back index next


疑惑の宇宙 ~ 第16話 ~

《アラビア海(移動中・ハガネ)》

[食堂]

リュウセイ「アラド・バランガと話を?  俺とブリットで?」
カイ「そうだ」
ブリット「話をして……どうするんですか?」
カイ「彼の意志を確認して欲しい。 お前達は歳も近いからな。本音を聞きだせるだろう」
リュウセイ「何でそんなことを……」
カイ「これから彼が歩むことになる道を、 彼の意志で選ばせてやりたいのだ」
ラミア(何……?)
ブリット「でも、彼は捕虜です。 そんなことが出来るんですか?」
カイ「無論、すぐに釈放というわけにはいかん。 だが、彼の意志次第では何とかしてやれるかも知れん」
リュウセイ「何とかって……あいつ、DCの兵士ですよ」
カイ「例えば……彼の同意のもと、 俺達の部隊に戦力として組み込めば、 長期拘留は免れられる」
リュウセイ「リョウトやレオナみたいに……って ことですか」
カイ「ああ。 もっとも、戦いを強要する真似はしたくないがな」
ブリット「……同感です」
リュウセイ(そうだよな……。 そういうの、前の戦いで何回も見たもんな)
ライ「しかし、彼はスクールの出身者です。 精神や記憶の操作によって、DCへの忠誠心が 過度に植え付けられている可能性があります」
エクセレン「ん~、見た目からはそう思えないけど」
ライ「だからこそ、気になる。 表面上をああいう風に装ったスパイかも知れん」
エクセレン「それはないんじゃない?」
ラミア「私も同感でございますのです」
ライ「根拠は?」
ラミア「スパイにしては、 後先を考えちゃっていませんのですからです」
ライ「俺達を油断させる手なのかも知れん」
ラミア「……彼が脱出、もしくは投降によって ここに来たのならばな。 ……あ、ならばなのですよ」
ライ「………」
ラミア「確実に相手の懐に入ったりなんか しなきゃならないスパイが、あのような死亡確率の高い 方法をとるわきゃないのでございましょう」
リュウセイ「そうだよなぁ。 こっちへ潜り込む前に死んじまったら、 意味ねえもんな」
ラミア「それに、 彼から敵の情報を得るとしても……」
ラミア「こちら側に引き入れてからの方が、 より多くのことがわかったりなんかしたり するんじゃありませんのことですわ」
ライ「………」
ラミア(決まらんな。 それに、あの兵士のことを弁護する必要もない……。 思考系までおかしくなってきたか?)
カイ「ライ、お前の懸念はわかる。 だが、俺はラトゥーニのこともあって 奴を放っておけなくてな」
ライ「同情……ですか?」
カイ「それもあるが、 俺はスクールの出身者であるアラドを 人間として扱ってやりたい」
カイ「かつてのジャーダやガーネットが、 ラトゥーニに対してそうしたようにな」
ライ「………」
エクセレン「真面目な話、ラミアちゃんが言う通り、 あの子がスパイって線はないんじゃない?  結構おマヌ~だもの」
ライ「それは……確かにな」
ラミア「………」
ラミア(……人間として扱う、か)
ラミア(そのような思考は、任務に支障をきたすだけだ。 兵士は戦争の道具に過ぎず、それ以外の意味はない)
ラミア(だが、何故気にかかる?  精神系にトラブルが発生している今…… 影響を受けてしまっているのか?)
カイ「……ともかく、詳細な検査はこれからだが、 アラド・バランガは強力な精神操作の類を 受けているわけではなさそうだ」
カイ「ブリット、リュウセイ。 彼と話をし、意志を確認してくれ」
ブリット「はい」
リュウセイ「わかりました」

《L2宙域付近(移動中・ヒリュウ改)》

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ショーン「艦長、 消失事件7号が発生した宙域へ到達しました」
レフィーナ「7号……資料によれば、 ペレグリン級2隻が突如消息を絶った事件ですね」
ショーン「ええ。 救出・調査に向かった艦も行方不明になっています」
レフィーナ「DC残党の仕業なのでしょうか?」
ショーン「報告書を読む限りでは、 戦闘が原因で消息を絶ったわけでは なさそうですが」
レフィーナ「もしかして、 宇宙のバミューダ・トライアングル…… あるいはサルガッソーとか」
ショーン「まあ、そちら方面の話かも知れませんな」
レフィーナ「……前回の件もあります。 第一種戦闘配置命令を出そうと思うのですが、 いかがでしょう」
ショーン「ミイラ取りがミイラになるわけには いきませんからな。賢明なご判断です」
レフィーナ「では、総員第一種戦闘配置。 オクトパス小隊、出撃」
ショーン「はっ」


