back index next


その名はアインスト 月へ行く ~ 第17話 ~

エクセレン「じゃ、行きましょっか。 リュウセイ君」
リュウセイ「ああ、わかったぜ」

〔戦域:アースクレイドル内〕

(東にライノセラスが出現し、中央まで移動)
DC艦長「速力、ゼロ。 RMデック進入準備」
アーチボルド「ようやく着きましたか、 アースクレイドルに」
DC艦長「少佐、 バン大佐より出頭命令が出ています」
アーチボルド「わかりました。 艦長、ユウキ君……後は任せますよ」
ユウキ「了解です」
カーラ「……ここ、 地下シェルターだって聞いてたけど…」
カーラ「プラントどころか、 街みたいな物まであるんだね」
ユウキ「アースクレイドルは 人類の方舟となるべく 造られた施設だからな」
カーラ「農場もあるみたいだし、 紅茶の葉っぱを栽培してるかもよ?」
ユウキ「……天日で 育っていない物は邪道だ」
カーラ「あっそ。 でも、こんだけ広いと、ダンスの練習をする スペースにも困らなさそうだね」
ユウキ「……まだそんなことを 言っているのか」
カーラ「今はしょうがないけど、 全てが終わったら……」
カーラ「元の生活に戻れるなら…… ダンサーになる夢、諦めたくないんだ」
ユウキ「……」
カーラ「それで、有名になって…… 恋愛映画に出演すんの。それも、 コッテコテでベタベタの」
ユウキ「……」
カーラ「そうなったら、 少しはヤキモチやいてくれる?」
ユウキ「……本当に元の生活へ 戻れると思っているのか?」
カーラ「……!」
ユウキ「今回の作戦が成功しても、 その後には……」
カーラ「……わかってるよ。 けど、夢ぐらい持ってなきゃ、 やってられないもの」
カーラ「もう後戻りが 出来なくても……ね」
ユウキ「……」
カーラ「あ……見て、ユウ。 あれ、ランドグリーズだよ」
(南西側のランドグリーズを指す)
カーラ「結構な数が揃ってるんだね」
ユウキ「ここで 相当数の機体が生産できるように なっているみたいだな」
カーラ「これだったら、 異星人とも互角に戦えるよ」
ユウキ「……」
ユウキ(だが、 奴らが現れる前に連邦の体制を 変えなければならない)
ユウキ(戦力を揃えるだけでは 異星人に勝てんのだ……)

[アースクレイドル 内部]

バン「……連邦軍がアフリカ東部に 戦力を集結させているだと?」
ヴィンデル「ああ、工作員から報告かあった」
ヴィンデル「彼らはこのアースクレイドルへ 狙いを絞ったようだ」
バン「だが、時すでに遅かったな。 我々は予定通り明後日0600に デザートクロス作戦を発動する」
ヴィンデル「……その前に 足止めをしておきたい連中がいる」
バン「それは?」
ヴィンデル「ハガネだ」
バン「何故、こだわる?」
ヴィンデル「彼らはDC戦争において ビアン・ゾルダークを討ち……」
ヴィンデルL5戦役でも ホワイトスターの中枢を破壊した」
ヴィンデル「故に侮ってはならぬ存在だと 認識している」
バン「その意見はもっともだ」
バン「しかし、 彼らは突出した力を持っているとは言え、 所詮は連邦軍の一部戦力に過ぎん」
バン「ましてや、今回の作戦の成否を 握る存在になるとは思えんな」
ヴィンデル「そう言って、DC内でも アードラーを始めとする多くの者が 彼らに敗れたのではないか?」
バン「……」
ヴィンデル「戦力はこちらで用意する。 デザートクロス作戦全体には影響させん」
バン「……よかろう。 貴公がそこまで言うのならな」
DC残党兵「大佐、アーチボルド少佐が 見えられました」
バン「ようやく到着したか。 ここへ通してくれ」
DC残党兵「はっ」
(扉が開閉する)
アーチボルド「……どうやらお茶会の 時間には間に合ったようですね」
バン「陽動任務ご苦労だったな、少佐」
アーチボルド「いえいえ。 それにしても……噂以上に強固な 要塞ですね、このアースクレイドルは」
バン「うむ」
アーチボルド「おかげで内部へ入るのも一苦労。 用意されているPTAMの数も かなりのものですし……」
アーチボルド「中には見たことのない 兵器もあるようですが……あれは?」
バン「そこにいるヴィンデル・マウザーが 用意してくれた物だ」
ヴィンデル「……」
アーチボルド「アーチボルド・グリムズと申します。 以後、お見知りおきを」
ヴィンデル「ああ」
ヴィンデル(アーチボルド・グリムズ…… こちらではDCと関わっていたか)
アーチボルド(ヴィンデル・マウザー…… 聞き覚えのない名前ですね)
バン「少佐、まずは疲れを癒してくれ。 諸々の報告は後で聞く」
アーチボルド「わかりました」

