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四神邂逅 ~ 第38話 ~

《日本近海 海中(鋼龍戦隊)》

[ヒリュウ改 格納庫]

リム(クリス)「わっ、何々? あのロボット」
ラウル「Gバンカラン…… コンパチブルカイザーのサポート・メカさ」
カチーナ「サポート・メカ?  とてもそんな風には見えねえな」
ラウル「そっちの機能は後付けらしいですけどね」
タスク「いや~、色んな意味で突き抜けてんな。 いつの時代のマンガだよ、あのデザイン。 いったい、どんな奴が乗ってんだ?」
(足音)
ミチル「何や、おどれ? ワイのGバンカランに 文句あるっちゅーんか、コラ」
タスク(げっ、乗ってる奴もまんまじゃねえか)
ミチル「おう、コラ。詫び入れてもらおか」
タスク「いや、別に悪気があって言ったわけじゃ……」
カチーナ「待ちな。 新入りの分際であたしの舎弟に 因縁つけるたぁ、いい度胸じゃねえか」
ミチル「フン、女と喧嘩するつもりはないで。 引っ込んどれや」
カチーナ「ほ~う、あたしが怖いってのか?」
ミチル「何やて……?」
リム(クリス)「あ、あの、喧嘩はよくないです!」
ミチル「下がっときいや、姉ちゃん。怪我するで」
カチーナ「そうだ、こいつは喧嘩じゃねえ……指導だ!」
ミチル「ハッ、おもろいこと言うやんけ!」
カチーナ「てめえが見かけ倒しじゃねえってんなら、 掛かって来いや!!」
ミチル「このアマ!  そこまで言うんなら、泣かしたるわ!!」
ラウル「タ、タスク、止めなきゃ!!」
タスク「ああ、カチーナ中尉の方をな!!」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ジェイコブ「……BFベースの件だが、情報部預かりにすると 私からケネスに直接伝えておいた。 彼はそれで手が出せなくなるだろう」
ギリアム「……何かカードを切られたのですか?」
ジェイコブ「いや。以前にも言っただろう、ギリアム…… スキャンダルは暴露するのではなく、 それを握っていると相手に思わせればいい」
ジェイコブ「脛に傷を持つ小心者は、それだけで疑心暗鬼に なるからね。あと、ジンライの件について ケネスに探りを入れたが……」
ジェイコブ「途端に顔色が変わった。 あの様子では、何かを知っているようだ」
ショーン「……相変わらず、わかり易いお方ですな」
ギリアム「こちらはジンライの開発者の一人…… ミナキ・トオミネと接触しました。 カオル・トオミネ博士の義娘です」
ジェイコブ「ほう」
ギリアム「彼女は父親から詳細を聞かされておらず…… 彼の現在の居場所についても知らぬようです」
ジェイコブ「ふむ、怪しいな。 それで、ミナキ・トオミネは?」
ギリアム「私の権限で、重要参考人として 同行してもらっています。また、彼女のラボには 私の部下を派遣し、調査をさせています」
ジェイコブ「彼女は父親と連絡を取っていたのだろう?  居場所は逆探知できるのか?」
ギリアム「現在、調査中ですが…… おそらく、グランド・クリスマスかと思われます」
ジェイコブ「そうか。 では、ガイアセイバーズに関する 他の情報を得たら、報告してくれ」
ギリアム「了解です」
レフィーナ「……ジェイコブ中将、 統合参謀本部内でもガイアセイバーズに対する 疑惑と不信感が強まっているのでしょうか?」
ジェイコブ「元帥は、利用できる所まで利用するつもりのようだ。 私は黒だと確信しているがね」
ジェイコブ「それに、レフィーナ大佐…… 君のように美しく聡明な女性が、 反乱を目論むなどと思えないのでね」
レフィーナ「中将……」
ジェイコブ「大統領の件は不幸な出来事だったが…… ガイアセイバーズの接収をはね除けた 君の判断は、間違っていなかった」
ジェイコブ「とは言え、疑惑を晴らさぬ限り、 君達は反乱分子として扱われる……」
ジェイコブ「まずはイティイティ島へ辿り着き、 そこで身を隠していてくれたまえ」
レフィーナ「了解です。 中将が後ろ盾としてついていて下さるのなら、 励みになります」
ジェイコブ「だが、統合参謀本部は伏魔殿だ。元帥は君達に 利用価値がないと判断すれば、アルテウルとの 駆け引き材料として使おうとするだろう」
ジェイコブ「無論、そうならぬよう私も尽力するつもりだが…… 予断を許さぬ状況であることを忘れないでくれたまえ」
レフィーナ「……はい」
ジェイコブ「全ての事が済めば、君を食事にお誘いするよ。 パリにいい店があるんだ。どうかね?」
レフィーナ「は、はい、是非」
ジェイコブ「では、以上だ」
(通信が切れる)
ショーン「……中将に返事をしてしまいましたな」
レフィーナ「そ、それが何か?」
ショーン「いえ、まあ……艦長ならば、大丈夫でしょう」
レフィーナ「?」
ショーン「では、イティイティ島へ向かうとしましょう」
レフィーナ「ええ。 ハガネに伝達、これより進発します」

《太平洋 海中(鋼龍戦隊)》

[ハガネ ブリッジ]

