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誰がための盾 ~ 第15話 ~

《テスラ・ライヒ研究所》

[テスラ・ライヒ研究所 管制室]

フィリオ「……先生、僕にご用とは?」
リシュウ「うむ。 折り入っておぬしに聞きたいことがあっての。 この映像を見てくれ」
(モニターオン)
フィリオ「これは……ガーリオンタイプ。 各部をかなりいじっていますね」
リシュウ「先日、ブリット……ワシの弟子が遭遇した 機体じゃ。心当たりがあるかの?」
フィリオ「いえ……。 僕は設計と試作機の開発に携わっただけで、 量産移行型についての詳細は……」
リシュウ「……そうか」
フィリオ「先生、この機体が持っている剣は……」
リシュウ「シシオウブレード。 ワシがここでこしらえたパーソナルトルーパー用の 実剣じゃ」
フィリオ「先生。 このガーリオンに心当たりがあるのは、 先生の方では?」
リシュウ「………」
リシュウ「そうじゃ。この機体に乗っておる男は、 ワシの古い弟子かも知れんでの」
フィリオ「弟子……」
リシュウ「うむ。特殊戦技教導隊への入隊を 勧められた程の腕を持っておった」
リシュウ「じゃが、奴はワシの前から消えた。 一振りのシシオウブレードと共に」
フィリオ「では、その後DCへ……。 しかし、それ程の達人がDCにいたという話は 聞いていませんでしたが」
リシュウ「……ワシは確かめねばならん。 このガーリオンに乗っておる者の正体を」
リシュウ「もし、あの男だとしたら……止めねばならん」
リシュウ「それは、 己の快楽のために剣を振るう彼奴を…… 正しき道へ導けなんだワシの責任なんじゃ」
フィリオ「………」

《インド(移動中・ハガネ)》

[ハガネ 独房]

アラド(トホホ……。 脱出しようにも、ここに閉じこめられたまんまじゃ どうしようもねぇ)
アラド「はぁぁ……腹減ったよぉ。ひもじいよぉ。 メシまだッスかぁ?」

[ハガネ 艦内]

ラトゥーニ「アラド……」
(足音)
カイ「ラトゥーニ、またここにいたのか」
ラトゥーニ「カイ少佐……」
カイ「気になるのか、奴のことが?」
ラトゥーニ「はい……。 あの子はずっとあのままなんでしょうか……?」
カイ「……いずれは捕虜として然るべき所へ 移送されることになるな」
ラトゥーニ「………」
カイ「何とかしてやりたいと思うか?」
ラトゥーニ「……はい。 アラドは昔の私と同じ……自分の本当の意志とは 関係なく戦いを強要されて……」
ラトゥーニ「それが当たり前だと思い込んで……」
カイ「……そうか」
ラトゥーニ「でも、私はジャーダやガーネット…… リュウセイ達と出会えて変わることが出来た……。 だから、あの子も……」
カイ「………」
カイ(艦長に掛け合ってみるか……)

[ハガネ データ解析室]