《地球周辺宙域(ヒリュウ改)》

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ユン「艦長、本艦は接触軌道に乗りました」
ユン「なお、シャトルとは 予定通りコンタクト出来そうです」
レフィーナ「わかりました。 哨戒中のカチーナ隊から報告は?」
ユン「特に異常なしとのことです」
レフィーナ「そうですか……」
ショーン「例の事件の犯人が 動きを見せていないとは言え、 油断は禁物ですぞ……艦長」
レフィーナ「ええ、わかっています」
(通信)
カチーナ「オクト1よりドラゴン2へ!  シャトルを発見したぜ!」
レフィーナ「わかりました。 艦の相対速度合わせ。 軌道確認、デッキはランデブー準備」
レフィーナ「オクト各機は 周辺警戒を密に願います」

[ヒリュウ改 ブリーフィングルーム]

エクセレン「というわけで……お手数ですけど、 月までお願い致しましちゃいますのことですわ」
レフィーナ「わかりました」
ショーン「……ところで、少尉。 その喋り方は?」
エクセレン「え? あら?」
リュウセイ「あれだな、 ラミアの口グセが移ったんじゃない?」
エクセレン「ん~、そうかもね。 結構クセになる楽しさなのよね~」
レフィーナ「ラミア?」
エクセレン「あ、ウチのチームの ニューフェイスなんです」
ショーン「名前から察すると女性の方のようですな。 お会いするのが楽しみです」
エクセレン「そりゃあもう、 ボカン、キュッ、ボーンですよん♥」
ショーン「ボカン…ですか。それはそれは。 数字の当て甲斐がありそうですな」
レフィーナ「あ、あの……副長?」
ショーン「コホン。 ……それで、そちらの彼が例の?」
アラド「……」
リュウセイ「ほら、アラド。 自己紹介、自己紹介」
アラド「アラド・バランガです。 所属は……え、え~っと」
レフィーナ「ふふ、緊張することはありませんよ。 あなたの事情はダイテツ中佐から聞いていますから」
アラド「は、はあ……」
レフィーナ「完全に自由というわけには いきませんが、気を楽に」
アラド(と言われても、 ここも敵の戦艦だしなあ……)
アラド(でも、艦長さんが美人で おしとやか系なのが救いだよな~)
リュウセイ「?  お前、なに笑ってんの?」
アラド「あ……いえ、何でもないッス」
(扉が開閉する)
カチーナ「よ! 元気だったか、 エクセレン、リュウセイ」
エクセレン「わお、カチーナ中尉。 そちらは相変わらずお元気そうで」
ラッセル「お二人とも、お久しぶりですね」
リュウセイ「ああ。 変わりなさそうだな、みんな」
タスク「チッチッチッ、 わかってないねえ、リュウセイ君」
リュウセイ「へ?」
タスク「この俺とレオナの間に 漂う空気……何か違うと思わない?」
レオナ「……」
リュウセイ「違うって何が?」
タスク「か~っ、わかんないかねえ。 このツーと言えばカーな関係。 そんでもって……」
(平手)
タスク「いてっ!!」
レオナ「それ以上言うと、 折り曲げる程度では済まなくてよ?」
タスク「へ、へ~い……」
エクセレン「あらら、 見事なお尻のしかれっぷりねえ」
カチーナ「ところで、そこにいるガキは誰だ?」
アラド「……」
カチーナ「新入りか?」
リュウセイ「え? ええ、まあ」
レフィーナ「中尉、 彼はラトゥーニ少尉と同じで スクールの出身……」
