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新生、聖十字軍 月へ行く ~ 第20話 ~

《アースクレイドル》

[アースクレイドル 内部]

ユウキ「……報告します。 モザンビーク海峡で敵潜水艦隊の 撃破に成功……ただ今帰還しました」
アーチボルド「ご苦労。 おかげで、あちら方面の連邦軍は 大人しくなったみたいですね」
ユウキ「しかし、敵は アフリカ北部へ戦力を集中させていると 聞いておりますが」
アーチボルド「特に心配することはないでしょう」
アーチボルド「ヴィンデル大佐の 開発チームが作った新型機が、まもなく 実戦へ投入されるそうですからね」
ユウキ「新型機…… 例の斬艦刀装備の特機とは違うのですか?」
アーチボルド「僕もまだ詳細は聞いてませんが、 Type30と同じく量産型らしいですよ」
ユウキ「では、ベースは ヒュッケバインMk-II……?」
アーチボルド「いえ、それより上位の 機種を基にした物だそうです」
ユウキ(上位機種だと?  量産型のヒュッケバインMk-IIは 最新鋭機なのに……)
ユウキ(あれ以後、 連邦の新型を奪取したという話は 聞いていない。どういうことだ?)

[アースクレイドル 格納庫]

カーラ「……それで、 しばらくは休めそうなの?」
ユウキ「いや。 出撃準備が整い次第、地中海方面へ 向かうことになる」
カーラ「そう……」
ユウキ「どうした? 疲れたのか?」
カーラ「ううん。こんなことを やってる内に異星人が攻めてきたら どうすんのかなって思ってね」
ユウキ「……デザートクロス作戦は もう中盤に差し掛かっている……」
ユウキ「最悪の事態を防ぐためにも、 今は与えられた任務に集中すべきだ」
カーラ「うん……。 ところで、ゼオラってあれから どうなったの?」
ユウキ「配属が変更され、元の部隊へ戻った。 知らなかったのか?」
カーラ「そうじゃなくて…… ここへ来てからずっとあの子の顔を 見てないし、心配なんだけど……」
ユウキ「今はセロ博士のラボにいると 聞いているが……」
カーラ「……」
カーラ(ゼオラ……大丈夫かな……)

[???]

アギラ「さあ…… 目を覚ますんじゃ、アウルム1」
アギラ「ワシの可愛い娘……。 お前の出番が来たぞ」
???(オウカ)「……」
???(オウカ)「……母様……」
アギラ「気分はどうかえ? アウルム1」
???(オウカ)「……悪くありません」
アギラ「そうかい。 それは良かったのう、フェフェフェ」
???(オウカ)「母様、弟や妹達は……?」
アギラ「もう目覚めておる。 お前も早う支度をするんじゃ」
???(オウカ)「はい……」

[アースクレイドル 内部]

ヴィンデル「初期ロットのテストだと?」
レモン「ええ、アクセルが戻ってくる前に 済ませておきたいの」
ヴィンデル「仕掛ける相手は?」
レモン「ハガネがベストね」
ヴィンデル「いいだろう。 私としても、あの連中の足止めを しておきたいからな」
ヴィンデル「ついでにエルアインスの 実戦テストもやっておけ」
レモン「あれを? 今、ハガネ相手に 出したらバレるかもよ」
ヴィンデル「いずれわかることだ。 それに……上手くいけば、ヘリオスが 反応を見せるかも知れん」
ヴィンデル「バンに Type30を渡したのは、 そのためでもあるからな」
レモン「そういうことなら、 ……W16、あなたが今回の指揮を執りなさい」
エキドナ「了解です」
レモン「メインターゲットはハガネ。 攻撃パターンはレベル2止まりで」
エキドナ「はっ」
レモン「それと……今回のテストで 彼らの耐久性を調べたいから、 無茶をさせても構わないわよ」
エキドナ「撃墜されても構わないと 言うことですか?」
レモン「ええ、 初期ロットはまだ数に余裕があるし……」
レモン「あなたがデータを きちんと持って帰りさえすれば、ね」
エキドナ「了解です」
レモン「そうそう、W17に 予備の機密通信装置を持って行って」
レモン「あなたと接触してからも音沙汰なしなのは、 装置が故障してるせいかも知れないから」
エキドナ「了解。では、出撃します」

