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漁夫は利を得るか ~ 第26話 ~

《地球近海(ペレグリン)》

[ペレグリン級 ブリッジ]

ヨン「……偵察ポッドが指定宙域に到達しました。 受信映像を出します」
アルバーダ「ああ、頼むぜ」
(モニターオン)
テリウス「うわ……かなりの激戦だね……」
チカ「あっ、ご主人様!  サイバスターが横切って行きましたよ!」
シュウ「ええ……マサキは宇宙へ上がっていたのですね」
チカ「サイバスターに敵の弾が当たりますようにっと」
アルバーダ「……性悪だな、お前は」
セレーナ「メキボスが飛び出して行ったのは、 この戦いを終わらせるためなのよね……?」
ヨン「理由は……それだけではないと思います」
サフィーネ「ふ~ん…… もしかして、セティがヘブンゲートにいるの?」
ヨン「それはわかりません。 だけど、あの人がいなくても、マスターは……」
シュウ「……ゼゼーナン卿の下にいる彼の友人は、 セティだけではないのでしょう?」
ヨン「は、はい……」
シュウ「どうやら、メキボスはゼゼーナン卿と対峙する前に 自分の友人達を説き伏せる気のようですね」
アルバーダ「だから、すぐにゼゼーナンの所へ 行かなかったのか……」
チカ「あいつの友達がどうなろうと、 知ったこっちゃないですよ」
アルバーダ「お前、本当に……ん?  ヨン、画面右下をアップにしてくれ」
ヨン「了解です」
(モニター切り替え)
モニカ「あっ、ゲスト機が……!」
サフィーネ「変ね、被弾してないのに動きを止めたわ」
アルバーダ「ヨン、別の所を複数同時に映してくれ」
ヨン「わかりました」
(キー操作)
エルマ「ゲスト機がどんどん停止していってますね」
モニカ「これはいったい……?」
ヨン「もしかして、機体に乗ってるバイオロイドが……」
セレーナ「一斉に故障したとでも言うの?」
ヨン「いえ、そうではなく、強制停止コードで……」
エルマ「あっ、ヨンさん、4番をアップにして下さい。 鋼龍戦隊の機体とグレイターキンIIが映ってます」
ヨン「はい」
(モニター切り替え)
アルバーダ「おっ、エル公が言った通りだ」
サフィーネ「戦ってるようには見えないわね」
シュウ「どうやら、メキボスは連邦軍とゲストの戦闘を 止めさせることに成功したようですね」
(通信)
ヨン「あっ、マスターからメッセージが届きました」
セレーナ「メキボスは何て言ってきたの?」
ヨン「鋼龍戦隊と接触し、彼らに同行すると」
アルバーダ「何だって……!?」
シュウ「ゲスト軍の主力と対決する可能性が 最も高い鋼龍戦隊にブレーキを 掛けるつもりなのか……」
シュウ「あるいは、彼らと共に実力を行使して ゼゼーナン卿を倒す気かも知れませんね」
チカ「その前に投獄されちゃうんじゃないですか?」
シュウ「メキボスのことです。 そこは上手く鋼龍戦隊と取り引きをするでしょう」
セレーナ「ヨンはどうなるのよ?」
ヨン「この艦を皆さんに預け、 単独でマスターの艦へ戻って待機しろと……」
(アラート)
アルバーダ「何だ?」
ヨン「ヘブンゲートから離脱していく機体を感知しました。 数は1です」
セレーナ「識別は?」
ヨン「ゾヴォークの機動兵器だと思われますが、 該当するデータはありません」
セレーナ「ヨンも知らない新型の機体ってこと?」
ヨン「おそらく……」
シュウ「追跡者はいるのですか?」
ヨン「いえ」
セレーナ「どこへ向かっているの?」
ヨン「月方面です」
アルバーダ「メキボスが何か知ってるかもな。 奴に通信を入れて、確認しろよ」
シュウ「駄目です。鋼龍戦隊に私達の存在を知られる 可能性がありますので」
アルバーダ「知った所で、 こっちに襲い掛かってくるわけじゃあるめえ」
シュウ「余計なことをして、鋼龍戦隊とメキボスの会談を 邪魔したくないのですよ」
アルバーダ「………」
シュウ「それより、離脱していく機体の方が気になります。 もしかしたら、人間の指揮官が乗っているのかも 知れません。直ちに追跡しましょう」
テリウス「え? どうしてだよ?」
シュウ「嫌な予感がするからです」
アルバーダ「アバウトな理由だな。 ……ま、付き合うしかねえか」
ヨン「ですが、私は……」
シュウ「すぐにメキボスの艦へ戻れと 命じられているのですか?」
ヨン「いえ、そういうわけではありませんが……」
シュウ「ならば、多少寄り道をしても構わないでしょう。 あなたがメキボスの役に立ちたいと思うのなら、 私に従って下さい」
ヨン「……わかりました。目標の追跡を開始します」

《月 ムーンクレイドル》

[ムーンクレイドル 内部]

