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狡兎死して走狗煮らるるか?(前編) ~ 第4話 ~

EPISODE 2
THE INSPECTOR

新西暦187年。
連邦政府に対し反旗を翻した
ディバイン・クルセイダーズとの「DC戦争」、
異星人エアロゲイターとの戦い「L5戦役」が
終結してから半年後……。

大戦によって中枢部や要人を失った
地球連邦政府は組織の再編を余儀なくされ、
コロニー統合府大統領であった
ブライアン・ミッドグリッドが
連邦政府大統領に就任した。

そして、彼は連邦議会で
L5戦役の情報を公開……
後に「東京宣言」と呼ばれるこの発表で
地球外知的生命体の存在が公式に認められ、
彼等が地球人類にとって
脅威となるなることが示唆された。

さらにミッドグリット大統領は
地球圏の一致団結を訴え、
連邦軍の組織改革と軍備増強計画
「イージス計画」を発表した。
そして、その計画の名の下に
人型機動兵器の量産や強化などが進められた。

だが、それらの陰でうごめく者達がいた。

かつて、ビアン・ゾルダーク博士が率いた軍事結社
「ディバイン・クルセイダーズ」、
通称「DC」の残党……
連邦政府や連邦軍内で軍事政権の
樹立を目論む者達……
それらをつなぐ「影」……
そして、「アインストシリーズ」と呼ばれる
謎の物体群……。
地球人類は今、
さらなる混迷の渦へ陥ろうとしていた……。

《ワシントン》

[連邦会議場 正門前]