リュウセイ「……なるほど。 パターン20から35までは無敵剣で使えるな。 でも、いいのか? ブリット」
ブリット「リシュウ先生から教えてもらった剣技を基に 作ったモーションデータなんだけど……ヒュッケじゃ 今ひとつ使い所がなくてね」
リュウセイ「確かに……グルンガストならともかくな。 じゃあ、こいつに俺が作ったデータを 組み合わせて、と」
(電子音)
リュウセイ「よし、出来た。 ライ、どう思う?」
ライ「……30から33までは不要だな」
リュウセイ「それ、俺が入れたデータなんだけど」
ライ「なくても別に困らん」
リュウセイ「う~ん、そこは気分の問題って言うか……。 やっぱ、SRXもスーパーロボットなんだから、 零式みたいにババーンと見得を切りてえんだ」
ライ「見得だけでなく、己の身も切るつもりか?」
リュウセイ「うっ……。 ショートカットのパターンも作っとくし、 隊長やアヤには俺から話をするからさ。な?」
ライ「駄目だ」
リュウセイ「何だよ。 ハワイに行って、少しは頭が柔らかくなったかと 思いきや、相変わらずだな」
ライ「相変わらずなのは、そちらだ。 無駄は極力省いて然るべき…… 特にお前の技名連呼はな」
リュウセイ「無駄って言うな!  ありゃ、気合だよ、気合! もしくは魂の叫び!」
ライ「手順を確認するためのものなら構わん。 だが、それ以外は……」
リュウセイ「お前さ、無敵剣なんかを使う時に 『トロニウム・エンジン、フルドライブ』とか 言うだけでつまんねぇなぁ……とか思わないの?」
ライ「思わん」
リュウセイ「俺が『天上!』って言った後で、 お前が『天下!』って叫んでくれると、バッチリ 決まるんだけどなぁ」
ライ「断る」
リュウセイ「ちぇっ。 SRXを操縦してんのは俺だし、 ちょっとは協力してくれたっていいじゃん」
ライ「……いいか。よく聞け」
リュウセイ「?」
ライ「お前の操縦や攻撃タイミングに合わせ、 トロニウム・エンジンの出力を調整するのは大変 なんだ。加えてダメージコントロールに電測補助……」
ライ「大尉のメディカルチェック、各種データの取得、 セイフティの管理、サーボモーターのチェック、 冷却剤の供給、パージしたパーツの位置捕捉……」
ライ「SRX合体中にやることは山ほどある。 その上、必殺技の名前を一緒に叫べと?」
リュウセイ「わ、わかったわかった。 俺が悪かった。謝るよ。30から32までは カットしとくからさ」
ライ「……33もだ」
リュウセイ「うっ……わかりました」
ライ「……残りは採用していい」
リュウセイ「ホ、ホントか!?」
ライ「ああ。後で妙なアレンジをするなよ」
リュウセイ「おう!  ……つーわけで、ブリット。 モーションデータを提供してくれてありがとよ」
ブリット「いや……」
リュウセイ「ん? どうした?」
ブリット「ああ…… アラド・バランガのことが気になってな」
リュウセイ「……お前もラトゥーニと同じか」
ブリット「リュウセイはどうなんだ?」
リュウセイ「気になるさ。 歳は俺達より若いみてえだし……スクールの出身だし」
ライ「俺はそう見えん所が かえって気になるが……」
リュウセイ「それを言うなら、 アーマードモジュールのパイロットにだって見えねえ」
ブリット「ああ。 あんな子供がDC残党にいるなんて……」
ライ「古今東西、少年兵はそう珍しい存在じゃない」
ブリット「でも、彼は……」
リュウセイ「う~ん…… 敵って感じはしないな、不思議と」
ライ「勘か?」
リュウセイ「それもある。 でも、あいつ……捕虜になって 良かったんじゃねえかな」
ブリット「どうしてそう思うんだ?」
リュウセイ「だって、DC残党にいたら ずっと戦わされ続けるんだぜ。もしかしたら、 自分の意志とは関係なく……」
ブリット「……そうだな。 俺達と違って、彼は自ら望んで兵士に なったわけじゃないかも知れない……」
ブリット「今回のことが彼にとって良い転機になれば いいんだが……」
ライ「………」

[ハガネ 艦長室]

ダイテツ「……なるほど、 少佐の言いたいことはわかった」
カイ「責任は自分が取ります。いかがでしょう?」
ダイテツ「ラトゥーニ・スゥボータや リョウト・ヒカワという前例もある……。 前向きに検討してみよう」
カイ「ありがとうございます」
ダイテツ「ただし、 結論を出すのは彼の検査の結果が出てからだ」
カイ「了解です」
ダイテツ「しかし…… 鬼隊長と恐れられた君らしからぬ申し出だな」
カイ「それは……自分の娘と同い年ぐらいの部下に 接することが多くなったからかも知れません」
カイ「事情が事情ですし…… ただ処分するだけでなく、道をつけてやりたいのです。 まだ彼は……やり直せる歳でしょうから」
ダイテツ「……そうか」
カイ「では、自分はこれで」
ダイテツ「待て。 少佐の耳に入れておきたいことがある」
カイ「何でしょう?」
ダイテツ「先程、レイカーから連絡があってな。 L2宙域で不可解な事件が起きているらしい」
カイ「不可解……と言いますと?」
ダイテツ「L2宙域に駐留している部隊が 相次いで行方不明になっているそうだ」
カイ「……!」
ダイテツ「詳細は調査中だが、 何者かと交戦した後、消息を経った部隊や…… 戦艦ごと反応が消えてしまった部隊もいる」
カイ「もしや、DC残党の仕業ですか?」
ダイテツ「その可能性もあるが、 事件の発生場所など色々と腑に落ちぬ点が多い」
カイ「では……宇宙が戦場になる可能性もあると?」
ダイテツ「キルモール作戦の結果次第ではな。 とりあえず、現時点ではヒリュウ改が調査のため L2宙域へ向かうことになっている」
カイ(ヒリュウ改……。 アステロイドベルトから戻ってきているのか……)

