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ルナティック・ドリーム 宇宙へ行く ~ 第44話 ~

《ムーンクレイドル》

[ムーンクレイドル 内部]

(扉が開閉する)
ヴィガジ「……」
メキボス「よう、リーダー。 お前さんがわざわざムーンクレイドルまで 来るとはな」
メキボス「ネビーイームの方は、 一段落着いたのかよ?」
ヴィガジ「……今もアインストの攻撃を受けている」
メキボス「なるほど、 膠着状態は相変わらずってわけか」
ヴィガジ「不利な状況ではないが、 度重なる戦闘で兵器や弾薬の消耗が激しい」
ヴィガジ「それに、 地球側が月に対して不穏な動きを 見せているという情報も入った」
メキボス「ほ~う……。 もしかして、そいつはハガネとヒリュウ改かよ?」
ヴィガジ「後者だけだ。 あの艦は宇宙に上がり、月へ接近しているらしい」
メキボス「それで、 兵器生産の督促と護衛を兼ねて お前がここへ来たってわけか」
ヴィガジ「ああ、そうだ。 このプラントは我々の生命線の一つだからな」
メキボス「……ご覧の通り、真面目にやってるぜ?  第3次生産は遅れ気味だがよ」
ヴィガジ「急がせろ。 このままではウェンドロ様どころか、 本国への示しもつかん」
メキボス「へいへい。 言うはやすし、行うはきよし……ってね」
ヴィガジ「……何だ、それは?」
メキボス「地球のことわざ。 言うだけなら簡単、ってことだよ」
ヴィガジ「………」
メキボス「ん?  言うは易く、行うは難し……だったかな」
ヴィガジ「貴様……ふざけているのか?」
メキボス「真面目も真面目、大真面目さ。 ……スカルヘッドの方も急がせろよ。 あっちの方が本職なんだからさ」
ヴィガジ「……わかっている」

《L5宙域(ヒリュウ改)》

[ヒリュウ改 ブリッジ]

リューネ「ノイエDCの部隊から 通信が入ったってホントなの!?」
マサキ「ああ。 今、レフィーナ艦長が話してるぜ」
リューネ「あいつら、この期に及んで いったい何のつもりで……!」
マサキ「どうやら、こっちに喧嘩を 吹っ掛けてきたわけじゃなさそうだ」
リューネ「え!?」
NDC艦長「……繰り返して言うが、 そちらと戦闘を行う意思はない」
NDC艦長「我らの敵はあくまでもインスペクター…… 彼らを退けるために貴艦の力を貸していただきたい」
レフィーナ「……」
リューネ「あんた達、どういうことなの!?」
NDC艦長「リューネ様……!」
リューネ「あたしを知ってるってことは、 昔からDCにいたんだね?」
NDC艦長「はっ……。 我々はバン大佐直属の部隊でした」
リューネ「あんた達の本当の目的は何?  大佐の仇討ちかい?」
NDC艦長「先程も申し上げた通りです。 我らはあなたのお父上やバン大佐の 遺志を受け継ぎ……」
NDC艦長「異星人から 地球圏を守るために集まった者……。 二心は持っておりません」
リューネ「集まったって……?」
NDC艦長「我々はオペレーション・ プランタジネットの後、有志を募り…… 宇宙へ上がったのです」
NDC艦長「インスペクターへ 一矢なりとも報いるために……」
リューネ「じゃあ、あんた達は……」
NDC艦長「リューネ様、 我らの志はあなたと同じです。 どうか我々を信じて下さい」
リューネ「……」
リューネ「……今のDCにも あんた達みたいな連中がいるんだね」
NDC艦長「リューネ様……」
リューネ「信用するよ、あんた達のこと」
NDC艦長「……ありがとうございます」
レフィーナ「……副長、 私は彼らの申し出を受け入れようと 思っています。異論はありますか?」
ショーン「いえ。 こちらとしては少しでも 戦力が欲しいところですからな」
レフィーナ「わかりました。 では、そちらの作戦をお聞かせ願えますか?」
NDC艦長「了解です」

[ヒリュウ改 ブリーフィングルーム]