カイ「……待たせたな、二人共」
ラトゥーニ「いえ……」
ライ「どうでした、 イージス計画の定例会議の方は?」
カイ「前向きな背広組が増えたな。 DC戦争前とは大違いだ」
ラトゥーニL5戦役で ビアン・ゾルダーク博士の警告が 正しかったことが証明されましたし……」
ラトゥーニ「ミッドクリッド大統領の 東京宣言の影響も大きいと思います」
カイ「ああ。 背広組がもっと早く状況を認識していれば、 ゲシュペンストの数が揃えられたというのに……」
カイ「あいつら、 あの機体はもう旧型だとぬかしおった」
ラトゥーニ「………」
カイ「量産型ヒュッケバインの性能は認めるが、 ゲシュペンストだって改修を加え、テスラ・ドライブを 装備すれば、主力機として十分使える」
カイ「アルトやヴァイスを見ろ。 手の加え方次第じゃ、あの機体は新型以上の 性能を発揮することが出来るんだ」
ライ「あれはパイロットを含めて 特殊な例だと思いますが……お考えは理解できます」
ライ「既存機の延命処理を軽視し、 新型機の開発を推し進めていけば、 いずれ頭打ちを迎える時が来るでしょう」
カイ「ああ、予算は限られているからな。 いつまでもそうバンバン新型機を作れんよ」
ライ「どうでしょう、少佐の方から マオ社にゲシュペンストシリーズの 再強化プランを提出してみるというのは?」
カイ「ふむ……そうだな。 ギリアムにも声をかけて、アイデアを練ってみるか」
ラトゥーニ「……カイ少佐は ゲシュペンストに思い入れがあるんですね」
カイ「うむ。 旧教導隊時代からの付き合いだからな。 旧友……いや、息子みたいなもんだ」
(速い足音)
リオ「カイ少佐!」
カイ「リオ!?」
リオ「お久しぶりです。 ライディース少尉とラトゥーニも」
ライ「リオ……どうしてここに?」
リオ「会議に出席していた父を迎えに来たんです」
ラトゥーニ「わざわざ月から……?」
リオ「そのためだけに来たんじゃないけど……」
ユアン「……ご無沙汰しております、皆さん」
カイ「メイロン常務…… あなたも会議に出ておられたんですか?」
ユアン「ええ、社長の代理で」
リオ「私は付き添いなんです。 ホントは休暇なんですけど、父がどうしてもって……」
カイ「常務が?」
ユアン「ええ、まあ……こういう機会でないと、 娘と旅行する機会がないもので」
リオ「言っとくけど!  私は父様と旅行するつもりはなかったんだからね!」
ユアン「いかん、いかんぞ!  嫁入り前の大事な娘と、優秀なスタッフとは言え、 お、お、男と二人きりで!」
ユアン「母さんが許しても、私は絶対に許さん!  許さんぞ!」
カイ「?」
(足音)
リョウト「常務、車を手配してきました」
ユアン「あ、ああ……すまないね」
ライ「リョウト……」
リョウト「お久しぶりです、皆さん。 こんな所で会えるとは思っていませんでしたよ」
ライ「ああ。お前も休暇なのか?」
リョウト「ええ。でも、色々あって、成り行きで こうなってしまって……」
ライ「……何となく想像はつくが」
リョウト「本当は 一人で休暇を取るつもりだったんですけど……」
ラトゥーニ「付き添いが増えたのね」
リョウト「う、うん。断り切れなくて。 結局、半分は仕事みたいになっちゃったんだ」
リオ「……あ~あ、のんびりと羽が伸ばせる いい機会だと思ったんだけどなぁ」
ユアン「伸ばすなら一人で!  いや、保護者同伴で、だ!」
リオ「もう、父様ったら…… いつまでも子供扱いするのは止して」
ユアン「何を言う。私はお前が心配でだな……」
カイ「わかります、わかりますぞ、常務。 年頃の娘を持つ親として、そのお気持ちは」
ユアン「おお、少佐!」
カイ「いいか、リオ。 お前がいくつになってもだな、常務の子供であることに 変わりはないんだ。そもそも、親というものは……」
リオ(あちゃ~、薮蛇)
リョウト「……ところで、少尉達は これからヒッカムへ戻られるんですか?」
ライ「いや、その前にラングレーへ立ち寄る。 特殊戦技教導隊の新メンバーの選考試験があるんでな」
リョウト「いい人材は見つかりそうですか?」
ライ「ごく普通に優秀なパイロットなら、多くいる」
ライ「だが、良く言えば独創的、悪く言えば無茶な モーションを構築し、それを実戦で使いこなす者は 数少ない」
リョウト「独創的…… 例えば、リュウセイ君みたいな?」
ライ「あいつのモーションは、どちらかと言えば 基地祭のデモンストレーション向きだ」
リョウト「ああ……凝ってますもんね、彼」
ライ「無駄にな。ともかく、自分の癖を極力薄め、 TC-OS用のサンプルデータパターンへ ブラッシュアップできる者は数少ない」
リョウト「ハードル、高いですね」
ライ「上からの要望でな。近い将来に出てくるであろう 無人機用のOS開発作業を見越した上での人選を 行わなければならないのさ」
リョウト「………」
カイ「……男親はな、娘に対しては不器用なものなんだ。 色々と偉そうに言っていてもな、心の中じゃ 結構気を使っているんだぞ。だから……」
リオ「………」
ラトゥーニ「……少佐、そろそろ時間です」
カイ「ん? ああ、そうだな。 では、常務。自分達はこれで」
ユアン「ええ」
リオ「……あの、父様。 父様はこれから仕事の打ち合わせよね?」
ユアン「ああ、ポールスター・システムズでな」
リオ「じゃあ、その間、リョウト君と二人で ラングレーに行ってもいいかしら? クスハや ブリット君達に会えるかも知れないし…」
ユアン「な、何?」
リョウト「ぼ、僕も行くの?」
リオ「もちろん」
リョウト「いや、あの、そんなこと言われても……」
カイ「ふむ……今となっちゃ、 あいつらと会える機会はそうないだろうからな。 何なら俺達と一緒に行くか?」
リオ「え? いいんですか?」
リョウト「でも、任務の邪魔をするわけには……」
カイ「構わん。選考試験は明日だからな。 ついでに仕事の一つや二つ、手伝ってくれると助かる」
リョウト「は、はあ」
カイ「冗談だ、冗談。 ……常務、自分の方は構いませんよ」
ユアン「しかし……」
リオ「父様……お願い」
ユアン「むう……仕方がないな。 くれぐれも少佐達のご迷惑にならないように」
リオ「ええ、わかったわ。ありがとう、父様」
ユアン「いやあ……はははは」
カイ「それでは、常務……」
ユアン「はい。娘達をよろしくお願いします」

《地球連邦軍北米方面軍 ラングレー基地》

[ラングレー基地・ブリーフィングルーム]

