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狼と犬達 ~ 第39話 ~

(回想:ブリーフィング・ルーム)

フォリア「それにしても、ヒューゴ…… あそこでお前が親父に噛みつくとは 思わなかったぜ」
ヒューゴ「俺だって、ミタールの言いなりになって 犬死にするつもりはない。それは隊長も……」
(扉が開閉する)
アルベロ「ヒューゴ、フォリア」
ヒューゴ「隊長……」
アルベロ「よく戦ってくれた、二人共。 あの死地を切り抜けられたのは、 お前達がバックアップしてくれたおかげだ」
ヒューゴ「しかし、自分は隊長に……」
アルベロ「構わん。 お前達がツェントル・プロジェクトに対して 疑問を抱いていたのは、承知していたからな」
アルベロ「それと、フォリア准尉…… お前がチームの一員に徹したことが、 今回の結果につながった」
アルベロ「今日の戦いで得た教訓を忘れるなよ」
フォリア「はい、隊長」
(閃光)

(個室)

ヒューゴ(……また昔の夢を……)
ヒューゴ(フォリア……アルベロ隊長…… 隊長は今、どこで何を……?)
(通信、モニターオン)
アクア「……ヒューゴ、そろそろ哨戒任務の ブリーフィングの時間よ」
ヒューゴ「……わかった」

(ブリーフィング・ルーム)

ギリアム「私の部下達がトオミネ・ラボを調査した結果、 トオミネ博士の居場所を特定できる物証は 見つからなかった」
ギリアム「また、君がデータを送っていた先についてだが…… 多くの経由点を経て、イギリスのホーシャム・ カンパニーという会社であることが判明した」
ギリアム「その名に心当たりは?」
ミナキ「……いえ」
ギリアム「そうだろうな。 部下に調べさせたが、ダミー会社だった。 その先はまだ調査中だ」
ミナキ「………」
ギリアム「改めて確認するが、このまま鋼龍戦隊に 同行するということでいいのだな?」
ミナキ「はい……。 ジンライが実戦へ投入され、ダイゼンガーと アウセンザイターをターゲットとしているのなら……」
ミナキ「この艦に乗っていれば、遭遇できるのではないかと…… そして、ジンライを……父を止めなければ……」
ギリアム「………」

(通路)

(扉が開閉する)
ミナキ「………」
トウマ「話は終わったかい、ミナキ?」
ミナキ「トウマ……私に何か用ですか?」
トウマ「その……用って程じゃないんだけど…… 手空きのメンバーでお茶を飲むことになったんで、 誘おうと思って」
ミナキ「私は……遠慮させていただきます」
トウマ「だけど、この艦に乗ってから、 部屋にこもりっぱなしだろ?  少しぐらい気晴らしをした方が……」
ミナキ「……私や父のせいで、 皆さんにご迷惑をお掛けしているのです。 とてもそんな気には……」
トウマ「そのさ……。 俺じゃ頼りにならないだろうけど、 君の気持ち……俺にも少しは……」
ミナキ「……ごめんなさい」
(足音・ミナキが立ち去る)
トウマ(ミナキ…… そう簡単には心を開いてくれないか……)

(休憩室)

リム(クリス)「は~い、皆さん。お茶の準備が出来ましたよ」
レーツェル「ささやかながら、私の方でスイーツも用意した。 ご賞味あれ」
アラド「やったぁ!」
タスク「お茶と言えば、紅茶戦士はどうした?」
ブリット「ユウはスクランブル当番なんだ」
アイビス「うう~ん、レーツェルさんのスイーツは やっぱり最っ高~!」
ミチル「なっ、何や、この菓子!?  美味い、美味すぎるで!!」
タスク「トロンベ印のスイーツは、 そんじょそこらのパティシエが 裸足で逃げ出すほどだからな」
コウタ「つーか、ミチル…… てめえ、その面で甘い物好きなのか?」
ミチル「顔は関係あらへんやろ、ボケ!」
コウタ「ボケたぁ何だ、ボケたぁ!」
ショウコ「はいはいはい、そこまで!  子供じゃないんだから、つまんないことで 喧嘩しないの!」
リム(クリス)「デスピニス、イルイちゃん、 みんなに飲み物を配ってくれる?」
デスピニス「あの、あれ……大丈夫でしょうか……?」
リム(クリス)「大丈夫、大丈夫。 クリフだったら、もうちょっとって言うもの」
デスピニス「じゃあ、紅茶は私が…… イルイちゃんはコーヒーの方をお願い」
イルイ「うん」
ゼオラ「あら、イルイもお手伝いしてるの?」
イルイ「私……みんなのために何かしたいと思って……」
トウマ「そう、イルイが自分から言い出したんだよ」
リム(クリス)「それで、お茶を淹れるのも手伝ってもらったんです」
クスハ「そうなんだ……ありがとう、イルイちゃん」
イルイ「ううん、 クスハ達は私達を守ってくれてるから……」
(扉が開閉する)
ゼンガー「………」
レーツェル「ゼンガー、お前も皆と一緒にどうだ?」
ゼンガー「いや、俺は水を取りに来ただけで……」
イルイ「あ、あの……コーヒーを……」
ゼンガー「………」
ツグミ「あの子、ゼンガー少佐に……」
アラド「ゆ、勇気あるなぁ」
トウマ「俺だって、あの人と初めて会った時は 緊張したのに……」
イルイ「………」
レーツェル「……ゼンガー」
ゼンガー「わかった。では、もらおうか」
イルイ「ど、どうぞ……」
ゼンガー(む!?)
イルイ「あ、あの……おいしく……なかった?」
ゼンガー「……いや、美味い。 なかなかいい筋をしている」
アラド(いい筋?)
ゼンガー「また頼む。ただし、その時はブラックでな」
イルイ「うん……コーヒー、飲んでくれてありがとう……」
ゼンガー「ではな」
(扉が開閉する・ゼンガーが立ち去る)
トウマ(ゼンガー少佐…… 厳しいだけの人じゃないんだな……)
タスク「じゃあ、俺ももらおうかなっと」
タスク「むふっ!?」
ブリット「ど、どうしたんだ?」
タスク「こ、このコーヒー……めっちゃ甘い……」
デスピニス「あっ、それは……」
リム(クリス)「疲れが取れるかなと思って、 私が練乳とお砂糖をたくさん入れたんですが……」
タスク「だからって、限度ってもんが…… 親分、よく飲み干したなぁ」
リム(リアナ)(だから、言ったじゃない。 いつも通りにしちゃ駄目だって)
リム(クリス)(うぅ~、少なめにしたつもりだったんだけど)