カチーナ「……なるほど、プランタジネットよろしく 共同戦線を展開しようってのか」
ショーン「おや…… いつもと違う反応ですな、中尉」
カチーナ「あたしだって、 今がどういう状況かよくわかってるさ」
カチーナ「アインストは月周辺には 現れていねえ……つまり、あたしらは インスペクターの猛攻を受ける」
カチーナ「なら、 手下の数は多いほどいいってこったろ?」
ラッセル「て、手下って……」
ショーン(そういう所は同じですな)
レフィーナ「では、 ムーンクレイドル奪還作戦の 概要について説明します」
レフィーナ「まず、我々が月面上空から接近し…… 敵の迎撃部隊を可能な限り引きつけます」
レフィーナ「その間、 ノイエDCのパーソナルトルーパー部隊が 別方向から月面へ降下……」
レフィーナ「クレイドル内部へ突入し、 プラントの中枢制御装置を破壊します」
マサキ「……いつもと違って、今度は俺達が囮役か」
リョウト「プランタジネットの時のように 向こうが僕達を本命だと 思ってくれればいいんだけど……」
カチーナ「相手があの白目のハゲ野郎だったら、 トサカに来てあたしらに突っかかってくるかもな」
ラウル「な、なんか凄い相手ですね」
カチーナ「いかにもって感じの奴さ。 しかも、あたしより気ィ短くてな」
ラウル(カ、カチーナ中尉より!?  ど、どんな奴なんだ……)
リューネ「じゃ、あいつが出てきたら、 挑発役は中尉に任せるよ」
カチーナ「おう、ああいうのを 怒らせるのは得意中の得意だぜ」
カイ「なお、 ラミアとアイビスの2名は突入部隊に参加し、 任務を遂行してくれ」
ラミア「了解……」
ツグミ「アイビス、 あなたの任務はアステリオンの性能を 生かしての敵機のかく乱よ」
アイビス「わかったよ」
ツグミ「ラミア、 あなたには中枢制御装置の詳細なデータを渡します。 万が一の場合は……」
ラミア「わかっている。 機体から降り、制御装置を直接破壊する。 そういうことだな?」
ツグミ「危険が伴う任務ですが……」
ラミア「……直接的な破壊工作任務は、 今までにも何度かこなしたことがある。 任せてもらおう」
リン「……レフィーナ艦長、 突入部隊には私も参加しよう」
レフィーナ「え?」
リン「ムーンクレイドルの建設には 私の会社も加わっており……DC戦争時には あの中にいたこともある」
リン「クレイドルの内部については、 この中の誰よりも詳しいつもりだ」
ショーン「ふむ。 いわゆる土地勘をお持ちのリン社長なら……」
レフィーナ「では……お願いできますか?」
リン「了解した。 ……わがままを聞いてもらってすまない」
リオ「しゃ、社長……」
リン「リオ、ムーンクレイドルの奪還は マオ社やセレヴィスを取り戻すことにもつながる」
リン「だから、何としてでも 今回の作戦を成功させねばならん」
リオ「しかし……!」
リン「危険なのはお互い様だ。 お前もユアンを救い出すために全力を尽くせ」
リオ「わ、わかりました」
イルム「……じゃあ、俺も行くとするか」
リン「いや……私のわがままで、 これ以上ヒリュウの戦力を減らすわけにはいかない」
リン「お前は陽動に回ってくれ」
イルム「……」
リン「それとも……私の腕が信用できないか?」
イルム「……わかった。 その代わり、助けを求めてきたって知らないぜ?」
リン「フッ…… 自分のことは自分で何とかするつもりだ」
レフィーナ「では、 各員は直ちに配置について下さい」
(扉が開閉する)
アイビス(ノイエDC軍の部隊…… スレイ、あんたはそこにいるの?)
アイビス(共同戦線ならば あんたと戦うことはないよね……)
ツグミ「アイビス……今は目の前のことに集中して」
アイビス「わかってるけど……」
ツグミ「……スレイのことは なるようにしかならないわ」
ツグミ「あなたは作戦の成功と 自分が生き残ることを考えて……」
アイビス「うん……」

