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守るべきもの ~ 第11話 ~

《日本近海(移動中・DC戦艦)》

[DC戦艦 ブリッジ]

DC艦長「少佐、伊豆沖の作戦海域には 11時間後に到着します」
アーチボルド「潮に乗ってるだけあって早いですね。 で、ハガネは?」
DC艦長「本艦隊と同じく、 伊豆方面を目指しています」
アーチボルド「結構。 ちゃんとついてきているようですね」
(扉が開閉する)
エキドナ「……少佐、ランドグリーズの 調整が終了しました」
アーチボルド「わかりました。 で、パイロットはどうするんです?」
エキドナ「現在、ユウキ少尉が選定中です」
アーチボルド「わかりました」
エキドナ「それから、 少佐にお願いしたいことがあります」
アーチボルド「何です?」
エキドナアースクレイドルの方から 極東方面軍伊豆基地の情報を 収集するよう命令が出ました」
アーチボルド「ほう……。 僕はそんな話を聞いていませんが」
エキドナ「私に直接下った命令ですので」
アーチボルド「……」
アーチボルド「ま、いいでしょう。 で、僕達は何をすればいいんです?」

[シミュレータールーム]

ゼオラ「あっ、そうじゃないでしょ!  そこで一時離脱して!」
アラド「横から口をはさむなって!  気が散るだろ!」
ゼオラ「ほら、右から来るわ!  かわして、距離を取って!」
アラド「いや、このまま突っ込む!!」
ゼオラ「それじゃダメよ!」
(銃の発射と爆発)
アラド「くそっ、やられちまった!!」
ユウキ「……そこまでだ、アラド。 シミュレーターから出ろ」
アラド「は、はい……」
(扉が開閉する)
ゼオラ「んもう。 敵機の撃墜数より、自分が落とされた 回数の方が多いなんて……」
アラド「チェッ、シミュレーションと 実戦じゃ違うんだよ」
ゼオラ「なに言ってんの。 そもそも、あなたのランドグリーズの 使い方が間違ってるのよ」
アラド「だって、おれ…… 接近戦の方が好みだし」
アラド「遠くから狙い撃つってのは、 どうも性に合わねえんだよな」
ゼオラ「そういう問題じゃないでしょ!  しかも、勘に頼った接近戦なんて、言語道断よ!」
アラド「なんだ、お前……知らないの?  エースパイロットに必要とされるのは勘の良さ……」
アラド「あのゼンガー・ゾンボルト少佐が そう言ってたんだぜ?」
ゼオラ「ホントなの!?」
アラド「ウソだ」
ゼオラ「あ、あなたねえっ!  本気でビアン総帥の仇を討つ気があるの!?」
アラド「おれ、そういうのヤなんだよ。 なんか他人の怨念に引っ張られてる ような気がしてさ」
ゼオラ「怨念じゃないわ、信念よ」
アラド「屁理屈だよ、それ。 第一さ、おれ達総帥に会ったことすらないんだぜ?」
ゼオラ「あなた、今まで私達が 何のために訓練を受けてきたか、 わかってるの?」
アラドDC再興のためにだろ?  アギラばあさんから耳にタコが 出来るぐらい聞かされたぜ」
ゼオラ「そうよ。私達はDCを再興し、 異星人と戦わなければならない」
ゼオラ「連邦軍なんかに 地球圏の防衛を任せておけないのよ」
アラド「……じゃあ、どうして ラトはあっち側にいるんだ?」
ゼオラ「! そ、それは……」
アラド「何であいつは 乗れなくなったはずのPTに乗って、 戦ってんだ?」
ゼオラ「そ、そう強いられてるのよ!  あの子を利用している連中に!」
アラド「それはむしろ、 おれ達の方じゃないかって思うんだよな……」
ゼオラ「……!」
ゼオラ「あなた、 セトメ博士やセロ博士……それに、 『メイガス・ケーナズ』を疑うの?」
アラド「おれ達にとっちゃ、 恩人のセロ博士はともかく…… アギラばあさんはなあ」
アラド「それにメイガスは ただのコンピューターじゃねえか」
ゼオラ「何を言ってるの。 アギラ・セトメ博士は私達の母親も同然……」
ゼオラ「そして、 メイガス・ケーナズは私達の先生。 間違ったことを言うわけがないわ」
アラド(そうかなあ……。 そこがおかしいような気がするんだよな)
アラド(そして、 ラトはそのことに気づいて……)
ゼオラ「……?」
アラド「……お前、ラトのことは どうするつもりなんだ?」
ゼオラ「あの子は 連邦軍にだまされているのよ。 だから、連れ戻さなきゃ」
アラド「連れ戻す、か。 あいつ、そうして欲しいって思ってんのかなあ」
ゼオラ「そうに決まってるわ。 きっと無理矢理戦わされているのよ」
アラド「おれ達の所へ戻っても、 同じことになるぜ?」
ゼオラ「だから、私達であの子を守るのよ。 戦わなくていいように」
アラド「お、おい、お前…… 言ってること変だぞ?」
ゼオラ「何が変なのよ!  ラトだって、きっと私達と一緒に いたいって思ってるわ!」
アラド「……」
ゼオラ「そして、私達の手で DCを再興させなきゃ!」
アラド「……DCがなくったって、 地球を守る役目は連邦軍がやってくれる。 L5戦役の時みたいにさ」
ゼオラ「馬鹿なこと言わないで!」
ゼオラ「あれはDCやイスルギが 反抗作戦のためにリオンシリーズを 量産していたおかげよ!」
ゼオラ「それを ハガネやヒリュウ改が最後の最後で 自分達の手柄にしたのよ!」
ゼオラ「そんなのが許せる!?」
アラド「でも、あの連中が敵の親玉を 倒したのは事実なんだろ? 結果的に 成功すりゃ、それでいいじゃねえか」
ゼオラ「あ、あなたねえ……!  ハガネやヒリュウ改って言ったって、 所詮は一部戦力に過ぎないのよ!」
ゼオラ「そんなのが、 地球圏全体を守るなんて無理だわ!」
ゼオラ「今度何かあったら、 本当に人類は滅亡しちゃうわよ!?」
アラド「わかったわかった。 お説教はもう充分だぜ」
アラド(だけど、ラトのことは 何とかしなきゃあな……)
カーラ「……で、どうすんの? ユウ」
ユウキ「今のアラドでは ランドグリーズを扱い切れん」
ユウキ「あの3機は俺とお前、 ゼオラで使おうと考えている」
カーラ「あたしもその方がいいと思うな。 あの子、死なせたくないもん」
ユウキ「……弟を思い出すからか?」
カーラ「まあね」
ユウキ「だが、死なせたくないのは アラドやゼオラだけじゃない。 部下はみんなそうだ」
カーラ「うん……そうだよね」

