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ソウルセイバー対コンパチカイザー 地上ルート ~ 第1話 ~

いつからか、よく同じ夢を見ていた。
暗闇の中にぽつんと座り、
祈るような仕草でこちらを見ている女の子の夢だ。

とても綺麗で、とても悲しそうな瞳をした彼女は、
いつもこう言う。

<中央で祈っている少女>

(眼を閉じていた少女が眼を開ける)
???(シャナ=ミア)「許して……どうか許して下さい…… 私達は、再び禁忌に触れてしまった……」
???(シャナ=ミア)「災いを、この世界にもたらしてしまった…… たとえ、それが定められた運命であったとしても、 私達に咎がある……」
???(シャナ=ミア)「鍵となるのは、皇家の剣(おうけのつるぎ)…… あなたに、重荷を背負わせてしまうかも 知れない私を……」
???(シャナ=ミア)「力なき私を……許して下さい……」

目覚めると
いつも、彼女の言葉をほとんど忘れてしまっている。

覚えているのはただ、
透き通るような髪の周りでキラキラ輝く光の粒子と、
悲しそうなその瞳だけ。

それが、戦いの前触れだったことを、
この時はまだ知るはずもなかった……。

《日本 札幌近郊》

[シウン家]

トーヤ(うう……いつもの夢か……)
トーヤ(何度も見てるのに…… あの子が誰なのか、わからない)
トーヤ(会った覚えのない人間が、 夢に出てくることなんてあるのか……?)
(通知シグナル)
トーヤ(ん? 振り込みの通知……)
トーヤ(金さえ渡しておけば、子供は勝手に育つ…… そう思ってるんだろうさ、父さんは)
(アラーム)
トーヤ(もうこんな時間か。学校に行かなきゃ)

《日本 札幌地区近郊》

[高校 校内]

アキミ「……眠そうだな、トーヤ。 また遅くまでバーニングPTやってたのか?」
トーヤ「そういうわけじゃないけど、寝覚めが悪くてさ」
アケミ「あ……もしかして、例の夢のせい?」
トーヤ「ああ」
アキミ「とびきりの美少女に起こされてるようなもんだろ。 いいよなあ。俺なんて、毎日見飽きた双子の姉貴だぜ」
アケミ「それが嫌なら、自分で起きてよね」
アキミ「しょうがないだろ、ここ最近は忙しいんだからさ」
アケミ「あなただけじゃないでしょ」
アキミ「まあ、そうだけど」
アケミ「それより、トーヤ…… カウンセラーに相談した方がいいんじゃない?  こないだ、先生に勧められてなかった?」
トーヤ「そうだけど……」
アキミ「なあ、トーヤ。カウンセラーって?」
トーヤ「ああ、定期的に相談しろって言われてるんだ。 うちは両親がいなくて、俺、一人暮らしだろ」
トーヤ「そういう家庭への対処、 先生達がナーバスになってるみたいなんだ」
アキミ「戦災復興の一環で?」
トーヤ「いや、前に俺みたいな境遇の生徒が 行方不明になったらしくて……」
トーヤ「それで、学校側もケアをしっかりやれとか、 偉い人から言われたんじゃないか」
アキミ「お前も好きで一人暮らしを やってんじゃないのにな……」
アケミ「ね、トーヤ。 良かったら、またご飯作りに行ってあげるよ」
トーヤ「助かるけど、忙しいんじゃなかったか?」
アキミ「そうそう。特に今日はな」
トーヤ「何かあるのか?」
アキミ「実は、ソウ……」
アケミ「はい、ストップ。社外秘でしょ」
アキミ「おっと、いけねえ。うっかりしてた」
アキミ「とにかく、今日は学校が終わったら 速攻で帰らなきゃならないんだ」
トーヤ(……社外秘の社って、モガミ重工のことだよな)
トーヤ(結構大きな企業なのに、 社長の子供が手伝わなきゃならないなんて…… そんなに人手不足なのか?)