[ムーンクレイドル 内部]

(アラート)
ヴィガジ「何?  クレイドルの上空にヒリュウが?」
メキボス「ああ、 まっすぐこっちへ向かって来てるぜ」
ヴィガジ「……俺が奴らを迎え撃つ。 お前はここの守りを固めろ」
メキボス「おいおい、お前が行くのかよ?」
ヴィガジ「俺が何のために ここへ来たと思っているのだ?」
メキボス「そりゃわかってるが、 もう少し様子を見た方がいいんじゃねえか?」
ヴィガジ「言ったはずだ。 ウェンドロ様だけでなく、本国への示しもあるとな」
メキボス「……」
ヴィガジ「それに、 奴らには二度も煮え湯を飲まされた。 このまま済ますつもりはない」
(扉が開閉する・ヴィガジが立ち去る)
メキボス「……」
メキボス(……リーダーとしての メンツがあるってわけか)
メキボス(でも、 そんなものに拘ってたら、 足下をすくわれかねないぜ……?)

〔戦域:月付近の宇宙空間〕

(ヒリュウ改が出現)
ユン「本艦前方に熱源反応あり!  インスペクターの迎撃部隊です!」
レフィーナ「各機、 直ちに出撃して下さい!」
(グルンガストが出撃、出撃準備)
ヴィガジ「フン、 たった1隻で我らの勢力下にある月へ 正面から乗り込んでくるとは……」
ヴィガジ「どうやら、ラングレー戦から 何も学んでいなかったらしいな。 所詮は力だけの野蛮人共か」
イルム「こっちも贅沢言えないんでね。 いつもより数が少なくて悪いが、 あんた達にはそろそろご退場願うぜ」
ヴィガジ「良かろう。 いずれ地球とアインストの方は 始末をつけるとして……」
ヴィガジ「まずはお前達に消えてもらう」
カチーナ「上等だ! てめえこそ そこを動くんじゃねえぞ、白目ハゲ!!」
ヴィガジ「だ、黙れ! ハゲではない!  これは剃っているだけだ!!」
カチーナ「そりゃ悪かったな。 じゃ、あたしが根毛ごと焼いてやるぜ。 ヘッ、手間が省けんだろ?」
ヴィガジ「おのれ、許さん!  ここから先へ行けると思うな、 地球人めが!!」
カチーナ「弱い犬ほど吠えるってな!  あたしがキャインと鳴かせてやるから、 かかって来いや!」
ヴィガジ「その台詞、 そのまま貴様らに返してやる!!」
マサキ「……見事なまでの 火に油の注ぎっぷりだな」
ラウル「確かに、 カチーナ中尉よりキレやすい……」
カチーナ「ヘッ、あたしの演技も なかなかのモンだろうが」
ラッセル(演技……だったのか、あれ?)
イルム「何にせよ、こっちの手に 乗ってくれそうな感じだな」
ブリット「ええ。後はどこまで あの連中を引きつけられるか、ですね」
イルム(リン、アイビス、ラミア…… 上手くやれよ)
カイ「各機へ。 別働隊がクレイドルへ突入するまで、 奴らをこちらに引きつけろ」
キョウスケ「了解」
カイ「攻撃開始! 行くぞ!!」
(作戦目的表示)

〈ガルガウ以外の敵機全滅〉

ヴィガジ「チッ!  もはやバイオロイド共では 奴らの相手にならんと言うのか!?」
(通信)
ヴィガジ「クレイドルからの通信?  別働隊の襲撃を受けているだと!?」
ヴィガジ「おのれ、貴様ら!  囮だったのか!?」
イルム「そういうことだ。 気づくのが遅かったな」
ヴィガジ「チッ!  そんな戦力をどこに隠していた!?」
リューネ「あんた達が 倒したバン大佐直属の部隊さ!」
リューネ「あの連中も、 インスペクターを倒すっていう 目的は同じだからね!」
ヴィガジ「くっ、シャドウミラーめ!  ノイエDCをまとめ切れて おらんとは!!」
イルム「お前達が思っているほど、 地球人は戦争馬鹿じゃないってことさ」
ヴィガジ「ええい、有象無象共が!  やらせんぞ!!」
レフィーナ「全機、月面への降下開始!  上空より別働隊を支援します!!」


