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歪む時流 ~ 第2話 ~

《北米地区 コロラド近辺》

[輸送機・機内]

(扉が開閉する)
フィオナ「戻ったわよ、ミズホ、ラージ」
ミズホ「フィオナさん、ラウルさん…… 良かった、無事で……」
ラウル「機体の方は損傷を受けちまった。 すまない」
ミズホ「そんな……謝る必要なんてないです。 あたしはお二人が戻ってきてくれただけで……」
ラージ「あなた達あってのエクサランス…… そして、僕達の研究ですからね」
フィオナ「あら? 殊勝なこと言うじゃない」
ラージ「僕とミズホだけじゃ、 ここまでは来られませんでしたよ」
フィオナ「それはお互い様」
ラージ「……で、DCの残党は?」
フィオナ「撤退して行ったわ。 しばらくは追ってこないと思う」
ラウル「こっちで何かわかったことは?」
ラージ「……ピーターソン基地とも 連絡が取れなくなりました。 戦闘状態に陥っているのかも知れません」
フィオナ「………」
ラージ「今からあそこやテスラ研へ 行くのは危険ですよ」
フィオナ「……そうね。 でも、このままあてもなく飛んでいるわけにも いかないわ」
ラウル「退避するにしても、 俺達で情報を集める必要があるな」
ラージ「そう言うと思って、準備を進めていました」
ラウル「え? 何の?」
ラージ「予備のアージェント・ファイター2機を 偵察UAVとして使うための準備です」
ラウル「無人偵察機に?  そんなことが出来るのか?」
ラージ「ええ。エクサランスが不採用になった場合、 アージェント・ファイターだけでも 何とかしようと考えていましたからね」
ラージ「あれにはエクサランスの頭部…… 高性能センサーモジュールがついてますから、 偵察UAVとしても使えるようにしてあるんです」
ラウル「へえ……」
ラージ「予備のアージェント・ファイターに 時流エンジンは搭載されていませんから…… 最悪の場合、撃墜されても大丈夫」
ラージ「セッティングが終わり次第、 1機はテスラ研方面へ……もう1機は ピーターソン基地方面へ飛ばします」
ラージ「そして、戦闘空域になりそうな所を 避けていきましょう。上手くいけば、連邦軍の 部隊と合流できるかも知れません」
フィオナ「わかったわ」
ラウル「じゃあ、 俺達は念のためにエクサランスで待機してるぜ」
ラージ「了解です」

[輸送機・機内]

ラウル「なあ、フィオナ」
フィオナ「何?」
ラウル「DCの残党は どうしてエクサランスを狙ってきたんだと思う?」
フィオナ「自分達の戦力にするつもりなんでしょ。 フレーム換装システムは便利だもの。 連邦軍が評価してるのもそこなんだし」
ラウル「それだけかな?」
フィオナ「……時流エンジンも、ってこと?」
ラウル「ああ。俺はそんな気がする」
フィオナ「確かに、あれが完全な物になれば、 画期的な原動機になるわ。時粒子は、時の流れが ある所ならどこでも採取可能だもの」
フィオナ「でも、今の時流エンジンは試作段階…… 時粒子だけで動いているわけじゃない。 補機のプラズマ・ジェネレーターが必要よ」
フィオナ「つまり、他の比べてエネルギー効率のいい エンジンに過ぎないわ」
ラウル「まあな」
フィオナ「そもそも、 時の流れでタービンを回すなんて、 信じる人の方が少ないもの」
ラウル「確かにな。 それで親父達は物笑いの種になった」
フィオナ「今の時流エンジンを見ても、 まず疑われるでしょうね」
ラウル「でも、あれが完成すれば……」
ラウル「エクサランスは時間と空間を越える」
フィオナ「……もしかして、 さっきの敵はそこに着目しているというの?」
ラウル「どこでもエネルギーを供給でき、 時空間を跳躍する機動兵器……。 こいつを欲しがらない軍隊はいないと思うぞ」
フィオナ「あの機能を公表する気はないわよ」
ラウル「それはわかってるけど、 時流エンジンに興味を持った人間は 今までに二人いた」
ラウル「一人目は、親父達が生きている時に 連絡を取ってきたテスラ研のヘリオス・ オリンパス……」
フィオナ「……今はもう研究所にいないらしいけど」
ラウル「二人目は 連邦軍特装技研のレモン・ブロウニング……」
フィオナ「こないだ援助を申し出てくれた人ね。 ラージが怪しんだせいで、会わずじまいだったわ」
フィオナ「けど、 その二人とDCの残党にどんな関係が……」
(アラート)
ラウル「!!」