(ブリーフィング・ルーム)

カイ「ヒリュウとハガネは無事に北回帰線を越え、 メキシコ東岸沖方面へ向かっている」
カイ「その後のコースだが……モニターに表示した通り、 南下してガラパゴス諸島の東側を通過し、 イティイティ島へ向かう」
アクア「……中央アメリカや南アメリカ大陸の東岸沿いに 進むような感じなんですね」
アヤ「ポリネシアと南アメリカ大陸の中間海域を 通らないのは、ガイアセイバーズを 警戒して……ですか?」
カイ「そうだ。 彼らの本拠地であるグランド・クリスマスは ポリネシアのマーケサス諸島にあるからな」
カイ「それに、次元断層発生後、中間海域を通過した ヒリュウはエア・クリスマスと遭遇したのだろう?」
ジョッシュ「ええ」
カイ「そのことを踏まえての迂回コースなのだが…… 最近、ルイーナは南アメリカ大陸東岸部だけでなく、 中央アメリカにも出没しているらしい」
カイ「それに対処するため、 連邦軍のみならず、ガイアセイバーズも 南アメリカ大陸東岸や東海域で動いているだろう」
カイ「つまり、以後はルイーナやガイアセイバーズと 遭遇する確率が一段と高まるということだ」
カイ「そこで、哨戒を強化するため、 探知能力や機動性に優れた機体を中心として 任務を遂行してもらう」
カイ「ローテーションは俺の方で組んだ。 ここにいるメンバー……リュウセイとアヤ、 ヒューゴとジョッシュのペアが第1班だ」
カイ「直ちに機乗し、任務に当たれ。 それぞれの哨戒担当空域のデータは 機体へ送っておく。以上、解散だ」
アヤ「……それじゃ、行きましょうか、リュウ」
リュウセイ「ああ、わかったぜ」
(扉が開閉する・リュウセイとアヤが立ち去る)
カイ「ヒューゴ少尉、話がある。お前は残れ」
ヒューゴ「了解」
アクア「じゃあ、先に行くわね」
(扉が開閉する・アクアとジョッシュが立ち去る)
カイ「……身体の調子はどうだ?」
ヒューゴ「何とか……騙し騙しでやっています」
カイ「薬の残量は大丈夫なのか?  あれは、ミタール・ザパト博士にしか 調合できぬ物なのだろう」
ヒューゴ「そちらの方も何とか……」
カイ「正直に言え。薬がなくなるのはいつだ?  お前は、あとどのくらい戦闘が行える?」
ヒューゴ「………」
ヒューゴ「もって、10日ほどです」
カイ「……やはり、余裕はなかったのだな。 しかも、俺が思っていたより悪い状態だ」
カイ「アクアにTEアブゾーバーの シミュレーション訓練をやらせていたのは、 そういう事情もあってのことか」
ヒューゴ「………」
カイ「ヒューゴ、 イティイティ島に到着次第、お前を外す」
ヒューゴ「少佐、それは!」
カイ「今は大丈夫でも、薬が切れた後はどうする?  万が一のことがあれば、同乗しているアクアは どうなる?」
カイ「このような状況でなければ、今すぐお前を TEアブゾーバーから降ろしている所だ」
ヒューゴ「………」
カイ「ミタール・ザパトに対するお前の気持ちはわかる。 だから、薬でもたせられる内はTEアブゾーバーへの 搭乗を許可するが……」
カイ「事を焦って、命を落としては元も子もない。 お前が戦わずとも、ツェントル・プロジェクトの 全貌を明らかにし、糾弾する術はある」
カイ「くれぐれも一人でグランド・クリスマスへ 行こうなどと考えるな。それは犬死にと同義だ」
カイ「ツェントル・プロジェクト、そしてガイアセイバーズは もはやお前だけでなく、我ら全員の問題なのだ」
カイ「今は生き延びることを考えろ。 そうすれば、道は開ける。アルベロ少佐がいれば、 俺と同じようなことを言うと思うがな」
ヒューゴ「……!」
カイ「いいな、ヒューゴ。これは命令だ」
ヒューゴ「……了解……」
カイ「それと……哨戒任務が終わったら、 ラーダの検査を受けることを勧める」
カイ「彼女はラミアのメンテも担当しているからな…… もしかしたら、解決策の糸口が掴めるかも知れん」
カイ「あと、アクアに本当のことを話せ。 ミタール・ザパトとの件に巻き込みたくないという 気持ちは理解できるが……」
カイ「彼女は、お前と同じ機体に乗るパートナーなのだ。 真っ先に頼って然るべき相手ではないか……?」
ヒューゴ「………」

ヒューゴの乗機は
ガルムレイド サーベラス


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