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特異点崩壊 ~ 第44話 ~

《ヘブンゲート》

[ヘブンゲート 内部(指令室)]

ロフ「お待ちしておりました、司令」
ゼゼーナン「……紆余曲折あったが、 ようやくこの要塞に足を踏み入れることが出来た。 ある意味、感慨深い」
ロフ「何か経緯があったのですか?」
ゼゼーナン「ゴライクンルから派遣された傭兵である お前が知らぬのは当然だが……」
ゼゼーナン「元々、ここは私が猿共…… EOT特別審議会に用意させたプラントなのだ。 ゾヴォークに対する忠誠の証としてな」
ロフ(そのようなことが……)
ゼゼーナン「今回の件が済めば、地球侵攻作戦を再開する。 今度は猿共に先など読ません。 奴らの巣をいくつか完全に潰す」
セティ「よろしいのですか?」
ゼゼーナン「ああ……後々のことを考えていたが、 調子づいた猿共には厳しい鞭が必要だ。 あの男のような者が二度と出て来ぬようにな」
ロフ「大事の前ならば、 司令自らが彼の申し出に応じるのは危険では?  間違いなく罠だと思われます」
ゼゼーナン「だからこそ、お前とシャフラワースを 護衛として連れて行くのだ。 ……万事抜かりなくな」
(扉が開閉する・ゼゼーナンが立ち去る)
セティ「……私とゼブも司令に同じことを言ったんだけど、 聞かなかったのよね。むしろ、目の色が 変わっちゃったって感じ?」
ロフ「危険を冒してまで、 出向かねばならない理由があるのか……」
セティ「そうみたいね。 ま、あなたと肩を並べて出陣するのは悪くないけど。 嫌だとか言わないでよ?」
ロフ「……俺は傭兵として命令に従うまでだ」
セティ「それだけ?」
ロフ「昔とは……違う。 君と共に過ごしていたあの頃とは……違うんだ」
セティ(……ロフ……)