第44話
ルナティック・ドリーム

〔戦域:ムーンクレイドル周辺〕

アイビス「見えたよ、 ムーンクレイドルが!」
(ムーンクレイドルの中心を指す)
ラミア「囮作戦が 功を奏しているようだな。 防衛戦力が予想より少ない」
リン「ああ。 私達でクレイドルへの突破口を開くぞ!」
メキボス「やれやれ、ヴィガジの奴…… まんまと連中の手に乗せられやがって」
リン「ラミア、アイビス。 クレイドルへは私が先に突入する。 目的地点はあそこだ」
(目的地を指す)
リン「二人共、護衛を頼むぞ」
ラミア「了解」
アイビス「みんなが頑張っている…。 あたし達だってやるんだ…!」
メキボス「……例の手は 役者が揃ってからにするか。 ここらで一網打尽といきたいしな」
リン「全機、突入開始!」
(作戦目的表示)

〈味方機がムーンクレイドルに近づく〉

メキボス「……さすがに 俺もこれ以上見物してるわけには いかねえか」
(グレイターキンが目的地に出現)
アイビス「くっ、突入口の上に!」
ラミア「インスペクターの指揮官機か!」
メキボス「さあて、 ガツンと盛り上げてやるぜ!」
(ミサイル飛来・ノイエDCの機体が全滅)
アイビス「ノイエDCの機体が!!」
メキボス「ヒュッケバインと お前らの機体はレア物なんでな……。 こっちに渡してもらうぜ」
(エルアインスがそれぞれの機体の傍に出現)
リン「!!」
アイビス「か、囲まれた!?」
メキボス「命が惜しければ、 大人しくお前らの機体をよこしな」
アイビス「黙れ!  この命に代えてもアステリオンは 渡すもんか!」
メキボス「そうかい。 だが、周りの状況をよく見な」
メキボス「仲間を囮に回したおかげで、 お前らは孤立無援だぜ?」
アイビス「くっ……!」
(通信)
スレイ「……相変わらずの ていたらくだな、流星」
アイビス「え!?」
スレイ「下がっていろ!」
(カリオンが出現)
スレイ「ターゲット・マルチロック!  ファイア!!」
(ミサイル飛来・アステリオンの傍に出現した敵機が爆発)
メキボス「何っ!?」
スレイ「まだだ! 行くぞ!!」
(ミサイル飛来・ヒュッケバイン、アンジュルグの傍の増援機が爆発)
ラミア「あの機体は……!」
アイビス「どういうつもりなの、 スレイ……!?」
スレイ「……お前に借りを 作ったままではいられないのでな……」
アイビス「借り…?」
スレイ(テスラ研を奪回して兄様を 救い出したのはお前達だ……)
スレイ(なのに、兄様を救うために ノイエDCに加担した私は 結局、このザマだ……)
アイビス「スレイ……」
スレイ「私も援護する!  そちらは早くクレイドルへ!」
リン「了解した!」
(作戦目的表示)

