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闘志、炎に燃ゆる ~ 第49話 ~

《グランド・クリスマス》

[グランド・クリスマス 基地内部(執務室)]

ニブハル「……鋼龍戦隊がトーチカ8を襲撃し、 NVユニットを奪取しました」
アルテウル「ふん……まさか、向こうから仕掛けてくるとはな。 兵器開発の分散化が裏目に出たか……」
ニブハル「彼らが現状でそのような決断を下すとは……」
アルテウル「後押しがあったかも知れんな。 だいたいの見当はつくが」
ニブハル「なお、エリック・ワン博士が 行方不明になっていることが判明しました。 鋼龍戦隊に連れ去られた可能性がありますが……」
ニブハル「もし、自ら望んで同行したのなら、 NVユニットの情報を外部に漏らしたのは 彼なのかも知れません」
アルテウル「腹の底が今ひとつ見えぬ男だったが……まあいい。 鋼龍戦隊があれを運用すれば、ルイーナを 陽動することも出来よう」
ニブハル「はっ…… トーチカ8にはメリオルエッセの機体が 3機現れたという報告も入っております」
アルテウル「早速、引き付けたか。 それで……鋼龍戦隊がルイーナを撃退したのか?」
ニブハル「ええ。その後、我が方の追撃を振り切り、 行方をくらませました。しかし、彼らの現在の 拠点については、だいたいの見当が付いています」
アルテウル「そうか。 では、どのセイバーを送り込むか……」
ニブハル「ドゥバンとトオミネ博士から、 何度か出撃要請がありました」
アルテウル「トオミネ博士はわかるが……何故、ドゥバンが?」
ニブハル「彼はアインストのコアを欲しています。 レッド・オーガが鋼龍戦隊と接触していたため、 手掛かりが得られるのではないかと思っているのです」
アルテウル「ああ……アーマラからそのような報告を受けたな。 それで宿命から逃れるつもりか?」
ニブハル「本人はそのことを知らぬはずですが……」
アルテウル「本命がレッド・オーガだというなら、 気が逸れるかも知れん。デルタの方がいいか」
ニブハル「しかし、ジンライを奪取されるという 大失態を演じていますし、量産型だけでは……」
アルテウル「構わん、噛ませ犬を送り込むのもいいだろう」
ニブハル「……承知致しました」

[グランド・クリスマス 基地内部(ガイアセイバーズ 総司令部)]

ドゥバン「何? 次はデルタが出るだと?」
ニブハル「ええ、アルテウル司令のご命令です」
カオル「汚名返上の機会を与えていただき、感謝します」
ドゥバン「ジンライを取り戻すつもりか?  今頃、奴らが自分達の戦力とすべく、 改修しているかも知れんぞ」
カオル「その可能性はあり得るが…… そう簡単にはいかぬのだよ」
ドゥバン「ふん……あてにならんな。 司令に直接掛け合う」
アーマラ「……やめろ、ドゥバン・オーグ」
ドゥバン「アーマラ……」
アーマラ「アルテウル様はお忙しい。 お前のわがままを聞いている暇などない」
ドゥバン「わがまま……?  違うな、デルタなどより確実な作戦の具申だ」
アーマラ「レッド・オーガが見つからず、焦っているだけだろう?  それとも、アリエイルに未練があるのか?」
ドゥバン「何……?」
アーマラ「下がれと命令しているのだ。 オメガは最上位のセイバー……アルファ以下に対し、 命令権を持つと言ったろう?」
ドゥバン「ふん……そのオメガも生まれ変わった凶鳥に 後れを取ったと聞く。エグレッタと共にな」
アーマラ「……!」
ドゥバン「おれのアレスがアインストのコアを得さえすれば、 鋼龍戦隊のどんな機体であろうと倒せる」
アーマラ(ふん、本懐を遂げた所で、 お前の宿命が変わるかどうかは……)

[グランド・クリスマス 基地内部(ラボ)]

