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白い福音 ~ 第25話 ~

[ペリグリン級 艦内(データルーム)]

(扉が開閉する)
アルバーダ「……今回は楽な仕事だったな」
セレーナ「そうね、敵機の数が少なかったし…… シュウが粗方片づけたしね」
テリウス「敵はクリストフだけを狙ってたんだ。 僕が出る必要なんてなかったよ」
メキボス「……やる気がねえなあ、お前は」
テリウス「留守番のあんたに そんなことを言われる筋合いはないよ」
アルバーダ「まったくだ。居候は気楽でいいねぇ」
メキボス「誰が居候だ。 この艦はガヤトの……俺の所有物だぜ」
アルバーダ「盗人猛々しいって言葉を知ってるか?  元々は地球連邦軍の艦だっつーの」
メキボス「あんたの管轄下にあったわけじゃねえだろうが」
アルバーダ「屁理屈を言う暇があったら、上を突けよ。 あれから結構時間が経ったぞ」
メキボス「わかってる。催促はしたさ。 根回しが上手くいっていれば、 もうすぐ返事が来るはずだ」
アルバーダ(ホントかよ……)
セレーナ「それにしても、 ゲスト側に目立った動きがないわね。 すぐにコロニー群へ仕掛けると思ってたけど」
アルバーダ「偵察隊っぽいのは、ウロチョロしてるがな」
メキボス「ゼゼーナンは、シュウ・シラカワの始末と コロニー群制圧のどちらを優先させるか 迷ってるのかも知れねえな」
(扉が開閉する)
エルマ「アルバーダさん、セレーナさん。 お二人だけにちょっとお話が……」
アルバーダ(俺達だけに?  もしかして、隊長から連絡が来たのか?)
アルバーダ「わかった、ここを出よう」
メキボス「いや、俺達が席を外すぜ」
テリウス「俺達? ってことは。僕も?」
メキボス「そうだ、一緒に来い」
テリウス「ちぇっ……わかったよ」
(扉が開閉する・メキボスとテリウスが立ち去る)
アルバーダ「……メキボスが気を利かせてくれるとはな」
セレーナ「ドアの向こうで聞き耳を立ててたりして」
エルマ「いえ、反応はありませんよ」
アルバーダ「それで、エル公…… もしかして、隊長が何か言って来たのか?」
エルマ「はい。 先程、ボク宛てに隊長さん名義の メッセージが届きました」
セレーナ「直接通信してこないってことは…… 忙しいみたいね、ジェルバのみんなは」
アルバーダ「ああ。で、内容は?」
エルマ「まもなく、ゲストへの反攻作戦である オペレーション・レコンキスタが開始されるそうです」
アルバーダ「レコンキスタ……」
エルマ「国土回復、聖地奪還という意味です」
アルバーダ「じゃあ、 月をゲストから取り戻すための作戦ってわけか」
エルマ「その通りですが、 まずはヘブンゲートを奪還するようです。 現在、地球近海で連合宇宙艦隊が集結中です」
セレーナ「ジェルバのみんなも宇宙へ上がってるの?」
エルマ「いえ。南極にいるルイーナの討伐作戦、 オペレーション・アイスブレイカーに 参加するそうです」
アルバーダ「そうか……」
セレーナ「私達の任務については何か言ってきてる?」
エルマ「いえ」
セレーナ「つまり、変更なしってことね。 アル、シュウやメキボス達に オペレーション・レコンキスタの話をする?」
アルバーダ「ま、そうした方がいいだろうな」
エルマ「あの……それだと、 ボク達が上と連絡を取ってるってことが シラカワ博士にバレてしまいますけど」
アルバーダ「あいつはもう気づいてるかも知れねえ」
セレーナ「そうだとしたら、何も言ってこないのは……」
アルバーダ「想定内だっつーことじゃねえか」
(通信、モニターオン)
ヨン「皆さん、至急ブリッジへ来て下さい。 地球で異常事態が発生しました……!」
セレーナ「え!?」
アルバーダ「わかった、すぐに行く!」

[ペレグリン級 ブリッジ]

メキボス「ガヤト、何が起きたんだ?」
ヨン「つい先程、地球方面で異常なエネルギー反応があり、 映像で確認した所……」
ヨン「地球全体が光の膜のような物に包まれています」
アルバーダ「何だって!?」
セレーナ「もしかして、またルイーナが次元断層を……!?」
シュウ「おそらく、違うでしょう。 今回は地球が視認できますからね」
シュウ「あと、光の膜は地球の全天を覆っているわけでは ありません。南極を覆っているルイーナの結界は、 依然として存在しています」
シュウ「また、地球側との交信やデータ・リンクなどは 一切不可能になっています」
セレーナ「それ、本当なの?」
シュウ「ええ。先程、実際に試してわかったことです」
サフィーネ「ちなみに、エーテル通信機も通じないわよ」
アルバーダ「よもや自然現象じゃねえだろう。 いったい、どこのどいつの仕業なんだ?」
メキボス「予め言っておくが、俺達ゾヴォークじゃねえぜ」
セレーナ「ルイーナの他に あんなことをやれそうなのは、アインスト…… だけど、あいつらはもういないし……」
シュウ「ここで議論を重ねるより、情報を集めるために 地球方面へ向かおうと思っていますが、 いかがでしょう?」
メキボス「異論はねえ。情況調査も仕事の内だからな」
アルバーダ「シュウ、あんたが行くってんなら、付き合うぜ」
セレーナ「まあ、乗りかかった船って奴ね」
テリウス(厄介なことに関わりたくないって言っても、 無駄だろうな……)
シュウ「では、ヨン……艦を地球へ」
ヨン「わかりました」
シュウ「これから何が起きるかわかりません。 皆さん、いつでも出撃できるように準備を」
アルバーダ「ああ、格納庫で待機しておくぜ」