第44話
特異点崩壊

〔戦域:地球衛星軌道上〕

(グランゾン、ウィーゾル、ガディフォール、ノルス・レイが出現)
チカ「ねえ、ご主人様」
シュウ「何です、チカ?」
チカ「ホントに来るんですか、そのゼゼーナンって人。 そろそろ時間ですよ」
シュウ「来ますよ。 彼の喜びそうな餌をばらまいておきましたからね」
モニカ「餌って、何ですの?」
シュウ「ガイアセイバーズに魔装機神、鋼龍戦隊…… そして、この私自身が彼を釣る餌ですよ」
サフィーネ「あ、では…… 私にヤンロン達への連絡を命じられたのは……」
シュウ「そう、ここへ来てもらうためです。 4体の魔装機神全てにね」
チカ「何でそれが餌になるんですか?  あたしにはわかりませんよ」
シュウ「ゲストの総司令官、ゼゼーナン卿は 実戦派だと聞いていますからね」
シュウ「特化した戦力が集まれば、 必ず自ら乗り出して、その実態を観察したい…… そう考えるはずです」
シュウ「さらに、ある物を彼に送り付けておきました。 それを見れば、心穏やかではいられないでしょう」
サフィーネ「ある物とは、いったい……」
シュウ「ふふふ…… 今、教えてしまうと面白くありませんからね。 楽しみにしておいて下さい」
テリウス「で、首尾良くそのゼゼーナンって奴が来たら、 どうするつもりなんだ?」
テリウス「まさか、 ただ会ってみたいだけってわけじゃないんだろ?」
シュウ「………」
チカ「ゼゼーナンも気になりますが、 ガイアセイバーズのアルテウルって人も 来るんですかねぇ」
チカ「ご主人様は、その人と会ったことないんでしょう?」
シュウ「ええ。おそらく、初対面です」
テリウス「おそらく?  会ったことがあるのか、ないのか どっちなんだよ?」
シュウ「それは……私も知りたいですね、ふふふ」
チカ「何のことだか、あたしにはさーっぱりですよ。 だいたい、ご主人様はそうやって勿体ぶって喋って、 煙に巻くことが多くて……」
チカ「意味があるように思えて、実は何でもなかったりとか、 それっぽいことを適当に言ってるだけとか」
チカ「今後の伏線かも知れないと思って、 真面目に聞くだけ損だったりして」
シュウ「……静かにしなさい、チカ」
サフィーネ「アルテウル・シュタインベック……でしたわね。 地上では相当な実力者みたいですけど、 誘いに乗ってきますかしら?」
シュウ「乗りますよ。彼は劇場型政治が好きなようですし…… むしろ、この状況を利用するでしょうね」
サフィーネ「そこに付け入る隙が出来ると?」
シュウ「ええ。 鋼龍戦隊にはもっと自由に動いてもらった方が いいですからね……私が一肌脱ぐとしましょう」
サフィーネ「お手伝いしますわ、色々な意味で♥」
シュウ「……それより、準備はいいですね?」
サフィーネ「はい。 シュウ様のグランゾンを介してサンプリングし、 ネットにアクセスを……」
チカ「あっ、ご主人様! ゲストが来ましたよ!」
シュウ「では、一芝居打ちましょうか…… あの南極事件以上の、ね」
(ゲスト軍が出現)
セティ「グランゾン……どうやら本物ね」
ロフ「手勢はあれだけか?」
セティ「だとしても、あの男相手に油断は禁物よ。 司令も格好つけて、ライグなんかに 乗らなきゃいいのに」
セティ「まったく、守る方の身にもなって欲しいわ」
ロフ「そこまでにしておけ。上官侮辱だぞ」
ゼゼーナン「……シャフラワース、ラクレイン。 私とシュウ・シラカワの通信傍聴を禁ずる。いいな?」
ロフ「はっ」
セティ(何……?  あたし達に知られちゃ困ることがあるの?)
シュウ「お久しぶりです、テイニクェット・ゼゼーナン卿。 南極でお会いした以来ですね。確か、あの時は 筆頭書記官でいらっしゃった」
ゼゼーナン「ふん。貴様が反乱を起こしたせいで 会談が御破算となり……あの場から脱出するのに 随分と骨を折った」
ゼゼーナン「さらに、地球圏へ舞い戻って来るまで 時と金を必要とした。全て、貴様のせいだ」
シュウ「ですが、そのおかげで あなたにとって目障りだったと思われる ウェンドロの存在が消えた。違いますか?」
ゼゼーナン「奴は我が計画の隙を突き、 枢密院の反対派が送り込んだ小物に過ぎん。 猿共に敗れて当然だ」
シュウ(反対派……ですか)