ミタール「……AI1が拒絶反応を示した理由は何だ?  ラズムナニウムにも異常な蠢動があったようだが」
エルデ「今、メディウスからAI1を取り外し、 調査を行っている所です」
ミタール「TEアブゾーバーのパーツや ターミナス・エンジンを取り込んだことが 原因であれば、由々しき問題だ」
ミタール「以前述べた通り、 MODEL-Xにはパイロットを搭乗させ、 私が調整したAI0を搭載する。これは決定事項だ」
エルデ「……!」
ミタール「アルテウル司令の承認も得ている」
エルデ「……AI0では、ラズムナニウムの性能を 最大限に引き出すことが出来ません」
ミタール「確かに、自己修復能力は落ちることになるが、 MODEL-Xはそれを補って余りある 戦闘能力を有している」
ミタール「AI1がなくとも、最強のTEアブゾーバーに なるだろう。そもそも、あれは対話型でない時点で、 パイロットには扱いにくいのだよ」
エルデ「うるさい子供など、私は欲しくありませんもの」
ミタール「君のそういう観点は、どうも歪んでいるな」
エルデ「……8号機、9号機、10号機のパイロットは どうするのです?」
ミタール「8号機と9号機は、適任者が見つかるまで AI0でテスト運用することにした。 君の立場とこれまでの功績を鑑みてのことだ」
エルデ「テスト運用……」
ミタール「また、MODEL-Xのパイロットは ドゥバン・オーグにしようと考えている」
ミタール「オヅヌ博士が死亡した今、 プロジェクト・イデアランツは頭打ちとなったし、 アレス・ガイストにも問題が多いからな」
エルデ「彼はアレスに拘りを持っているようですが……」
ミタール「別にあれを廃するわけではない。 それに、MODEL-Xの性能を知れば、 興味を示すだろうよ」
エルデ(……このままでは、私の子が…… 何とかしなければ……)
ミタール「……では、以上だ。 AI1の調査、調整作業に戻りたまえ」
エルデ「はい……」

(AI1ケージ前)

エルデ(あの時、AI1は彼女と戦うことを ためらったように見えた……)
エルデ(まさか……。 いえ、そんなことはあり得ない…… あの後、スキャンして調べたもの)
エルデ(AI1、あなたは何を感じたの……?  それもさらなる進化を遂げるための……?)

《イティイティ島》

(休憩室)

トウマ「はあ、はあ、297……298……299…… 300!」
イルイ「お疲れ様、トウマ」
トウマ「はあっ、はあ……腹筋300回、達成!  だいぶトレーニングの成果が出てきたみたいだ」
イルイ「はい、タオル……」
トウマ「ありがとう、イルイ。 ……悪かったな、付き合ってもらって」
イルイ「ううん……。 でも、どうして、こんなに大変なトレーニングを?」
トウマ「まあ……ちょっとね。 さて、もう時間だな。格納庫に行くか」

(格納庫)

(扉が開閉する)
トウマ「どうですか、首尾は?」
ロバート「おっ、来たな」
ミナキ「外装の作業は、ほぼ終わりました。 後はシステムLIOHの最終調整を残すのみです」
トウマ「いよいよ完成か…… 機体の色を白くしたのは、やっぱりいいな。 ジンライのイメージが払拭できたと思うよ」
ロバート「とは言え、あいつのちぎれたRAMマントを 流用しているけどな」
トウマ「マフラーみたいで格好いいですよ。 それで、もう動かせるんですか?」
ロバート「ああ。ゼンガー少佐が戻り次第、 起動テストを行う予定だ。ダブルGとDMLシステムの 組み合わせに一番慣れているのはあの人だしな……」
ロバート「初期段階のデータ取りに協力してもらう」
トウマ「そうですか……。 ところで、ミナキ。こいつの新しい名前は もう決めたのか?」
ミナキ「いえ、まだ……」
ロバート「俺に案がある。ライジンってのはどうかな?」
トウマ「……それって、ジンライを ひっくり返しただけじゃないですか」
マリオン「捻りが足りませんわね」
ロバート「敵だったジンライが、味方になったから……という 意味も込められてるんですけどねぇ。あと、攻撃で プラズマ・コンバータを用いるようになったし……」
マリオン「とは言え、紛らわしいですわね」
トウマ「あの……実は、俺もこいつの新しい名前を 考えてたんですけど……」
ミナキ「是非、聞かせて下さい」
トウマ「ああ。 システムLIOHで動くから、ライオウ…… “雷”に鳳凰の“凰”という漢字で、“雷凰”だ」
ロバート「ライオウ……そのまんまだねぇ」
マリオン「ストレートでよろしいのではなくて?」
ロバート「あの……全然、捻ってないですけど」
ミナキ「トウマ、鳳凰の“凰”は雌を意味しますが……」
トウマ「え……! そうなのか!?」
ミナキ「ええ、“鳳”の方が雄です」
トウマ「なら、“鳳”で……それじゃ、ライホウか。 まあ、そこはライオウと読むってことで」
ミナキ「雷鳳……それでいいと思います」
トウマ「じゃあ、決まりだな。 今日からこいつはジンライじゃなく、雷鳳だ」
(アラート)
ミナキ「!!」
ロバート「敵襲警報か!?」
マリオン「問い合わせてみましょう」
トウマ(鋼龍戦隊が まだ戻って来ていないってのに……!)
ミナキ「この基地のことが知られたんでしょうか……?」
ロバート「いや、そう簡単には……」
(轟音)
ロバート「!!」
ミナキ「こ、この振動は……!!」
ロバート「上から……! 爆発か!?」
トウマ「……!」
(轟音が止まり、速い足音・トウマが立ち去る)
ミナキ「トウマ!?」