第16話
疑惑の宇宙

〔戦域:月付近の暗礁宙域〕

(ヒリュウ改が出現)
ユン「オクトパス小隊各機、 発進どうぞ」
カチーナ「よし! 出るぞ、野郎共!」
(量産型ゲシュペンストMk-II×2、ガーリオンが出撃)
カチーナ「ん? ガンドロはどうした?」
レオナ「今、出てくる所です」
(ジガンスクード・ドゥロが出撃)
タスク「こちらオクト3。 遅れてすみません」
カチーナ「おう、調子の方はどうだ?」
タスク「俺もガンドロもバッチグーッス」
カチーナ「よし。 あんまり無茶すんじゃねえぞ」
タスク「………」
カチーナ「どうした?」
タスク「中尉からそんな優しい言葉を 掛けられるなんて……も、もしかして 何とかフラグって奴?」
カチーナ「てめえ!  何だ、その言い草は!? マジで 立てるぞ、ドクロマーク付きでな!」
タスク「す、すんません」
ユン「……各機、配置につきました」
レフィーナ「では、 彼らとフォーメーションDを 組みつつ、原速前進」
ショーン「原速前進、よーそろ」
レフィーナ「副長、 調査用無人ポッドを射出して下さい」
ショーン「了解です」
(アラート)
ユン「0時方向、 レンジU4に熱源反応多数!  本艦へ急速接近中!」
レフィーナ「もしや、 行方不明の友軍部隊ですか?」
ユン「違います!  識別は……『アーチン』です」
レフィーナ「えっ……!?」
(ガロイカが多数出現)
カチーナ「何だ、ありゃ!?」
タスク「んん?  どっかで見たことあるような、 ないような……」
ラッセル「あれですよ!  ほら、DC戦争前に南極で 遭遇した……!」
タスク「あっ! あいつか!」
カチーナ「アーチンだか、提灯だか 知らねぇが! あたしは覚えてねえぞ、 そんなもん!」
ショーン「これはまた、 レア物が出てきましたな」
レフィーナ「ええ。 確か、アーチンはあれ以来確認されて いないとか」
ショーン「一説には エアロゲイターの機動兵器ではないとも 言われておりますからな……」
レフィーナ「………」
ショーン「何にせよ、 あれは消失事件と関係があるかも 知れません」
レフィーナ「そう……ですね」
ユン「目標群、 戦闘態勢に入りました!」
レフィーナ「では、オクト各機に アーチンを迎撃させて下さい」
ショーン「了解です」
ユン「ドラゴン2よりオクト各機へ!  アーチンを迎撃して下さい!」
カチーナ「よっしゃ!  そうこなくっちゃな!!」
レフィーナ「ただし、アーチンは 全機撃墜せず、1機捕獲して下さい。 後で調べたいので」
カチーナ「オクト1、了解!  行くぞ、野郎共!!」
(作戦目的表示)