[DC戦艦 ブリッジ]

アーチボルド「ランドグリーズの件、 了解しました。大切に使って下さい」
ユウキ「そのつもりです。 ……それで、次の任務は?」
アーチボルド「そこにいる エキドナ君が観光旅行をしたいと 言い出しましてね……」
アーチボルド「彼女を伊豆まで 送っていってもらえませんか?」
ユウキ「伊豆?  もしや、極東方面軍司令部がある 伊豆基地のことですか?」
エキドナ「そうだ」
ユウキ「そこへ何をしに?」
エキドナ「情報収集だ」
ユウキ(単独で 基地へ潜入するというのか……?)
アーチボルド「では、ユウキ君。 彼女のエスコートをお願いしますよ」
ユウキ「……了解です」
エキドナ(……これでいい。 陽動をかければ、ハガネは伊豆基地へ来る)
エキドナ(後は W17が気づくかどうか、だ)

《藤沢地区》

[藤沢地区]

ユキコ「リュウ、 早く出ないと遅れるわよ」
リュウセイ「わかってる!  カバン、カバンはどこだ!?」
ユキコ「昨日、準備をして 玄関に置いておいたんでしょう?」
リュウセイ「あ、そうだった」
ユキコ「ほら、服のエリが曲がってるわよ」
リュウセイ「そ、そんなのいいって」
ユキコ「ダメよ、ちゃんとしなさい。 でないと、ヴィレッタさんや アヤさんに怒られるわよ」
リュウセイ「わかったわかった」
ユキコ「……ね、リュウ。 今度はいつ帰ってこれるの?」
リュウセイ「わからねえな。 ここ最近、何かと忙しいし」
ユキコ「そう。 今度、機会があったら皆さんを うちに連れていらっしゃい」
ユキコ「母さん、あなたがお世話になってる人達に お礼をしたいから」
リュウセイ「ああ。 じゃ……行ってくるぜ、おふくろ」
ユキコ「気をつけてね、リュウ」

《地球連邦軍極東方面軍伊豆基地》

[地球連邦軍伊豆基地 正門]