シュウ「ところで、ゼゼーナン卿…… 事前に申し上げておいた通り、 ここでの戦闘行為はご遠慮願います」
ゼゼーナン「私に命令できる立場だと思っているのか?」
シュウ「我々で戦火を交えれば、ここへ招待している 他の方々にとって迷惑となります」
ゼゼーナン「何……?  我ら以外にも、ここへ来る者がいるのか?」
シュウ「ええ。 戦闘になれば、あなたが必要としている情報は 手に入りませんよ?」
ゼゼーナン「………」
シュウ「……さて、彼らが到着したようです」
(エア・クリスマスを含むガイアセイバーズが出現)
エグレッタ「やれやれ……とんだ先客だな」
アーマラ「ゲストまでいるとは……!」
カーリー「やはり、罠か!  前部主砲、EAAMランチャー、攻撃用意!」
アルテウル「待て」
カーリー「司令!?」
アルテウル「シュウ・シラカワの座興に乗ってやろうではないか。 現に、ゲスト軍は仕掛けて来ない」
カーリー「し、しかし、シラカワ博士は ゲストについて何も……」
アルテウル「全軍、私の指示あるまで待機。いいな?」
カーリー「……了解」
オペレーター「司令、グランゾンのシュウ・シラカワ博士より 入電です」
アルテウル「……艦長室で受ける。 SSS回線を使用、傍聴及び録音は禁ずる。 先方にもそう伝えろ」
オペレーター「了解」
アルテウル「艦長、ここは任せるぞ」
カーリー「はっ」
エグレッタ「……何だ、仕掛けないのか? つまらないな」
アーマラ「アルテウル様には何かお考えがあるのだ。 黙って待機していろ」
エグレッタ「フッ、トップであるオメガ・セイバーの ご命令だ、従ってやるよ」
アルテウル「……聞こえるか、シラカワ博士。 ガイアセイバーズ司令、 アルテウル・シュタインベックだ」
シュウ「アルテウル司令…… わざわざのご足労、痛み入ります」
アルテウル「これはどういうことか。 ゲストがここにいるとは聞いていなかったぞ」
シュウ「ですが、あなたは攻撃命令を下さなかった。 つまり、私の申し出に興味があった…… 違いますか?」
アルテウル「ふん……お前の真意は何だ?」
シュウ「まず、引き合わせたい人物がいます。 ご紹介しましょう、あちらがゲスト軍の総司令官 テイニクェット・ゼゼーナン卿です」
ゼゼーナン「……!」
シュウ「ゼゼーナン卿、 あの艦にはガイアセイバーズのアルテウル・ シュタインベック司令が乗っておられます」
アルテウル「………」
シュウ「ゼゼーナン卿はDC戦争以前から 地球との水面下交渉を行い、不平等条約の 締結を目論んでおられた方」
シュウ「そして、アルテウル司令は前大統領を“暗殺”し、 地球圏の主権を手に入れようと画策しておられる方」
アルテウル(そういうことか。 その手には乗らんぞ、シュウ・シラカワ)
アルテウル「大統領を殺害したのは、鋼龍戦隊だ。 下らぬ話を吹聴するのはやめてもらおう」
シュウ「はたして、そうでしょうか?  巷では、あなたの陰謀だという説もあるようですが」
アルテウル「根も葉もない、低俗な噂だ。 それとも、何か証拠でもあるのか?」
シュウ「いえ。 ただ、私は鋼龍戦隊と行動を共にしたことも ありますから……」
シュウ「彼らが大統領を暗殺するなど、 妙な話だと思っただけです。むしろ、 あなたの仕業だと考えた方がしっくりきます」
アルテウル「言い掛かりだな」
ゼゼーナン「猿共の陰謀など、どうでもいい。 シュウ・シラカワ、我らをここへ呼んだ 本当の理由は何だ?」
シュウ「地球圏は今、ルイーナやバラルの脅威に 晒されています。先日、地球を覆った黒い帳…… あのようなことが、また起きるかも知れません」
シュウ「あなた達がそれぞれの目的を達成するためには、 地球とそこに住まう者達の存在が必須……」
シュウ「どうでしょう?  ここは一つ、地球側とゲストで一時休戦条約を 結んでみては?」
シュウ「そして、あなた方が協力すれば、 ルイーナやバラルを撃退できるかも 知れませんよ」
ゼゼーナン「下らん。我らは月を掌中に収めつつある。 猿共が降伏するならともかく、休戦条約などと」
アルテウル「我らは地球圏の守護者たるガイアセイバーズだ。 異星人と手を結ぶなど、あり得ん」
アルテウル(いや、待て…… この場を設けることこそが、あの男の目的なのか?)