《L2宙域付近(移動中・ヒリュウ改)》

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ショーン「宙間座標、太陽、月、星座確認」
ユン「……確認終了。現在位置、L-SU8875」
ショーン「艦内各部点検の結果報告を」
ユン「艦首超重力衝撃砲は、 ボルトキャリアー点検中のため使用不可。 それ以外は異常ありません」
ショーン「ふむ…… 私の予測クリア時間より15分早い。 イカロス基地での訓練の成果が出ておるようですな」
ユン「ですが、艦長不在というシチュエーション設定が 冷や汗ものでした」
ショーン「まあ、これから忙しくなりますからな。 艦長には今の内に休んでもらいませんと」
ユン「そうですね……」
ショーン「さて、L2宙域の調査任務開始まで 少々余裕が出来ましたな」
ユン「艦長を起こした方がいいでしょうか?」
ショーン「緊急時なら話は別ですが…… ここは定刻通りのお目覚めを待つことにしましょう」
ユン「はい」
ショーン「それから、念のために偵察ポッドの射出を。 L2宙域から離れているとは言え、 警戒は必要ですからな」
ユン「了解です」

[ヒリュウ改 格納庫]

(溶接)
タスク「ラッセル、 そっちのゲージの数値を読み上げてくれ」
ラッセル「309.18……予定以上の値が出てます」
タスク「よし、 これでグラビコン・システムの調整はチリバツだぜ」
ラッセル「アンカーユニットの方は?  外へ出す準備をしてるみたいですけど」
タスク「ああ。次の作業が終わった後で、 テストをやろうと思っててさ」
ラッセル「そうですか。 ラドム博士のジガンスクード改造プラン…… 実現まであともう少しですね」
タスク「おう。餞別代わりに設計図とパーツを 渡された時はどうなることかと思ったけどよ……」
タスク「みんなが色々手伝ってくれたおかげで、 何とかなったぜ」
ラッセル「でも、一番頑張っていたのは少尉です」
タスク「……毎日の訓練に加えて、イカロス基地周辺の パトロール、機体の整備、炊事の手伝い、 トイレの掃除にレクリエーションの仕切り……」
タスク「その合間を縫って、 ジガンを改造するのは大変だったな~」
ラッセル「え、ええ。 ……後半の方は知りませんでしたが」
(扉が開閉する)
カチーナ「おう。どうだ、タスク?  ジガンのマ改造は?」
タスク「マ、マ改造? 何スか、それ?」
カチーナ「マリオン・ラドム博士の改造プラン…… 略して、マ改造だ」
タスク「ううむ、言い得て妙かも」
カチーナ「で、作業はどうなんだ?  今んとこ、見た目は変わってねえみたいだが」
タスク「ああ、後でシーズシールド・ユニットを シーズアンカーに変えるんスよ」
カチーナ「おう、アレな。 男らしくていい武器じゃねえか。 あたしのゲシュにも付けてみてえぜ」
カチーナ「そしたら、 アルトに負けねえ突撃野郎になるかもな」
タスク「ゲシュに あんなデカいもん付けてブン回したら、 あの世へ突撃ッスよ?」
カチーナ「そんなの、 テスラ・ドライブ次第で何とかなるだろうが。 おめえ、改造プラン出せよ」
タスク「いや~、 ドゥロの作業が終わったら、ズィーガーの方に 着手しようかなあ、って」
カチーナ「ズィーガー?  ああ、そいつもマ改造だっけか」
タスク「ええ。ラドム博士のプランを基に、 このタスク・シングウジの愛を込めつつ、 レオナちゃんのガーリオンを改造するッス」
タスク「言うなれば、二人の愛の結晶……。 そうだ、機体に相合い傘のマークを入れとくか」
(足音)
レオナ「……そんなことをしたら、 ズィーガーリオンで踏み潰すわよ」
タスク「ゲ! レオナ!!」
レオナ「それとも、私の新作の方がよくて?」
