back index next


純粋なる存在 宇宙へ行く ~ 第43話 ~

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ユン「コースクリア!  重力異常反応宙域まで、あと12000です!」
ショーン「コースクリア…… 手放しでは喜べませんな」
レフィーナ「ええ…… アインストは私達を例の宙域まで 誘き寄せるつもりなのでしょうか?」
ショーン「彼らの目的は我々の阻止と誘導…… その両方でしょう」
レフィーナ「え……?」
ショーン「もしかしたら、 先程接触したアインストの目的は 時間稼ぎだったのかも知れません」
レフィーナ「時間稼ぎ……」
ショーン「あるいは、罠か。 いずせにせよ、目的地へ行かねば その答えは出なさそうですな」
レフィーナ「ええ。 機関、最大戦速。これより本艦は 重力異常宙域へ突入します!」


第43話
純粋なる存在

〔戦域:ストーンサークル周辺宙域〕

(ヒリュウ改、キョウスケ機、龍虎王が出現、出撃準備)
ユン「目標宙域に侵入!  艦前方にストーンサークル確認!」
ショーン「やはり、 再形成されていましたか。 ……アインストの反応は?」
ユン「ありません。 動体反応、熱源反応なども 見受けられません」
ショーン「重力異常は?」
ユン「ストーンサークルを中心に 反応が強まっています」
ショーン「ふむ……。 てっきり、アインストの盛大な歓迎を 受けると思っておりましたが」
レフィーナ「ですが、 目の前にストーンサークルが ある以上、これは……」
ショーン「罠ですな。 我々をここへ誘き寄せるための……」
ショーン「しかし、 今はそれに乗るしかありますまい。 謎に対する答えを導き出すためにも」
ラウル「……あれが アインストのストーンサークルか……」
ミズホ「ただの岩のように 見えるのに……不気味な感じ……」
キョウスケ「……」
リオ「クスハ、龍虎王の様子はどう?」
クスハ「警戒しているみたい……。 そして、その対象は……」
イルム「当然にことながら、 アインストってわけだな」
クスハ「はい……!」
カチーナ「チッ、 奴らの出し物は何なんだ?  さっさと幕を上げやがれってんだ!」
(アラート)
ユン「前方に転移反応!  アインストです!!」
マサキ「来やがったか!」
カイ「全機、迎撃準備! ヒリュウを 中心にフォーメーションを組め!」
レフィーナ「ユン、反応の数は!?」
ユン「1です!」
リューネ「え!?  たったそれだけ!?」
龍虎王「ウウゥゥゥ……!」
ブリット「クスハ、龍虎王が……!」
クスハ「ええ、敵が来るわ!」
(ライン・ヴァイスリッターが転移出現)
キョウスケ「あれは……!?」
リューネ「ヴァ、ヴァイスリッター!?」
ラウル「ヴァイスリッターって、 ATXチームの機体じゃ……」
リューネ「ああ。 あんた達がヒリュウへ来る前に 行方不明になったんだ……」
アイビス「でも、どうしてここに?」
リョウト「それに、 あのヴァイスは形状が違う……!」
カチーナ「ああ、 妙に生モノっぽくなってやがるぜ」
ツグミ「それに、このエネルギー反応は パーソナルトルーパーのものじゃない……」
リョウト「ここに出てきたということは、 もしかして……!?」
リオ「でも、 あれにエクセレン少尉が乗ってるとは 限らないでしょう!?」
リョウト「そ、そうだけど……」
ギリアム「……アインストに 機体だけ奪われたという可能性もある」
アイビス「じゃあ、エクセレン少尉は ヴァイスに乗ってない……!?」
キョウスケ「アルトの偽物の例もある。 あのヴァイスが偽物の可能性もあるが……」
キョウスケ「残念ながら……違うな」
アイビス「え!?」
(アインストグリートが多数出現)
シロ「ヴァ、ヴァイスリッターが 囲まれたニャ!」
マサキ「ホントにエクセレンは あのヴァイスに乗ってんのかよ!?」
ラミア「確認する。 ……エクセ姉様、応答を」
(ライン・ヴァイスリッターの反応なし)
ラミア「エクセ姉様……!?」
エクセレン「……オマエ……タチ……」
ラミア「!!」
キョウスケ「やはり、エクセレン……ッ!」
エクセレン「抹消…… 始マリノ……地ノ者……ヲ……」
キョウスケ「エクセレン!  どうした、エクセレン!?」
エクセレン「……」
キョウスケ「エクセレン……!!」
リン「もしや、少尉は!?」
ギリアム「アインストの支配下に 置かれているようだな」
キョウスケ「……!」
ラウル「そ、そんな!」
アイビス「そ、そんな……!」
ラッセル「こ、これじゃ、 エクセレン少尉を人質に 取られているも同然ですよ!」
キョウスケ「人質だけで済めばいいが…… どうやら、それだけでは終わりそうも ないな」
ラッセル「えっ!?」
キョウスケ「奴らはエクセレン…… あいつを使って、おれ達を消す気だろう」
アイビス「じゃあ、 少尉はあたし達の敵に……!?」
カチーナ「チッ、 エアロゲイターやノイエDCと 同じような手を使いやがって!」
ブリット「とにかく、 エクセレン少尉を助けなければ!」
カイ「キョウスケ、 お前はエクセレンと接触し、 彼女を救出しろ」
キョウスケ「了解……!」
カイ「他の者はキョウスケを援護!  壁になっているアインストを蹴散らせ!」
クスハ「はいっ!」
カイ「行くぞ! 攻撃開始!!」
エクセレン「………」
キョウスケ(エクセレンを使う意図は何だ?  単なる刺客というわけではあるまい……!)
(作戦目的表示)