アヅキ「艦長、ヒリュウ改からコース修正指示が来ました」
テツヤ「了解した。データを転送しろ」
エイタ「また迂回ですか……」
テツヤ「仕方あるまい。 こんな所で潜水艦に出くわしたら、厄介だ」
エイタ「まあ、海上へ逃げるわけには いきませんしね……」
(アラート)
テツヤ「何だ!?」
エイタ「艦周辺に異常現象! 原因は……」
(振動、轟音)
アヅキ「きゃああっ!!」
テツヤ「こ、これは……! 艦が沈降しているのか!?」
エイタ「艦長! 艦体が異常重力場らしきものに包まれ、 真下へ引き込まれています!」
テツヤ「!!」


第38話
四神邂逅

<海中に引きずり込まれるハガネとヒリュウ改>

(アラート)
エイタ「い、異常重力場、消失!  ただし、艦体の落下は止まらず!」
テツヤ「艦底のスラスターを全基噴射!  このままでは、海底にぶつかるぞ!」
エイタ「水圧に異常が……!  いえ、この数値は水の圧力ではありません!」
テツヤ「何!?」

〔戦域:限仙境〕

(ヒリュウ改とハガネが出現)
テツヤ「こ、ここはいったい……!」
(カメラが引く)
アヅキ「う、海の中……じゃないですよね」
エイタ「あ、ああ……」
アヅキ「もしかして、 またラ・ギアスへ来てしまったとか……」
エイタ「いや、あの時とは状況が違う……」
テツヤ「直ちに状況を調査せよ。 それと、総員第一種戦闘配置。 全周警戒を厳となせ」
アヅキ「了解!」
エイタ「……艦長。艦外の重力、気圧、温度、空気成分は 地上と同じです」
テツヤ「位置は特定できるか?」
エイタ「いえ、データ・リンク不可です。 しかも、電波、EPW共に、本艦を中心とした最大半径 3キロメートル前後のポイントで跳ね返ってきます」
テツヤ「何……?」
エイタ「上空と地表はともかく、 水平面でこの現象が起きるとなると……」
テツヤ「我々は、閉鎖空間のようなものの中に 閉じ込められたのか……」
ショーン「このような芸当、 ゲストやガイアセイバーズには不可能ですな」
レフィーナ「ええ」
ショーン「過去にアインストが似たような現象を 引き起こしていますが……」
レフィーナ「副長、パイロットは機乗し、待機を」
ショーン「了解です」
クスハ「……ねえ、ブリット君。 この場所に見覚えがあるような気がしない?」
ブリット「え?」
クスハ「何となくなんだけど、 龍虎王が現れた蚩尤塚みたいな感じが……」
ブリット「! 言われてみれば……」
アリエイル「蚩尤塚とは、何なのですか?」
クスハ「中国の山東地区にある遺跡で、 そこの地下に龍虎王が眠っていたの」
アリエイル「では、私達は中国へ転移したと?」
クスハ「わからない……。でも、アンザイ博士によれば、 蚩尤は黄帝によって倒された後、その身体を バラバラにされて、二つの塚に葬られたそうなの」
クスハ「一方には頭と胴体、もう一方には手足が……」
ラミア「ならば、蚩尤塚はかつて私達が見たもの以外にも 存在している可能性があるのか」
クスハ「ここがそうなのかどうか、わかりませんが……」
キョウスケ「お前達、機体に搭乗し、待機しろ」
クスハ「は、はい」
ツグミ「アイビス、私達も行くわよ」
アイビス「了解」
イルイ「みんな、行っちゃ駄目……」
クスハ「え?」
イルイ「ここは危ない……」
ブリット「どうしてそう思うんだ?」
イルイ「わ、わからない…… けど、とても嫌な予感がするの……」
クスハ「イルイちゃん……」
アイビス「あたし達は、それを振り払うために行くんだ。 だから、ここで待っててね、イルイ」
イルイ「あ……アイビス……」
(ハガネにアラート)
エイタ「艦前方に動体反応多数!」
テツヤ「前部副砲、VLSM、攻撃用意!」
(敵機が出現)
ミチル「な、何やねん、あいつら!?」
タスク「妖機人……ま、化け物みたいなもんさ」
ミチル「みたいっちゅーか、まんまやんけ」
カチーナ「チッ、魚もどきがいやがる。 あいつは駄目だ。ミチル、任せるぜ」
ミチル「押忍、姐さん!」
カチーナ「姐さんはやめな、お洒落じゃねえ」
ミチル「押忍! ほなら、姉御で!」
タスク(姉御もお洒落じゃないって)
コウタ「ミチルの奴、いつの間にあっちの組へ入ったんだ?」
ショウコ「さあ……?」
タスク「まあ、カチーナ中尉に噛み付いたのが 運の尽きだったな」
ラウル「あ、ああ……数秒のパンチの応酬…… その後のカウンター……」
ミチル「ホンマ、姉御の喧嘩殺法には感服しましたで」
カチーナ「いや、てめえもいい筋をしてたぜ。 これからも気張れよ」
ミチル「押忍!」
カチーナ「よし、野郎共! 出撃するぞ!」
(龍人機とブリット機が出撃、出撃準備)
クスハ「ブリット君、虎王機が……!」
ブリット「ああ、わかってる」
(虎王機を指す)
アラド「虎王機…… 本当におれ達の敵になっちまったのか」
ブリット「だけど、あの色は虎王機本来のものじゃない。 ククルは穢れだと言ったが、俺はそう思わない。 あれは、歪められた色だ」
ラトゥーニ「他にもまだ超機人らしき機体が……」
(武王機を指す)
ラウル「あれは……亀か?」
フィオナ「もしかして、アンザイ博士が言ってた玄武…… あれも四神の超機人なの?」
リュウセイ「何だって……!?  それじゃ、もしかして、あいつらも……」
夏喃「永き時を経て、ようやく四神の超機人が邂逅した。 そして、青龍を駆る少女…… 君と相見えてみたかったよ」
クスハ「ひゃうっ!」
ブリット「どうした、クスハ?」
クスハ「ま、また首筋に寒気が……」
リオ「あなた、前にもそんなことを言ってたわね」
夏喃「さて……」
(雀王機から通信)
夏喃「聞こえるかな、諸君。 しばしの間、ご清聴願いたい」
リオ「こ、この声……!」
リョウト「あの超機人には、人が乗っているのか……!?」
夏喃「中らずと雖も遠からず。 僕は、バラルの神の下に集う南仙、夏喃潤。 夏喃と呼んでくれたまえ」
クスハ「かなん……?」
夏喃「そう。そして、こちらが……」
泰北「北仙の泰北三太遊じゃ」