タスク「どっちも嫌です。ごめんなさい」
カチーナ「ふっ……レオナ、料理の腕前は相変わらずか」
レオナ「え? ええ……」
カチーナ「やれやれ、従兄弟の『黒い竜巻』は スーパーシェフだってのにな」
タスク「まったくッス。毒味役はキツいッス」
レオナ「毒……?」
タスク「失言でした。重ねてごめんなさい」
カチーナ「ところで、タスク。 改造後のジガンの名前は?」
タスク「ドゥロってのが後ろにつきます。 ジガンスクード・ドゥロ。ラドム博士の命名ッス」
カチーナ「長え。舌噛むぞ。 略してガンドロだ、ガンドロ。語呂もいいだろうが」
タスク「う~ん……ガンドロ、ねえ。 なんか超スッゲー光線を撃ちそうだな」
(アラート)
レオナ「!」
タスク「訓練の続きか!?」
ラッセル「いえ、違います! これは……!!」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ユン「所属不明のアーマードモジュール群、 レンジD4へ侵入! こちら側の警告は依然無視!  本艦へ向かってきます!」
ショーン「対アーマードモジュール戦闘、用意。 オクトパス小隊、出撃」
ユン「了解!」
ショーン「ところで、艦長はまだですか?」
ユン「先程、艦長室へ連絡を入れました。 まもなくブリッジへ上がられると……」
(扉が開閉する)
レフィーナ「お、遅れてすみません!」
ショーン「!?」
ユン「か、艦長! その格好は!?」
レフィーナ「え!? ああっ!」
ユン「!?」
レフィーナ「わ、私、なんて格好を!!」
ユン「気づいてなかったんですか!?」
レフィーナ「む、無我夢中で飛び出してきたので……」
ショーン「ううむ……」
レフィーナ「は……恥ずかしい……」
ユン(そんな、今更……。 しかもヌイグルミまで持ってきて……)
ショーン「まあ、仕方ありませんな。 ちなみに、その子は?」
レフィーナ「え? 寝る時いつも一緒の……」
(アラート)
ユン「そんなことを言ってる場合じゃありません!  アンノウン群がレンジD3へ侵入しました!」
レフィーナ「!  各員は副長が出した命令を続行!  ……副長、状況報告を!」
ショーン「は、はい、只今」
ショーン(……艦長があのようなネグリジェを……。 このショーン・ウェブリーの目を以てしても 見抜けませんでしたな)


第15話
誰がための盾

〔戦域:宇宙空間〕

(ヒリュウ改とオクトパス小隊が出撃)
カチーナ「オクト1より各機へ。 久々の実戦だ、しくじるなよ」
レオナ「オクト4、了解」
カチーナ「タスク、 ホントにジガンでいいのか?  まだ改造が終わってねえんだろ」
タスク「まあ、調整中の所もあるんで ギガ・サークルブラスターなんかは 使えないッスけど……」
タスク「改良した グラビコン・システムの調子を 見たいんで」
カチーナ「ブッ壊して 仕事を増やすんじゃねえぞ」
タスク「そのつもりッス」
ラッセル「カチーナ中尉!  敵機がレンジD2へ侵入します!」
(敵機が出現)
カチーナ「コスモリオンか。あたしらに 向かってくるってことは、DCコロニー統合軍の残党だろうな」
レオナ「こんな辺ぴな所で 仕掛けてくるなんて……」
タスク「俺達、 色々と恨まれてるだろうからなぁ」
レオナ「それだけとは思えないわ」
ラッセル「もしかして、 部隊消失事件と何か関係が あるんでしょうか?」
カチーナ「どのみち、 ここで消えるのはあたしらじゃなく、 あいつらの方だ! 行くぞ!」
タスク「合点承知!」
レフィーナ「………」
ショーン「本艦を攻撃するには、 いささか数が少ないですな」
レフィーナ「ええ。 敵の出方を見ます。本艦は しばらくの間、この位置で固定」
ショーン「了解です」
(作戦目的表示)