〔戦域:イティイティ島基地周辺〕

(島の南西側にストークがいる。島のあちこちに爆煙)
GS艦長「爆撃、止め。反応はあったか?」
オペレーター「いえ、今のところは。ここも外れでは?」
GS艦長「フン…… 最初からMAPWを使えれば、楽なのだがな」
オペレーター「ええ、まったく。何であれを先に降ろすんです?」
GS艦長「デルタ・セイバーは失態続きだからな。 ここで大きな成果が欲しいんだろう」
オペレーター「それに付き合って、 貧乏くじを引かされるのは御免ですよ」
GS艦長「なら、さっさと荷物を降ろせ。 どんな扱いをしようが、文句を言わんのが 奴らの利点だからな」
(量産型ジンライが多数出現)
GS艦長「せいぜい当たりを引いてくれよ。 ……我々は現空域より離脱する」
(ストークが撤退)
オペレーター「目標アルファより、量産型ジンライが降下!  数は12!」
クルト「厄介な連中が……しかも、偽装滑走路の上に……!」
オペレーター「このままでは、 基地の存在が知られかねません……!」
クルト「何とかやり過ごせればいいが……」
(島の北西側に多数の爆煙)
オペレーター「目標群が地表部を攻撃!  か、滑走路の昇降装置が露出しました!」
クルト「くっ! やむを得ん、迎撃機を出せ!  鋼龍戦隊は、あとどれぐらいで戻ってくる!?」
オペレーター「直行コースならば、約20分です!」
クルト「それまで、何としても持ち堪えねば……」
(通信)
オペレーター「クルト艦長、トウマ・カノウから通信です!  彼は、改修されたジンライに搭乗しています!」
クルト「何!?」
トウマ「トウマ・カノウです!  俺を雷鳳で出させて下さい!」
クルト「ライオウ……!?」
トウマ「生まれ変わったジンライの名です!  こいつなら、量産型ジンライを上手く 引き付けられるかも知れません!」
クルト「だが、素人のお前を出すわけにはいかん!」
トウマ「俺は、AMバトリングの経験者です!  このままでは、ここがやられてしまいます!  お願いします!」
クルト(確かに、この状況で即時対応するには……)
ミナキ「艦長、無茶です!  システムLIOHはまだ調整中なんです!  機体を動かすことは出来ても、戦闘は!」
トウマ「鋼龍戦隊が戻って来るまでの間、囮役をやるだけだ…… 頼む、ミナキ。俺は、君達やみんなが帰って来る所を 守りたいんだ!」
ミナキ「ト、トウマ……!」
トウマ「無茶なのは俺だって承知している……!  だけど、ここで誰かが行かなけりゃ、 やられるのを待つだけなんだ!」
クルト「……わかった。 素人のお前を出撃させるのは心苦しいが、 敵の陽動を頼む。ただし、無茶をするなよ」
トウマ「はい!」
クルト「雷鳳を出撃させる! リフトアップ!  ハッチ開放!」
(島の中央北側に雷鳳が出撃)
トウマ「頼むぜ、雷鳳! 動いてくれよ!」
ミナキ「トウマ!」
トウマ「DMLシステムなら、俺でも何とかなる!  伊達に空手をやってたわけじゃない!」
ミナキ「しかし、システムLIOHなしでは!」
(雷鳳でエラーシグナル)
LIOH「パイロット・データ、未登録。 起動シークエンス、カットアウト」
トウマ「この緊急事態に何言ってやがる!  パイロットは俺だ! 俺を登録しろ!」
LIOH「対象者、バイタル・スキャン開始」
(雷鳳でシステム起動)
トウマ「な、何だ!? 頭が!!  うわあああああっ!!」
ミナキ「!!」
ロバート「ト、トウマ!?」
ミナキ「こ、このデータは…… システムLIOHがトウマの身体能力を 調べている……!?」