クェパロク「橋頭堡を失ったようだな、ゼゼーナン」
ゼゼーナン「何故、それを……いや、見ていたのか?」
クェパロク「我らの任務は地球圏の情況調査だと言ったろう。 要所に小型偵察機を送り込んであるのだよ」
ゼゼーナン「……にも関わらず、看過したのか。 グロフィス・ラクレインは お前の部下でもあるのだぞ」
クェパロク「今回の作戦では手出し無用だと言ったのは、 どこの誰だ?」
ゼゼーナン「………」
クェパロク「貴様は、己の力で汚名返上を成し遂げたいのだろう?」
ゼゼーナン「言われるまでもないが…… ラクレインは敗走する際に戦域内のバイオロイドを 全て強制停止させたようだ」
ゼゼーナン「よもや、お前の差し金ではあるまいな?」
クェパロク「ほう……何故、そう思う?」
ゼゼーナン「我が方の損失は、兵器の製造元であるゴライクンルの 利益につながるからだ」
クェパロク「受注が増えて、か? 曲解も甚だしい。 ワシの雇い主も貴様に資金援助を行っているのだぞ」
ゼゼーナン(だが、ゴライクンルは いざとなれば知らぬ顔を決め込むつもりだろうが)
クェパロク「得心がいかぬようだな。 まあ、いい……本題に入ろう」
クェパロク「まず、我が方の偵察機が 送ってきた映像を見てもらおう。 今、そちらへ転送する」
(データ受信)
ゼゼーナン「これは……ウォルガの……!」
クェパロク「そう、グレイターキンの後継機だ」
クェパロク「そして、この機体は蛮奴共やグロフィス・ラクレインの ゼイドラムと接触していた」
ゼゼーナン「……!」
クェパロク「貴様の根回しより、 本国側の対応の方が早かったようだな」
ゼゼーナン「あり得ん……!  枢密院やウォルガが、こうも迅速に……!」
クェパロク「一連の事情をよく把握し、 ゾガルやゴライクンルを敵に回すことを恐れぬ者が 相当上手く立ち回ったと見える」
ゼゼーナン「馬鹿な……!」
クェパロク「誰だか知らんが、その者がシュウ・シラカワと 直接つながっている可能性もあるぞ?」
ゼゼーナン「………」
クェパロク「何にせよ、グロフィス・ラクレインを 早急に始末した方がよかろう」
ゼゼーナン「言われるまでもない……!」

〔戦域:月付近宙域〕

(西端にゼイドラムが出現し、東へ少し進む)
ロフ(……メキボスの言葉が事実であれば、 もはや我らに義はない……)
ロフ(このままでは地球軍だけでなく、 本国をも敵に回して戦うことになる。 それは、ゼゼーナン卿も望むところではあるまい)
ロフ(……いや、 あの男が素直に事実を受け入れるとは思えん。 先にセティやゼブに一報を入れておかねば……)
(東側にライグ=ゲイオスが4機出現)
ロフ「あのライグは、ゼゼーナン麾下の……」
(ゼイドラムとその前方に爆煙)
ロフ「何っ!?」
(ゼイドラムとその左側に爆煙)
ロフ「そ、そういうことか、ゼゼーナン!  お前は、俺を……」
(ゼイドラムとゼイドラムの周辺に爆煙)
ロフ「口封じのため、殺す気か!!」
(ゼイドラムに警告シグナル)
ロフ「! この反応は!?」
(北端で出撃準備)
アルバーダ「何だ、同士討ちかよ?」
エルマ「新型機が一方的に攻撃を受けたみたいですが……」
シュウ「どうやら、メキボス達の友情が 裏目に出たようですね」
チカ「え? どういうことなんです?」
ロフ「グランゾン……何故、こんな所に……!?」
シュウ「……私はシュウ・シラカワです。 あなたを助けて差し上げましょう」
ロフ「何だと……!?」
アルバーダ「パイロットは人間か。シュウの読みが当たったな」
ヨン「あの人は……!」
セレーナ「知ってるの?」
ヨン「はい。グロフィス・デルファルテ…… マスターのご友人です」
ロフ「……何を企んでいる、シュウ・シラカワ?」
シュウ「ゼゼーナン卿を追い詰めるためには、真実を知った あなたに生きていてもらった方がいいのですよ」
ロフ「その言葉を信用しろと言うのか?」
シュウ「ここで犬死にをしたくなければね。 それに、こちらにはあなたの国の人間もいます。 あのメキボスの部下ですよ」
ロフ「何!?」
ヨン「……お久しぶりです、グロフィスさん」
ロフ「お前は……ガヤットーバ・スチェッカ……」
ヨン「シラカワ博士が仰っていることは本当です」
ロフ「………」
ヨン「それに……あなたに万一のことがあれば、 マスターが悲しまれます……」
ロフ「……わかった……そちらの力を借りよう」
シュウ「では、グロフィス…… あなたの機体の識別コードを消して下さい。 ゼゼーナン卿に事を悟られたくないので」
ロフ「……いいだろう。 それと、俺のことはロフで構わん。 ガヤットーバ、お前もだ」
ヨン「ですが、マスターのご友人を……」
ロフ「メキボスと同じ呼び方でいい」
ヨン「は、はい」
シュウ「それでは、 ゼゼーナン卿の刺客を片づけましょうか」
(作戦目的表示)

状況選択

HP1000以下のライグ=ゲイオス1機が最後に残った
ライグ=ゲイオスを全機撃墜した


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