アルテウル(だが、ゲストは彼にとっても敵であるはず…… 我らを陥れて、何の得がある?)
アルテウル(あるいは……気づいているのか?)
シュウ「地球圏の守護者と仰いましたね、アルテウル司令。 では……先日、日本の浅草地区を襲撃した 量産型の特機はどう説明します?」
アルテウル「さて……何の話かな?」
シュウ「同地区にはゲストの偵察機も現れたとのことですが…… ゼゼーナン卿、それについてはいかがでしょう?」
ゼゼーナン(ふん……シュウ・シラカワめ、 我らを利用して、ガイアセイバーズを陥れる気か)
ゼゼーナン(良かろう、その芝居に乗ってやろう)
ゼゼーナン「……我が方に覚えはないな」
シュウ「では、グラスマン大統領が死亡する直前に現れた 偵察機については?」
ゼゼーナン「同じく、だ」
アルテウル「茶番だな、シュウ・シラカワ。 異星人の証言など、何の証拠にもならん」
シュウ「仰る通り……言い掛かりですよ、ククク」
アルテウル「………」
シュウ「では、そろそろ本題に移りましょうか。 先だって、私はゼゼーナン卿に ある物をお送りしました」
シュウ「そして、アルテウル司令…… それこそが、先日あなたにお伝えした ゲストに関する秘密なのです」
アルテウル(……見当は付いているが、 この目で確かめんことにはな)
ゼゼーナン「何故、貴様があれを持っている?」
シュウ「さて……ご自身で推理されてはいかがです?」
ゼゼーナン「ふん、私を試そうと言うのか?  あれは、特異点のフェイズシフト理論の解説図……」
ゼゼーナン「つまり、グランゾンの心臓部の理論を説明したものだ。 貴様はあれをどこで手に入れた?」
ゼゼーナン「あの部分は完全にブラックボックス化していて、 内部の調査は不可能……特に地球の猿共にはな」
シュウ「………」
ゼゼーナン「まさか、独自であの理論に到達できたわけでは あるまい。猿共の科学力では、あれの解明に 十年単位の時間を要するはずだ」
シュウ「どうもあなた方は、自分達以外の存在が 無知だと思っているようですね」
シュウ「地球圏には、あなたが想像している以上の 異文明が接触し、その技術が流入しているのです」
ゼゼーナン「仮に貴様らが帝国の技術を理解していたとしても、 あれを解明するには……」
シュウ「大した時間は必要ありませんでしたよ」
ゼゼーナン「ハッ、馬鹿なことを。 地球の猿ごときにあれが理解できるものか」
シュウ「やれやれ、頑固なお方ですね。 まあ、いいでしょう。それより、招いていた 客がもう一組やって来たようです」
(サイバスターが出現)
マサキ「来てやったぜ、シュウ! 時間通りだ!」
シュウ「今回は迷わなかったようですね、マサキ」
クロ「ち、違うニャ……」
シロ「先に飛び出したのはいいけど、迷っちゃって…… 途中で変ニャ化け物と出会ったりして……」
クロ「その後、ようやくここに辿り着いたニャ」
マサキ「る、るせえ! 結果オーライだっつーの!」
シュウ「なるほど……それであなただけなのですか」
マサキ「ふん……記憶は戻ったみてえだな、シュウ」
チカ「あ、ご主人様。他のも来ましたよ」
(グランヴェール、ガッデス、ザムジードが出現)
テュッティ「マサキ、先に着いてたのね!  心配してたのよ、どこかへ迷い込んで しまったんじゃないかって……」
クロ「それニャんだけど……」
マサキ「いちいち説明しなくていいっつーの!」
ミオ「わ~、ホントに宇宙へ出て来ちゃった。 マサキに言われてたけど、魔装機神って 宇宙でも動けるんだね」
ゴクー「ところでお師匠、下に見えるのが……」
ミオ「そう、地球は青かった…… もとい、優しく光る淡い水色だった、ってね」
サフィーネ「あ~ら、皆さん、お揃いで」
ヤンロン「お前が僕達を呼び出したんだろうが。 しかも、グランゾンどころか、地上の軍勢もいる。 どういうことだ?」
サフィーネ「さあ?  シュウ様のご命令でやっただけのことよ」
テュッティ「あの軍勢はいったい……?」
マサキ「事前に情報を仕入れてたから、わかるぜ。 あっちはゲストっていう異星人、 向こうはガイアセイバーズだ」
ミオ「ガイアセイバー?  ヒーロー戦記最大の作戦って奴ね」
ハッカイ「おっしょさん、別のが混ざってます~」