レフィーナ「そして、ついこの間まで DC残党に所属していたのです」
レオナ「!」
カチーナ「何だって!?  じゃあ、敵じゃねえか!」
カチーナ「どうして そんな奴がここにいるんだ!?」
ラッセル「ちゅ、中尉……」
アラド(や、やっぱ、そうなるよなあ)
レフィーナ「今回の件はハガネの ダイテツ艦長、カイ少佐からの 依頼であり……私も承服しています」
カチーナ「甘いぜ!  あのガキがスパイだったらどうすんだ!?」
エクセレン「噛み付く早さも相変わらずねえ…」
エクセレン「まあまあ、アラド君がそうじゃないのは 私が保障するから。この子、色々とワケありで…」
カチーナ「てめえに保障されたってなあ……!」
タスク「別にいいんじゃないスか、隊長」
カチーナ「あン?」
タスク「前例だってあるんだし。 上の方で納得してるんなら、 細かいことは抜きってことで」
カチーナ「前例ィ?」
レオナ「……」
カチーナ「あ……」
タスク「ほら、 今に始まったことじゃないっしょ」
カチーナ「ま、まあな」
アラド「あ、あの…… どういうことなんです?」
レオナ「……私はDC戦争中、 コロニー統合軍のトロイエ隊に 所属していたのよ」
アラド「え!? トロイエって…… コロニー統合軍親衛隊の!?」
レオナ「ええ。 それで、今はこのヒリュウにいる」
レオナ「戦後の特別措置だけでなく、自分の意思でね」
アラド「……」
レオナ「……旧教導隊の出身で、統合軍やDC側についた エルザム・V・ブランシュタイン少佐や……」
レオナ「ゼンガー・ゾンボルト少佐も L5戦役で私達に協力してくれた」
レオナ「この艦やハガネは そういう不思議な縁がある艦なのよ」
レオナ「だから…… あなたがここへ来たことには 何か意味があると思うわ」
アラド(意味……)
アラド(でも、おれは……)
リュウセイ「今はしょうがねえけど…… ブリットが言った通り、これから どうするかは自分で考えるんだ」
アラド「はい……」
エクセレン「んじゃま、 これにて一件落着ってことでよろしくて?  カチーナ中尉」
カチーナ「ああ、しょうがねえ」
カチーナ「アラドとか言ったな。 もし、その気になったら覚悟しな。 あたしがみっちり鍛えてやるぜ」
アラド「え、え~と…… この艦の営倉って、どこですか?  もう入っときたいんですけど」
カチーナ「こら、逃げる気か!」
(通信)
ユン「艦長、副長。 ブリッジへ上がってきてもらえませんか?」
レフィーナ「何かあったのですか?」
ユン「はい。 航路前方の宙域に妙な反応が……」
レフィーナ「わかりました。すぐに行きます」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ショーン「……なるほど、 確かにこの重力帯は妙ですね」
ユン「データを調べましたが、以前に あのようなものはありませんでした」
ショーン「ふむ……。 例の事件の犯人絡みの現象でしょうか?」
レフィーナ「……航宙予定を変更し、 調べてみましょう」
ショーン「予定航路から それほど離れてはいませんし…… そうした方がいいでしょうな」
ショーン「では、タイムテーブルは 私の方で修正しておきます」
レフィーナ「お願いします、副長」
レフィーナ「進路変更、推力上げ。 目標、前方の異常重力帯」