ブリット「……クスハが試験場にいるって、 どう言うことなんですかっ!?」
エクセレン「なんていうか…… どう言うもこう言うも、そう言うことなのよね」
エクセレン「ブリット君に伝えてなかったって いうのは、私達の落ち度だけど…」
キョウスケ「急な話だったのは確かだ。 T-LINKシステムのデータ取りということで 申し入れがあった」
ブリット「でも、今のクスハは……!  それにデータ取りなら、自分だって!」
キョウスケ「タイミングの問題だ。 お前にはマクディルでの任務があったからな」
キョウスケ「加えて、先方が欲しがっていたのは 特機タイプのデータだった」
ブリット「だから、 クスハとグルンガスト弐式だったと言うことですか」
キョウスケ「……運が悪かったとしか言えんがな」
エクセレン「あんなことになるなんて、 考えてもいなかったし……ねえ」
ブリット「それはわかってます!  でも、もしかしたら、クスハや試験場の人達は……!」
キョウスケ「それをおれ達自身で確認しに行く」
ブリット「え!?」
キョウスケ「出撃命令が出た。現場に向かうぞ」
ブリット「自分達が!? じゃ、じゃあ、相手は……」
キョウスケアーマードモジュールだ。 ……先行した部隊が攻撃を受けた」
エクセレン「運がいいのか悪いのか…… ともかく、私達でクスハちゃん達を助ける チャンスが回ってきたってわけね」
キョウスケ「敵は第4試験場を占拠した テロリストグループだ。おれ達で排除する。 ……ぬかるなよ」
ブリット「りょ、了解です!」
ブリット(クスハ……無事でいてくれ……!)


第4話
狡兎死して
走狗煮らるるか?(前編)

〔戦域:草原〕

(北端にレイディバードが出現し少し南へ移動)
連邦軍兵「中尉、 あと10分で目的地に到着します」
キョウスケ「了解した。 こちらはいつでも出られる」
エクセレン「はぁい、キョウスケ。 最新情報を聞きたくなぁい?」
エクセレンイスルギ重工の保安課長が ぐるぐる巻きにされたみたいよ?」
キョウスケ「イスルギがぐるぐる巻き?  ……何の話だ?」
エクセレン「お縄を頂戴したってこと。 ネットのニュースをね、ちょっと こっちで調べてたのよ」
エクセレン「リオンタイプのパーツを 4機分横流し……やるわねえ」
ブリット「件のテロリストに…… ですか」
エクセレン「まあ、間違いないでしょ。 占拠事件自体は、さすがに伏せてる みたいだけど……」
エクセレン「正規の命令系統より 民放の報道から下りるソースの方が 速いって、大問題じゃない?」
キョウスケ「気にするな。 おれ達の仕事には関係ないことだ。 今、問題にすべきは……」
キョウスケ「いかにしてテロリスト達を 排除するか……その一点のみだ」
(警報)
連邦軍兵「0時方向、レンジ3に反応 あり! リオンタイプが8機、所属は 不明! こちらへ向かって来ます!」
キョウスケ「了解。 ATXチーム、出撃するぞ。 ハッチを開けてくれ」
連邦軍兵「はっ!」
エクセレン「わお!  リオンちゃんが……え? 8機?」
エクセレン「あらら?  パーツを半分ずつケチったのかしら」
キョウスケ「機体の調達ルートが 1つだけではなかった…… ということだろうな」
エクセレン「なるへそ。 相手はDCの残党……って感じ?」
キョウスケ「しかも、迎撃機を 出せるぐらいの余裕を持った連中…… やれやれだ」
エクセレン「んも~、こんな近場に そんなのが出てくるなんて、 私達の立場がないじゃない」
キョウスケ「手引きしたのは、 捕まったイスルギの社員だろうな。 ……とにかく出るぞ」
(アルトアイゼン・ナハト、ヴァイスリッター、ヒュッケバインMk-IIが出撃)
キョウスケ「L327、 そちらは戦闘外空域へ離脱してくれ」
連邦軍兵「はっ!」
(レイディバードが北へ移動し撤退、リオンが8機出現)
ブリット「来た……!」
エクセレン「ん~、それにしても…… その色のアルトちゃん、 馴染まないわねぇ」
エクセレン「おまけに 私のヴァイスちゃんだけ 仲間外れみたい」
キョウスケ「仕方がない。 塗り直す暇がなかった」
キョウスケ「とは言え、 この色も嫌いじゃない」
エクセレン「ま、青はゲシュちゃんの 色でもあるもんね」
エクセレン「さしずめ、 アルトアイゼン・ナハト…… ってとこかしらん?」
キョウスケ「そんなことより…… ここで時間はかけられんぞ」
エクセレン「試験場にいる クスハちゃん達のためにもね。 ちゃっちゃとね? ブリット君」
ブリット「了解!」
キョウスケ「試験場はこのすぐ先だ。 4分で突破する。各機、散開!」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