アヤ「……休暇中に呼び出してごめんなさいね」
リュウセイ「例の試作機が 予定より早く来たってんだろ?  しょうがねえさ」
アヤ「ところで、お母様の具合はどう?」
リュウセイ「まだ通院してるけど、 前に比べりゃ元気になったよ」
アヤ「ちゃんと親孝行してきた?」
リュウセイ「それどころか、 いつまで経っても子供扱いで困ったのなんの」
アヤ「いいじゃない。 母親って、そういうものらしいわよ」
リュウセイ(らしいって……。 そうか、アヤのお袋は……)
アヤ「リュウ、今日の予定を教えておくわ」
アヤ「この後、試作機に関するレクチャーを 受けてもらってから、模擬戦をやるわよ」
リュウセイ「了解」
リュウセイ「ところで、模擬戦の相手って誰?  ま……まさか、隊長?」
アヤ「何よ、その顔」
リュウセイ「だって、 負けたら特訓のメニューが 追加されちまうからなあ」
アヤ「じゃあ、頑張って勝つことね」
リュウセイ「そういうアヤは 俺が休んでる間、隊長に何勝したんだよ?」
アヤ「え? ま、まあ、そんなことは 別にいいじゃない」
リュウセイ「さては連敗か。 お互い先が思いやられるよな」
アヤ「あ、私は明日から 父のラボに詰めることになるの」
アヤ「だから、しばらくの間訓練はお休みするわ」
リュウセイ「ってことは、 隊長とマンツーマン? トホホ」
アヤ「文句を言わないの。 隊長だって、忙しい中をぬって 私達の面倒を見てくれてるのよ?」
リュウセイ「そりゃわかってるけどさ。 ……あ~あ、教導隊へ出向した ライの野郎がうらやましいぜ」
リュウセイ「今頃、 カイ少佐やラトゥーニと一緒に ハワイでのんびりしてんだろうなあ」
アヤ「そんなわけないでしょ。 さ、隊長とオオミヤ博士の所へ行きましょう」

[SRX計画ラボ]

(扉が開閉する)
アヤ「おはようございます、 オオミヤ博士」
ロバート「ああ、おはよう」
リュウセイ「ロブ、ブレードは?  早く実物を見せてくれよ」
イルム「そう焦るな、リュウセイ」
リュウセイ「! イルム中尉!?  いつこっちへ? あ、もしかして…… ブレードと一緒に?」
イルム「そう、月から付き添いでね」
リュウセイ「リョウトやリオ、 ラーダさん達は元気?」
イルム「ああ。 お前に会いたがってたよ」
リュウセイ「みんなとはあの時以来だもんなあ」
ロバート「さて、積もる話は後だ。 早速、仕事に取りかかろう」
ヴィレッタ「……その前に伝えておくことがある」
ロバート「何です?」
ヴィレッタ「2日前、 ハワイのヒッカム基地から ビルトファルケンが強奪された」
ロバート「え……!?」
リュウセイ「ファルケンって、 ブレードと一緒にマオ社で作ってた試作機だよな?」
イルム「……そうだ」
アヤ「それに、 ヒッカム基地ということは…… もしかして、ライ達が?」
ヴィレッタ「ええ。 ファルケンは教導隊によるテスト中、 DC残党に奪われたのよ」
アヤ「そんな……!」
リュウセイ「ライの野郎に、 カイ少佐、ラトゥーニがいて そんなことが起きたのかよ?」
ヴィレッタ「詳しい事情はわからないが、 DC残党部隊が極東へ向かっているという 情報もある」
ヴィレッタ「この伊豆基地へ 現れる可能性は低いと思うが、 油断はしないように。いいわね?」
リュウセイ「了解」


第11話
守るべきもの

〔戦域:伊豆基地周辺〕

(アルブレード、ビルトシュバインが待機)
リュウセイ「起動完了。 出力、規定値まで上昇。 各部、問題なし……っと」
ロバート「どうだ、リュウセイ?  実際に乗ってみたアルブレードは」
リュウセイ「やっぱ、 R-1よりちょっと軽いな。 頼りないってわけじゃねえけど」
ロバート「フルスペックで R-1を量産したら、トライアル以前に コスト面の問題で落選するよ」
リュウセイ「でも、 試作1号機に比べたら パーツが増えてない?」
ロバート「月でリョウト達が 色々と試しているみたいでな」
ロバート「とりあえず、 そいつで接近戦のデータ取りを頼む」
リュウセイ「了解」
アヤ「オオミヤ博士、 イルム中尉の準備が整いました」
ロバート「了解した。 グルンガストを発進させてくれ」
(グルンガストが出撃)
リュウセイ「グルンガストか…… キツい相手だぜ」
リュウセイ「でも、隊長相手の 模擬戦と違って、特訓メニューが 追加されねえだけマシかな?」
ヴィレッタ「それは結果次第ね」
リュウセイ「うへっ……が、頑張ります」
ロバート「データ取得開始。 二人共、始めてくれ」
リュウセイ「了解!」
イルム「遠慮はいらんぞ、リュウセイ」
リュウセイ「ああ、行くぜ!」
(作戦目的表示)