マサキ「何だ? ミオ、誰と喋ってんだ?」
ミオ「その話は後、後。 取り込み中みたいだしね」
シュウ「ようこそ、皆さん。 まずは紹介させていただきましょうか」
シュウ「あちらがガイアセイバーズの アルテウル・シュタインベック司令……」
アルテウル「………」
シュウ「そして、ゲストの司令官である テイニクェット・ゼゼーナン卿です」
ゼゼーナン「ほう、あれが魔装機神か。 このエネルギー反応……確かに、地球の軍事技術は 優れているようだな」
シュウ「フッ、魔装機神は氷山の一角に過ぎませんよ」
ゼゼーナン「ふん……この目で見て、理解が深まった。 帝国の連中も地球に目を付けるはずだ」
アルテウル「………」
ゼゼーナン「だが、ここまで軍事技術のみに偏った文明は やはり危険だ。我々の管理下において正しき道を 示してやらねば、やがて銀河をも滅ぼすだろう」
ゼゼーナン「悪いことは言わん。今すぐ武器を捨て、投降したまえ。 所詮、貴様らは高性能な武器を持った猿に過ぎん。 我らの軍勢には勝てんぞ」
ミオ「何なの、あのチョー上から目線の物言いは。 あったまくんなぁ」
マサキ「ゼゼーナン、だったな。 てめえの前任者も、似たようなことを言って 俺達に負けやがったぜ!」
ゼゼーナン「ウェンドロごとき小物と私を一緒にするな。 我らは奴と違い、現地調達でなく、 自国の兵器で軍勢を構成している」
アルテウル「緒戦で我らに敗れておいて、よく言う」
ゼゼーナン「言葉に気をつけるがいい、アルテウル。 月都市の一つや二つ、見せしめに 消し去ってもいいのだぞ」
アルテウル「フッ……」
ゼゼーナン(何だ? 何故、笑う?)
ゼゼーナン「いいだろう、貴様らのような野蛮人には 力を示すのが一番だ。我らの力を思い知るがいい」
ゼゼーナン「シャフラワース! ラクレイン!  攻撃を開始せよ!」
セティ「……出番みたいよ、ロフ」
ロフ「ああ。 ここでガイアセイバーズ旗艦を沈めれば、 後々で無駄な戦いをせずに済む」
シュウ「やはり、こうなりましたか。 まあ、予想はしていましたがね」
シュウ「戦闘を始める前に 一ついいものをお見せしておきましょう。 特にゼゼーナン卿……あなたにね」
(グランゾンから黒い光が広がり、空間が歪む)
ゼゼーナン「!!」
マサキ「いきなり何をしやがる、シュウ!  俺達とやり合おうってのか!?」
シュウ「相変わらず早とちりな人ですね。 今のは、攻撃ではありませんよ」
シュウ「特異点の位相をずらし、崩壊させたことで 生じた余波です」
ゼゼーナン「ま、まさか……!  そんな馬鹿な……地球の猿ごときに、あの原理が!」
シュウ「甘いですね。原理自体は、それほど難しいものでは ありませんよ。ただ、発動させるエネルギーが 不明だった点がネックでしたがね」
ゼゼーナン「ぬ……う……!」
シュウ「ともかく、 これであなたの切り札は無効となったわけです。 これからは益々上手くいかなくなりますよ」
シュウ「しかも、あの仕掛けは、あなたの国において 禁じ手なのではありませんか? だからこそ、 あなたは秘密裏に事を進めようとした」
シュウ「この件が公になれば、 あなたの立場は危うくなりかねないのでは?」
ゼゼーナン「ふん……私がありのままを 本国に報告するとでも思っているのか?」
シュウ(そうでしょうが……別のパイプがあるのですよ)
マサキ「いったい、何のことだ? さっぱりわかんねえぞ!」
シュウ「では、説明しましょう。グランゾンには メテオ3からもたらされたEOTだけでなく、 ゲストの技術も用いられているのです」
マサキ「何!? どうして、そんなことを!?」
シュウ「エアロゲイターから横槍を入れられる形となった ゼゼーナン卿がイニシアチブを得るため、 地球人に“餌”を与えたのですよ」
シュウ「そして、それを解析し、 有効に利用できることを証明するため、 グランゾンの開発が決定されたのです」
マサキ「証明って……」
シュウ「地球人に利用価値があることを示さねば、 支配された時に扱いが悪くなるかも知れませんからね。 わかり易く言えば、飼い主に尻尾を振ったのです」
マサキ「何でそんな……」
シュウDC戦争前……エアロゲイターの存在に恐怖した 一握りの人間達は、自分の保身を第一にして 生き残るための策を探していました」