[アースクレイドル 内部]

アギラ「……クエルボ、 ブロンゾ27の調整は終わったのか?」
クエルボ「はい」
アギラ「時間がかかり過ぎじゃの」
クエルボ「ですが、ラトゥーニが アラドを殺したという事実は、 彼女にとって過酷すぎますので……」
アギラ「すぐに使えるのかえ?」
クエルボ「い、いえ……もうしばらくは」
アギラ「そうか。 ワシの方はとりあえず仕上がったぞ」
クエルボ「では、彼女は……」
(扉が開閉する)
ゼオラ「……」
アギラ「27号…… ブロンゾクラスはお前一人だけに なってしまったが……」
アギラ「これからも アウルム1と共にDC再興のために戦い、 良いデータを残しておくれ」
ゼオラ「!  もしかして……姉様が目覚めたのですか?」
(扉が開閉する)
オウカ「そうよ、ゼオラ」
ゼオラ「オウカ姉様……!」
オウカ「話は聞いたわ。 辛い想いをしたようね……」
ゼオラ「……」
オウカ「あの子が……ラトが生きていて 私の弟を殺しただなんて……」
ゼオラ「私のせいです、姉様。 アラドを守ってあげることが出来なかった……」
オウカ「ゼオラ、自分を責めては駄目。 そして、ラトも」
ゼオラ「え?」
オウカ「私の可愛い妹が…… ラトが自分の意思でアラドを殺したとは思えない」
オウカ「きっとあの子は 連邦軍の人間に再教育され、 そうするよう仕向けられたのよ」
ゼオラ「……」
オウカ「だから、あなたとラトは悪くない……」
オウカ「悪いのは連邦軍…… ラトを操っている者達……」
オウカ「アラドの仇はラトじゃない。 だから、あの子を恨んでは駄目」
ゼオラ「はい。姉様がそう言うのなら……」
オウカ「……母様、私を出撃させて下さい。 ラトを連れ戻したく思います」
アギラ「いいじゃろう。 ちょうどヴィンデルの配下の者達が 出るところじゃ」
アギラ「奴にはワシが話をつけておく。 ウォーミングアップも兼ね、 共に出撃するがいい」
オウカ「承知致しました、母様」
ゼオラ「オウカ姉様……」
オウカ「ゼオラ、ラトのことは 私に任せなさい。いいわね?」
ゼオラ「はい」
オウカ「では、母様……行って参ります」
アギラ「うむ。 ブロンゾ27、アウルム1の支度を 手伝ってやれ」
ゼオラ「わかりました」
(扉が開閉する・ゼオラとオウカが立ち去る)
クエルボ「……セトメ博士、 オウカは大丈夫なのですか?」
アギラ「記憶の調整はしてある。 もっとも、戦闘中に弊害が 少し出るかも知れんがの」
アギラ「それより、興味深いのは ラトゥーニ11じゃ」
アギラ「あれが 生きていることは知っておったが、 まだ戦場に出ているとはの」
クエルボ「オウカが言った通り、 ラトゥーニは連邦軍で調整を 受けているのでしょうか?」
アギラ「ケンゾウ・コバヤシなら あるいは……」
アギラ「いや、あり得んな。 奴が念動力者以外に興味を持つとは思えん」
クエルボ「……」
アギラ「じゃが、11号が 自分の意思で戦っておるとなると…… ふむ、面白い」
アギラスクール時代に 廃棄されたクラスとは言え、 連れ戻して調べてみる価値はある」
クエルボ「……」
アギラ「何じゃ、その顔は。 不満でもあるのかえ?」
クエルボ「……いえ」
アギラ「フン……くれぐれも、 ブーステッド・チルドレンに つまらぬ情けなどかけるでないぞ」
クエルボ「……」

[シロガネ 医務室]