第17話
その名はアインスト

〔戦域:ストーンサークル周辺宙域〕

(ヒリュウ改が出現)
ユン「目標宙域に進入。 重力異常値、ほぼ変動なし」
レフィーナ「減速後、艦を固定。 カチーナ隊を出撃させて下さい」
(ヴァイスリッターが出撃、出撃準備)
エクセレン(う…… こ、この感じって……)
カチーナ「ん? 何だ、ありゃ?」
(ストーンサークルを見る)
タスク「石っころが環になってる……」
ラッセル「まるで ストーンヘンジですね」
リュウセイ「すっとんきょうな返事?」
タスク「こらこら、 『きょう』はどっから出てきたんだ、 『きょう』は?」
リュウセイ「いちいち細けえな。 それよか、ラッセルが言ってたのって 何なんだ?」
ラッセル「ストーンヘンジ……。 イギリスにある遺跡です」
ラッセル「環状に石か並んでいて、 建造者も建造目的も不明なんです」
レオナ「確か、日本にもあるわね」
リュウセイ「へー」
タスク「興味なさそうだな、おい」
リュウセイ「そうでもねえぜ。 中国で見たアンノウンとか、 超機人とか……最近、その手の話が多いし」
レオナ「でも、地面が存在しない宇宙に 何故あのような物が?」
カチーナ「偶然じゃねえのか?  宇宙に石っころがあったって、 そんなに珍しいこっちゃねえだろ」
レオナ「ですが、環状になっている点に 疑問が残ります」
カチーナ「それも偶然だ、偶然」
ラッセル「いくら何でもそんな」
エクセレン「……うう……。 これって、あの時と同じ……?」
タスク「?  どうしたんスか、エクセ姐さん」
カチーナ「腹でもいてえのかよ?」
エクセレン「く、来る……!」
カチーナ「来るって、何が?」
(アラート)
ユン「!  環状石の重力値にゆらぎが!!」
レフィーナ「!」
ユン「前方に正体不明の反応多数!」
(アインストが出現)
エクセレン「!!」
カチーナ「な、何だ、ありゃ!?」
リュウセイ「ア、アンノウンだ!!」
カチーナ「それって、 さっきてめえが言ってた奴か!?」
リュウセイ「あ、ああ……!」
ショーン「……形状はハガネからの データと一致しておりますな」
レフィーナ「ええ……」
リュウセイ「でも、 何であいつらがこんな所に……!?」
カチーナ「何だって構わねえ!  敵ならブッ倒すだけだぜ!」
レフィーナ「ユン、 念のためにアンノウンに コンタクトを試みて下さい」
ユン「了解!」
ショーン「……とは言え、ハガネと 同じケースになりそうですな」
レフィーナ「……」
ユン「艦長、アンノウンが こちらへの接近を開始しました!」
レフィーナ「!  呼びかけに反応した……?」
ショーン「ですが、あの様子は とても友好的だと思えません。 ……いかがされます、艦長?」
レフィーナ「カチーナ隊は本艦の護衛を。 アンノウンのデータはこちらで収集します」
カチーナ「よし!  野郎共、聞いての通りだ!  気合い入れろ!!」
???(アインストグリート)「……マ……タ……」
エクセレン「え!?」
ラッセル「どうしました、 エクセレン少尉!?」
エクセレン「今…… 声が聞こえなかった?」
タスク「声!?  何言ってんスか、少尉?」
???(アインストグリート)「コノ……バショ……」
エクセレン「や、やっぱり…… あれ、喋ってる……!」
タスク「へ!?」
リュウセイ「もしかして、 また何か聞こえてんのか?」
エクセレン「リュウセイ君は何も?」
リュウセイ「あ、ああ……」
???(アインストグリート)「…………」
エクセレン(ちょっとぉ…… どういうことなの? やっぱり、 私にだけ……聞こえてる?)
カチーナ「ワケわかんねえことを 言ってねえで、戦闘態勢に入れ!  仕掛けるぞ!!」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