ブリット「南仙に北仙? 何なんだ、それは?」
夏喃「いわゆる仙人……羽化昇天をした者さ」
エクセレン「仙人って…… 雲に乗って、霞とか桃とか食べてるあれ?」
イルム「お前、妙なことに詳しいんだな」
エクセレン「まあね。 不老不死の、エコロジーでおめでたい人達なんでしょ」
泰北「フオッホッホ、斯様な認識も善哉、善哉」
リュウセイ「めでてえことなんてあるか。 今まで妖機人を差し向けてきたのは、 あいつらだろうが」
ギリアム「そして、我々をこの空間へ転移させたのも、 彼らの仕業か」
夏喃「そう……君達の力を試してみたくてね。 色々と手を打ったのさ」
キョウスケ「それで、おれ達に何の用だ?」
夏喃「単刀直入に述べよう。 僕達は、君達がこの星の守護者として 相応しい資質を持っていると判断した」
夏喃「そこで、君達をバラルへ迎え入れたいと思って、 この場を用意したのさ」
アラド「えっ!?」
ショウコ「ショウコ達をスカウトしに来たの!?」
夏喃「ああ。僕達が奉ずるバラルの神は、 太古の昔から超機人を率いて百邪と戦い、 この地球……人界を守護してきた」
夏喃「つまり、僕達と君達の目的は同じ…… 敵対する理由はない」
カイ「その言葉、にわかには信じられんな」
カーラ「あんた達が送り込んだ妖機人は、 街を焼いたじゃないか! あれはどう説明するのさ!」
夏喃「今という時には、妖機人の存在や力が必要なのさ。 それが結果的に人を救うことになる」
カーラ「答えになってないよ!」
夏喃「確かに、命が失われることは悲しい。 それは人に限った話ではない。この大地に生きる 獣も鳥も魚も、草木も皆美しく尊いものだ」
夏喃「だが、それもまた生々流転の輪を成す大事な要素だ。 彼らの命は、無駄に散るのではない……」
夏喃「僕達が必ずや大事に、最も輝かしい意味を以て 使うことを約束しよう」
コウタ「命を使うだと……!?  てめえら、何様のつもりだ!」
レオナ「まるで、神の立場にでもいるかのような物言いね」
夏喃「僕達も三千大千世界の一部に過ぎないよ。 もっとも、君達人間とは品格が違うがね」
クスハ「あなた達が人界を守る存在だと言うのなら、 何故、龍虎王や虎龍王は私達と共に 戦うことを選んだんですか?」
夏喃「龍王機と虎王機は、この雀王機や武王機と違い、 昔から聞き分けが悪かったからね」
ブリット「じゃあ、朱雀と玄武の超機人は……!?」
夏喃「自らの意思で、僕達に従っている。 それが、人界を守護するために造られた 超機人のあるべき姿なのだから」
アヤ「なら、 念の力で超機人を操っているわけではない……!?」
夏喃「僕達は仙人だからね。 人間とは違う方法で彼らを制御している」
レーツェル「お前達が地球の守護者を名乗るのなら、 何故、これまでの大戦で姿を現さなかった?」
タスク「そうだよ、異星人だのアインストだの、 色んな奴らが地球を襲って来たんだ…… なのに、あんたらは何をやってたんだ?」
夏喃「そう…… そこに、君達を迎え入れる理由があるのだよ」
夏喃「僕達は、百邪との戦いや過去の大戦で 疲弊していてね……バラルの神共々、 永き眠りにつかねばならなかった」
夏喃「先だっての百邪による星難がきっかけとなり、 僕や泰北達は目覚めたが……バラルの神は、 未だ覚醒していない」
夏喃「“彼女”の力を以てすれば、外敵を退けることが 出来たのだが……結果的には、君達にこの星の 守護を委ねることになってしまった」
イルム(彼女、か。バラルの神とやらは、女神らしいな)
夏喃「それについては、申し訳なく思っている。 現時点でも、僕達の軍勢は数が揃っていなくてね…… 妖機人までも使役せざるを得ないのさ」
ヒューゴ「つまり、足りない戦力を俺達で補おうというのか?」
夏喃「ああ。 バラルの神は、まもなく目覚めるのだが…… 君達がルイーナと呼ぶ大邪が現れた」
夏喃「大地を閉じる術を持つ彼らは、僕達にとっても 少々厄介でね……どうしようかと思索していたら、 君達が彼らを退けてくれた」
夏喃「どうやら、君達の中にはルイーナの結界を解く鍵を 持っている者がいるようだね」
リム(クリス)(リアナ、それって……)
リム(リアナ)(あたし達のこと?)
ジョッシュ「お前達もルイーナと戦う気なのか?」
夏喃「そうだ。 彼らの主は、的殺の彼方から到来する羅睺神…… 日を蝕み、破滅をもたらす凶神だとも言える」
夏喃「いや、ルイーナだけでなく、 大羅天へ至る道を求めて、万魔百邪が この世界へ現れるだろう」
夏喃「君達が住まう地球は、君達が思っている以上に 危ういのだよ。だから、僕達はこの星を護り、 人間達をより良い方向へ導きたい」
ジョッシュ「人を導く……?」
カチーナ「出たな、てめえらみたいな連中が言う お決まりの文句が」
リュウセイ「お前達が人間を…… いや、この地球を支配するってのか?」
夏喃「支配なんかじゃないさ。この世界は、 無為自然の状態に戻すのが一番……僕達はその上に “俗界桃源郷”を創りたいと思っている」
シャイン「ぞっかい……とうげんきょう?」
ラーダ「俗界とは、私達が住んでいるこの世界。 桃源郷、とは理想郷……ユートピアのようなものよ」
夏喃「本来、桃源郷とは求めるものに非ず。 それを探し出そうとする者の前には姿を現さない」
夏喃「だが、この戦乱の世の中では、 そうも言っていられない。神の庇護の下、 あらゆる災厄から逃れられる仙境が必要なのさ」
ラミア「つまり、シェルターのようなものに 人間を導くということか」
コウタ「どうせ、ただで行けるってわけじゃねえんだろ」
夏喃「そう、俗界桃源郷に俗人を招いて、 争いや破壊を行われては元も子もない」
カーラ「話が見えてきたよ。 あんた達に選ばれた者でなきゃ、 行けないって言うんだろ?」
夏喃「僕達が選ぶんじゃない。 君達が然るべき資質を持ち、その格を上げることが 出来れば、俗界桃源郷への道は自ずと開かれるさ」
ライ「格を上げる……?」
ラーダ「もしかして、尸解が必要だと言うの?」
泰北「如何にも」