〈2PP〉

タスク「あいつら、 どこへ行くんだ!?」
レオナ「私達をヒリュウから 引き離すつもりみたいね」
カチーナ「フン、陽動か。 タスクとレオナはヒリュウを ガードしろ!」
レオナ「了解」
カチーナ「ラッセルは あたしについてこい!  コスモリオンを片付けるぞ!」
ラッセル「了解です!」
(ジガンスクード、ガーリオン・カスタムがヒリュウ改の近くまで移動)

〈3EP〉

(アラート)
ユン「0時方向、レンジU3に 熱源反応多数! アーマード モジュールと思われます!」
レフィーナ「!」
(敵機が出現)
ムラタ「……各機へ。 ガリバルディが離脱するまでの 時間を稼ぐ」
ムラタ「機体を無駄に消耗するな。 各自、頃合いを見て後退しろ」
DC残党兵「はっ!」
ムラタ(ふん…… つまらん仕事だが、斬り甲斐のある 特機がいるだけマシか)
ショーン「今度は妥当な数ですな」
レフィーナ「ですが、DC戦争L5戦役を戦い抜いた本艦に、 数頼みの攻撃は通用しません」
ショーン(ああ、 ヌイグルミの顔が……)
レフィーナ「副長、 こちらから仕掛けます」
ショーン「了解しました。 が、現状は艦首超重力衝撃砲が 使用不可です」
ショーン「そのことを お忘れなきよう」
レフィーナ「わかりました」
ショーン(何というかこう…… 腹話術師みたいですな)
カチーナ「タスク、レオナ!  あたしらがそっちへ戻るまで 保たせろよ!」
タスク「合点!」
(作戦目的表示)

〈レフィーナが攻撃〉

ユン「敵機、突入してきます!」
レフィーナ「各砲座、砲撃始め!」
ユン(……あのヌイグルミ、 士官学校時代にも見たことあるわ。 ずっと持ってたのね)

〈敵機のHP40%以下〉

タスク「何だ!?  あいつ、逃げやがったぞ!」
カチーナ「放っておけ!  残ってる奴らをヒリュウへ 近づけんなよ!」

〈敵4機以下 or 7PP〉

ロレンツォ「……ムラタ、応答せよ」
ムラタ「何だ、中佐?」
ロレンツォ「ガリバルディの離脱が 完了した。直ちに帰還せよ」
ムラタ「………」
ムラタ「残存機は現宙域から離脱しろ」
DC残党兵「はっ!」
(ムラタ機以外が撤退)
ロレンツォ「どうした、ムラタ?  何故、離脱せん?」
ムラタ「ここしばらくの間、 宝探しばかりだったせいで 腕がなまっていてな」
ロレンツォ「これ以上、 戦闘を行う必要はない。それに、 お前に依頼した仕事は……」
ムラタ「……後で合流する。以上だ」
(通信切れる)
ラッセル「1機だけで こちらと戦うつもりなのか……!?」
カチーナ「遠巻きで見物してるだけかと 思ったら、度胸あるじゃねえか。 気に入ったぜ」
ムラタ「さて……しばしの間、 俺の相手をしてもらおう」
ムラタ「まずは、貴様にな!」
(ガーリオン・カスタム“無明”がジガンスクードに隣接、機械音)
タスク「うぐっ! あいつ、速い!」
ムラタ「ふふ、頑丈だな。 斬り甲斐があるわ」
レオナ「タスク、離脱しなさい!  ジガンスクードじゃ、あの速さに 対処しきれないわ!」
タスク「おろ?  俺のこと、心配してくれるの?  嬉しいなぁ」
レオナ「バカ!  そんなことを言っている場合では なくてよ!」
タスク「ヘッ! 親分の斬艦刀なら ともかく、そう簡単にジガンは 斬られやしねえ!」
タスク「レオナこそ下がれ!  あいつの相手は俺がする!」
レオナ「だから、 無理だと言っているでしょう!」
タスク「じ、自分の彼氏を そんなに過小評価しないで くれよな~」
レオナ「だ、誰が彼氏よ!」
タスク「ツッコむ所はそこかよ~」
レオナ「いいから、下がりなさい!  そのジガンスクードは……」
タスク「大丈夫、策はある!  ……一応な」
(作戦目的表示)