シュウ「そんな時、ゲストとのパイプが出来たのです」
シュウ「彼らは彼らで、エアロゲイターによって自分達の計画が 妨害されることを危惧していたようですから…… 渡りに船だったのかも知れません」
シュウ「そして……一握りの人間達は エアロゲイターと違って、交渉が可能な ゲストに庇護を求めたのです」
シュウ「つまり、ゼゼーナン卿が提示した条件を飲み、 彼らへ事実上の降伏をすることによって、 地球圏と人類の存続を図ろうとしたのです」
マサキ「待てよ、その話……聞いたことがあるぜ。 それで、てめえは……」
シュウ「そう、南極事件…… あの場にはゼゼーナン卿もいらっしゃいました」
シュウ「エアロゲイターの戦艦に乗って現れるという 手の込んだ芝居を打って……」
ゼゼーナン「………」
シュウ「あれは、正体を有耶無耶にするためですか?  それとも、戦利品を自慢なさったのでしょうか?」
ゼゼーナン「貴様……!」
シュウ「……話を戻しましょうか。グランゾンの 心臓部には、ゲストの技術を使った特異点…… つまり、ブラックホールが使用されています」
シュウ「ところが、このシステムの一部は ブラックボックス化されており、 詳細が不明な状態となっていました」
シュウ「それをいいことにゲストは一つの仕掛けを 施していたのです。それは、特異点の位相をずらし、 剥き出しの特異点を作り出す仕掛け……」
シュウ「普通の特異点は時空を歪めるだけですが、 ある一定の位相を持たせることにより、事象の 発生確率の密度をも変化させられるのです」
マサキ「だから、それが何だってんだ?」
ミオ「え~っと、偶然が多発するってことでしょ」
シュウ「ええ。グランゾンが存在する限り、地球では 通常起こり得ない事件が多発し、混乱が支配する…… そういう仕組みになっていたのです」
マサキ「そんな……馬鹿な!」
シュウ「あなた、今まで不思議に思いませんでしたか?  この短期間に地球は異星人の襲撃を何度も受け……」
シュウ「さらに異世界からアインスト、シャドウミラー、 修羅、ルイーナが襲来したのです。何故、彼らが この世界へやって来たのか……」
マサキ「それも全部、グランゾンのせいだってのか!?」
シュウ「言っておきますが、私が望み、仕組んだことでは ありませんよ。中にはグランゾンとは関係なく 起きた事件もあったでしょう」
シュウ「また、 並行世界との境界線が曖昧になりつつある原因は、 地球そのものに内包されている可能性もあります」
アルテウル(そう……その通りだ)
シュウ「私が特異点を崩壊させたところで、 地球は混乱の渦から逃れられないでしょう。 既に賽は投げられているのです」
テュッティ「釈然としない話ね……」
シュウ「ともかく、人類の歴史を紐解いても、 これほどまでに激動、そして混乱の時代は ありませんでした」
シュウ「そして、その混乱を利用し、あわよくば 地球の軍事技術を独占しようと目論んだのが…… そこにいらっしゃるゼゼーナン卿です」
ゼゼーナン「馬鹿な……認めん!  地球人ごとき下等生物が、あの原理を解明するなど!」
シュウ「さすがの私も特異点を抑え込むだけの 特性を持ったエネルギーが見つからず、 困っていたのです」
シュウ「しかし……ある者との戦いがきっかけとなり、 そのエネルギーについてのヒントを得られたのです」
ゼゼーナン「ある者とは何だ!?」
シュウ「それを知る必要はありませんよ」
マサキ(もしかして、ダークブレイン……?)
シュウ「私とグランゾンを利用しようと考えていた あなたには気の毒ですが……私は、そういうことは 許せないのですよ」
シュウ「ですから、こうして皆さんの前で 暴露して差し上げた次第です」
シュウ「これであなたの権力も そう長くは続かないでしょうね」
アルテウル(……ニブハルを通じ、 この件を“グレイ”に伝えておくか。 そうすれば、ゼゼーナンは……)
シュウ「次はあなたですよ、 アルテウル・シュタインベック司令」
アルテウル「何……?」
オペレーター「か、艦長! これを見て下さい!」
カーリー「どうした?」
オペレーター「現在、ネットで流されている映像です!」
カーリー「!!」