〈HP5%以下のガロイカ1機のみにした〉

カチーナ「よ~し……あのウニ野郎、 動けなくなったようだな」
カチーナ「タスク!  ガンドロであいつを捕まえろ!」
タスク「合点承知!」
(ジガンスクード・ドゥロがガロイカに隣接し取り込む)
タスク「これでいっちょ上がり、と!」
レフィーナ「オクト各機は いったん帰還して下さい。それから、 無人調査ポッドを……」
ユン「待って下さい!  まだ本艦へ接近してくる物体群が!」
(量産型ヒュッケバインMk-IIなど出現)
ラッセル「あれは…… ランゼンに量産型のMk-II?」
カチーナ「もしかして、 行方不明になった連中か?」
ラッセル「い、いえ! あの中には アーチンが混じってます!」
カチーナ「何!?」
(ガロイカを指す)
カチーナ「マジかよ!  どういうことなんだ!?」
ラッセル「もしかして、 敵はエアロゲイターなのでは……!?」
カチーナ「何ィ!?」
ラッセル「彼らは こちら側の機体を自軍の戦力として 使っていたことがありましたから」
タスク「う~ん……あいつらが 復活してんなら、ホワイトスターの 駐留艦隊に何か起きてるはずだぜ」
ラッセル「そ、そうか……」
ユン「目標群、 攻撃態勢に入りました!」
カチーナ「おもしれえ、 相手になってやる!!」
レオナ「これは…… こちら側を混乱させるつもりか、 偶然ああなっただけなのか……」
ラッセル「え?」
カチーナ「偶然だぁ?」
レオナ「前と同じか、違うか……。 可能性は……五分五分ね」
タスク「あ、な~る。 そういうことなら、 俺は違う方に賭けるぜ?」
レオナ「あら、同意見ね。 それでは賭けにならなくてよ」
カチーナ「こぉら!  なにコソコソ話してやがんだ!  わかるように説明しろ、説明を!」
タスク「……ならさ、 俺が同じ方に賭けるから……」
タスク「負けた方が勝った方を デートに誘うってことでどお?」
レオナ「お断りよ。 もちろん、その逆もね」
タスク「そうッスか。つれないの」
ラッセル「……聞いてませんね、 二人共」
カチーナ「いい度胸だ! 後で タスクの野郎を折り曲げてやる!」
タスク「ゲ! な、何で俺だけ!?」
レフィーナ「……ユン、 識別は終了しましたか?」
ユン「はい。 ランゼンとMk-IIは行方不明になった L2宙域軍所属のものです」
レフィーナ「パイロットとの交信は?」
ユン「つながりません。先方が通信機を オフにしているようです」
レフィーナ「……」
ショーン「さて、どうします?」
レフィーナ「調査のためにも、ここで 引き下がるわけにはいきません。 迎撃します。ただし……」
ショーン「機体を回収……ですな?」
レフィーナ「ええ。出来れば、 量産型ヒュッケバインMk-IIを」
ショーン「……ということです。 オクト各機へ……少々面倒ですが、 よろしくお願いしますよ」
カチーナ「何!?  最新型のパーソナルトルーパーと 戦って捕獲しろだあ!?」
ショーン「ええ」
カチーナ「面白いじゃねえか!」
ショーン(そう言うと思いました)
カチーナ「オクト1より各機へ!  さっきと同じ要領でMk-IIを とっつかまえるぞ!!」
ラッセル「最後に1機だけ残して 動けなくする……ですね?」
カチーナ「そうだ! 行くぜ!!」
(作戦目的表示)

〈HP10%以下の量産型ヒュッケバインMk-II1機のみにした〉

(ジガンスクード・ドゥロが移動し捕獲)
ユン「目標の捕捉に成功しました」
レフィーナ「わかりました。 本艦は現状維持。周辺宙域の警戒を 続行して下さい」
ユン「了解です」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ショーン「艦長、 捕獲したアーチンと量産型Mk-IIの 調査結果が出ました」
レフィーナ「どうでした?」
ショーン「アーチンはともかく、 Mk-IIの方は本物でした」
ショーン「そして、あれらを操っていたのは エアロゲイターではありません」
レフィーナ「やはり……」
タスク「やれやれ、思った通りだぜ」
カチーナ「おい、どういうことだ?」
ショーン「今回の物は中身が違ったのですよ」
カチーナ「中身ィ?」
ショーン「アーチンの方はともかく、 Mk-IIの中に乗っていたのは 人間ではありませんでした」
ラッセル「AIの類ですか?」
ショーン「似て非なる物です」
カチーナ「じれってぇな。早く教えてくれよ、副長」
ショーン「Mk-IIに乗っていたのは、 バイオロイド……一種の人造人間ですな」
カチーナ「人造人間だぁ?」
タスク「それって、犬と一緒の……」
ショーン「濁点は不要です。 ちなみに、スイッチを押す方でもありませんぞ」
タスク「さ、先に言われちゃったぁ~ん」
ユン「あの……話を進めて下さい」
ショーン「コホン。 あれは、人の姿をした制御装置と言った方が いいかも知れません」
ショーン「人格や自我を持たず、 訓練や経験が不要で命令に忠実…… 『部品』としての替えも効く」
レオナ「機動兵器のパイロットとしては、理想的ですね」
ショーン「ただし、 それを作る技術と大量生産の手段が あればの話ですが」
レフィーナ「……副長の考えは?」
ショーン「かつてDCで、同じような研究が 進められていたと聞きますが……」
ショーン「あのバイオロイドはどうでしょうね」
カチーナ「どうって……どうなんだよ?  あいつらは、DC残党やエアロゲイター じゃねえっていうのか?」
レオナ「……」
ショーン「その答えを出すには、 もう少し調査を進めませんと」
レフィーナ「ええ……」
ショーン「いずれにせよ、今回の件は すぐに上へ報告した方がよろしいでしょうな」
レフィーナ「……そうですね」