第2話
歪む時流

〔戦域:荒地〕

ラージ「アージェント・ファイターを 出す前に追っ手が現れるとは……!」
パイロット「相手は 戦闘態勢に入っています!  こちらからの呼びかけにも応じません!」
ラウル「なら、DCの残党か!」
フィオナ「ラウル、 エクサランスを出すわよ!」
ラウル「おう!」
ミズホ「ラ、ラウルさん!  フィオナさん!」
ラウル「ここで 捕まるわけにはいかない!  ハッチを開けてくれ!」
ラージ「フィオナ、ラウル、 ここは……」
フィオナ「ちょい待ち!  その選択はなしよ!」
ラージ「……わかりました」
(エクサランスが出撃)
所属不明兵「各機へ。 隊長が来るまでの時間を稼ぐぞ」
所属不明兵「了解」
ラウル「相手は戦闘機……!  ストライカーじゃ戦いにくい」
ラウル「こんな時に フライヤーが使えれば……」
フィオナ「無い物ねだりをしても しょうがないわ! 行くわよ!」
ラウル「ああ!」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

ラウル「何とか……しのげたか。 フィオナ、機体は大丈夫か?」
フィオナ「ええ…… 早くここから離脱しましょう」
(フィオナ機に爆煙)
フィオナ「きゃああああっ!!」
ラウル「フィオナッ!?」
ミズホ「フィオナさん!!」
ラウル「くそっ!!」
(ラウル機がフィオナ機の傍へ移動)
ラウル「フィオナ! 返事をしろ!!」
(フィオナの返事がない)
ラウル「フィオナ……!?」
ミズホ「そ、そんな……っ!」
ラージ「生体反応はある……!  気を失っているのか……!?」
ラウル「くそっ、誰だ!?  どこから攻撃してきた!?」
(ソウルゲインと量産型アシュセイヴァーが4機が出現)
アクセル「青龍鱗…… 命中精度と威力はなかなかの物だ」
アクセル「とは言え、 おれ向きの武装ではないがな、 こいつは」
ラウル「あれは!?」
ラージ「ソウルゲイン……!」
ラウル「テスラ研で 開発してたっていう特機か!」
ラージ「ええ……。 あそこは……確実に敵の手に 落ちたようですね」
アクセル「……さて、始めるか。 各機、そのまま待機だ」
所属不明兵「了解」
アクセル「エクサランスのパイロット、 聞こえているな?」
ラウル「!」
アクセル「貴様の機体…… こちらに渡してもらおう」
アクセル「輸送機に収納されている物も 含めて全て、だ」
ラウル「だ、誰が DCの残党なんかに!」
アクセル「DCの残党だと……?」
アクセル「フッ……それで構わんさ。 おれが誰であろうと、貴様がすべき ことは変わらん、こいつがな」
ラウル「何……!?」
アクセル「……選択肢は二つ。 エクサランスを渡すか、抗うかだ」
アクセル「交渉の時間はない。 大人しく従うのならば、 身の安全は保証する」
アクセル「だが、抗うのなら…… 次はコックピットに当てねばならん」
ラウル「くっ……!!」
ラージ「……ここまでですね、ラウル」
ラウル「ラージ!?」
ラージ「彼らの要求を 受け入れるしかありませんよ」
ラウル「だけど!」
ラージ「冷静になって下さい。 多勢に無勢、しかもフィオナは 気を失っている……」
ラージ「今は全員で 生き残ることを考えるべきです」
ラージ「命と機体が無事なら、 研究を続けることが出来る……。 例え、一からやり直しになっても」
ラウル「……!」
ラージ「僕が先方と話をしてみます」
(通信)
ラージ「……先程の言葉、 身の安全を保証するという話…… 信じていいんですね?」
アクセル「ああ、 おれの信じる戦争に誓って」
ラウル(信じる戦争、だと……!?)
(レーダーが反応)
ラウル「!?  何だ、この反応は!?」
(東の森に爆煙)
ラウル「うわあっ!!」
アクセル「何っ!?」
(デュミナス・プロートンが出現)
ラウル「あ、あれは……!?」
アクセル「何だ?  機動兵器か……!?」
???(デュミナス)「………」
アクセル「いや、そうは見えん。 それより、奴はどこから現れた?」
???(デュミナス)「……発見……。 利用……する……」
(デュミナス・プロートンとエクサランス2機が共鳴する)
ラウル「こ、これは!?」
ラウル「タイムタービンが……!  出力が勝手に!?」
ミズホ「ラージさん、この反応は!」
ラージ「時粒子が漏れている……!  いや、これは……!」
???(デュミナス)「………」
ラージ「まさか、あの物体が!?」
ラウル「この出力なら……いける!!」
(ラウル機がフィオナ機に隣接)
ラウル「今の内にフィオナを!」