ユン「アンノウン、全機撃墜!」
カチーナ「ハッ!  ざっとこんなもんだぜ!」
レフィーナ「……結局、 彼らはこちらからのコンタクトに 応じたのですか?」
ユン「いえ、受信していたかどうかも 怪しいです」
ショーン「ふむ……。 人が乗っているものだとは 考えにくいですからな」
レフィーナ「データの方は?」
ユン「スキャン解析を行いました。 現在、ハガネからのデータと あわせて検証中です」
ショーン「出来れば、サンプルを 持ち帰りたい所ですが…… あれだけ暴れられては仕方ありませんな」
レフィーナ「ええ……」
カチーナ「何にせよ、植物野郎は さっきので打ち止めみてえだな」
タスク「う~ん、ヤな予感がする」
カチーナ「てめえ、 また適当なこと言いやがって」
タスク「やだなあ、今までの経験と データに基づいた予感ッスよ」
(アインストクノッヘンが出現)
リュウセイ「また出た!?」
タスク「ほら、隊長!  俺が言った通り!」
カチーナ「バッキャロー!  喜んでる場合か!!」
???(アインストクノッヘン)「……」
エクセレン(今度の ホネホネから声は聞こえない……。 気のせいだったのかしら)
ショーン「ふむ……どうやら 我々は足を踏み入れてはならぬ所へ 来てしまったようですね」
レフィーナ「やはり、あそこには アンノウンに関する何かがある……」
ショーン「もっと詳しく調べた方が 良さそうですな」
レフィーナ「ええ。 全艦、引き続き戦闘態勢。 オクト各機はアンノウンの迎撃を」
カチーナ「了解!  全機、フォーメーションを組み直せ!  もう1セット行くぞ!」

〈敵機全滅〉

カチーナ「ようし、 今度こそ打ち止めだろうぜ」
エクセレン「……」
(精神感応)
エクセレン「!」
リュウセイ「つっ! 今のは!?」
レオナ「この感じ……!」
タスク「ま、まだ来るのかよ!?」
カチーナ「来るって、何がだ!?」
(ペルゼイン・リヒカイトが出現)
【デモムービー『ペルゼイン・リヒカイト登場』】
???(アルフィミィ)「…………」
エクセレン「……!!」
ラッセル「さっきまでの アンノウンとは違う……!」
リュウセイ「あ、ああ。 見た目も中身も……」
ラッセル「中身!?」
レオナ「いるわ……中に」
カチーナ「!?  てめえら、何言ってやがんだ!?」
エクセレン「な、何なの、これ……!」
???(アルフィミィ)「……あなた……」
エクセレン「!!」
???(アルフィミィ)「……あなたは……」
エクセレン「誰!? 誰なの!?」
アルフィミィ「私の名はアルフィミィ。 アインスト・アルフミィ……」
エクセレン「アインスト…… アルフィミィ……?」
リュウセイ「アインストって何だ!?」
エクセレン「!  リュウセイ君、今の聞こえたの!?」
リュウセイ「聞こえるも何も、こっちの 回線に割り込んできてるぜ!」
エクセレン「え?  じゃ、普通に喋ってるってこと?」
ラッセル「今のは女性の声だった…… あの中には人間が乗ってるんでしょうか?」
アルフィミィ「……」
カチーナ「ゴチャゴチャ 言ってる場合じゃねえ! 来るぞ!」

〈vs アルフィミィ〉

[エクセレン]

アルフィミィ「……」
エクセレン「答えてもらうわよ!  あなたは何者?」
アルフィミィ「来るべき刻が……近い……」
エクセレン「私にもわかるように 言ってもらえる? 声からすると…… 可愛いお嬢ちゃんなのかしら?」
アルフィミィ「お嬢……ちゃん?  違いますの……私は……あなた」
エクセレン「!?」
アルフィミィ「あなたが…… もっと完全なら……私も……」
エクセレン「はい、ストーップ!  順序よく話してくれない?  私にもわかるように」
アルフィミィ「…………」
エクセレン(なんか…… 初めて会った気がしない。 この子は……誰なの?)

[リュウセイ]

アルフィミィ「……この力……」
アルフィミィ「もう一つの…… 歪ませる……」
リュウセイ「!?  何言ってやがんだ!?」

[タスク]

タスク「ヘヘッ、 俺の勘じゃ中に乗ってんのは 相当の可愛い子ちゃんだな」
アルフィミィ「違う……ルーツ……」
タスク「え? 違うの!?」

[レオナ]