タスク「う~、 まだ頭の奥がジンジンする……」
ラッセル「だ、大丈夫ですか?」
タスク「ああ。 ただの脳震盪だったみてえだし…… ガンドロに感謝しなきゃあな」
カチーナ「何にせよ、 てめえの意識が戻って良かったぜ」
タスク「おろ? 中尉にしては 珍しく優しい言葉ッスね」
カチーナ「何言ってやがる。 あたしはいつでも優しいぜ?」
タスク「……とおっしゃってますが、 どうなんでしょう? ラッセルさん」
ラッセル「え?  ま、まあ……極たまには」
カチーナ「極って付けんな!」
タスク「で、状況はどうなんスか?」
カチーナ「今、シロガネは ハガネとの合流地点へ向かってる。 アフリカから撤退するためにな」
タスク「じゃ、じゃあ、連邦軍は……」
リュウセイ「ああ、押されてる。 あの斬艦刀ロボが他の所にも 現れてるみてえだし……」
タスク「そうか……。 あれ、ホントにゼンガーの大将だったのかな」
タスク「俺の勘じゃ、 違うような気がするんだけど……」
リュウセイ「パイロットはともかく、 あのロボットの正体の方は ちょっとだけ見当がついたぜ」
タスク「マジかよ?」
リュウセイ「ああ、奴のデータと 俺がもらってるSRX計画のデータと 照らし合わせてみたんだ」
リュウセイ「機体構造は グルンガストシリーズに似てて……」
リュウセイ「ドリルと液体金属刃の 斬艦刀をもってることから、新型の 参式2号機に近い奴みてえだ」
タスク「もしかして、 ファルケンのタイプRと同じで、 DC残党に持ってかれたのかよ?」
リュウセイ「いや 参式は1号機から3号機まで 全部テスラ研にあるし……」
リュウセイ「敵に奪われたって話も聞いてねえ」
ラッセル「じゃあ、テスラ研の データがハッキングされたとか……」
タスク「う~ん…… あそこのデータを盗み出すなんて、 簡単にゃ出来ないと思うけどなぁ」
カチーナ「奴の正体が何であれ…… あたしらの敵になるなら、ブッ倒すまでだぜ」
ラッセル「ま、またそんなことを……」
カチーナ「だいたい、あの男が こっちの話を素直に聞くタマか!」
タスク「中尉も他人のこと言えないと 思うッスけど……」
カチーナ「何だと、この……!」
タスク「!」
カチーナ「って、いけねえいけねえ。 頭打った奴を殴っちゃダメだ。 しばらくは労ってやるぜ」
タスク(あ~ビックリした。 もしかして、これが極たまって奴?)
カチーナ「ところで、 レオナはどこへ行ったんだ?」
タスク「あ、 さっき腹減ったって言ったら、 出て行ったんスけど……」
カチーナ「な、何!?」
リュウセイ「も、もしかして!?」

[シロガネ 艦内]

レオナ「……」
エクセレン「あら……レオナちゃん」
レオナ「エクセレン少尉……」
エクセレン「タスク君、 意識を取り戻したんでしょ?」
レオナ「え、ええ……」
エクセレン「どうしたの?  手にお鍋なんか持って……」
レオナ「……やっぱり、やめます」
エクセレン「え?」
レオナ「また……倒れるだろうから」
エクセレン「た、倒れるって…… それ、もしかして?」
レオナ「はい…… 彼のために作ったんです」
エクセレン「わお、愛の手料理って奴?  レオナちゃん、いいトコあるじゃない」
レオナ「……私…… 彼のためにしてあげられることが あまりありませんから……」
レオナ「でも……やめておきます」
エクセレン「ん~、そうねぇ……」
エクセレン「じゃ、レオナちゃんがおいしくないって 思う味付けをしてみるのはどう?  いわゆる逆転の発想って感じで」
レオナ「え……?」
エクセレン「もしかしたら、もしかするかもよ?」
レオナ「……」

[シロガネ 医務室]

タスク「……そうか、 ガンドロの応急修理が終わったのか」
レオナ「ええ…… 敵に追いつかれるのは時間の問題だから、 何とか戦えるようにと」
タスク「じゃ、 俺もおちおち寝ちゃいられねえな」
レオナ「……無理はしないで」
タスク「ど、どったの?  今日はヤケに優しいな。極たま?」
レオナ「……」
タスク「心配すんなよ。 俺の運の強さ、知ってるだろ?」
レオナ「だから、心配なのよ。 あなたに何かあったら、私……」
タスク「え? なになに?」
レオナ「な、何でもなくてよ。 それより、これを……」
タスク「鍋? も、もしかして……?」
レオナ「ええ、私が作ったの。 もし、良かったら……」
レオナ「いえ……具合が良くなってから、 温めて食べて」
タスク「いや……今、食うぜ」
レオナ「え!?」
タスク「だって、 俺のために作ってくれたんだろ?  すぐに食わなきゃ意味ねえぜ」
レオナ「ま、待って!」
タスク「いや。ここで食べなきゃ、 男がすたるってモンだぜ」
レオナ「ダ、ダメよ!」
タスク「いっただきま~す!」
レオナ「や、やめて!!」
タスク「う……! ぐ!?」