アクセル「いい状況判断だ!  だが甘いな、こいつが……っ!」
(ソウルゲインがラウル機に隣接)
ラウル「何っ!?」
アクセル「抗うなと言ったぞ。 覚悟は……出来ているだろうな」
ラウル「!!」
【強制戦闘】
アクセル[白虎咬]vsラウル[防御](援護防御(フィオナ))
(フィオナ機に派手な爆煙)
フィオナ「うううっ!!」
アクセル「何!? かばった!?」
ラウル「フィオナァッ!!」
フィオナ「あ、あいつは…… あいつはあたしがっ!」
(フィオナ機がソウルゲインに隣接)
(衝撃)
アクセル「ちっ! 貴様!」
フィオナ「ラ、ラウル……!  今の内に逃げて……!」
ラウル「馬鹿言え!  お前を置いていけるかっ!!」
フィオナ「いいから……!  ラージやミズホ達と一緒に……!」
ミズホ「フィ、フィオナさん!!」
フィオナ「早く……!  あたしの機体は……もう……!」
(フィオナ機が白い光を出している)
ラウル「!!」
ミズホ「ラ、ラージさん!  1号機の出力が!!」
ラージ「110……140……!  180……200……!  まだ上がる!」
ミズホ「そんな……! 暴走……!?」
ラージ「あの損傷でこの出力じゃ、 機体が保ちませんよ!!」
ラウル「フィオナァァァッ!!」
(ラウル機が振動)
ラウル「な、何だ!?  エクサランスが!?」
(ラウル機も白い光を発し始める、エンジン始動)
ラウル「こ、こっちも出力が!!」
ラージ「ラウル!  タイムタービンを止めて下さい!!」
ラウル「駄目だ、制御できない!  タービンも、機体も!!」
ラージ「何ですって!?」
(フィオナ機が振動、機械音)
アクセル「ぐっ……!  その状態で、何故そんなパワーが 出せる!?」
アクセル(まさか、 おれと刺し違えるつもりか!?)
ミズホ「フィオナさん、 脱出して下さいっ!!」
フィオナ「無理……よ」
ミズホ「え!?」
フィオナ「コントロールが 利かないの……タイムタービンも 止まらない……」
ラージ「くっ!  こちらからの緊急制御も 受け付けない!」
ミズホ「なら、Eリミットで ET-OSを落とします!」
ラージ「それは既に試しました!  完全に制御不能なんですよ!」
ミズホ「!!」
フィオナ「ミ、ミズホ…… ラウルのこと、お願いね……」
フィオナ「あの人、 頼りない所があるから……」
ミズホ「フィ、フィオナさん 何を!?」
フィオナ「ラージ…… あたし達の研究を……必ず……」
ラージ「その先の台詞は 言わせませんよ! 機体を前に!  何とかして回収を!」
(レイディバードが北側へ移動)
ラウル「くそっ! 言うことを聞け!  エクサランス!!」
(タービン回転、フィオナ機とデュミナス・プロートンも発光していて、呼応する)
アクセル「何が起きている……!?  これがエクサランスの力だとでも 言うのか!?」
ラウル「ハ、ハッチも開かない……!  まったくコントロール出来ない!」
ラウル「ちょ、調整を ミスってたのか……!?」
???(デュミナス)(……須く過ちは存在する。 過ちがあるからこそ、 真実が存在する……)
???(デュミナス)(そして、真実を知るため、 私は行かねばならない……)
???(デュミナス)(創造者の下へ……。 あの『鍵』を使って、今度こそ……)
ラウル「ちきしょう!  これじゃ、フィオナを!!」
フィオナ「エ、エンジンが…… もう限界……」
ラウル「!!」
アクセル「いかん!  最大出力でッ!!」
(ソウルゲイン、所属不明機の所まで移動)
ラウル「フィオナ!!」
フィオナ「ラウル……聞いて」
ラウル「!?」
フィオナ「あたしが…… いなくなっても……しっかり……」
ラウル「お、お前、何を!?」
フィオナ「しっかりね…… おにい……ちゃん……」
(フィオナ機から白い光が広がりあたり一面真っ白に)
ラウル「フィ、フィオナッ!!」
ラウル「フィオナァァァァァ……!!」
(時流エンジンの動作、閃光後、レイディバード、エクサランス、???(デュミナス)が消えている)
アクセル「………」
アクセル(レーダーに反応なし……。 完全に消え失せたというのか?)
アクセル(もしや、今のは……転移?)
アクセル(時流エンジン…… ヴィンデルやレモン達が目をつけた 理由は……)
アクセル(だが、あれでは…… 戦争には不向きかも知れん)
アクセル(自らの命を賭して 仲間をかばうパイロットも……な)
アクセル「……各機へ。 任務は失敗だ。テスラ研へ帰還する」


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