〈グルンガストのHP70%以下〉

イルム「おおっと、 なかなかやるじゃないの」
リュウセイ「そりゃもう、 隊長に厳しく鍛えられてっからね」
ヴィレッタ「まだまだよ。 力任せで相手を押し切ろうとする クセが直っていない」
リュウセイ「うっ……」
ヴィレッタ「R-1との違いを素早く把握し、 それを踏まえた適切なモーションを 取りなさい」
リュウセイ「りょ……了解。 ちなみに今のは何点?」
ヴィレッタ「30点ね。 後で訓練メニューを追加するわ」
リュウセイ「ええっ!?」
イルム(なるほど、こりゃ厳しいわ)
リュウセイ「ト、トホホ……」
ヴィレッタ「でも、 さっきの踏み込みのタイミングは いい感じだった」
ヴィレッタ「次も その調子で頑張るのよ」
リュウセイ「……」
ヴィレッタ「どうした?」
リュウセイ「い、いや、別に」
リュウセイ(たま~に ほめてくれる時もあるんだよなあ)
ロバート「ところで、リュウセイ。 現時点での感想は?」
リュウセイ「そうだな……」
リュウセイ「プラン通り、 テスラ・ドライブとキャノンを付けたら いいバランスになると思うぜ」
リュウセイ「上手くいったら、 晴れて『エルシュナイデ』に……」
(アラート)
リュウセイ「!?」
オペレーター「最終警戒ライン上に 所属不明機を多数確認しました!」
サカエ「最終ライン!?  何故そこに至るまでレーダーで 感知できなかった!?」
オペレーター「そ、それが 先程まで全く反応がなく……!」
サカエ「何!?」
レイカー「総員、第一種戦闘配置。 対空迎撃システム、作動。 PT部隊を緊急出動させろ」
サカエ「はっ!」
レイカー「よもや、この伊豆基地へ 仕掛けてくるとはな……」
サカエ「敵はハガネから報告があった DC残党部隊でしょうか?」
レイカー「おそらくな」
オペレーター「目標群、 基地外部施設第14ブロックへ 攻撃を開始しました!」
レイカー「やむを得ん、 PT部隊が出撃するまでの時間を ヴィレッタ大尉達に稼がせろ」
オペレーター「了解!」
ヴィレッタ「聞いての通りよ。 イルム中尉、モードを切りかえて 敵機の迎撃を」
イルム「了解!」
ヴィレッタ「リュウセイ、 お前は後方へ下がれ」
リュウセイ「待ってくれよ、 俺だって……!」
ヴィレッタ「敵の目的は アルブレードかも知れないわ。 命令に従いなさい」
リュウセイ「そ、そうか。了解」
オペレーター「敵機、 基地上空に進入します!」
(敵機が出現)
ヴィレッタ「来たか……!」
イルム「ん?  何だ、あの機体は……!?」
(ユウキが乗っているランドグリーズを指す)
リュウセイ「あ、あれ…… パーソナルトルーパーアーマードモジュールじゃねえぜ」
イルム「ああ……どこの機体だ?」
アヤ「博士、何かわかりますか?」
ロバート「い、いや……。 俺も初めて見るタイプだ」
カーラ「ねえ、ユウ。 あのパーソナルトルーパー、 ひょっとして新型じゃない?」
ユウキ「おそらくな」
カーラ「あれ、 ビルトファルケンみたいに 持って帰らなくていいのかな?」
ユウキ「そんな命令は受けていない。 くれぐれも欲を出すなよ」
カーラ「うん、わかったよ」
アラド(ハガネの姿が 見当たらねえ。ということは……)
ゼオラ(ラトはここにいない……)
ユウキ「カルチェラタン1より各機へ。 エキドナが基地内へ潜入するための 時間を稼ぐぞ」
ゼオラ「了解!」
ユウキ「なお、 カルチェラタン8はその場で待機。 我々の退路を確保しておけ」
アラド「何でおれが待機なんです!?  おれも戦闘に参加させて下さい!」
ユウキ「駄目だ」
アラド「でも、おれとゼオラは!」
ゼオラ「心配はいらないわ、アラド。 私、あなたの分も戦ってみせるから」
ゼオラ「それに…… あなたの腕じゃ、まだリオンを 上手く使うことは出来ないもの」
ゼオラ「だから、 そこで私の戦いを見てて」
アラド「待て、ゼオラ!  おれは……!!」
ユウキ「退路を確保するのも 任務の内だ。いいな?」
アラド「くっ……!」
ユウキ「では各機、攻撃を開始しろ!」
(作戦目的表示)

状況選択

カーラ機のHPを70%以下にした
ユウキ機のHPを70%以下にした
ゼオラ機のHPを30%以下にした


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