(ブリッジ)

アルテウル「……この場に出向いたということは 当方の申し出を受諾したと解釈していいな?」
ゼゼーナン「月を差し出す代わりに、しばらくの交戦停止か。 検討に値する条件ではある」
ゼゼーナン「衛星の制圧など、自力で成し遂げられるとは言え、 無駄に戦力を消耗する愚は避けたい」
ゼゼーナン「そして、かの南極事件の如き茶番劇もな。 貴様達は我らに対し、恭順の意を示したにも 関わらず、叛旗を翻したのだ」
アルテウル「あの反乱を首謀したDCは粛清された。 そして、まもなく私は地球圏の代表権を得る」
ゼゼーナン「にわかには信じ難いな」
アルテウル「私は権力と武力を同時に握りつつある。 それを妨げる者は、例え大統領であっても排除する」
アルテウル「いや……既に排除した。鋼龍戦隊を利用してな」

〔戦域:地球衛星軌道上〕

カーリー「何だ、これは!  SSS回線を使っているのだぞ!  何故、外部に漏れている!?」
オペレーター「げ、原因は不明です!」
カーリー「しかも、内容が出鱈目だ!  誰がいったい、このような……!  発信元の特定を急げ!」
サフィーネ「あら、その必要はないわよ。犯人は私だから」
カーリー「何!? どうやって、こんなものを!」
サフィーネ「魔法と……後は色々ね。 シュウ様との会話で、映像と音声のサンプリングが 出来たし」
サフィーネ「喋らせる内容は自由自在。恋バナもOKよ♥」
チカ「あの二人の恋バナって……………… わわわっ! 想像したら不気味で、 鳥肌立っちゃいましたよ!」
テリウス「鳥肌って……元々、そうだろ?」
カーリー「くっ! あの機体を撃墜し、発信を止めさせろ!」
アルテウル「放っておけ、艦長」
カーリー「ですが、あれはあまりにも!」
アルテウル「構わん。 迂闊な対処をすれば、かえって逆効果となる」
シュウ「陳腐な手であることは自覚していますよ。 しかし、民衆は虚偽の中に真実が隠されていることを 知っていますからね」
アルテウル「あの手の映像が簡単に作り出せることは、 お前達自身が証明してみせたではないか。 あんな物で私の権勢は揺らがんぞ」
シュウ「無論、即効性があるなどと思っていませんよ。 しかし、現にあなた達はそうやって部隊を率い、 ゼゼーナン卿と同じ場所にいる……」
シュウ「アリバイならぬ、現場在地証明というわけです」
アルテウル「なるほど、私への疑念を増幅させることが目的か。 それで、私の政敵の動きを活発化させ……」
アルテウル「いや、鋼龍戦隊の処遇を変えようとしているのか」
シュウ「その通りです」
アルテウル「面白い男だ。 私やガイアセイバーズの凋落でなく、 鋼龍戦隊の名誉挽回が目的とはな」
シュウ「彼らという存在は、何かと便利なんですよ。 あなたも御存知の通りね」
アルテウル「フッ……」
シュウ「ガイアセイバーズの急成長ぶりから判断して、 あなた達の存在を快く思っていない者は、 連邦議会や連邦軍上層部に少なからずいるはず……」
シュウ「そして、疑念が醜聞を生み、 それが衝撃的であればあるほど、 世の耳目を引きます」
シュウ「そうなれば、あなたの政敵だけでなく、 事なかれ主義の方々にも影響を及ぼすでしょう」
アルテウル「所詮は烏合の衆だ」
シュウ「ですが、鋼龍戦隊が主張したように 大統領の死が作為的なものだとしたら……」
シュウ「あなたに押し通され、然るべき場所での 査問を握り潰そうとしたことが判明したら……」
シュウ「ガイアセイバーズ設立を擁護した者は、 足をすくわれかねない。そして、保身のための 根回しが始まり、それがあなたの政敵と結びつく」
シュウ「かつてのDCのような反乱を恐れる人々は、 対抗戦力の一つとして鋼龍戦隊を存続させようと するでしょう」
アルテウル「私は体制側の人間だぞ? 反乱を起こす必要などない。 そして、ガイアセイバーズは地球を護る剣なのだ」
シュウ「その刃先には、怪しげな曇りが多いようですが」
アルテウル「完全に清廉潔白な組織など、存在し得ない。 確固たる結果を出せば、民衆はそれになびく。 いくら醜聞が流布されようともな」
シュウ「大した自信ですね」
アルテウル「ふん…… 危険を冒してここまで出向いた甲斐はあったよ」
アルテウル「ゼゼーナンの目論見だけでなく、 お前の手の内までわかったのだからな」
シュウ「………」
アルテウル「……艦長。ゲストへ砲撃を行いつつ、後退せよ」
カーリー「上申します。ここで退いては、逆効果です。 また、ゲストの指揮官を倒す絶好の機会かと……」
アルテウル「ここでの戦力消耗は避けたい。 後々のルイーナ討伐作戦に響く」