〈ジガンスクードのHP30%以下〉

タスク「くっ!  あのサムライ野郎、やりやがるぜ!」
レオナ「タスク!  やはり無理よ! 下がりなさい!」
ムラタ「フッ、邪魔をするか!  ならば、貴様を!」
(ガーリンカスタム・“無明”がガーリオンに隣接)
レオナ「!!」
ムラタ「覚悟!!」
タスク「させるかよ!!」
(ガーリオンにジガンスクードが隣接)
【強制戦闘】
ムラタ[シシオウブレード]vsレオナ[防御](援護防御(タスク))
タスク『レオナに手ェ出すんじゃねえ!』
タスク『き、切り札はまだあるんだ…一応!!』
(ジガンスクードのHP5%・飛ばされる)
タスク「うぐううっ!!」
レオナ「タスク!!」
カチーナ「タスク! 大丈夫か!?」
タスク「な、何とか……!」
ラッセル「で、でも、 シールド・ユニットが!」
レオナ「下がりなさい、タスク!!」
タスク「いや!  ここで退くわけにはいかねえ!」
ムラタ「フフフ……その盾でなければ、 両断されていたところだ」
ムラタ「しかし、もう保つまい。 次で終わりにしてやる」
タスク「ヘッ、 俺が何の考えもなしに飛び出して 来たと思うなよ!」
(通信)
タスク「オクト3よりドラゴン2へ!  例のブツを射出してくれ!」
レフィーナ「例のブツ!?」
タスク「か、艦長、 そのカッコは何スか!?」
レフィーナ「こ、これは…… その……」
タスク「こりゃまた、 意外に大胆つーか、 何つーか……」
ショーン「ああ、まあ、 非常時ですから鑑賞は後で。 ……すぐに例のブツの射出を」
ユン「例のって……まさか!?」
ショーン「そう、 事前に話があったあれです」
ユン「りょ、了解!」
ムラタ「さあ、滅せい!  巨大なる盾よ!」
タスク「そうはいくかってんだ!」
(ジガンスクードがガーリオンカスタム・“無明”に隣接)
ムラタ「馬鹿め!  自ら間合いへ飛び込んでくるとは!」
(ジガンスクードに爆煙)
タスク「ぐうっ!」
ムラタ「勝負と命を捨てたか!」
タスク「捨てるのは別のモンだ!」
(機械音)
ムラタ「むっ!?」
レオナ「シールド・ユニットを……!」
ラッセル「捨てた!?」
ユン「シーズアンカー・ユニットも 射出準備完了!」
ショーン「座標軸合わせ。射出!」
(射出・閃光)
ムラタ「何!? 奴め、腕を!」
タスク「タイミングバッチリ!  大ビンゴの777!!」
ムラタ「チッ、味な真似を!」
タスク「覚悟しやがれ、サムライ野郎!  生まれ変わったジガンの力!  てめえに見せてやるぜぇ!!」
(タスクに『ど根性』『鉄壁』)