《アラビア海(移動中・ハガネ)》

[艦内 個室]

ブリット「……」
リュウセイ「……」
アラド「んんめぇぇぇ~!  やっぱ、強い部隊ってのはメシも違うな。 ラト、おかわりしていいか?」
ラトゥーニ「ええ……」
アラド「じゃ、ライス超盛りで!」
リュウセイ「超かよ!?」
ブリット「ラトゥーニ、これは?」
ラトゥーニ「アラドは 昔からたくさん食べるの……。 最低でも三人分は……」
リュウセイ「さ、三人分だあ?」
アラド「やっぱ、身体が資本ッスから。 それに、パイロットは食える内に 食っておけ……」
アラド「あのエルザム・V・ブランシュタイン少佐が そう言ってたって聞きます」
ブリット「ほ、本当なのか?」
リュウセイ「さ、さあ。 食い物ネタだけにあり得るかも知れねえけど」
アラド「ラト、早くおかわりおかわり!」
ラトゥーニ「うん……待ってて」
(扉が開閉する・ラトゥーニが立ち去る)
リュウセイ「やれやれ、捕虜になって 逃げ出す算段でもしてるかと思いきや……」
ブリット「……アラド・バランガ曹長、 歳はいくつなんだい?」
アラド「多分、15ぐらいだと思います」
リュウセイ「ぐらいって…… お前、自分の歳を知らねえのかよ?」
アラド「ええ…… おれ、スクールに入る前のことを 覚えてないんです」
ブリット「何だって……?」
リュウセイ「それって、 過去の記憶がないってことか……?」
アラド「まあ、そうッスけど…… 今はそんなに気にしてません」
アラド「スクールなんかに入れられたぐらいだから、 どうせロクな過去じゃないんだろうし」
ブリット「じゃあ… 君は何のために戦っているんだ?」
アラド「……生きてくためです。 おれ、他に出来ることはないし……」
リュウセイ(スクールで そう仕込まれたってのか……?)
アラド「それに…… DCの再建とか、ビアン総帥の仇討ちとか、 正直そんなのどうでもいいし……」
ブリット「そうか……」
アラド「ところで、あの…… おれ、これからどうなるんですか?」
ブリット「それは自分で考えて決めるんだ」
アラド「自分で考えてって……?」
ブリット「もし、君がDCの再建に拘らず、 戦いを止めると言うのなら、これからの処遇を 考慮する」
ブリット「もっとも、 しばらくはここへ拘留されることになるし…… 原隊復帰は出来ないけどね」
アラド「………」
リュウセイ「お前の考えと態度次第じゃ、 いつまでもこんな所へ閉じこめられずに 済むってこった」
アラド「で、でも、おれ……敵側の人間なんスよ!?」
ブリット「君が骨の髄までそうなら、 然るべき処置が取られる」
ブリット「そうでないのなら、 君を戦いから解放してやることも出来る」
アラド「解放って……」
リュウセイ「とにかくさ、ゆっくり考えてみろよ。 これからどうするかってことを。俺やブリットで 相談に乗ってやってもいいからさ」
アラド「……」
アラド(この艦に乗ってた方が ゼオラと遭遇しやすいけど……)
アラド(どういうつもりなんだ、いったい?)

[連邦政府・大統領府 執務室]