第20話
新生、聖十字軍

〔戦域:森周辺〕

(シロガネが森の上に)
リー「艦の速度はまだ上がらんのか。 機関部の修理状況は?」
一般兵「現在の修復率は約30%です」
リー「時間がかかり過ぎだ。 もっと効率を上げられんのか?」
一般兵「停艦して修理を行えば 可能だと思われますが……」
リー「現在の本艦の索敵能力は 著しく低下している。 足を止めれば、敵の餌食になるだけだ」
リー「他ブロックの修理班を 機関部へ回し、作業を急がせろ」
一般兵「りょ、了解です」
リー(……これでは ハガネとの合流予定時間に 大幅に遅れてしまう)
リー(ちっ……。 この私がテツヤ・オノデラ達の 足を引っ張ることになるとはな)
(アラート)
一般兵「艦長!  本艦後方に敵の飛行部隊が!!」
リー「!」
(敵機が出現)
リー「追いつかれたか……!  直ちにPT部隊を出撃させろ!」
(出撃準備)
リー「プラチナム1より各機へ。 本艦は戦闘空域からの離脱を優先する」
リー「お前達は敵機を迎撃せよ。 何としても本艦を守り抜くのだ」
カチーナ「己の命に代えても……かよ?」
リー「無論だ。 お前達の代わりなどいくりでもいる。 ……本艦と違ってな」
カチーナ「何だとォ!?」
エクセレン「わお、お約束の展開発生!」
ラッセル「ちゅ、中尉、また艦長に……」
エクセレン「ま、喧嘩するほど何とやらって 言うし……あの二人、案外後で仲良くなる かもよ?」
カチーナ「ふざけんな!」
リー「冗談ではない!」
エクセレン「いやん、同時援護ツッコミ?」
ラッセル(どっちもどっちかも……)
レオナ「……タスク、 身体の調子はどう?」
タスク「ああ、 レオナちゃんの看病とお粥のおかげで もうバッチリだぜ」
リュウセイ「お粥って…… あいつの料理を食って平気だったのか?」
タスク「それが何とめちゃウマでさ。 結婚後の不安がちょいと和らいだぜ」
レオナ「ば、馬鹿なことを言ってないで、 さっさと迎撃態勢に入りなさい!」
タスク「へいへい」
エクセレン(…言ってみるものねえ。 レオナちゃん、どんな味覚してるのかしら)
カチーナ「よし、先手必勝だ!  突撃して敵をブッ叩くぞ!!」
(作戦目的表示)

〈敵機4機以下 or 2EP〉

(アラート)
一般兵「か、艦長!  3時方向、新たな敵部隊です!!」
リー「!」
(南側に敵機が出現)
リュウセイ「くそっ、面倒な所に!」
タスク「あいつらが本命か!?」
リー「対空機関砲、弾幕展開!  間の速度を可能な限り上げろ!」
一般兵「だ、駄目です!  メイン、補助エンジンに異常発生!  このままでは停艦します!」
リー「何だと……!?」
カチーナ「シロガネの近くにいる奴は 速攻で敵機を叩き落とせ!」
カチーナ「ボヤボヤしてっと シロガネを沈められちまうぞ!!」
ラッセル「りょ、了解です!」

〈敵機3機以下 or 4PP〉

リー「カチーナ隊は何をしている!  さっさと敵を落とさんか!」
カチーナ「チッ、 いちいち言われなくても!」
一般兵「艦長、 こちらへ突入してくる戦艦が!  識別はスティール2です!」
リー「何っ……!?」
(ハガネ他エチオピアへ向かっていたメンバーが出現)
エクセレン「わお! ハガネじゃない!」
リュウセイ「いい所に来てくれたぜ!」
リー(くっ、 またあの艦に救われるとは……!)
キョウスケ「無事か、みんな?」
カチーナ「何とかな。 それより、こっちを手伝ってくれ!」
キョウスケ「了解した」
テツヤ「各機、攻撃を開始せよ!」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