〈3 NEXT PP〉

メキボス「フン、たった4機で…… しぶとい連中だぜ」
メキボス「しょうがねえ、 タイミングはちと早いが…… こいつを使うとするか」
(グレイターキンが怪しげな光に包まれる)
アイビス「! き、機体が!!」
(システムダウン)
スレイ「機体が動かない!?」
(システムダウン)
ラミア「くっ! 重力フィールドか!?」
(システムダウン)
リン「これはお前の仕業か!?」
メキボス「そうさ。 重力系の技術に関しては、お前らより 俺達の方が上なんでな」
リン「……!!」
メキボス「もっとも、 有効範囲に難があるんだが……」
(ヒュッケバインがグレイターキンの所へ引き寄せられる)
アイビス「ヒュ、ヒュッケバインが 引き寄せられた!?」
メキボス「……範囲内なら、 こういう芸当も可能ってわけだ」
リン「お、おのれ……!!」
メキボス「おおっと、 じたばたすんじゃねえぞ。 ……お前らもな」
スレイ「くっ……!」
メキボス「もっとも、 動きたくても動けねえだろうが」
スレイ「貴様、何をする気だ!?」
メキボス「もちろん、人質って奴さ。 ……あいつらに対してのな」
スレイ「!」
(上空でガルガウの相手をしていた面々が出現)
イルム「リン!!」
リン「イルム……!!」
メキボス「ご覧の通り、 お前達の仲間が乗ったヒュッケバインを 預かっている」
メキボス「助けたければ、 直ちに武装解除し、お前達の機体を こちらへ引き渡せ」
イルム「何だと……!?」
メキボス「同じことは二度言わねえぜ、 イルムとやら」
イルム「チッ……!」
メキボス「さあ、どうする?  お前達も下等生物とは言え、 分別ぐらいはあるンだろうが」
メキボス「それとも、 ここで仲間を見殺しにするか?」
イルム「……」
リン「私のことは構うな。 ムーンクレイドルを取り戻すチャンスを 逃がしてはならない……!」
イルム「ああ……わかったぜ、リン」
メキボス「何……!?  仲間を見捨てる気か!?」
イルム「そうだ。 人質にした相手が悪かったな、 メキボス」
ブリット「イ、イルム中尉!  リン社長を助けないんですか!?」
イルム「ああ」
ラウル「そ、そんな……!」
ブリット「諦めるんですか!?」
イルム「……敵にとっつかまった あいつが悪いのさ」
ラウル「でも、俺達で力を合わせれば、 リンさんを助けることが……!」
イルム「この状況で成すべきことは、 ムーンクレイドルの奪還だ」
イルム「そして、 それはあいつが一番良くわかってる」
リン「その通りだ、イルム……」
リン「ここでムーンクレイドルを 制圧しなければ、インスペクターとの 戦いに勝利はない……!」
リン「構わんから、私ごと奴を撃て!」
イルム「ああ……一撃で決めてやる」
メキボス「な、何だと……!?」
リューネ「イルム!  あんた、本気なの!?」
イルム「もちろんだ。 ……行くぞ、メキボス!」
メキボス「だが、ここに来れば 貴様も身動きが取れなくなる!  結果は同じだぞ!」
(通信)
???(シュウ)「はたして、そうでしょうか?」
メキボス「!? 誰だ!?」
(南東にグランゾンが出現)
シュウ「……」
マサキ「グ、グランゾン!!」
ギリアム「何故、 あの男がここに……!?」
メキボス「ハッ、 こいつはとんだ珍客だな!」
メキボス「ちょうどいい、 貴様の機体も動けなくしてやるぜ!」
シュウ「フッ……愚かな」
(グランゾンがグレイターキンへ重力攻撃、グレイターキンに爆煙)
メキボス「ぐううっ!!」
(ヒュッケバインが元の位置へ移動)
リン「! 機体が!!」
ラミア「機体が動く……!!」
メキボス「じゅ、重力干渉波だと!?」
シュウ「ククク、 その程度の重力波など……」
シュウ「重力を操る 私のグランゾンにとっては、 子供騙しに過ぎませんよ」
メキボス「馬鹿な!  奴は俺達より優れた重力技術を 持っていやがるのか!?」
シュウ「フッ…… 自分達より優秀な者がいないなどと お思いなのですか?」
メキボス「まさか、お前は……!?」