《日本 札幌地区西部 山中》

[モガミ重工 試験場施設内]

(扉が開く)
アキミ「来たぜ、ジンプウさん」
ジンプウ「おう、ちょうど良かった。 東京からのお客が到着した所でな。 紹介しよう、こちらが……」
コウタ「コウタ・アズマだ」
ショウコ「妹のショウコです。よろしくお願いします」
(アキミが驚いている)
アキミ「………」
コウタ「何でえ、その面ぁ?」
アキミ「も、もしかして、 コンパチブルカイザーのパイロットって…… ファイター・ロアって……」
コウタ「おう、俺のこった」
アケミ「え、ええーっ!?」
コウタ「つーか、ファイター・ロアのことを知ってんのか」
アキミ「あ、ああ……ネットじゃ、結構有名だよ。 東京の浅草に現れて、修羅と戦った 赤い鎧の等身大ヒーロー……」
アケミ「そ、それが 私達と同い年くらいの子だったなんて……」
アキミ「驚きだぜ、マジで……」
コウタ「目立つコンパチカイザーならわかるけどよ、 ファイター・ロアも有名だったなんて 知らなかったぜ」
アキミ「何言ってんだ、観光客が浅草で撮った動画、 ネットにいくつもアップされてるよ」
コウタ「へ~え。 ま、結構派手に飛び回ってたからな」
アケミ「もしかして、知らなかったの?」
コウタ「おう。ネットなんざ、あんまり見ねえからな」
アケミ「ええっ、今時? 買い物とかどうしてるの?」
コウタ「近所の店へ行くに決まってンだろうが」
アケミ「そうじゃなくて、通販とか」
コウタ「そういう面倒なのは御免でえ」
アケミ「通販が面倒って……」
ショウコ「あっ、いいんです、お兄ちゃんは。 Dコンをあまり使わない人だし」
ショウコ(浪費家のお兄ちゃんに通販とかやられたら、 大変なことになっちゃうもんね~)
ジンプウ「アキミ、アケミ。 お前さん達、まだ自己紹介してねえだろ」
アキミ「おっと、そうだったな。 俺はアキミ・アカツキ。で、こっちが……」
アケミ「アケミ・アカツキよ」
コウタ「アキミとアケミ? ややこしいな、おい」
アキミ「よく言われるよ」
アケミ「よろしくね、コウタ君」
コウタ「呼び捨てでいいぜ、呼び捨てで」
アキミ「じゃあ、こっちも」
ジンプウ「ともかく、コウタにショウコ…… 遠い所からよく来てくれたな」
コウタ「爺ちゃんとジンプウさんが 古なじみだからってこともあるけどよ……」
コウタ「ここにカイザーが落ちてきたって話を ロアから聞いてたからな。 一度は来てみてえと思ってたんだ」
アキミ「こ、ここに!? マジで!?」
ジンプウ「おう」
コウタ「実は、コンパチカイザーは別の世界でこさえられた ロボットでよ。ダークブレインっていう悪玉と やり合って、俺達の世界へ飛ばされちまったんだ」
コウタ「で、落ちた先が、この試験場だったんだとさ」
ジンプウ「そこには俺と社長、キサブローさんが居合わせた」
アキミ「し、知らなかった……!」
アケミ「それで、その……ロアって人は?」
コウタ「コンパチカイザーの本来の持ち主で、 ダークブレイン一派と戦ってた男さ。 俺にロア・アーマーをくれた」
アケミ「ここには来てないの?」
コウタ「今のあいつは身体がなくてよ。 アーマーに付いてるクリスタルの中にいるんでえ」
アキミ「ちょい待ち、身体がないって……」
コウタ「さっき、ロアがダークブレインとやり合って、 こっちに飛ばされて来たっつったろ。その時にゃ、 ロアもカイザーもひどい状態だったそうだ」
ジンプウ「ああ……ロアが存在し続けるには、 損傷した身体を捨て、クリスタルに 自らの魂を宿らせるしかなかった」
コウタ「カイザーの方は爺ちゃんが時間を掛けて 修復したんだけどよ」
アケミ「い、色々と込み入った事情なのね……」
コウタ「で、修羅の乱の時、浅草に修羅が現れてよ。 俺はロアからアーマーを託され、 ファイター・ロアになったんだ」
アキミ「そうだったのか……」
ジンプウ「さあて、話はここまでだ。 早速、始めよう。アキミ、コウタ、準備してくれ」
アキミ「了解!」
コウタ「わかったぜ、ジンプウさん」