エイタ「敵機、全機撃墜!」
ダイテツ「本艦と各機は現状維持。 周辺の警戒に当たれ」
テツヤ「はっ」
エクセレン「ふう… これで一息つけるとラッキーだけど?」
ラミア「エクセ姉様、油断は禁物だったり したりなんかしますですわよ」
タスク「おろ?  あのカワイコちゃん、誰?」
リュウセイ「ああ、 あれはアンジュルグって言って…… イスルギの試作機なんだ」
タスク「そっちの カワイコちゃんじゃねえっつーの!」
エクセレン「そうだ、キョウスケ…… 話があるんだけど」
キョウスケ「……斬艦刀を持った特機と ゼンガー少佐のことか?」
エクセレン「え!?  ど、どうして知ってるの!?」
リュウセイ「もしかして、 そっちも接触したのか!?」
キョウスケ「……ああ。 俺達が救援に向かった先の部隊が、 あの特機に潰された」
リュウセイ「……!」
エクセレン「ねえ…… あれって、やっぱり……」
キョウスケ「まだ……わからん。 この目で真実を確かめるまでは」
ブリット「自分も…… ゼンガー少佐がDC側についている なんて思いたくありません」
エクセレン「そうね……」
リー(何を甘いことを。どう見ても あの男はゼンガー・ゾンボルトだ。 そうとしか思えん)
(通信)
ダイテツ「……こちらは ハガネのダイテツ・ミナセだ」
ダイテツ「周辺の警戒は本艦の部隊が行う。 そちらは機関部の修理を急げ」
リー「……了解です。 ところで、何故ハガネはここへ?」
ダイテツ「貴艦の合流が 予定より大幅に遅れていたのでな。 もしやと思い、迎えに来た」
リー「……そちらの力を借りずとも、 我々は自力で合流地点へ たどり着くつもりでした」
リー「現在の戦況下で、 その行動は軽率すぎるのでは ありませんか?」
テツヤ「どういう意味だ、リー!?」
リー「言葉遣いに気をつけろと 言ったはずだぞ、テツヤ。 まったく、上が上なら……」
(アラート)
リー「!」
テツヤ「何事だ!?」
エイタ「本艦の前方より、 機動兵器群が急速接近中!  友軍機ではありません!」
テツヤ「エイタ、敵機の識別は!?」
エイタ「ま、待って下さい……」
エイタ「! こ、これは!?」
テツヤ「どうした!?」
エイタ「そ、そんな……!  これって、どういうことなんだ!?」
(量産型ゲシュペンストMk-IIが大量に出現)
ブリット「あ、あれは!?」
エクセレン「ゲ、ゲシュちゃんが山盛り!?  …あれ、量産型よね?」
ライ「妙だな。あの機体は 生産が休止されているはず……」
カイ「うむ。L5戦役後、代わりに リオンシリーズが量産されたからな」
カイ「俺やカチーナ中尉たちを含め、 今でもいくつかの部隊が量産型の ゲシュペンストを使用しているが……」
カイ「あれだけの数が DC残党側にあるのは確かに妙だ」
リュウセイ「もしかして、あいつらが 量産してやがったのか?」
ライ「リオンシリーズがあるにも 関わらずか?」
リュウセイ「あ……」
キョウスケ「可能性があるとすれば、 L5戦役の時にエアロゲイターが 複製した機体だが……」
ラトゥーニ「ホワイトスターやメテオ3が 破壊された今……そんな物が現存し、 稼動しているとは思えません」
キョウスケ「ああ」
イルム「空を飛んでいる所を見ると、 テスラ・ドライブを積んだ 改良型らしいが……」
イルム「性能面はともかく、 コスト面じゃリオンの方が上だ」
イルム「連邦軍ならいざ知らず、 連中にゲシュペンストMk-IIを 量産する理由はないぜ」
ブリット「じゃあ、あれは何なんです?」
イルム「その名の通り、 幽霊だったりしてな」
ブリット「い、いくら何でもそんな」
キョウスケ(……奴らは、今までの DC残党と違う。そんな気がする)
ラミア(……間違いない、 あれは本隊の機体だ)
ラミア(ならば、 こちらの状況が伝えられる)
カイ「各機へ! 詮索は後だ!  散開して敵機を撃破しろ!」
リュウセイ「了解!」