アラド「し、しかいって何スか、ラーダさん」
ラーダ「簡単に言えば、肉体を捨て、仙人になることよ」
アラド「いっ!?  体がなくなっちまったら、幽霊と同じなんじゃ……」
夏喃「心配はいらない。 僕達が施す尸解は、本来のそれより遥かに 成功確率が高い」
夏喃「君達のように心身壮健であり、 強い魂力を持っていれば、まず大丈夫さ」
クスハ「……そうでない人達は、どうなるんです?」
夏喃「その三魂は然るべき所へ行くことになる」
クスハ「……!!」
リオ「望む望まないに関わらず、 尸解できなかった人は、全員死ぬっていうの!?」
夏喃「そう……それが天命ということになるね」
リオ「そんな……!」
ライ「尸解に成功したところで、人ではなくなるのだろう?  姿形も元のままというわけではあるまい?」
夏喃「その点は心配ない。 尸解すれば、肉の体は失われるが、 仙体は魂魄の有り様によって変わる」
夏喃「性別すら超越することが出来るが、 望めば尸解前と同じ姿のままでもいられる。 ……僕がそうだからね」
ライ「望みのままに姿を変えられるということか」
夏喃「ああ、失った部位があれば、 それを元通りにすることも可能だよ」
ライ「………」
ヒューゴ「………」
夏喃「ただし、元から魂を持っていない者や、 魂魄に手が加えられた者は、尸解することが出来ない。 誰とは言わないが、自覚している者もいるだろう」
ラミア「………」
アリエイル「………」
イング「………」
レーツェル「いずれにせよ、 彼らが言う尸解と桃源郷は、危険な選民思想だな」
夏喃「いや、 僕達は全ての人間が尸解できればいいと思っている。 それが、“総人尸解計画”の目的だからね」
夏喃「成功すれば、君達を苛む俗界の問題が解決する。 尸解した者は、心穏やかに、この星を蝕むことなく 健やかに生きていける」
タスク「こいつぁ、質の悪い勧誘だな。 人間やめて、幸せになれってのかよ」
夏喃「勘違いしてもらっては困るな。 僕達は、ルイーナのように人間を滅ぼすわけじゃない」
夏喃「その格を上げ、これからの災厄を逃れるための術を 授けようと言うのさ」
ブリット「それで多くの人が死ぬのなら、 お前達の尸解そのものが災厄じゃないか!」
夏喃「まあ、どれだけの人間が尸解に成功するか、 やってみなければわからないけどね」
クスハ「えっ……!」
エクセレン「あらら、そこはアバウトなのね」
アヤ「そんないい加減な計画に、 多くの人達を巻き込むつもりだなんて……!」
夏喃「本来は、資質を持った希望者のみを尸解させた方が いいんだが……ルイーナとの戦いで、最悪の 結果を招いた時のことを想定しておく必要がある」
ジョッシュ「最悪の結果……?」
夏喃「バラルの神と“破滅の王”の戦いは、 熾烈を極めるだろうからね。 その中で、人間が生き残れる保証などない」
夏喃「そこで、僕らは準備が整い次第、人類の尸解を行う。 君達はその先駆けとなって、 人々に範を垂れてもらいたい」
コウタ「三階だか五階だか知らねえが、 そんなのはお断りでえ!」
夏喃「随分と早い返答だな。 さらなる力と不老長寿が不要なのかい?  君達の目的も達成し易くなると言うのに」
イルム「話が胡散臭すぎるんだよ」
カーラ「ルイーナと戦おうってんなら、 素直に協力すればいいじゃないのさ!」
夏喃「……そこの君はどうかな?  君にとって、尸解は助けとなるんじゃないか?」
ヒューゴ「………」
アクア(あの人、どうしてヒューゴを……?)
ヒューゴ(そういうことを嗅ぎ取るのも、 仙人の能力だと言うのか)
夏喃「君の悩みはすぐに解決するよ。 もっとも、尸解に成功すればの話だが」
ヒューゴ「生憎だが、人間をやめるつもりはない」
夏喃「そうか。 では、尸解を希望する者がいたら、 名乗り出てくれたまえ」
(少し待つ)
泰北「ふむ、誰もおらぬか。それも善哉」
夏喃「だからこそ、巫女も彼らに目を付けたのかもな」
イルイ(私を呼んでいたのは、あの人達なの……?)
レフィーナ「あなた達の計画は、多くの人々に災いをもたらします。 それを認めるつもりはありません」
夏喃「最も確実で、効率的な手なのだけどね。 ま、僕も話だけで事が済むと思っちゃいないさ。 むしろ、僕達を前にして、拒絶する気概が好ましい」
夏喃「しかし、 物の道理を知らぬ幼き弟妹には、導きが必要だ。 力を以て君達の往くべき道を示そう」
カイ「来るか……! 各員、迎撃用意!」
夏喃「そうだ、青龍の少女よ…… 君の名前を聞かせてくれないか?」
クスハ「………」
クスハ「……私は、クスハ・ミズハです」
夏喃「クスハ……涼やかで良い名前だ。 君に相応しい。ますます気に入ったよ。 青龍も君も、僕の物にする」
クスハ「えっ!?」
ブリット「な、何だって!?」
夏喃「僕は、彼女のような女性…… 凛とした気、ふくよかな身体を持った 女の子が好きなのさ」
アイビス「だからって、こんな時にどういうつもりなの!?」
夏喃「ああ、スレンダーな子は範疇外なんだ。悪いね」
アイビス「え? えっ!?」
イルム「口説き方が強引だな。 ブリットに見習わせたいぐらいだ」
タスク「……中尉は他人のこと、言えないっしょ」
レオナ「あなたもね」
タスク「たはは、こりゃ手厳しいネ」
夏喃「言っておくが、僕は男じゃない。 俗人の性別で分けるなら、女さ」
クスハ「えっ!?」
イルム「そ、そっち方面かよ!」
ツグミ「男装の麗人ってこと……!?」
夏喃「さて……じゃあ、行こうか。 虎王機よ、お前も自分の半身を取り戻すんだ」
虎王機「グルルル……!」
クスハ「ブリット君、 虎王機はあの人達に操られてると思う……!」
ブリット「ああ。 あいつらを退ければ、俺達の下へ 戻って来てくれるかも知れない」
夏喃「それはどうかな。 四神の超機人の力は、君達もよく知っているはず。 この雀王機は、虎王機以上に苛烈だよ」
カイ「……各機、虎王機には手を出すな。 攻撃して来ても受け流せ。メイン・ターゲットは 雀王機と武王機だ!」
(作戦目的表示)