キョウスケ「よし、片付いたか。 このまま試験場へ向かうぞ」
エクセレン「ラジャー了解~!」
ブリット「待っていろ、クスハ……!  今、行くぞ!!」

〔戦域:試験場周辺〕

所属不明兵「ロレンツォ中佐、 ランカスター隊が全滅しました」
ロレンツォ「何……?  敵は3機だったはずだ。倍以上の数を 回して、その結果か?」
所属不明兵「は、はい。 これが敵機の映像です」
ロレンツォ「ヒュッケバイン…… それに、ゲシュペンストの カスタム機が2体」
ロレンツォ「1機は データと色が違うようだが…… ATXチームだろうな、これは」
所属不明兵「や、やはり」
ロレンツォ「場所が場所だ、 予測はしていた。奴を呼んでおいて 正解だったな」
ムラタ「………」
ロレンツォ「……人質は?」
所属不明兵「所定の位置へ 移動済みです」
ロレンツォ「タイプCF起動までの 時間は?」
所属不明兵「あと20分ほどです」
ロレンツォ「広範囲ASRSの 取り付け作業はどうか?」
所属不明兵「起動までには 間に合うそうです」
ロレンツォ「上手く 使えるのだろうな?」
所属不明兵「タイプCFの出力ならば、 問題はないそうです」
ロレンツォ「了解した。 ムラタを呼び出せ」
所属不明兵「はっ」
(通信)
ムラタ「……何だ、中佐?」
ロレンツォ「ランカスター隊が 全滅した。敵はATXチーム…… お前向きの相手だ」
ムラタ「ほう」
ロレンツォ「連中は まもなくここへ現れる……」
ロレンツォ「だが、目的はあくまでも タイプCFの移送だ。ここで敵を 殲滅することではない」
ムラタ「わかっている。 時間を稼げばいいのだろう?」
ロレンツォ「そうだ」
ムラタ「ATXチームは 食いでがありそうだ。真剣勝負…… 望むところなのだがな」
ロレンツォ「後の楽しみに とっておけ」
ムラタ「とは言え、 バンの蜂起には乗らぬのだろう?」
ロレンツォ「我ら全員が地の底へ 導かれるわけにもいくまい」
ロレンツォ「今後のことを考えれば、 宇宙の方にも足がかりは必要だ」
ムラタ「……スカルヘッドか。 使い物になればいいが、な」
ロレンツォ「そのための時間を バン大佐が稼いでくれる。今は 雌伏の時と心得よ、ムラタ」
ムラタ「……まあいい。 ここは任せてもらおう」
(ATXチームが試験場の南側に出現)
エクセレン「わお! リオンちゃん達、 まだあんなにいるの?」
(ガーリオン・カスタム“無明”を指す)
エクセレン「それに、 あのガーリオンタイプ…… どう見ても堅気じゃないし……」
ムラタ「来たか。 さて、どう出てくるか……」
キョウスケ「……動かんか。 何かを待っているようにも見えるが、 気に入らんな」
エクセレン「確かにね。 余裕シャキシャキって感じよねえ」
エクセレン「逃走ルートは もう確保済み……とか?」
キョウスケ「クスハ達の件もある。 ……どの道、おれ達も下手に動けん。 その場で待機。油断はするなよ?」
エクセレン「了解。 ……う~ん、せめてクスハちゃん達の 状況がわかればねえ」
ブリット「ん? あれは?  ……カメラ、望遠」
(基地の中央辺りを指す)
所属不明兵「……さっさと歩け」
所員「くっ、うう……!」
クスハ「わ、私達を どうするつもりなんですか?」
所属不明兵「お前達は ここで大人しくしていろ。 妙な真似をしたら、射殺する」
クスハ「……!」
ブリット「ク、クスハ……!  クスハがあそこにいます!!」
エクセレン「へっ!?  いや、そんなに都合よく……」
ブリット「座標を転送します」
エクセレン「………」
エクセレン「キョウスケ~、 クスハちゃん達の状況を確認~!」
キョウスケ「……見ればわかる。 人質にされているらしいな」
エクセレン「それもわかりやすく、ね。 余裕があるのは、あのせい?  身代金でも要求するつもりとか?」
キョウスケ(これが動かん理由か?)
ブリット「あのガーリオンタイプさえ 抑えれば……!!」
キョウスケ「……ブリット?」
ブリット「今なら人質と犯行グループを 分断できます!」
(ヒュッケバインMk-IIが基地へ向かって動く)
エクセレン「ブリット君、 ちょい待ち!」
ブリット「こういう状況を 打開するために来たんでしょう、 自分達はッ!!」
(ヒュッケバインMk-IIが更に基地へ近づきガーリオン・カスタム“無明”の視界に入る)
ムラタ「突貫して来たか」
(ガーリオン・カスタム“無明”がヒュッケバインMk-IIに隣接)
ブリット「!  あのガーリオンの剣…… シシオウブレードか!?」
ムラタ「俺が相手をしてやる」
ブリット「くっ!  そこをどけぇぇぇっ!!」
【強制戦闘】
ブリット[チャクラム・シューター]vsムラタ[シシオウブレード]
ブリット『負けるものかよ!』
ムラタ『見切った!』
ムラタ『青二才が!』
ムラタ『もらったぞ!』
ブリット『うああっ!  な、何だ、こいつの力はっ!?』
(ヒュッケバインMk-IIのHP10%、爆煙)
エクセレン「ブ、ブリット君!!」
ムラタ「ふん。ATXチーム…… あのゼンガー・ゾンボルトに 鍛えられた連中だと聞いていたがな」
ムラタ「情動に駆られでもしたか。 次に期待しよう」
キョウスケ「………」