第1話
ソウルセイバー対コンパチカイザー

〔戦域:モガミ重工試験場〕

(東側にコンパチブルカイザーがいる)
コウタ「……来た時は気づかなかったけどよ、 向こうの方も敷地内か。マジで広いな、ここ」
ロア「だからこそ、俺とコンパチブルカイザーの 転移出現を伏せておくことが出来たのだ」
コウタ「ラッキーだったよな。お前が落ちてきた時、 爺ちゃんとモガミの社長が居合わせてよ」
ロア「ああ……かつてのダークブレインとの戦いで、 母艦を失った俺に拠るべき所はなかったからな」
コウタ「母艦? ハガネみてえな?」
ロア「あれよりもっと大型だった」
コウタ「へ~え」
ショウコ「お兄ちゃん、聞こえる?」
コウタ「おう」
ショウコ「もうすぐアキミさん達が出て来るわ」
コウタ「なあ、ショウコ。 終わったら、ウニ丼とかイクラ丼、 味噌ラーメンを食いに行こうぜ」
ショウコ「そんな贅沢できません。どれか一つにして」
コウタ「てやんでえ、せっかく北海道まで来たってのによ」
ジンプウ「わざわざこんな所まで出張ってもらったんだ、 イクラ丼ぐらいなら、後でいくらでも ご馳走してやるよ」
コウタ「おっ、そいつぁ嬉しいねえ」
(西側にソウルセイバーFFが出現)
アケミ「マイティウォーカー・オペレーション・システム、 オールグリーン。出力、問題なし」
アキミ「悪い、待たせたな」
コウタ「ほう、そいつがソウルフードか」
アキミ「そうそう、ジンギスカンとスープカレーが……」
アキミ「って、おい」
コウタ「ヘッ、ジンプウさんの冗談を返しただけだが、 ノリはいいじゃねえか」
ショウコ「ソウルセイバー……コンパチブルカイザーと一緒で、 人間に似た顔が付いてるんだ……」
ジンプウ「相対した者への、心理的効果を踏まえた上での 措置って奴だ。キサブローさんの提案でな。 ま、仁王像なんかと同じってわけよ」
コウタ「よくわからねえ例えだが、悪かねえな」
ジンプウ「よし……まずはFF装備での模擬戦だ。 しっかりやれよ、アキミ」
アキミ「わかってるぜ、ジンプウさん」
コウタ「FF装備って、何だ?」
アキミ「FFは、ファイター・ファーストの略で…… 高機動近接格闘戦装備のことさ。 そして、この形態のメインパイロットは、俺」
アケミ「もう一つ、GG装備っていうのもあって…… それは、重装甲遠距離戦装備なの。 その形態のメインパイロットは、私よ」
コウタ「じゃ、ヒューゴさんとアクアさんの ガルムレイド・ブレイズみたいに、 変形すんのか?」
アキミ「いや、格納庫とかで換装しなきゃ駄目だ」
コウタ「何でえ、面倒だな」
ジンプウ「変形機構を組み込むことは可能だがな。 その分、構造が複雑になっちまって、整備に 手間が掛かり、製造費も上がっちまう」
ジンプウテスラ・ライヒ研究所マオ・インダストリーイスルギ重工のロボットとタメを張るには、 コストや整備性、質実剛健さで勝負しなきゃな」
コウタ「ジンプウさん達は、ソウルセイバーを 地球連邦軍に売り込む気なのか?」
ジンプウ「利益のためだけに、 あれを開発したわけじゃねえが……会社だからな、 慈善事業じゃキツいんだ」
ジンプウ「その点、キサブローさんは凄いぜ。 利益関係なしで、あんなことをやってんだからよ」
コウタ「ま、爺ちゃんは大金持ってるからな。 もっとも、その金は見たことねえし、普段の生活に ほとんど反映されてねえけど」
ショウコ「あったり前でしょ。 お爺ちゃんの開発費や維持費関連はともかく……」
ショウコ「それ以外はショウコが管理しとかないと、 あるだけ使っちゃうんだから」
アケミ「しっかりしてるのね、ショウコちゃんは」
コウタ「つーか、ケチなだけだ。 で、ジンプウさん、連邦軍にどう売り込むんだよ?」
ジンプウ「ああ、パーソナルトルーパーアーマードモジュールなんかは、 量産型が作られているが……」
ジンプウ「現状、スーパーロボットは そのほとんどが限定品みてえなもんだ」
コウタ「確かに。コンパチカイザーと一緒で、 1機だけっつーのが多いな」
ジンプウ「まあ、量産機をたくさん作って、 数で勝負ってのがいいんだろうが……」
ジンプウ「宇宙人のメカや化け物連中は、ゴツいのが 結構いるじゃねえか。もし、そんなのばかりが 出て来やがったら、相手をするのが大変だ」
ジンプウ「そこで、社長と俺は、 量産型スーパーロボットのニーズがあると睨み……」
ジンプウ「強い、低コスト、扱い易いの三拍子揃った 機体の開発計画を立ち上げたんだ」
ジンプウ「もっとも、試作機のソウルセイバーは、 デモンストレーションの意味合いも込めて、 予算度外視で作った部分もあるけどよ」
コウタ「なるほど」
アケミ「私達がテストパイロットをやってるのは、 扱い易さをアピールするためなの」
アキミ「俺は、今のままで終わるつもりはないぜ」
アケミ「またそんな…… いずれは連邦軍のパイロットに 乗ってもらうことになるんだから」
アキミ「おいおい、愛着ないな。 模擬戦が出来る段階まで持ってこられたんだ、 実戦だってやれるさ」
アケミ「ちょっと、何言ってんの」
アキミ修羅の乱の時みたいに、何も出来ないってのは 嫌なんだ。コウタやショウコも戦ってるんだし、 俺だって、ソウルセイバーがあれば……」
ジンプウ「ヒヨッコが生意気なことを言うな。 その二人は、お前さん達が想像も出来ねえ 修羅場をくぐってきてんだ」
ジンプウ「それに、社長が黙っちゃいねえよ。 お前さん達がテストパイロットをやりたいと 言い出した時の騒動を忘れたか」
アキミ「でも、俺達が手掛けたソウルセイバーを、 地球防衛以外のことに使われるわけには……」
ジンプウ「そいつぁ、俺も社長も同じよ。 だが、兵器を作ってる人間が、偉そうに 言えることじゃねえ」
アキミ「………」
ジンプウ「よし、じゃあ、模擬戦を始めよう。 社長がすぐにデータを見たいと、 催促してきたからな」
ジンプウ「アキミ、さっき言った通り、向こうはベテランだ。 胸を借りるつもりでやれ」
アキミ「了解! 行くぞ、アケミ!」
アケミ「ええ!」
コウタ「いっちょ揉んでやるぜ。かかってきな!」
(作戦目的表示)