レイカー「……以上が ヒリュウ改からの報告内容であります、 ミッドクリッド大統領」
ブライアン「すまないね、レイカー少将。 職務に戻ってくれたまえ」
レイカー「それでは」
(通信)
グライエン「……総合参謀本部を 通さぬコンタクトは感心せんな」
ブライアン「彼とはL5戦役からの縁でね。 信頼できる男だよ」
グライエン「そういう問題ではない。 組織の縦のつながりというものを もう少し意識してもらわねば困る」
グライエン「その上、民間人の前で機密事項の話など…… 言語道断だ」
ミツコ「委員長、どうかご心配なく。 秘密は守りますわ」
ブライアン「そうしてもらえると助かるよ、 美しい社長さん」
ブライアン「でないと、 僕はそこにいる政界の『ウィザード』に 呪いをかけられてしまうからね」
グライエン(ふん…… コロニーの成り上がりめが)
ブライアン「……さて、 ああいう事態が発生した以上、 ミツコ・イスルギ君の査問は中断だ」
ブライアン「DC残党に対する軍事物資の横流しの件は、 次の機会に回すとして……」
ブライアン「ここにいる面々の意見を聞きたいな」
グライエン「DC残党の仕業とは思えん。 ……『ケースE』だな」
ニブハル「私もそう考えます」
ブライアン「その根拠は何かな?  ニブハル・ムブハル特別補佐官」
ニブハル「ヒリュウが接触したというアーチンです。 今になって姿を現したという点が気になります」
ブライアン「……ミツコ君、君は?」
ミツコ「先程もご説明した通り、 イスルギ社のアーマードモジュールは ライセンス生産されております」
ミツコ「故に戦後の混乱した状況で、 製品の先行きを全て把握することは到底不可能……」
ミツコ「この件に関しましても、 弊社の与り知らぬことでございますわ」
ブライアン「ふむ……」
ミツコ「大統領閣下。 私共より、マオ・インダストリー社を 疑われた方がよろしいのでは?」
ミツコ「主力機として導入されたばかりの機体が、 謎の組織に使われるなど由々しき事態でございますし」
ブライアン「確かにね。 だが、君の会社は限りなく黒に近いグレーだ」
ミツコ「あら、 DCと密接に結びついていた前社長とは違い……」
ミツコ「私は、アーマードモジュールの量産や イージス計画への参画など、連邦軍へ多大な協力を しておりますのに」
ブライアン「……」
グライエン「ブライアン、もはや一刻の猶予もない」
グライエン「中国地区に現れたという アンノウンの件も踏まえて、直ちにケースEの承認を」
ブライアン「僕としてはもう少し情報を……」
グライエン「カール・シュトレーゼマンと 同じ過ちを犯すつもりか?」
ブライアン「……」
グライエン「彼らは、交渉が通じる相手ではない。 我々地球人類の敵なのだ」
ブライアン「僕は、 出来る限り彼らとの戦争を回避したい。 時間を稼ぐ意味でもね」
グライエン「もう遅い。何のために彼らの存在を 世に公表したと思っているのだ?」
ブライアン「あなたも知っての通り、 東京宣言は僕の本意じゃなかった」
グライエン「世迷い言を……。 L5戦役のような奇跡は二度も起きん」
グライエン「そして、新たな戦争は 既に始まっている。もはや民主主義が 通用する時代ではないのだ」
グライエン「だからこそ、私は……」
ブライアン「委員長、 この議論はまたの機会にしよう」
グライエン「ならば、決断を」
ブライアン「わかったよ……。 ケースEを承認する」
ブライアン「ムブハル補佐官、 連邦軍を通じて、コロニーや月…… そして、ホワイトスターの警戒態勢強化を」
ニブハル「承知致しました」
ブライアン「それから、 彼らとの接触手段を検討してくれ」
ニブハル「……」
グライエン「ブライアン……!」
ブライアン「あなたの傀儡とは言え、 やれることはやっておきたいんでね」
グライエン「徒労に終わるのは目に見えているぞ?」
ブライアン「それでも、だ。 東京宣言の時のような議会工作は遠慮してもらうよ」
グライエン「フン……好きにするがいい」
ミツコ「……」
ミツコ(うふふ……また大きなビジネスチャンスが 訪れることになりそうですわね)
ニブハル「……」
ニブハル(さて……いよいよですね)

[地球連邦軍伊豆基地 SRX計画ラボ]

科学者「……オブジェクトの固定、終了しました」
ケンゾウ「TP反応は?」
科学者「レベル2のままです。 表面材質にも変化はありません」
ケンゾウ「第6層の内部スキャンは、不可能なままか?」
科学者「はい」
ケンゾウ「ヴィレッタ大尉、どう思う?」
ヴィレッタ「破損が激しいが、間違いなく あれはホワイトデスクロスのコア……」
アヤ「え……!?」
ヴィレッタ「他の破片から 検出されなかったTP反応が、何よりの証拠よ」
アヤ「じゃ、じゃあ、あの中には!?」
ヴィレッタ「……修復率のこともある。 それは開けてみなければわからないわ」
ケンゾウ「よし……切開作業を開始しろ」
アヤ「お、お父様……!」
ケンゾウ「アヤ……真実はあの中にある。 そして、我々はそれを確かめなければならない」
アヤ「……わ、わかりました」
ケンゾウ「では、作業を開始しろ」
科学者「はっ」
(チェーンソーの動作と爆発、非金属が崩れる)
ヴィレッタ「!!」
アヤ「あ、あれは!!」

『A-アダプター』を入手した。
『ブースター』を入手した。

『修理装置』を入手した。
『補給装置』を入手した。


back index next