
(Gコンパチブルカイザーがリオン群の方を向くと、 Gコンパチブルカイザーに砲撃。ソウルセイバーFFもリオン群の方を向く)
コウタ「う、撃ってきやがった!」
アキミ「な、何でだよ!? 連邦軍だろ!?」
ロア「あの時と同じだ……。 おそらく、パイロット達は操られている」
コウタ「どういうことでえ!?」
ロア「いいから、迎撃しろ!  向こうは、何のためらいもなく仕掛けてくるぞ!」
コウタ「わ、わかったよ!  アキミ、アケミ、お前達はトーヤ達を連れて、 ソウルセイバーで逃げろ!」
アケミ「え、ええ!」
ショウコ「ロア、連邦軍の機体を操ってるのって、 封印戦争前にショウコ達を襲ってきた……」
ロア「ああ、間違いない」
アケミ「アキミ、コックピットに3人も入らないわ。 掌の上に乗ってもらいましょう」
アキミ「………」
アケミ「アキミ、聞いてるの!?」
アキミ「……アケミ、 そっちでもFCSをチェックしてくれ」
アケミ「あなた、戦うつもりなの!?  あのアーマードモジュールには、 連邦軍の人が乗ってるのよ!」
アキミ「わかってる……わかってるよ!  だけど、何とかして止めなきゃ、俺達の街が!」
トーヤ「……!」
コウタ「何やってんだ、アキミ! 早く行きやがれ!」
アキミ「ここは俺の街だ、俺も戦うぜ!  連邦軍機を動けないようにすりゃいいんだろ!」
コウタ「そう簡単に済む話じゃねえ!」
ロア「……コウタ、彼らの狙いはカイザーだ。 故に俺達で誘導することが出来る」
コウタ「カイザーが狙い……?  待てよ……そうか、思い出したぜ!」
コウタ「あのアーマードモジュールを操ってんのは、 いつぞやのアメーバ野郎か!」
ロア「ああ。だから、援護機はいた方がいい」
コウタ「連中なんざ、俺一人で充分でえ!」
ロア「あの時、 カイザーは彼らに取り付かれ、操られたのだ。 そして、次元の扉が開かれ……」
ロア「俺達は、異世界へ跳ばされた。 そのことを忘れたか」
コウタ「……!」
ロア「彼らの接近と接触を許してはならない。 そして、パイロットを傷つけることなく、 機体を行動不能にする必要がある」
ロア「これは、難度の高いミッションだ。 街への被害を抑えるためにも、 ここはアキミの力を借りた方がいい」
コウタ「だがよ、あいつらはまだ……!」
アキミゾヴォークとの戦闘だって、何とかやれたんだ。 俺にも手伝わせてくれ。テスラ・ドライブを 上手くぶっ壊せば、動きを止められるだろ」
コウタ「……わかった。 だけど、迂闊に前へ出るんじゃねえぜ。 トーヤ達もいるんだからよ」
アキミ「ああ。いいな、アケミ?」
アケミ「くれぐれも無茶しないでよ。私達は、 あくまでテストパイロットなんだから。 何度も幸運が続くと思わないで」
アキミ「わかってる!  トーヤ、お前達はそこから逃げろ!」
トーヤ「ま、また戦うのか、アキミ……!?」
アキミ「ああ、俺はソウルセイバーのパイロットだからな!  ここで逃げ出すわけにはいかない!」
トーヤ「………」
アキミ「心配すんな、お前の家とグランティードは 俺達が守ってやる! だから、逃げろ!」
トーヤ「……あ、ああ!」
(グランティードを指す)
トーヤ(あんなの、俺にはどうすることも……)
トーヤ(わけもわからず……父さんも死んで…… 俺には、無理だ……)
ロア「コウタ、アキミ、相手の隣接を許すな。 機体が侵蝕される恐れがある」
コウタ「連中にうっかり近寄らねえようにして、 行動不能にすりゃいいんだな!」
ロア「ああ。極力、射撃武器を使え」
(市街地を指し、作戦目的表示)

〈敵機が全て撤退〉

アキミ「な、何とか終わったか……」
ロア「連邦軍機は全て行動停止…… パイロットの生体反応もある」
コウタ「取り付いてたアメーバ野郎は?」
ロア「彼らの反応はない。 機体が行動不能になった時点で、消えたようだ」
コウタ「てっきり、一つにまとまって カイザーを襲ってくるかと思ってたが……」
ショウコ「あの時みたいに、ゲートも開かなかったしね」
コウタ「あいつら、いったい何者なんだ?  どこから来てやがんだ……?」

《日本 札幌地区近郊》

[シウン家 リビング]

カイ「……色々と苦労をかけたな、コウタ。 パイロットを救ってくれたことにも礼を言う」
(コウタはロア・アーマーのまま)
コウタ「アメーバ野郎が何で今頃になって また出て来たのか、その理由はわからねえが…… 狙いは相変わらずカイザーだ」
カイ「ならば、コンパチブルカイザーを 市街地にいさせるのは危険だな」
コウタ「そりゃわかってるよ。 とりあえず、モガミ重工の試験場へ戻ればいいか?」
カイ「いや、渡島半島にある 八雲基地へ向かってくれないか」
コウタ「千歳じゃねえのか?  そこが一番近え基地だって聞いたけど」
カイ「俺達特殊戦技教導隊は、訳あって 積丹半島方面へ向かうことになっている。 八雲はそのルートの途中にあるのだ」
コウタ「訳って、何でえ?」
カイ「機密事項だ。言えん」
コウタ「そうかよ。 なら、八雲って所へ行ったら、 そっちと合流し易いってえことだな?」
カイ「そうだ。 グランティードという機体も 八雲基地へ移送させられるか?」
コウタ「ああ、カイザーでぶら下げりゃあな」
(ショウコはエミィ・アーマーのまま)
ショウコ「あの、カイ少佐…… トーヤさんとカティアさん、メルアさんは どうすればいいんでしょうか」
カイ「色々と事情を聞く必要がある。連れて来てくれ。 モガミ重工のテストパイロットもだ」
コウタ「もしかして、ソウルセイバーごとか?」
カイ「うむ。 そこに1機だけ置いておくわけにもいかんだろう」
コウタ「結構キツそうだが……下からバーニアを 噴かしてもらえりゃ、何とかなるか」
カイ「それと、もう一つ……」

[シウン家 トーヤの部屋]

カティア「八雲……基地?」
(コウタはロア・アーマーのまま)
コウタ「ああ。 ちょいと離れてるがよ、今から向かうことになった。 ここにいる全員でな」
トーヤ「ということは、父さんも……」
コウタ「そうでえ」
トーヤ「……わかった。ずっとここに寝かせておくわけに いかないもんな……」
メルア(トーヤさん……)
トーヤ(俺と父さん……この家に戻れるのかな……)

[トーヤ家 リビング]

アケミ「ねえ、アキミ…… さっきのアーマードモジュール、 人が乗ってたよね……」
アキミ「ああ……誰も死なせずに済んで良かった」
アケミ「でも、もしかしたら、 誰かを死なせてたかも知れない」
アキミ「……わかってる。 実戦に出るって、そういうことなんだよな……」
アキミ「宇宙人や怪物に俺達の街を めちゃくちゃにされたくない…… そんな気持ちでいっぱいだったけど……」
アケミ「うん……今になって、怖くなってきた……」
アケミ(それだけじゃない……。 もし、このまま戦い続けることになったら、 いつか私達だって……)


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