ミナキ「そ、そんな……あり得ない!  システムが勝手に立ち上がるなんて!  強制停止を!」
(雷鳳でエラーシグナル)
ミナキ「! 受け付けない!?」
LIOH「スキャン終了。システム適合者と認定、登録。 起動シーケンス、エマージェンシー・モード、 リスタート」
(雷鳳でシステム起動)
トウマ「く、うう……う……!!」
ミナキ「トウマ!!」
トウマ「だ、大丈夫だ、ミナキ……何とか行ける……!」
ミナキ(そんな……!  LIOHは、必要とされる技量や体力を持った 人間でなければ、パイロット登録を行わないはず……)
ミナキ(訓練を受けた者ならともかく、 基準値を満たしていないトウマが何故……!?)
LIOH「リファー、バイタル・データ。 ベーシック・バトル・スタイル、セレクト。 ショート・レンジ・ファイター。アジャスト」
トウマ「な、何だ!? ハーネスが勝手に!?」
LIOH「AMPデータ、提示」
トウマ「こ、これは……!?  ハーケン・インパルス……カウンター・ブレイク…… こいつの武器か!」
トウマ「やれるんだな、雷鳳!?」
LIOH「システムLIOH、ブースト・オン」
(雷鳳が赤い光に包まれる。エンジン出力上昇)
トウマ「うお、おおお……!  身体に……力が湧き上がる……!!」
ミナキ「!!」
トウマ「熱い……熱いぞ! これがこいつの力!?  俺に応えてくれたんだな、雷鳳!」
ミナキ(システムLIOHが……シンクロした……!  そんな……!)
クルト「量産型ジンライは雷鳳を攻撃せんようだな……」
ミナキ「も、もしや、あれを取り戻すつもりで……!?」
クルト「トウマ、聞こえるか?  量産型ジンライをイティイティ島の外へ誘き出せ!  コースは指定する!」
トウマ「わかりました!」
(雷鳳が高速で南東へ進み、海に入ったところで停止する)
トウマ「さあ! 追ってこい、ジンライ共!」
(雷鳳が東端まで移動し、撤退。量産型ジンライが東端まで高速で移動し撤退)
ミナキ「クルト艦長……!」
クルト「冷酷な男だと思うかね、私を?」
ミナキ「………」
クルト「私にはレーツェル様から預かった この基地を守る責務があるのだ」
ミナキ「それは……わかりますが……」
クルト「……鋼龍戦隊には一報を入れてある。 トウマが指示通りのコースを進めば、 まもなく彼らと合流するはずだ」
ミナキ「……!」
クルト「私はクロガネで出て、先程のストークを追撃する!」


第49話
闘志、炎に燃ゆる

〔戦域:小島〕

(西側の島に雷鳳が、東側の島に量産型ジンライが出現)
トウマ「くそっ、追いつかれたか!  こうなったら……!」
トウマ「行くぞ、雷鳳!  生まれ変わったお前の力を見せてやるんだ!」
(雷鳳が東側を向く、作戦目的表示)

〈初戦闘〉

[トウマ]

トウマ(やれるのか……?  いや、迷ってる場合じゃない!)
トウマ(決めたんだ……!  ずっと考えてきた俺のやりたい事を!  だから……!)
トウマ「やるぞ、雷鳳!  俺の全てをお前に懸ける!!」

〈敵機1機撃墜〉

トウマ「まずは1機! 行ける!!」

〈敵機2機撃墜〉

トウマ「2機目! この調子で行くぞ、雷鳳!」

〈敵機3機撃墜〉

トウマ「3機目!  身体が……身体が燃えるようだ!!」

状況選択

トウマが敵機を4機撃墜した
4PPになった


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