〈vs コウタ〉

[アキミ]

アケミ「アキミ、出力は向こうの方が上よ!  だから……」
アキミ「わかってる! スピードで勝負だ!」
ロア「コウタ、彼らは戦闘に慣れていない。 無茶をするなよ」
コウタ「だからって、手を抜いたら あいつらのためにならねえぜ!」

[HP3000以下]

ジンプウ「ようし、そこまで!」
コウタ「ヘッ、思ってた以上にやるじゃねえか」
ロア「質実剛健と言いながら、 運動性はなかなかのものだな」
アキミ「見たか、ジンプウさん!  コンパチブルカイザー相手だって、この通りだぜ!」
ジンプウ「調子に乗るんじゃねえ。 向こうは、Gサンダーゲートと合体してない ノーマル形態なんだぞ」
アキミ「ソウルセイバーだって、 飛行ユニットの開発をしてるじゃないか」
コウタ「へえ、そんなのを作ってんだ」
アキミ「ああ、追加武装も込みでね。まだ完成してないけど」
ジンプウ(セイバーブースターを装着させる前に 出力の問題を何とかしねえとな……)
アケミ「……じゃ、次は私の番ね」
ジンプウ「おう、GG装備に変えよう。いったん戻ってくれ。 コウタ、お前さんはしばらく休憩だ」
コウタ「じゃ、俺もひとまず戻るぜ」

[モガミ重工 試験場施設内]

アキミ「どうだ、アケミ。 FF装備でコンパチブルカイザーに勝ったぜ」
アケミ「む~……」
アキミ「次はアケミの番だ。 GG装備でみっともないとこ見せるなよ」
アケミ「ああもう、黙っててよ!  模擬戦の時に確認したいと思ってたチェック項目、 30ヵ所以上あるんだから!」
(扉が開く)
ジンプウ「二人共、社長から通信が入ってるぞ」
アキミ「今、海上プラントにいるんだよな。何だろ」
アケミ「こっちでつなげるわ」
(モニターオン)
ズイウン「……アキミ、FF装備の仕上がりは上々のようだな」
アキミ「ああ、GG装備での模擬戦はこれからだけどよ」
ジンプウ「それが終わって最終調整を済ませたら、 連邦軍に納品だ」
アケミ「待ち遠しいわ、その日が」
アキミ「何だよ、ホントに愛着ないな。 俺達のソウルセイバーとお別れなんだぜ」
アケミ「2号機が残るじゃない」
アキミ「あれは予備機だろ。ほとんど乗ってないし」
アケミ「1号機を納品した後、乗ることになるわよ。 セイバーブースターを開発するためにね」
ズイウン「ところで、お前達やコウタ君に…………む?」
アキミ「親父?」
ズイウン「な、何だ、あれは!?」
アキミ「おい、どうしたんだ!?」
ズイウン「そ、空が……! そっちからは見えてないのか!?」
(雑音の後、通信が切れる)
アケミ「切れた!?」
アキミ「向こうで何が起きてんだ!?」
ジンプウ「社長は空が、と言ってたな。 外へ出て、俺達も見てみよう」
アキミ「あ、ああ!」


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