アルフィミィ「……与えた…… はずのない……」
レオナ「!  いったい、何を……!?」

〈ペルゼイン・リヒカイトのHP50%以下 or 4 NEXT PP〉

アルフィミィ(……キョウ……スケ……)
エクセレン「!!」
アルフィミィ(彼に…… 会いに行きますの……)
エクセレン「な、何で あなたがキョウスケのことを!?」
アルフィミィ(私にないもの…… 私が……私であるために……)
エクセレン「! 待って!!」
(ペルゼイン・リヒカイトが撤退)
エクセレン「……」
カチーナ「逃げやがったか!  追うぞ!!」
レオナ「あの速度では無理です、隊長。 レーダーからも消えました」
カチーナ「チッ……!」
レフィーナ「ユン、 アンノウンの反応は?」
ユン「ありません。 重力異常反応も消えました」
レフィーナ「そうですか……」
リュウセイ「何だったんだ、あいつ……」
レオナ「アルフィミィと名乗っていたわね。 アインストは…… アンノウンの名前かしら?」
エクセレン「…………」
レオナ「大丈夫ですか、少尉?」
エクセレン「え? ええ……」
エクセレン(あの子…… 確かにキョウスケって言った……)
エクセレン(何なの?  あの人と何か関係があるの……?)

[ヒリュウ改 ブリーフィングルーム]

ラッセル「……調査の結果、 ストーンサークルを形成していた 岩石に異常はなかったそうです」
カチーナ「バカ言うな。 あんな化け物共が出てきて、何もねえってのか?」
ラッセル「はい。 あの後、重力異常反応が消え…… ストーンサークルは四散したそうです」
ラッセル「おそらく あの岩石は何らかの力によって あそこへ運ばれただけかと……」
カチーナ「なら、その力ってのは何なんだよ?」
ラッセル「そ、それは……」
リュウセイ「もしかして、 蚩尤塚の時と同じで……空間転移って奴?」
ラッセル「今の所はそう予測されています。 でも、もっと問題なのは……」
リュウセイ「あのアインスト・アルフィミィって奴か。 あいつ、人間なのか?」
エクセレン「…………」
レオナ「私達の言葉を 使っていたことから判断すると…… その可能性は無きにしも非ずね」
カチーナ「他の奴が骨に植物だぜ?  声だけ女の化け物じゃねえか?」
エクセレン「う~ん…… 中身はともかく、見た目は 人間の女の子じゃないかしら」
カチーナ「何だおめえ、見たのかよ?」
エクセレン「え?」
リュウセイ「そう言や、少尉…… 戦闘中にあいつと何か喋ってなかった?」
エクセレン「や、やあねえ、 気のせいじゃない?」
レオナ「……」
エクセレン(ネタがネタだけに、 まだうかつなことは言えないものねえ…)
エクセレン(けど、キョウスケには 話しといた方がいいかも)
エクセレン「それよか、リュウセイ君達こそ 何かわからなかったの?」
リュウセイ「そうだな、あの赤いのが出てくる前に 頭がズキンときて……」
レオナ「その後、何者かの 意思のようなものを感じました」
エクセレン「意思……『念』ってやつ?」
レオナ「ですが、 それ以上のことは何も。 話していた内容も意味不明です」
エクセレン「そう……」
エクセレン(リュウセイ君達のような力… 念動力とかの有無は関係ないのかしら?)
リュウセイ「ところで、 何で少尉はあいつが来るってわかったんだ?」
エクセレン「……それが 自分でも不思議なのよねえ。 やっぱ、私ってエスパー?」
カチーナ「おめえはエスパーって言うより、 デンパだろうが」
エクセレン「いやん、これがオチ?」
(扉が開閉する)
タスク「み、みんな! 大変だ!!」
カチーナ「何だ?  また化け物でも出たか?」
タスク「そうそう、 今度は色っぽい姉ちゃんで……」
タスク「って、ちが~う!  アフリカ! アフリカが!」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