シュウ「……ええ。 あなた達の思惑に乗るほど、 私は愚かではありません」
マサキ「シュウ!  てめえの目的はいったい何なんだ!?」
シュウ「随分な言葉ですね、マサキ。 私はあなた達の手助けをしに 来たと言うのに……」
マサキ「誰も そんなことを頼んじゃいねえ!  本当の目的は何だ!? 答えろ!!」
シュウ「……ここへは 用事ついでに寄っただけです」
シュウ「心配なさらずとも、 あなた達の邪魔をするつもりなど ありませんよ」
マサキ「嘘をつくんじゃえ!」
シュウ「前にも言ったでしょう?  異星人とシャドウミラーの台頭は、 私にとっても好ましくないこと……」
シュウ「だから、 私はあなた達に協力しているのです」
マサキ「だが、 三度もてめえを信じるほど 俺は甘くねえぜ!!」
シュウ「……話になりませんね。 それに、今のあなたの相手は 私ではないでしょう?」
マサキ「チッ……そんなこと、 言われなくてもわかってるぜ!」
シュウ「私もこれ以上のお節介をする気は ありません……」
シュウ「それでは……あなた達の健闘を 祈っていますよ、ククク」
(グランゾンが撤退)
マサキ「くそっ、あの野郎……!!」
イルム「……だが、 これで仕切直しだな、メキボス」
メキボス「……」
メキボス「……どうやら、 今回もしてやられたようだな」
イルム「……!」
メキボス「俺はお前らに対する認識を 間違っていたらしい……」
メキボス「俺達の予想を上回る お前達の力……その源が何なのか、 わかったような気がする」
メキボス「そして……俺達が下した決断は 誤りだったのかも知れねえ」
イルム「どういう意味だ?」
メキボス「ま、今日の所は お前に免じて引きあげるとするぜ」
(ガルガウが西側から出現)
ヴィガジ「冗談ではないぞ、メキボス!」
メキボス「……ヴィガジか」
ヴィガジ「このムーンクレイドルは 我らのプラントだ! ここを失えば、 大きな痛手となるのだぞ!」
メキボス「……」
ヴィガジ「貴様、ウェンドロ様に どう申し開きをするつもりだ!?」
メキボス「ヴィガジ…… お前は本当にそれでいいのか?」
ヴィガジ「何だと!?」
メキボス「この戦いの意味を 考えたことがあるのか?」
ヴィガジ「馬鹿なことを!  この戦いこそは正義!」
ヴィガジ「宇宙の侵略者である 地球人を掃討することが目的だ!!」
メキボス「本当に そう思っているんだな?」
ヴィガジ「我々はウェンドロ様の命令を 聞いていればいいのだ!」
ヴィガジ「軍人である以上、命令は絶対!  それをいちいち疑っていては 軍は機能せん!!」
メキボス「……なら、 お前と話すことはもうない。 俺はネビーイームへ帰還する」
メキボス「そして、 ウェンドロの意思を確かめる」
ヴィガジ「好きにしろ!  だが、このことはあのお方に 報告するぞ!」
メキボス「構わんさ。 ……お前が生きて還れたらな」
ヴィガジ「世迷い言を言うな!  俺はあんな下等生物共に 負けはせん!!」
メキボス「そうかい。じゃ、あばよ」
(グレイターキンが撤退)
イルム(メキボス、お前は……)
ヴィガジ「チッ、腰抜けめが!  お前などいなくとも、俺はここで 奴らを駆逐する!!」
ヴィガジ「そう!  やがて銀河を蝕むことになる病原菌を!  侵略者を排除するのだ!!」
リューネ「馬鹿言ってんじゃないよ!  侵略者はあんた達の方だろ!」
ヴィガジ「侵略ではない!  これは銀河の秩序を守るための 予防策! 正義の戦いなのだ!」
イルム「……正義ってのは 人それぞれだからな。 あんたにも言い分はあるだろうよ」
イルム「だがな、因果応報って言葉も ある。人の家に土足で踏み込んだ 報いはきっちり受けてもらうぜ」
ヴィガジ「黙れ!  貴様らこそ我が正義の鉄槌を 受けるがいい!」
マサキ「今までインスペクターが やってきたこと……侵略がてめえらの 正義だってんなら……」
マサキ「俺はそんなものを認めねえ!  そして、てめえらの勝手な言い分を 黙って受け入れる気もねえ!」
マサキ「ヴィガジ!  ここで引導を渡してやるぜ!」
(作戦目的表示)