〈vs 虎王機〉

[ブリット]

虎王機「ガアアアッ!!」
ブリット「今、邪魔をされるわけにはいかない!  悪いが、動きを止めるぞ!」

〈vs 夏喃〉

[ブリット]

夏喃「白虎の操者……君はクスハの何なんだ?」
ブリット「そんなことをお前に言う必要があるのか!」
夏喃「なら、いい。 虎王機は君のことを気に入っているようだからね、 共に招いてやるよ。ただし……」
夏喃「クスハは僕の物だ」
ブリット「黙れ!  クスハも虎王機も、お前の好きにはさせない!」

[クスハ]

夏喃「僕の所へおいで、クスハ。痛くしないから」
クスハ「嫌です。あなた達のやり方では、 多くの人が不幸になると思います」
夏喃「戦いに犠牲はつきものだよ?  神でもない限り、万人を救うことは出来ないんだ」
クスハ「だからと言って、 最初からそれを斬り捨てるつもりはありません!」
夏喃「フフフ、臆せずにその物言い…… ますます気に入ったよ、クスハ」

〈vs 泰北〉

[ブリット]

ブリット「虎王機は自分の意志で従ってるんじゃない…… お前達がコントロールしているんだろう!?」
泰北「何故、そう思う?」
ブリット「今の虎王機の色だ!  黒い白虎なんて矛盾してる! 本来の姿じゃない!」
泰北「フオッホッホ、一理あるのう」

[クスハ]

泰北「敢えて苦難の道を選ぶか。それも善哉」
クスハ「苦難じゃない、当然の選択です!  あなた達の導きなんていらない…… 仙人になる気はありません!」
泰北「うむ。 我らに従うか、抗うか…… お主の思うままにするがよい」
クスハ「えっ……!?」