〈vs エクセレン〉

[キョウスケ]

キョウスケ「エクセレン!  応答しろ、エクセレン!」
エクセレン「……」
キョウスケ「ちっ……やはり、 直接接触しなければならんか」

[説得 (キョウスケ)]

キョウスケ「よし、取り付いたぞ!」
エクセレン「……」
キョウスケ「エクセレン、おれだ!  キョウスケだ! 返事をしろ!  返事をしてくれ、エクセレン!」
エクセレン「……」
キョウスケ「そいつに乗っているのは わかっている!」
キヨウスケ「お前に何があった!?  アルフィミィ……奴の仕業なのか!?」
エクセレン「キョウ……スケ……」
ラミア「エクセ姉様…… キョウスケ中尉の呼びかけに 反応した……!」
アイビス「完全に 乗っ取られたわけじゃない……!?」
キョウスケ「エクセレン!」
(アラート)
ユン「新たな転移反応あり!  サークル内中央部です!」
キョウスケ「!」
(ペルゼイン・リヒカイトが転移出現)
アルフィミィ「………」
キョウスケ「お前か、アルフィミィ」
アルフィミィ「キョウスケ……」
キョウスケ「エクセレンを……!  エクセレンに何をした!?」
アルフィミィ「……」
キョウスケ「答えろ……!  答えによっては、お前を……」
アルフィミィ「…落ち着きになって、 キョウスケ。エクセレンは…そう、 戻っただけですの」
キョウスケ「戻った……!?  どういうことだ!  いや、どういう意味だ!?」
アルフィミィ「彼女は…… より『純粋なる存在』に」
キョウスケ「『純粋なる存在』…だと?  いったい、お前はあいつに何を……」
アルフィミィ「………」
キョウスケ「……答える気がないなら、 それでいい。お前を倒し、 エクセレンを取り戻すだけだ」
アルフィミィ「……キョウスケ…… 何故ですの?」
アルフィミィ「私はエクセレンと同じ… ですのよ? あの……少し…… 小さいかも知れませんけれど」
アルフィミィ「それなのに、 あなたは……?」
キョウスケ(何を言っている?  奴の目的が見えん…そもそも、奴の言葉は アインストの総意か? それとも…)
アルフィミィ「キョウスケ……」
キョウスケ「しゃべる気があるなら… 聞かせてもらう」
アルフィミィ「あなたが 私を受け入れてくれれば、それは……」
キョウスケ「その気はない……!  エクセレンを返してもらうぞ!」
アルフィミィ「ならば、不純物を排除し…… 『鍵』の力を見定めさせていただきますの」
アルフィミィ「来るべき刻を 迎えるための『鍵』……その力を」
(作戦目的表示)

〈敵機10機以下〉

アルフィミィ「やはり、 以前より力を増しておられますのね。 ですが……」
(アインストが出現)
カチーナ「チッ、新手かよ!」
リオ「まさか、伊豆の時みたいに どんどん出てくるんじゃ……!?」
ショーン「場所が場所ですし、 その可能性は高いですな」
カイ「こちらの戦力はいつもの半分だ。 ここで消耗戦に持ち込まれたら 厄介だな」
イルム「なら、連中を導いている奴を 落とすしかありませんね」
カイ「ああ! 全機、赤いアインストを 集中攻撃しろ!」