〈ジガンスクード・ドゥロの初戦闘〉

タスク「行くぜ!  ジガンスクードド、ド……」
タスク「いてッ! 舌噛んだ!」
タスク「もとい、ガンドロ!  行くぜぇぇぇ!!」

〈2 NEXT PP or ガーリオンカスタム“無明”のHP30%以下〉

ムラタ「これ以上長引けば、 ガリバルディと合流できなくなるか」
ムラタ「……久々に 楽しませてもらった。 縁あらば、また会おう」
(ガーリオン・カスタム“無明”が撤退)
ユン「敵機、撤退しました」
ショーン「引き際がいいのか悪いのか、 よくわからない敵でしたな……」
レフィーナ「………」
カチーナ「よぉ、タスク。 土壇場であんなことをやりやがるたあ 根性あるじゃねえか」
タスク「………」
カチーナ「どうした?」
タスク「いくら準備をしてたとは言え、 今回は色々ヤバかったッス……」
ラッセル「た、確かに。 ぶっつけ本番の連続でしたからね」
タスク「ああ。アンカーユニットが 動かなきゃ、アウトだった……」
タスク「あそこで 運を一気に使っちまったような 気がするぜ」
レオナ「………」
カチーナ「ま、終わりよければ 全て良しだ。帰還するぞ」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ショーン「状況確認終了。 とりあえず、敵が現れる気配はなさそうですな」
レフィーナ「………」
ショーン「しかし、こんな所にまでDCの残党が 現れるとなると……この先は今回のような戦闘が 起きる可能性が高いと思われます」
レフィーナ「……そうですね」
ショーン「しばらくここに止まり、 応急処置を行いましょう。超重力衝撃砲も 使えるようにしませんとな」
レフィーナ「……はい」
ショーン「どうしました?」
レフィーナ「あ、あの…… もう着替えてきていいでしょうか……?」
ショーン「私はそのままでも構いませんが……」
ユン「副長」
ショーン「ゴホン。そうですな。 しばらくの間、ここは私にお任せ下さい」
レフィーナ「……お願いします」
(扉が開閉する・レフィーナが立ち去る)
ユン「………」
ユン「……副長、あの……」
ショーン「いいですよ、行ってきて下さい。 艦長は、割とこういうことをこっそりと 引きずる方ですからな」
ユン「ありがとうございます。すぐ戻ります」

[ヒリュウ改 艦長室]

(扉が開閉する)
レフィーナ「………」
レフィーナ「はぁ。 ダンディライオン2号ちゃん、 私……やってしまいました」
レフィーナ「艦長たるもの、 一番落ち着いていなければならないのに…… あわててこんな格好のまま……」
レフィーナ「私、まだまだね……。 これから重要な任務があると言うのに……」
(ノック)
レフィーナ「はい?」
ユン「ユン・ヒョジンです。 よろしいですか、艦長?」
レフィーナ「き、着替えるまで待って」
ユン「お話があるんです」
レフィーナ「あなたの言いたいことはわかります。 ……間が抜けているにも程がある、でしょう?」
ユン「………」
レフィーナ「責任ある立場の者が、 こんなミスを犯すなんて……私、情けない。 今頃、こんな私のことを頼りないと……」
(扉が開閉する)
ユン「……誰もそんなことを思ってませんよ」
レフィーナ「ユン……」
ユン「状況が状況でしたから、仕方ありません。 それに、艦長はきちんと指揮を執っておられました」
レフィーナ「………」
ユン「皆、艦長のことを信頼しています。 それは、今回のことで揺らぐようなものでは ありませんよ」
レフィーナ「でも、他にも色々と思い当たる節が……」
ユン「それでも、私はあなたを信頼してます。 イカロスの士官学校で同期生だった頃から…… あなたは人一倍頑張っておられました」
レフィーナ「………」
ユン「それに、艦長はもうちょっとドーンと 構えていてもいいと思います。艦長なんですから」
レフィーナ「………」
ユン「だから、気を取り直して 早くブリッジにお戻り下さい」
レフィーナ「……わかりました。 ありがとう、ユン」
ユン「いえ……」
レフィーナ「じゃあ……着替えます」
ユン「ところで、艦長。そのヌイグルミ、 士官学校時代から持っていた物ですよね?」
レフィーナ「え? 変ですか?」
ユン「いえ……そういう所はあなたらしいです」

[ヒリュウ改 格納庫]