〈ガルガウ撃墜〉

ヴィガジ「ば、馬鹿な!  この俺が敗れるだと!?  あんな……あんな連中に!!」
ヴィガジ「地球人ごときにこの俺が!!  こ、この俺がぁぁっ!!」
ヴィガジ「認めん!  断じて認めんぞォォォォォッ!!」
(ガルガウが爆発)
カチーナ「よし!  怪物野郎を仕留めたぜ!!」
レフィーナ「ユン、 ムーンクレイドル内に動きは?」
ユン「ありません。沈黙しています」
リン「レフィーナ艦長、 私はこれからプラントのラインを 止めに行く」
リン「ギリアム少佐、タカクラチーフ、 手伝ってくれ」
ギリアム「了解した」
ツグミ「……」
リン「どうした?」
ツグミ「……すみません、 スレイ少尉と少し話をさせて下さい」
スレイ「……」
ツグミ「スレイ……戻ってこない?」
スレイ「タカクラチーフ……」
アイビス「もうすぐ、 この戦いも終わる……。 いや、あたし達が終わらせる……」
アイビス「そうしたら、 またプロジェクトTDが始まるんだ」
アイビス「フィリオとツグミと あたしとあんたとで……」
スレイ「アイビス……お前は……」
スレイ(この戦いの最中にも 夢を忘れていなかったのか……)
スレイ(やはり、お前こそが…… 兄様と夢を同じくする者……。 それに引き換え私は……)
ツグミ「スレイ……」
スレイ「さよならだ……」
アイビス「え…」
スレイ「兄様と…… プロジェクトTDを頼む……」
(カリオンが撤退)
アイビス「スレイ……」
ツグミ「スレイは…… 私達の下を去った自分自身を 許すことが出来なかった……」
アイビス「そんな……」
ツグミ「それが彼女のプライド……。 スレイはそういう子だから……」
アイビス「スレイ……」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ユン「ノイエDC艦、 戦闘宙域から離脱していきます」
ショーン「……艦長、よろしいので?」
レフィーナ「ええ。あの状態での 戦闘はもう無理でしょう……」
リューネ(礼を言いたかったところだけど…… 今はあの連中の無事を祈るしかないか……)
レフィーナ「それに……彼らの力があったからこそ、 我々はムーンクレイドルを奪還することが 出来たのです」
ショーン「確かに」
マサキ「……このまま あの連中を見逃すってことかよ?」
ショーン「結果的にはそうなりますな。 今の私達に彼らをどうこうする時間や 余裕はありませんし……」
ショーン「今からアースクレイドルへ 戻ったとしても、あそこはすでに クロガネ隊によって陥落しております」
マサキ「それ、本当かよ!?」
ショーン「はい。 先程、テツヤ艦長代理から連絡がありました」
マサキ「そうか…… 向こうも上手くいったのか」
(通信)
ユン「艦長、ムーンクレイドルの リン社長より通信が入っています」
レフィーナ「……わかりました。 こちらに回して下さい」
(モニターオン)
リン「こちらリンだ。 ……艦長、予想外の事態が発生した」
レフィーナ「予想外……?  まさか、プラントに何か?」
リン「いや、そうではない。 クレイドル内の敵バイオロイド兵が 全て活動を停止しているのだ」
レフィーナ「えっ……!?」
ギリアム「……どうやら、 彼らの制御に使われているNNCネットワークに 異常が生じたようです」
ギリアム「しかも原因は インスペクター側にあるのではなく……」
ギリアム「第三者によって仕込まれたウイルス類である 可能性が高いと思われます」
リューネ「第三者って……!?」
マサキ「まさか!?」
ギリアム「ああ……シュウ・シラカワ博士だろう」
マサキ「……!」
リン「月に配備されている バイオロイド兵に、同じNNCネットワークが 使われているとすれば……」
リン「ムーンクレイドルだけでなく、 他の月面都市や基地に同じような現象が 起きている可能性もある」
レフィーナ「わ、わかりました。 すぐにこちらでも確認を取ってみます」
マサキ「……」
マサキ(シュウのことだ、 俺達のためにやったわけじゃねえだろうが……)
マサキ(結果的には、またあいつに 助けられたことになっちまったか……)

《ホワイトスター》

[ホワイトスター 内部]