〈vs 量産型ゲシュペンストMk-II〉

[ラミア]

ラミア(機密通信装置は使えんが、 本隊で使用している暗号ならば……)
(キー操作)
ラミア(……)
ラミア(……応答がない。だが、 こちらの状況は伝わったはずだ)

〈敵機全滅〉

(アラート)
テツヤ「何だ!?」
エイタ「敵の増援部隊、 本艦へ向けて急速接近中!」
テツヤ「各機、警戒せよ!」
(エルアインスなどが出現)
ブリット「くっ、 またゲシュペンストか!」
イルム「いや、待て!」
ブリット「え!?」
イルム「あ、あの機体は……!?」
リュウセイ「ま、まさか!!」
(エルアインスを指す)
イルム「アルブレード……!!」
カイ「何だと!?」
ライ「確かに似ています。しかし……」
ラトゥーニ「あの機体は リュウセイが乗った物を含めて、 3機しか作られていないのに……」
ライ「ああ。こんな所に……しかも、 2機も存在しているわけがない」
キョウスケ「マオ社から試作機の データが流出した可能性は?」
ライ「ないとは言い切れんが、 可能性は限りなく低い」
リュウセイ「ライの言う通りだ。 それに、あれはこの世に存在してる はずのねえ機体だぜ」
キョウスケ「…存在しているはずがない だと?」
ラミア(そう……。 その表現はある意味正しい)
キョウスケ「どういうことだ?」
リュウセイ「細かい所は色々と 違うみてえだけど、肩のキャノンに 背中のテスラ・ドライブ……」
リュウセイ「ありゃ、試作機じゃねえ。 量産型のアルブレード…… 『エルシュナイデ』だ」
キョウスケ「量産型……?」
ブリット「エルシュナイデ!?」
リュウセイ「ああ、アルブレードってのは コードネームでな……」
リュウセイ「正式採用の暁には そう名付けられることになってんだ」
ブリット「……」
イルム「もっとも…… マオ社じゃ、まだ骨組みを 作っている最中だがな」
ブリット「ええっ!?」
キョウスケ「現時点で 完成しているはずのない機体、か」
エクセレン「どうやら、幽霊はゲシュちゃん だけじゃないってことみたいね」
ラミア(あれが出てきたという事は…… 本隊が本格的に動き始めたのか?)
ラミア(何にせよ、 上手くコンタクトを取らねば)
(通信)
ラミア(来たか。 だが、通常周波数を使うとは…… どういうつもりだ?)
オウカ「……ラト、 聞こえているなら返事をなさい」
ラトゥーニ「!!」
ライ「ラトゥーニを知っているだと?  まさか……!」
ラトゥーニ「オウカ……!!」
カイ「オウカだと?」
ライ「では、あれがスクールの……!」
オウカ「久しぶりね、ラト。 あなたが生きていてくれて嬉しいわ」
ラトゥーニ「ね、姉様……」
オウカ「アラドのことは知っているわ。 でも、私はあなたを責めはしない」
ラトゥーニ「え?」
オウカ「……あなたは自分の意思で 戦っているつもりなのでしょうけど…… それは違うの」
ラトゥーニ「姉様、何を……!?」
オウカ「今のあなたは 本当のあなたじゃない……」
オウカ「あなたは連邦軍に 再教育されてしまっているのよ」
オウカ「彼らがあなたを自分達の 兵器として利用するために……」
ラミア(……なるほど、 要は私と同じか)
ラトゥーニ「違う……!」
ラミア「!」
ラトゥーニ「姉様、私は!」
オウカ「……可哀想なラト。 自分がだまされていると わからないのね」
オウカ「だから、 あなたはゼオラと戦い…… アラドを殺してしまった」
ラトゥーニ「え……!?」
ブリット「違う、あれは事故だ!  それにアラドは死んじゃいない!」
リュウセイ「そうだ!  あいつは生きてる!」
オウカ「戯れ言を。 その証拠があるとでも?」
エクセレン「今は月にいる……って 言っても、信じてくれないわよね」
オウカ「……思い出して、ラト。 スクールで私達と過ごした 日々のことを……」