〈4PP or 雀王機のHP70%以下 or 武王機のHP70%以下〉

夏喃「……では、そろそろ雀王機と武王機の 本領発揮といこうか」
泰北「うむ」
リュウセイ「本領発揮だと!? あいつら、やっぱり!!」
ミチル「やっぱりって、どういうこっちゃ!?」
リュウセイ「龍王機と虎王機みてえに 合体しやがるんだよ!!」
ミチル「な、何やて!?」
夏喃「必神火帝」
泰北「天魔降伏」
【デモムービー『雀武合体』】
(雀武王が出現)
夏喃「焔天大聖、雀武王……顕現」
ブリット「あ、あれが雀武王……!」
クスハ「感じる……龍人機の敵意と怒りを……!」
夏喃「それは雀武王も同じさ。 本来の主と役目を捨てた龍虎王を、彼女は赦さない」
クスハ「………」
夏喃「前回の対決では龍虎王が勝利したが…… その時の雀武王は、それまでの戦いで負った 傷のせいで完全な状態ではなかったのさ」
ブリット「何っ……!?」
夏喃「龍虎王は君達の機械人形を取り込み、姿を幾分か 変貌させて復活を遂げたように……僕達も雀武王に 手を加え、本来の姿に近い状態で甦らせた」
夏喃「そして、この限仙境には 雀武王の故郷とも言える蚩尤塚を 境界僅差転移させてある」
夏喃「さらに、雀武王を操るはバラルの南仙たる僕。 半身の超機人しか持たぬ君達に勝ち目はないよ」
(妖機人が出現)
夏喃「君達の力では、この限仙境から逃れることは出来ない。 さあ、どこまで保つかな、その気概が」
カチーナ「この程度で根を上げるほど、 あたしらは柔じゃねえんだよ!」
泰北「さもありなん」
夏喃「ま、ここで死んだら尸解を施してあげるよ。 だから、心置きなく掛かってきたまえ」
カイ「ここで落とされたら、 虎王機のように彼らの虜囚となってしまうのか」
アリエイル「逆に言えば、私達が命を落とさねば、尸解は不可能…… 現段階では、自在に尸解を行うことが 出来ないようですね」
ギリアム「ああ。 それに、総人尸解計画を行うには、 準備が必要だとも言っていた」
ギリアム「随時、強制的に尸解が可能なら、 既に我々は彼らの思うがままになっているはずだ」
レーツェル「つまり、彼らの計画を阻止する術と時間はある……」
夏喃「より良い尸解を行うには、本人がそれを切望する ことが肝要……ここで君達を強制的に尸解 させてもいいんだが、それだと仕上がりに難がある」
ゼンガー「……我らを心から屈服させるために この場を用意したということか」
夏喃「そうさ」
ゼンガー「笑止! このような手で、我らの心は折れぬ!  妖仙共よ、身を以てそれを知るがいい!」
夏喃「ならば、雀武王の神速にて まず君達の刃から折るとしよう」
(作戦目的表示)

〈vs 夏喃〉

[ブリット]

ブリット「雀武王…… 虎龍王並のスピードを持っているのか!?」
夏喃「彼女の気性の激しさは、虎龍王以上だよ。 迂闊に触れれば、その炎で焼き尽くされる。 さて、君は無事でいられるかな?」

[クスハ]

クスハ「龍人機、虎王機の分まで私が頑張るから!」
夏喃「合体した四神の超機人の強さは、 君が最もよく知っているだろう?  それでも心折れず、雀武王と戦えるかい?」
クスハ「心は折れない、折らせない……そう誓ったんです!」
夏喃「フフッ、そういう心こそ、手折り甲斐があるよ」

[HP22000以下]

夏喃「フフフ……僕達が見込んだだけのことはある」
泰北「善哉、善哉」
夏喃「彼らの矛を折るには、盾が最適かな?  他に確かめたいこともあるしね」
泰北「そうじゃのう。ならば、順逆転神」
【デモイベント『順逆転神』】
(武雀王が出現)
泰北「玄天大聖、武雀王……顕現じゃ」
クスハ「あれが武雀王……!!」
タスク「見るからに硬そうな奴だな」
泰北「さて、装符を修復しておこうかのう。 神農炎帝、来護我身、此刀一下、何鬼不走、 何病不癒、急々如律令」
(武雀王に『ド根性』)
ゼオラ「ダ、ダメージを一瞬で……!」
ミチル「何やねん、あれ! ズルやんけ!」
泰北「玄武の守りは、超機人の中でも格別での。 それにワシの術を加味すれば、この通りじゃ。 お主らの力を、存分にぶつけてくるがよいぞ」
ツグミ「あの回復力……持久戦になったら、こちらが不利よ」
アイビス「くっ……!」
イルイ「こ、このままじゃ、みんなが……!」
(作戦目的表示)

〈vs 泰北〉

[ブリット]

泰北「超機人なくして、 武雀王の神獣盾を破れるかのう?」
ブリット「やってみせるさ!  そして、お前達の計画を阻止する!」

[クスハ]

クスハ「虎龍王や雀武王ほどの速さじゃない…… 龍人機なら捉えられる!」
泰北「じゃが、堅牢さは超機人の中でも出色卓抜しておる。 龍王が秘器、神珍鉄金箍棒でも打ち砕けぬぞ」

[HP70%以下]

泰北「神農炎帝、来護我身、此刀一下、何鬼不走、 何病不癒、急々如律令」
(武雀王に『ド根性』)