レオナ「調整中のジガンスクードで あんな真似をするなんて。無謀にも程があるわ」
タスク「それはわかってるけど……」
レオナ「わかっていないわ、あなたは。 ジガンスクードの意味を」
タスク「意味……巨大な盾ってこと?」
レオナ「違うわ。 あの機体はホープ事件の引き金…… コロニーの住人にとって忌むべき存在」
タスク「そりゃ知ってるよ。 でも、L5戦役じゃ、ジガンは地球やコロニーのために 戦ったんだぜ」
レオナ「そう。 だからこそ、あのジガンスクードは不幸な歴史を 乗り越えた証だったのに……」
レオナ「あなたは、無謀極まりない使い方で あれを……地球とコロニーの未来を守る盾を 大破させる所だったのよ」
タスク「無謀だったってことは認めるさ。 でも、あん時はああするしかなかった」
レオナ「そうかしら」
タスク「そうさ。お前を守るためにな」
レオナ「……!」
タスク「……惚れた女一人守れねえとあっちゃ、 最強の盾の名が泣くだろ」
レオナ「………」
タスク「だから、俺はジガンを改造したんだ。 ラドム博士に言われたからだけじゃねえ……」
タスク「地球とコロニー…… そして、レオナを守れるようにな」
レオナ「……さ、最後は余計よ!」
タスク(本心なんだけどな~)
レオナ「そ、それから……」
タスク「ん?」
レオナ「さっきは私を守ってくれて…………」
レオナ「あ……ありがとう」
タスク「んじゃ、お礼のキッスを!」
レオナ「こ、こんな所で そんなこと出来るわけないでしょう! バカ!」
(速い足音・レオナが走り去る)
タスク「トホホ、いい雰囲気だったのになぁ」
タスク「やっぱ、あそこで運を使い切っちまったか」

《L2宙域付近(移動中・戦艦ガリバルディ)》

[戦艦ガリバルディ ブリッジ]

(扉が開閉する)
ムラタ「………」
ロレンツォ「……戻ったか。 だが、契約違反だぞ、ムラタ」
ムラタ「違約金は払う。解雇するなら、しろ」
ロレンツォ「スカルヘッドが見つかるまで、 お前という戦力は必要だ。しかし、今後は あのような行動は慎んでもらうぞ」
ムラタ「………。 本当にこの宙域にいるのだろうな、あれは」
ロレンツォ「……そのはずだ」
ムラタ「だが、中佐はビアン・ゾルダークから その存在を聞いただけなのだろう?」
ロレンツォ「そうだ。 EOT特別審議会が秘密裏に建造させていたという 宇宙プラント、スカルヘッド……」
ロレンツォ「DCやコロニー統合軍DC戦争時に占拠を試み、捜索したが…… ついぞ発見できなかった」
ムラタ「EOT特別審議会が 絡んでいたという時点で眉唾ものだな。 誰もあれを見たことがないのだろう?」
ロレンツォ「私は、 スカルヘッドの建造に関わったイスルギ重工の 人物を知っている」
ムラタ「その者は見たのか?」
ロレンツォ「ああ。 それに、建造時の資料も残っている」
ロレンツォ「だが、完成したスカルヘッドは この辺りの宙域へ移送され、その位置は秘匿された。 DCやコロニー統合軍に利用されぬように……」
ムラタ「信憑性の低い話だな」
ロレンツォ「だが、『ローズ』によれば、 スカルヘッドは確実に存在しているそうだ」
ムラタ「ふん……何にせよ、そんなあやふやなものに 頼らねばならんとは」
ロレンツォエルピスやムーンクレイドルは、 連邦に抑えられている。また、小規模なプラントでは 我らの新たな本拠地にはなり得ん」
ムラタ「見つからねばどうする?  このガリバルディで宇宙を彷徨う気か?」
ロレンツォ「以前にも言ったはずだ。 我ら全てがアースクレイドルへ導かれるわけには いかぬと」
ロレンツォ「今は雌伏の時……。 バン大佐が行動を起こせば、連邦の目はそちらへ向く」
ロレンツォ「故に我々は可能な限り連邦との戦闘を 避け、スカルヘッドの捜索に専念する」
ムラタ「………」
ロレンツォ「不服か?」
ムラタ「いや、宇宙にも火種はある。 例の消失事件……あれはDCの仕業では ないのだろう?」
ロレンツォ「……ああ」
ムラタ「ふん……。 ならば、それほど退屈せずに済みそうだ」


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