《地球近海》

[ペレグリン級 格納庫]

メキボス「つくづく思うが、とんでもねえ星だな、地球は。 ゼゼーナンも面食らってるだろうよ」
アルバーダ「メキボス……あんたに言っておくことがある。 今の所は、ここだけの話にしてもらいてえんだが」
メキボス「何だ?」
アルバーダ「地球連邦軍はゲストに対し、反攻作戦を仕掛ける気だ。 最初のターゲットはヘブンゲート……もっとも、 この情況下ではどうなるかわからねえが」
メキボス「そうか……地球側が先に動くか」
アルバーダ「あんた、地球とゾヴォークの戦争を 止めに来たんだろう。さっさと ゼゼーナンの所へ行ったらどうなんだ」
メキボス「枢密院の決断を待たずに、か?」
アルバーダ「ああ」
メキボス「………」
アルバーダ「枢密院の命令がどうだろうと、 あんたが何を言おうと、ゼゼーナンは 拒絶するんじゃねえのか」
メキボス「だから、力ずくで奴をねじ伏せるしかねえってか。 ……そんなことはわかってるよ」
アルバーダ「なら、あんたの艦隊を出すなり、 本国から応援を呼び寄せるなりしたらどうだ?」
メキボス「こっちにも事情があるんだよ、色々とな」
アルバーダ「ひょっとして、 あのセティって女と関係があるのか?」
メキボス「………」
メキボス(事と次第によっては、 俺一人でヘブンゲートへ……)
(アラート)
アルバーダ「敵襲警報か!」
(モニターオン)
ヨン「本艦へ多数のアンノウンが急速接近中です!  皆さん、直ちに出撃して下さい!」
アルバーダ「おう!」
メキボス「相手がゼゼーナンの手先じゃねえなら、 俺も出るぜ」
アルバーダ「いいのかよ?」
メキボス「予断を許さぬ情況だろ。 それに、居候呼ばわりされるのは心外だからな」
アルバーダ「フッ……なら、遅れるんじゃねえぜ」


第25話
白い福音

〔戦域:光の膜に包まれた地球付近宙域〕

(東端にグレイターキンIIが出撃。出撃準備)
ヨン「マスター、艦を後方へ退避させました」
メキボス「ああ、わかった」
ヨン「あの、私…… マスターが一緒に戦って下さるなら、 とても心強いです」
メキボス「だが、相手はアンノウンだ。 油断するんじゃねえぞ」
ヨン「はい!」
エルマ「セレーナさん、 アンノウン群がレンジ3に侵入します!」
セレーナ「さて、どんな連中か……ご対面と行こうか」
(スナピルが中央に出現)
テリウス「何なんだ、あれ……!?」
モニカ「お魚に似ていますわね……!」
メキボス「念のために言っておくが、 ゾヴォークの兵器じゃねえからな」
セレーナ「地球方面から上がって来たってことは、 あの光の膜と何か関係があるのかしら?」
シュウ「ともかく、迎撃しましょう。 彼らに関する情報を手に入れるためにもね」
(作戦目的表示)

〈4EP or 敵機全滅〉

(グランゾンに警告シグナル)
チカ「ご主人様、ご主人様!  敵の新手が近づいて来ます!  内1体は、かなり大きいですよ!」
シュウ「……この感じは……」
チカ「ど、どうしたんです?」
シュウ(ヴォルクルスほどではありませんが、 強いプレッシャー……)
シュウ(だが、その背後にあるものは 邪念や怨念の類でなく……むしろ、その逆……)
チカ「ご主人様!?」
シュウ(そして、 記憶の奥底をくすぐられるようなこの感覚…… もしや、私の虚憶と関係が……?)
チカ「ご主人様ってば! 敵が来ますよ!」
(西側にカナフとスナピルが出現)
アルバーダ「何だ、ありゃ!?」
セレーナ「今度は鳥!?」
(カナフがグランゾンを見る)
チカ「えっ、こっちを見てる!?」
シュウ「………」
チカ「も、ももも、もしかして、 あたしを仲間だと思ってるんじゃ……!」
サフィーネ「そんなわけないでしょ。 シュウ様、何か心当たりが?」
シュウ「……いえ」
メキボス「やれやれ、次から次へと……」
テリウス「クリストフ、あんなのとも戦うのか!?」
シュウ「いえ……これ以上、ここで彼らと関わり合うのは 得策ではありません」
(南側の中央を指す)
シュウ「あちらから離脱しましょう」
アルバーダ「何だ、てっきりあの鳥メカともやり合うのかと 思ってたぜ」
シュウ「いえ、私の勘が危機を告げているのですよ」
メキボス「ほう、あんたがそんなことを言うとはな」
シュウ「おや、あなたはここに残るつもりですか?」
メキボス「いや、俺も嫌な予感がするんでな。 さっさと引き揚げようぜ」
テリウス「逃げるのはいいけどさ、 クリストフが指定した所からだと 遠回りにならないか?」
シュウ「敵を私達の艦へ 誘き寄せるわけにはいきませんからね。 さあ、皆さん、急いで下さい」
セレーナ「わかったわ」
(作戦目的表示)

〈カナフのHP40000以下〉

カナフ「………」
(カナフが撤退)

最後に離脱したのは
シュウ サフィーネ モニカ テリウス
アルバーダ セレーナ ヨン メキボス


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