ラトゥーニ「……!」
オウカ「本当の自分を思い出して。 そして、私と一緒に帰るのよ」
オウカ「母様とゼオラが あなたを待っているわ」
ラトゥーニ「嫌……」
オウカ「!」
ラトゥーニ「私は……帰らない。 だまされているのは、姉様達の方……」
オウカ「何を言うの。あなたは 母様やメイガスに育ててもらった 恩を忘れたの?」
オウカ「私達と一緒に過ごした日々を 忘れてしまったの?」
ラトゥーニ「……みんなのことは 忘れていない……」
オウカ「なら、何故?」
ラトゥーニ「……私はスクールで 本当の自分を失ってしまった……」
ラトゥーニ「そして、 それをジャーダやガーネット、 リュウセイ、シャイン王女……」
ラトゥーニ「ハガネやヒリュウ改の みんなのおかげで取り戻せたの」
オウカ「……」
ラトゥーニ「だから、姉様…… 私はあなた達の所へ帰らない」
ラトゥーニ「そして、私が姉様達に かけられた呪縛を解く……」
オウカ「それは私の台詞よ、ラト。 私の言うことが聞けないなら、 力ずくでもあなたを連れて帰る」
オウカ「そして、私と母様の手で 本当の自分を思い出させてあげるわ」
リュウセイ「冗談じゃねえ!  それじゃ、スクールの時と 同じだろうがっ!!」
オウカ「お黙りなさい。 部外者のあなたに何がわかると 言うのです?」
リュウセイ「何?」
オウカ「私とラトの絆を知らぬあなたに 口を挟まれるのは心外です」
オウカ「そして……ラトを利用し、 アラドを殺させたあなた達…… 連邦軍を許すわけにはいきません」
オウカ「弟の仇はこの私…… スクールの長姉たるオウカ・ナギサが 討ちます」
イルム「やれやれ、 見た目以上にガチガチだな、ありゃ」
カイ「だが、 量産型アルブレードのこともある。 出来れば、機体ごと捕らえたい」
ライ「そうですね」
カイ「やれるな、ラトゥーニ?」
ラトゥーニ「は、はい」
オウカ「……エキドナ、 攻撃を開始しましょう。 ラトの相手は私が致します」
エキドナ「了解した」
エキドナ(だが、その前に……)
(キー操作、データ受信)
ラミア(! 本隊の暗号か)
エキドナ(そちらの状況は把握した。 やはり、機密通信装置が 故障していたようだな)
エキドナ(予備を落としていく。 後で回収しろ)
ラミア(了解。 それと、次に接触することがあれば、 言語部位の交換用シナプスを)
エキドナ(お前自身にもトラブルが あったのか。では、レモン様に伝えておく)
ラミア(……お前の任務は?)
エキドナ(テストだ。我々の兄弟達のな)
ラミア(兄弟? 量産型か?)
エキドナ(そうだ。 ……コード発信。攻撃を開始しろ)
量産型W「了解」
エキドナ(W17の相手は私がする。 お前達は手を出すな)
エキドナ(なお、撃墜された場合は コードATAを遂行……証拠を残すな)
量産型W「了解」
エキドナ「では行くぞ、W17。 お前が疑われない程度にな」
ラミア「了解した」

〈量産型Wとの戦闘後〉

ブリット「あのゲシュペンスト隊、 こないだの時と動きが違う……!」
イルム「ああ。 動きが妙に機械的だな」
ライ「AI搭載型の機体でしょうか?」
ラミア「……」
ラトゥーニ「あの攻撃パターン…… 覚えがあります」
カイ「何? 本当か?」
ラトゥーニ「はい。あれはスクールで 研究されていたものに似ています」
キョウスケ「では、ゲシュペンストに 乗っているのはスクールのメンバーだと?」
ラトゥーニ「違います……。 あそこにいるのは姉様だけ……」
ブリット「……それ、 俺にも何となくわかるよ」
ブリット「あのゲシュペンストに 乗っているのは……人間なのか?」
キョウスケ「……」

エキドナ機を
撃墜した 撤退させた


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