〈敵機10機以下〉

(アラート)
ユン「サークル内に新たな転移反応!  アインストの増援です!」
(アインストが出現)
カチーナ「おもしれえ、 あたしらと根比べしようってんだな!  その勝負、乗ったぜ!」
ラッセル「そ、そんなことを 言ってる場合じゃありませんよ!」
カチーナ「るせえ!  あいつらに数で攻めてきても 無駄だって教えてやるんだよ!」
ショーン「……と言ってますが、 どうなさいますか、艦長?」
レフィーナ「エクセレン少尉のことも あります。ここで退くわけには いきません……!」
レフィーナMAPW搭載機は 量産タイプのアインストの迎撃を!」
レフィーナ「それ以外は赤いアインストに 攻撃を集中させて下さい!」

〈vs アルフィミィ〉

[キョウスケ]

アルフィミィ「キョウスケ…… 何故、わかっていただけないんですの?」
キョウスケ「わかってほしいなら、 理解できるように説明することだ」
キョウスケ「お前がおれ達を…… ここへ誘き寄せた真意と、エクセレンを 使って何を企んでいるか、だ」
アルフィミィ「いいでしょう……。 私達に必要なもの……その力を 見定めるためですの」
キョウスケ「……おれ以外のか?」
アルフィミィ「ご名答ですの……。 抹消するよりも、利用させていただく べきだと……あの時に理解しましたので」
キョウスケ「あの時…… 伊豆を襲った時のことだな?」
アルフィミィ「はい……」
キョウスケ「ならば、 ラングレー戦での介入…… ストーンサークルの再形成……」
キョウスケ「それら全て…… おれ達をここへ誘き寄せるためだけに?」
アルフィミィ「その通り……と 言いたいところですが、それだけの ためではございませんのよ?」
アルフィミィ「ここが安定すれば、 つながり易くなりまして……」
キョウスケ「どこへ何をつなげる気か 知らんが、おれ達の力が見たいのなら…… 相応の覚悟をすることだ」
キョウスケ「そして、 エクセレンを好きに扱ったこと…… おれは許さん……!」

[ギリアム]

アルフィミィ「あなたは『鍵』の一つ…… 可能性の高い……」
ギリアム「鍵だと? 俺がか?」
アルフィミィ「はい…… まだ完全ではないようですが……」
ギリアム(まさか、彼女は……?)

[ラウル]

アルフィミィ「あら…… その機体は……」
ラウル「!?」
アルフィミィ「『鍵』になり得る……?  いえ、今のままでは無理ですの」
ラウル「な、何だ!?  どういうことだ!?」

[HP10%以下]

アルフィミィ「やはり、ここでは…… そして、今の時点では無理ですのね」
キョウスケ「! 逃げる気か!?」
アルフィミィ「あわてないでいただきたい ですの。時間はまだありますのよ?  少しだけ……ですけれど……」
キョウスケ「時間だと!?」
アルフィミィ「有意義な時間でした。 必要なものは……見定めることが 出来ましたので」
アルフィミィ「次は、 あなた方が揃った時に……ですの」
キョウスケ「逃がすか!」
アルフィミィ「参りましょう、エクセレン」
エクセレン「……」
キョウスケ「エクセレン!」
アルフィミィ「残念ですが…… あなたの声は届いても、それに答えることは ありませんのよ……?」
キョウスケ「!」
アルフィミィ「いずれ、エクセレンは 『純粋なる存在』に……そして、 私は『完全なる存在』になりますの」
アルフィミィ「その時まで ごきげんよう……キョウスケ」
キョウスケ「待て!」
(アインストが転移撤退)
ユン「艦長、 アインストの反応が全て消えました!」
レフィーナ「追尾は!?」
ユン「駄目です!  完全にロストしました!」
マサキ「くそっ、ここまで来て……!」
キョウスケ「……」
クスハ「キョウスケ中尉……」
キョウスケ(諦めん……諦めんぞ、 エクセレン……。アルフィミィは、また おれの前に現れる。お前を連れてな)
キョウスケ(その時こそ…… おれは命を賭ける……!)

[ヒリュウ改 ブリーフィングルーム]