〈武雀王出現から3 NEXT PP〉

ショーン「艦長、 武雀王との戦闘は、膠着状態に陥りつつありますな」
レフィーナ「この空間から脱出することが出来れば、 活路を見出せるかも……」
ショーン「境界へ長距離砲撃を試みますか?」
レフィーナ「ええ、シーケンスGの準備を」
ショーン「了解です」
イルイ(……逃げられない……)
トウマ「イルイ、どうしたんだ?」
イルイ(このままじゃ……みんな……逃げられない……)
トウマ「イ、イルイ……!?」
イルイ「………」
アイビス「このままじゃ、埒が明かない!  何か手はないの……!?」
ツグミ「龍虎王が武雀王を倒したという話が事実なら、 武雀王もまた無敵というわけじゃないと 思うけど……」
アイビス「龍虎王なら、あいつを倒せる……!?」
ツグミ「でも、肝心の虎王機は……」
ブリット「取り戻すには、夏喃達のコントロールを 解かなきゃならない。堂々巡りなのか……!?」
夏喃「フフフ……徐々に伝わってきたよ。 君達の怯え、恐怖、そして怯懦が」
泰北「じゃが、まだ心が折れるまでには 至っておらぬようじゃの」
夏喃「あまり時間は掛けられない。 ここで強撃を加えておこう」
泰北「そうじゃの」
泰北「さて、武雀王よ……天を衝けい」
(武雀王に青白い光)
アイビス「何をする気なの!?」
泰北「玄天大聖、後玄武避万鬼……」
(武雀王の周りに爆煙)
泰北「む?」
テツヤ「どこからの攻撃だ!?」
エイタ「地中からだと思われます!」
テツヤ「何!?」
夏喃「限仙境の外から仕掛けて来ただと?  そんなことが出来るのは……」
(北西端近くの地中から鮫のようなものが出現)
クスハ「あ、あれは!?」
【強制戦闘】
???[テヒラー・レイ]vs泰北[防御]
(武雀王に6000のダメージ)
泰北「フオッホッホ、神僕が現れおったか!」
夏喃「何故、僕達の邪魔をする?」
泰北「気に入らなんだのかも知れんのう、 ワシらのやり方が」
夏喃「何を言う、僕達の目的は……」
(鮫のようなものを指す)
アラド「な、何なんだ、あいつは!?」
マイ「鮫のロボット……なの?」
アイビス「前にあたし達を助けてくれた鳥と 雰囲気が似てる……!」

<鮫のようなものが浮かび上がって青白く光り始める>

アイビス「!!」
クスハ「あ、あの光は!?」
テツヤ「何だ!? 何が起きている!?」
エイタ「艦周辺に異常重力場発生!  拡大していきます!!」
(閃光、鳴き声)

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ショーン「艦長、現在位置は限仙境へ引きずり込まれる前と ほぼ一致しております」
レフィーナ「バラルの超機人や妖機人達は?」
ショーン「見当たりません。 どうやら、あの鮫に助けられたようですな」
レフィーナ「あれはいったい何者なのか……。 そして、何故、私達を助けたのか……」
ショーン「バラルの超機人に仕掛けたことから判断して、 彼らの身内ではないと思いますが……」
レフィーナ「バラルやルイーナと敵対する新たな勢力…… ゲストでもガイアセイバーズでもない勢力が 存在しているのでしょうか」
ショーン「現状では何とも言えませんが…… 今回の件で、バラルの仙人達が総人尸解計画という名の 人類粛清を目論んでいると判明しました」
ショーン「もっとも、それを実行に移すには まだ時間が掛かるようですが……」
ショーン「彼らはゲストやルイーナ、ガイアセイバーズと違い、 何らかの方法で我々の動きを掴んでいると 思われます」
レフィーナ「そうですね…… でなければ、限仙境に引き込むことなど出来ません」
ショーン「神出鬼没の上、本拠地も不明…… 我々にとって、かなり厄介な敵ですな」
レフィーナ「しかし、バラルの仙人達は 私達を戦力として取り込もうとしています」
ショーン「まあ、あの夏喃という仙人は クスハ少尉をかなり気に入っているようですし…… また我々をスカウトするために現れるでしょう」
レフィーナ「ええ……それを逆手に取ることで、 何らかの打開策が見出せるかも知れません」
ショーン「ですが、バラルに対しては 受け身一方にならざるを得ませんぞ」
レフィーナ「アインストの時もそうでした。 私は、私の部下達を……このような状況でも 闘志を失わぬ彼らを信じます」

(食堂)