カチーナ「な、何だって!?  DC残党に出し抜かれただぁ!?」
レフィーナ「ええ。 連邦軍のキルモール作戦開始前に 彼らが打って出たのです」
カチーナ「しょっぱなで カウンター食らっちまったのか。 ……で、戦況は?」
ユン「DC残党軍はニジェール地区の 自治政府を管轄下に置き……」
ユン「現在はアルジェリア南端へ 進出中だそうです」
ラッセル「も、もうそんな所まで……」
レオナ「敵の目的は アルジェリア北部の制圧でしょうか?」
ショーン「おそらく。 あの周辺の自治区は旧西暦時代の 植民地政策の歴史の反動で……」
ショーン「連邦政府樹立後も民族独立 運動や部族抗争で内戦が続き、 連邦の干渉が上手くいっていません」
ショーン「DC残党はそれを利用し、 地勢を見方につけたのかも知れませんな」
ラッセル「しかし、反連邦勢力とは 言え、主義主張は違うでしょうし、 そう簡単にいくものでは……」
ショーン「おそらく、DC残党には そちらの世界に顔の効く人間がいるんでしょう」
ショーン「最終的に彼らはあの辺りの 反連邦主義者をまとめあげ、地歩を 固めてヨーロッパへ侵攻し……」
ショーン「連邦大統領府があるパリを 制圧する気なのかも知れません」
ラッセル「それじゃ、 DC戦争の二の舞ですよ……」
レオナ「……」
エクセレン「……ね、エチオピア方面は?」
エクセレン「あっちには キルモール作戦で連邦の戦力が 集められてたはずでしょ」
ユン「現在、DC残党と交戦中ですが、 戦況は芳しくないようです」
リュウセイ「芳しくないって…… エチオピア方面にゃ、ハガネとかも 行ってんだぜ?」
ユン「詳しい状況は不明ですが、 現場の指揮系統は混乱しているようです」
カチーナ「フン。土ン中のモグラにしちゃ、 随分な力と勢いがあるじゃねえか」
カチーナ「てっきりこっちが攻めで、 向こうが守り一辺倒になるモンだと思ってたぜ」
エクセレン「う~ん……。 確かに、残党さんの割には色々と 潤ってるみたいだったけど……」
エクセレン「『モグラ叩き』ならぬ 『モグラ叩かれ』ってのはねえ」
カチーナ「……レオナ、おめえはどう思う?」
レオナ「かつてのDCは、必要数の アーマードモジュールの生産時間を 最初から戦略に組み込んでいました」
レオナ「しかし、残党軍が 前大戦から今の戦力を揃えるまでの 時間が短すぎると思います」
タスク「アースクレイドルで 色々作り置きしてたんじゃないの?」
レオナ「それもあると思うけど、 彼らに資金と兵器を提供している者が いると考えた方がいいわ」
ショーン「おっしゃる通りですな。 でなければ、今回のような規模の 軍事行動には出られませんよ」
タスク「じゃ、DC残党のスポンサーは誰なんスか?」
ショーン「色々あると思いますが、 大手はイスルギ重工でしょう」
ショーン「それに、新社長の ミツコ・イスルギ氏は可愛い顔をして やり手だとも聞いておりますから」
タスク「可愛い?  それ、本当ッスか?」
ショーン「はい。亡くなられた前社長の レンジ氏と血がつながっているとは 思えないぐらいに」
タスク「へ~っ。 副長、写真とかは……」
レオナ「タスク?」
タスク「それで、副長。 イスルギ重工の暗躍とはいったい?」
ショーン「そのようなことを 聞かれた覚えはありませんが…… ま、いいでしょう」
ショーン「元々リオンシリーズは DCで使っていた機動兵器ですし……」
ショーン「現在はわが軍の主力機として ライセンス生産もされています」
ショーン「ですから、 出所に関してもイスルギ重工は ある程度シラを切れるでしょうね」
ショーン「そして、 その後は政治家と戦争商人の 裏取引でうやむやに……」
エクセレン「けど、DC戦争と違って 今回はこっちにもリオンシリーズが たくさんあるし……」
エクセレン「戦いが長引いたら、 向こうの方が不利になると思うけど」
ショーン「おそらく、何らかの切り札を 用意しているのでしょうな」
リュウセイ(もしかして、 あの緑色の人型機動兵器か?  それとも……)
レフィーナ「……いずれにせよ、 状況は大きく動き始めたようですね」
ショーン「ええ。 地上は地上で、宇宙は宇宙で……」
エクセレン(これじゃ、キョウスケにあの子のことを 聞く余裕なんてなさそうね…)
ショーン「ともかく、 我々は我々の任務を果たしましょう」
レフィーナ「ええ。 では、これより本艦は月のマオ社へ向かいます」


back index next