カーリー「しかし、この機を逃すのは!」
アルテウル(もはやゲストなど、どうでもいいのだよ)
アルテウル「退け、艦長。これは命令だ」
カーリー「は、はっ……」
(ゲスト軍の隊列の隙間に爆煙)
ゼゼーナン「仕掛けて来たか! 応戦せよ!」
カーリー「全軍に告ぐ! 攻撃を行いつつ、後退せよ!」
エグレッタ「何だ、敵の総大将が目の前にいるのに」
アーマラ「行くぞ、エグレッタ」
エグレッタ「ああ」
(エア・クリスマス、キャニス・アルタルフ、ガリルナガンが撤退後、他のガイアセイバーズ機が撤退)
マサキ「あいつら、退きやがったぞ!」
ミオ「あたし達だけになっちゃったよ!  どうすんの!?」
ゼゼーナン「多勢に無勢だ。 グランゾンと魔装機神を我らに引き渡せば、 貴様ら猿共の命は助けてやってもいい」
シロ「おいらは猿じゃニャいぞ!」
ゴジョー「ホンマや、失礼でんな」
クロ「って言うか、誰ニャ?」
マサキ「もしかして、ミオのファミリアか?」
ゼゼーナン「無駄話をしている余裕があるのか。 返答は如何に?」
マサキ「てめえもウェンドロと同じだな。 俺達地球人をどこまでも見下しやがる」
ゼゼーナン「猿を猿と呼んで、何が悪い?  姿形は似ていても、この銀河において 貴様らは野蛮人に過ぎん」
ゼゼーナン「己の国すら一つにまとめられぬ愚かな種族を 我々が導いてやろうと言うのだ。 ありがたく思え」
マサキ「それで地球に攻め込んで来たってんなら、 ここから先に行かせるわけにはいかねえ」
ヤンロン「マサキ、地上での争いに荷担するのは 避けるべきだ」
(魔装機神を正面から見る)
マサキ「いや、フェイル殿下はこう言っていた……」
マサキ「魔装機神操者に課せられた義務…… それは、世界存続の危機に際しては、 全てを捨てて立ち向かうこと」
マサキ「今、地上は危機に瀕してる。 俺は、それを見過ごすわけにはいかねえ」
マサキ「ラ・ギアスだけじゃない、 地上にも守りたいものや大切な仲間達がいるんだ」
マサキ「だから、俺は戦うぜ! 今、ここでな!!」
ミオ「マサキ、あたしも手伝うよ!」
テュッティ「私も。 彼らに地球を好きにさせるわけにはいかないわ」
ヤンロン「地上の煩わしいことに あまり首を突っ込みたくなかったが…… マサキの言うことにも一理ある」
ヤンロン「僕も加勢しよう」
ゼゼーナン「やはり、貴様らは愚者だな。 この数の差を何とする?」
ヤンロン「兵は多きを益ありとするに非ざるなり。 数で勝敗が決するわけではないぞ」
シュウ「サフィーネ、テリウス、モニカ。 あなた達は先に戻りなさい」
サフィーネ「あら、シュウ様は?」
シュウ「ゼゼーナン卿にグランゾンの力を もう少し思い知っていただきます」
マサキ「ほ~う。 てっきり、さっさと帰るつもりだと思ってたぜ」
ランシャオ「ご主人様、何か魂胆あってのことでは?」
ヤンロン「ああ、信用できんな」
チカ「失敬な!  ご主人様は、こう見えても意外にいい人なんですよ!」
チカ「あ、言っときますけど、 いわゆるツンデレの類じゃありませんからね!」
シュウ「……チカ、黙っていなさい」
クロ「フォローにニャってニャいわよ」
テリウス「……面倒なのは嫌だから、僕は帰るよ。 じゃあね」
(ガディフォールが撤退)
モニカ「では、私もお暇させますわ。 マサキ、ヤンロン、またお会いしましょう」
(ノルス・レイが撤退)
ヤンロン(モニカ王女……いや、もう忘れなくてはな)
サフィーネ「………」
シュウ「どうしたのです、サフィーネ?」
サフィーネ「私は残って、お手伝いをさせていただきますわ。 このまま帰ったら、欲求不満になりそうですもの」
シュウ「フッ、いいでしょう」
ロフ「グランゾンが残ったか。相手にとって不足はない」
セティ「こんなチャンス、滅多にないわよね。 魔装機神とグランゾン、まとめて手に入れてやるわ!」
(作戦目的表示)

〈vs ロフ〉

[マサキ]

ロフ「サイバスター……どれほどのスピードとパワーか、 見せてもらおうか!」
マサキ「ついでに痛い目も見せてやるぜ!」

〈vs セティ〉

[マサキ]

セティ「こっちもスピードには自信があるのよ」
マサキ「前にも似たようなことを言ってやがった女がいたな。 同じ目に遭わせてやるから、覚悟しな!」

状況選択

ゼイドラムを撃墜した
ビュードリファーを撃墜した
ライグ=ゲイオスのHPを35000以下にした
7PPになった、またはビュードリファー、ゼイドラム、ライグ=ゲイオス以外の敵機を20機以上撃墜した


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