エクセレン「しかし、まあ……クスハちゃんも えらいのに見込まれちゃったわね。 ブリット君にライバル登場って感じ?」
ブリット「そんな生易しい相手じゃありませんよ。 雀武王に武雀王……そして、虎王機。 四神の内、三体が敵に回ってるんです」
エクセレン「でも、イーブンにするつもりでしょ」
ブリット「ええ、必ず虎王機を取り戻してみせます」
リュウセイ「龍虎王や虎龍王と一緒に戦ってて、四神の超機人の 強さはわかってるつもりだったけど…… 敵に回すと半端じゃねえな」
リオ「しかも、本物の仙人が乗ってるなんて……」
レーツェル「我ら全てを異界へ転移させた力は侮り難い。 もっとも、ルイーナのように大規模な 破壊活動を展開するつもりはなさそうだが……」
レーツェル「彼らの口振りから判断して、 総人尸解計画が実行された場合、 それから逃れる術はないかも知れん」
ライ「全人類に対し、同時に尸解が行われると?」
レーツェル「ああ。そのため、準備に手間と時間を 要するのでないかと見ているが……」
ラーダ「しかし……いったいどのようにして 全人類の尸解を行うのでしょう?」
レーツェル「それはわからんが…… 鍵を握る存在の見当は付く」
ゼンガー「……バラルの神とやらか」
レーツェル「そうだ。 夏喃はまもなく目覚めると言っていたがな」
ライ「“破滅の王”は負の波動を糧とする…… では、バラルの神は何を? その目覚めに 必要とされるのは何なんだ?」
レーツェル「その答えは、我らの中にあるかも知れない」
ライ「……!」
ラーダ「もしや、クスハとブリット…… そして、龍人機ですか?」
レーツェル「それだけではないだろう。 テスラ研での事件以降、バラルと接触した者の ほとんどが鋼龍戦隊のメンバーか、その関係者だ」
レーツェル「夏喃の言葉から判断して、 彼らは我々の資質を調べていたと思える」
エクセレン「それで、私達を真っ先に 尸解させようというのなら……」
ブリット「自分達全員が……?」
レーツェル「ああ。我らは、バラルの目的成就の成否に 大きく関わっているのかも知れん……」

(個室)

クスハ「ねえ、イルイちゃん…… 聞きたいことがあるんだけど、いい?」
イルイ「何?」
クスハ「出撃前に、嫌な予感がするって言ってたよね?  あれって……バラルのことだったの?」
イルイ「………」
イルイ「わからない……」
ゼオラ「でも……結局、バラルが出て来たから、 イルイの予感は当たったのよね……」
シャイン「もしかしたら、 私と同じような力を持っているのかも……」
トウマ「え? 王女様の力って……?」
アラド「所謂、予知能力って奴ッスよ」
シャイン「もっとも、未来のことが全てわかるわけでは ございませんが……」
トウマ(もし、イルイにもそういう力があるなら、 あの時、様子がおかしかったのは……)
アイビス「でも、あんな所に引き込まれて、嫌な予感がしたのは イルイだけじゃなかったと思う……」
アラド「まあ、確かに」
トウマ「クスハ、アイビスさん…… ちょっと話があるんだけど、いいかな?」
クスハ「ええ」
アイビス「アラド、ゼオラ、王女様…… イルイと一緒にいてあげてくれる?」
アラド「わかったッス」

(通路)

クスハ「それで、トウマ君……話って?」
トウマ「俺、イルイと一緒にいたんだけど…… 鮫メカが現れる前、あの子の様子が ちょっと変だったんだ」
アイビス「えっ……?」
クスハ「変って……どんな風に?」
トウマ「突然、黙り込んで…… 心ここにあらずっていうか……」
トウマ「でも、後で本人にその理由を聞いても、 自覚してなかったし……」
アイビス「それって……どういうことなの……?」
トウマ「もし、イルイに予知能力があるとしたら、鮫メカが 現れることを察知してたんじゃないかって……」
アイビス「まさか、そんな……!  ああいう状況だったし、怖がってたのかも 知れないじゃない!」
トウマ「俺もそう思ってたんだけど、 王女様の話を聞いたら、ちょっと気になって……」
クスハ「アイビスさん……もし、また同じようなことがあって、 イルイちゃんが不安に思うようなら、ラーダさんに 相談した方がいいかも知れません……」
アイビス「……イルイ……」

???

(バラルの神殿内部)

「では、2体目の神僕が……」
泰北「うむ。 ワシらを退け、巫女が乗る船を助けおったわい」
「しかし、北の果てでククルと虎王機が 仕掛けた時、神僕は現れませんでしたが……」
夏喃「それは、ククルのせいじゃないかな?  彼らが出るまでもなかったんだろうさ」
ククル「妾の力不足のせいだと……?」
夏喃「そういうことだね。 まあ、格の違いって奴さ」
ククル「………」
(足音)
光龍「……やあ、夏喃。 彼らのスカウトに失敗したんだって?」
夏喃「光龍……」
光龍「しかも、神僕を怒らせたそうじゃないか」
夏喃「そうだと決まったわけじゃない。 それに、得る物はあったさ」
光龍「ほう、何だい?」
夏喃「青龍の少女の名がわかった。 クスハ・ミズハ……涼やかで快い響きだろう?」
光龍「そうかな……言いにくくないかい?」
夏喃「ふん……彼女は僕の物にする。 光龍、お前には渡さないよ」
光龍「また仕掛ける気か?」
夏喃「ああ、今度は方法を変えるさ。 2体目の神僕が現れた以上、巫女は間違いなく クスハ達を選んだ。僕らの見立て通りにね」
光龍「確かに、彼女は覚醒に近づきつつあるようだけど…… 僕としては、強念者達をもう少し熟成させたいね」
夏喃「手を出すなと?」
光龍「勝手に育ってくれるんだから、 その方が楽じゃないか。もしかしたら、 彼らがルイーナを倒してくれるかも知れないし」
夏喃「鍵を持っていても、 それを自在に使えるかどうかはわからないさ」
光龍「だからこそ、熟成の時間が必要なんだ。 ここで焦るのは良くない。水をやり過ぎると 根腐れになってしまうだろう?」
夏喃「その前に、花を手折って生けるのさ。 そう……クスハ・ミズハという花をね」


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