ウェンドロ「ふうん……ヴィガジがやられたのか」
アギーハ「はい。 ムーンクレイドル……いえ、月は 地球人に奪還されてしまいました」
ウェンドロ「月が? どういうことだい?」
アギーハ「何者かが月面基地や都市に 配備されていたバイオロイドの機能を 停止させたからです」
ウェンドロ「へえ…… 地球人にそんな芸当が出来るとはね」
ウェンドロ「もしかして、 シュウ・シラカワの仕業かな?」
アギーハ「おそらくは。 あの男はこちら側の技術やシステムを ある程度知っているはずですから」
ウェンドロ「ま、 今回はこれ以上動かないだろうさ。 標的が違うからね」
アギーハ「……月の方はいかが致しましょう?」
ウェンドロ「アインストのこともある。 しばらくは放っておいていいよ」
ウェンドロ「こちら側の兵器は、 スカルヘッドの生産分やイスルギからの提供分で 充分過ぎるほど数が揃ってるし……」
ウェンドロ「地球人もここへ攻めてくる 余裕はないはずだからね」
アギーハ「わかりました」
ウェンドロ「ところで、メキボスは?  あの男も死んだのかい?」
アギーハ「いえ。 任務を途中で放棄し、月から単身脱出…… 現在は音信不通です」
ウェンドロ「……」
ウェンドロ(ふふふ……メキボス、 やっぱり君はその程度の男だったようだね……)

《ムーンクレイドル(ヒリュウ改)》

[ヒリュウ改 ブリッジ]

リオ「父様!」
ユアン「リオ……お前達のおかげで助かったよ」
リョウト「よくご無事で……」
ユアン「ああ。このセレヴィスにいた私達は、 インスペクターのバイオロイド達の 監視下にあったが……」
ユアン「被害はほとんど受けていない。 社員達もみんな無事だよ」
リン「苦労をかけたな、常務」
ユアン「いえ、社長こそ。 早速、私達は本社とムーンクレイドルに 行って事後処理を行います」
リオ「父様、私は……」
ユアン「わかっているよ、リオ。 ホワイトスターへ行くんだね」
リオ「うん……」
ユアン「……必ず戻ってくるんだ。 母さんと一緒にお前とリョウト君、 そして皆さんの帰りを待っている」
リオ「ええ、必ず帰るわ」
ユアン「リョウト君、くれぐれも娘のことを……」
リョウト「はい……リオは僕が守ります」
ユアン「うむ、頼むよ」
リン「では、常務……社とクレイドルの方は任せるぞ」
ユアン「ええ。 社長達のご武運を祈っております」
(通信切れる)
イルム「……リョウト、今のは決まったな」
リョウト「え……?」
イルム「お許しが出たも同然ってことさ」
リョウト「ぼ、僕はそんなつもりで 言ったわけじゃ……」
リューネ「それより、イルム。 リンを人質に取られた時のこと…… あれ、ブラフだったんでしょ?」
イルム「いや、本気さ」
リューネ「え!?」
イルム「本気で撃つつもりだった。 もっとも、当たるかどうかはリン次第だったがな」
リン「……私もイルムの弾に 当たるつもりなどなかった」
リオ「じゃあ、中尉と社長は……」
イルム「ま、何だかんだで 付き合い長いからねえ、俺達。 互いのクセもよく知ってるのさ」
ラウル「……やっぱり、 リンさんを助けるつもりだったんですね」
イルム「あそこで大見得切って、 決意表明するほど、俺は若くないの」
リューネ「確かに…… 『お前を助けるぞー!』とか絶叫する あんたは想像できないね」
イルム「いやいや。 『お前が好きだー!』ってのは言えるぜ」
リン「……誰に対してだ?」
イルム「さ、さあ……誰でしょう?」
ショーン「……本当に撃ってたら、 一生頭が上がらない所でしたな」
イルム「うっ……」
レフィーナ「……副長、 クロガネとの合流ポイントについては?」
ショーン「月軌道上P1147…… 先方にも連絡をしておきました」
レフィーナ「わかりました。 では、これより本艦はクロガネとの 合流ポイントへ向かいます」

『ヒュッケバインMk-III・R』を入手した。


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