《地球連邦軍北米方面軍 ラングレー基地》

[地球連邦軍ラングレー基地 司令室]

カイ「……特殊戦技教導隊、 カイ・キタムラ少佐以下2名、 ただ今到着致しました」
ケネス「ご苦労。 ワシが当基地の司令官、ケネス・ギャレットだ」
ケネス「早速だが、 お前達には第4試験場へ向かってもらう」
カイ「は? 選考試験が行われるのは、 このラングレーでは……」
ケネス「……現在、第4試験場は テロリストグループに占拠されている」
カイ「!」
ケネス「ATXチームを現場に派遣したのだが…… 奴らめ、しくじりおった」
カイ(キョウスケ達が……?)
ケネス「援軍を出したいところなのだが、 我々も何かと手一杯でな」
カイ「それで我々に白羽の矢が立ったというわけですか」
ケネス「うむ。お前達はこちらのパイロットの品定めに 来たのだろう? ならば、過去の実績だけでなく、 現在の実力を示してもらわんとな」
カイ(……こじつけたな。 援軍を出せぬわけがあるまい。 都合よく俺達を利用する気か)
カイ(だが、 キョウスケ達を放っておくわけにもいかん……)
ケネス「……それとも何か?  特殊戦技教導隊は、ただのお飾り部隊か?」
カイ「……いえ」
ケネス「ならば、直ちに出撃し、 第4試験場のテロリストグループを排除せよ」
カイ「了解です」

[地球連邦軍ラングレー基地 ブリーフィングルーム]

リオ「ええっ!? これから出撃ですって!?」
カイ「ああ。クスハが派遣された試験場が テロリストグループに占拠された」
カイ「キョウスケ達が現場へ向かったが、 救援が必要な状況らしい」
リョウト「そ、そんな……!」
リオ「クスハが……!」
カイ「ライ、ラトゥーニ、直ちに出撃準備を」
ライ「了解」
ラトゥーニ「わかりました」
カイ「リオ、リョウト、お前達はワシントンへ戻れ」
リオ「いえ、私もお供します! 機体を貸して下さい!」
カイ「な、何!?」
リオ「ブリット君やクスハ達が 危機に陥ってるんでしょう!?  それを放っておくことなんで出来ません!」
リョウト「少佐、僕も行きます。 マオ社で新型機のテストをやっていますから、 ブランクはありません」
カイ「お前達は休暇中だろうが。 それに、メイロン常務に対しても……」
リオ「父には後で私の方から説明します!  後方支援だけでもやらせて下さい!」
カイ「………」
リョウト「キョウスケ中尉達が 手こずる程の相手なんでしょう?  戦力は多い方がいいと思います」
カイ(確かに、 この二人がいてくれた方が助かるが……)
リョウト「少佐だって、仕事を手伝って欲しいと おっしゃっていたじゃありませんか」
カイ「いや、あれはだな……」
リオ「カイ少佐……!」
カイ「……わかった。選考試験用として持ってきた 量産型ヒュッケバインMk-IIが2機ある。 立ち上げは……」
リョウト「僕がやります。 開発にも関わった機体です。裏コードを使えば、 短時間で立ち上げられます」
カイ「そうか。では、頼むぞ」
リョウト「はい!」


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