ブリット「くそっ……!  エクセレン少尉がアインストに操られているなんて!」
ツグミ「それに、あのヴァイスリッターは……?」
ギリアム「アインストの手が加えられ、 変貌した姿だろうな」
ラージ「興味深いですね。 いったい、どのようにしてこちら側と 向こう側の“技術”を融合させているんでしょうか」
ミズホ「ラージさん、 今はそんなことを言ってる場合じゃ……」
ラージ「個人的な関心で 意見を述べているわけではありません」
ラージ「アインストについては、 まだ基本的な情報しか得ていませんが……」
ラージ「あのヴァイスリッターの姿には、 彼らの最終目的のヒントが隠されているかも 知れませんよ」
ラミア「最終的な目的…… もしや、エクセ姉様にもアインストの手が……?」
キョウスケ「わからん……だが、エクセレンは単純に 操られているという感じではなかった」
ラミア「……」
キョウスケ「そして……アルフィミィは エクセレンが、より『純粋なる存在』に戻ったと」
クスハ「純粋なる……存在?」
ブリット「な、何のことなんです?」
キョウスケ「……わからん。 アルフィミィには、ずっとはぐらかされ続けている」
ギリアム「戻る……か。 まるであの状態が彼女にとって 自然であるかのような言い方だな」
ツグミ「と、言うことは……?」
ギリアム「これは あくまでもおれの推理だが、 エクセレン少尉は過去に……」
ギリアム「それもアインストが 我々の前へ現れる以前に彼らと 接触したことがあるのかも知れん」
キョウスケ(アインストが現れる以前……)
キョウスケ(もしや、“あの事故”と何か関係が?)
クスハ「で、でも、エクセレン少尉を 助けることは出来ますよね!?」
ギリアム「彼女が ヴァイスリッターのように 変貌を遂げる前であれば……」
ギリアム「彼女とアインストを 物理的に切り離すことが出来れば、あるいは……」
クスハ「あるいは……って……」
ギリアム「現状でアインストについて 判明していることは少ない」
ギリアム「きつい言い方だが、 今までと同じような方法で彼女を助けられるか どうかはわからん……」
クスハ「……」
ミズホ「……」
ラミア「……」
キョウスケ(アルフィミィは、 “まだ時間がある”と言っていた……)
キョウスケ(それは、 エクセレンに関することなのか?  それとも……)
キョウスケ「……」
キョウスケ(そして、奴らにとって必要な物とは おれ……なのか?)
ギリアム「……」
ギリアム(キョウスケとエクセレン…… 彼らの過去を調べてみた方がいいかも知れんな)

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ショーン「結果、ストーンサークルは再び消滅。 アインストの反応もなし……」
ショーン「これで振り出しに戻ってしまいましたな」
レフィーナ「……」
イルム「あの連中……自分達の手の内を見せることが 目的だったのかも知れないな」
リン「手の内だと?」
マサキ「エクセレンを人質に取ったってことを 俺達に教えたってのかよ?」
イルム「ああ。 それで俺達に何らかのリアクションを 起こさせようとしている……」
イルム「例えば…… キョウスケ一人を誘き出すとか、な」
リオ「けど……それならさっきも……」
リン「キョウスケ中尉までも 引き入れるつもりなら、同じ方法を使えばいいはずだ」
リン「なのに、アルフィミィは そうせず、我々をストーンサークルへ 誘き出すような真似をした……」
リン「その点に疑問が残るな」
マサキ「伊豆の時、キョウスケは アインストに操られそうになったが、 自力で跳ね返した……」
マサキ「あいつらは キョウスケをエクセレンみてえに 操れないんじゃねえのか?」
イルム「だろうな。 だから、あの状態になったエクセレンを見せ、 こちらの動揺を誘った……」
リン「では、何故あの場所だったのだ?  そして、何故ストーンサークルは 再び消えてしまったのだ?」
リョウト「あのストーンサークルは 彼らにとってゲートのようなものでは ないでしょうか?」
ラウル「ゲート……?」
リン「彼らの『巣』につながる 『扉』だと言うことか?」
カイ「だが、アインストは世界中に 転移出現しているんだぞ」
リョウト「あれは 今までのアインストではなく、 何か別のものを転移させるための……」
リョウト「あるいは、システムXNのように 異なる世界と世界をつなげるための 『扉』なのかも知れません」
ラウル(『扉』……異世界への……)
ラウル(もしかして…… あの時、おれ達が出会った化け物は アインストの一種なのか……?)
リン「……」
リョウト「でも、今のシステムXNと 同じく不安定で不完全……」
リョウト「だから、ストーンサークルは 離散してしまったと思います」
リオ「リョウト君、 『扉』でつながる異なる世界って……?」
リョウト「多分、アインストの世界…… 彼らが生まれいずる場所だと思う」
リオ「……!」
ラウル「それは……どんな世界なんだ?」
リョウト「わからない。 でも、こことは違う世界だということは 確実だと思う」
レフィーナ(アインストの……世界……)
ショーン「……」
カイ「……これから我々はどうするのです?」
ショーン「本来の目的…… ムーンクレイドルの奪還を行うしかありませんな」
レフィーナ「ええ……」
(通信)
ユン「!  本艦に入電……こ、これは!?」
レフィーナ「どうしました?」
ユン「ノイエDCです!  ノイエDCの部隊から本艦に通信が入っています!」
レフィーナ「!」


back index next