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蠢く影 ~ 第1話 ~

極めて近く、
そして限りなき遠き世界で・・・

[不明 (デュミナス)]

???「……ここは……違う……」
???「……私は……過ちを犯した……」
???「探さなければ……『門』を開く『鍵』を……。 そして……創造主の下へ……」
???「…………」
???「……感じる……これは……」
???「この……波動は……」

〔戦域:海上〕

(トライロバイトが3艦西側に出現し、東へ移動。ヴィンデルとレモンは先頭の艦にいる)
???(レモン)「どうやら、 追手は振り切れたようだけど…… 派手にやられたものね」
???(ヴィンデル)「ああ。残ったのはこの艦と ネバーランド、ワンダーランドだけか。 無様な結果だな」
???(レモン)「逆に運が良かった……かもね」
???(レモン)「3つのウルブズ、 それにスペースノア級を相手にして 3隻も残ったんだから」
???(ヴィンデル)「慰めにもならん。 ベーオウルブズの指揮官は…… キョウスケ・ナンブと言ったか」
???(ヴィンデル)「やはり、 こちらに引き入れておくべきだったな」
???(レモン)「まあ、 上手くいったとしても、アクセルとは 馬が合わなかったでしょうけどね」
???(レモン)「それよりも彼…… 明らかに以前とは様子が違っていたわ。 まるで別人みたいじゃなかった?」
???(ヴィンデル)「ああ。我々の行動を 予知していたかのような対応…… そして、あのゲシュペンストMk-III」
???(レモン)「ある程度の抵抗は 覚悟していたけど、あれはちょっと 尋常じゃなかったわね」
???(レモン)「どういう改造をしたのかしら?  新技術……?」
???(レモン)「装甲が自動的に 修復したようにも見えたんだけど…… 気のせいだったかしらね」
???(ヴィンデル)「………」
???(レモン)「それより、 これからどうするの?」
???(ヴィンデル)「…プランEFに移行する。 テスラ研に向かうぞ」
???(レモン)「まあ、 こうなったらそれしかないか。 ここまで追い詰められちゃ、ね……」
???(ヴィンデル)「向こうの首尾は?」
???(レモン)「アクセル達が 上手くやってるわ」
???(ヴィンデル)「フェル・グレーデンが開発した 例のエンジンは?」
???(レモン)「テスラ研に到着していれば、 手に入れられるわ」
???(ヴィンデル)「よし…… ステルス・シェードを維持しつつ、 テスラ研へ向かうぞ」

《北米地区 コロラド近辺(移動中)》

[輸送機・機内]

ラージ「…テスラ・ライヒ研究所との連絡は 取れましたか?」
パイロット「いえ、音信不通のままです」
ミズホ「テスラ研で何かあったんでしょうか……?」
ラージ「あそこには色々な試作機がありますからね。 何らかの事故が起きたのかも」
フィオナ「……不吉なことを言うわね」
ラージ「合流ポイントを過ぎても テスラ研からの迎えが来ない、連絡も取れない……。 異常事態が発生している可能性があります」
フィオナ「じゃあ、どうするの? 引き返す?」
ラージ「その方が賢明じゃないですか?  僕達のエクサランスのためにも」
フィオナ「あたし達は連邦軍の指示でテスラ研に 向かってるのよ。これからはあそこで研究を 続けるって……」
ラージ「テスラ研でのテストで良い評価を 受けられたら、という条件付きですけどね」
フィオナ「何にせよ、あたしは早くあそこに 行きたいのよ。ヨーロッパの件もあるし」
ラージ「……DC残党の蜂起ですか」
ミズホ「まだ戦闘が続いているんですよね……。 ニュースで見ました……」
ラージDC戦争の時と違って、 今のところはこちらの方まで戦線が 広がるような気配はなさそうですが……」
フィオナ「どうかしらね。 とにかく、今のテスラ研には連邦軍の部隊が 駐留してるから、何かあったら守ってもらえるわ」
ラージ「ですから、その何かが起きている可能性が あると言ってるんです」
フィオナ「………」
フィオナ「……ラージ、あなただって テスラ研へ行けるのを喜んでたじゃない」
ラージ「確かに、 グルンガスト参式やソウルゲインを 直に見たいところではありますが……」
ラージ「それとこれとは話が別です。 いったん近くの連邦軍基地へ向かった方が いいのでは?」
フィオナ「いえ、テスラ研よ。 何が起きているか確かめるためにも」
ラージ「……ミズホ、あなたの意見は?」
ミズホ「あたしは……フィオナさんに賛成です。 もし、事故だったら……」
フィオナ「じゃ、多数決ってことで」
ラージ「ちょっと待って下さい。 ラウルの意見も聞かないと」
フィオナ「その必要はないわ」
ラージ「双子だからわかる、という理由じゃ 説得力がありませんよ?」
フィオナ「それより、エクサランスの発進準備を」
ミズホ「え……?」
ラージ「あれを出す気なんですか?」
フィオナ「ええ」
ラージ「………」
フィオナ「万が一に備えるためよ。 その北米でもDCの残党が動いているかも知れない。 それに、あたしの性格は知ってるでしょ?」
ラージ「……気は優しくて、力持ち」
フィオナ「そうそう、力仕事もバッチリなの~」
フィオナ「って、なに言ってんのよ!」
ラージ「もちろん、冗談です」
フィオナ「………」
フィオナ「……お願い、ラージ。 こういうスッキリしない状況って、あたし嫌なんだ」
ラージ「仕方ありませんね……。 でも、最悪の事態が起きているとわかったら、 行き先を変える。それが条件です」
ミズホ「最悪の事態って……?」
ラージ「考えたくはありませんが、テスラ研が DCの残党に占拠されてしまっているとか」
ミズホ「そんな……」
フィオナ「OKよ、ラージ。 フレームはフライヤー……って、 あれはまだ調整が終わってなかったわね」
フィオナ「ストライカーにするわ」
ラージ「わかりました」
フィオナ「じゃ、あたしはラウルを起こしてくるから」
ラージ「では、ミズホ…… モードBでエクサランスを立ち上げますよ」
ミズホ「は……はい」

[輸送機・機内 個室]

フィオナ「ラウル、起きてよ! ラウル!」
ラウル「う~ん……あと5分、5分だけ」
フィオナ「何言ってんのよ、もう!  さっさと目を覚ましなさい!」
ラウル「昨日、徹夜で調整をやったんだ……。 もうちょっとだけ……」
フィオナ「いいから、起きなさいってば!」
ラウル「……エクサランスのBSテストだったら、 お前に任せるよ……」
フィオナ「しょうがないなあ、もう!  こうなったら……」
フィオナ「起きて♥ お・に・い・ちゃん♥」
ラウル「うわ! なに抱きついてんだ!  気持ちわるっ!」
フィオナ「……わかってたけど、ちょっと腹立つ」
ラウル「ったく、もう……何なんだよ?」
フィオナ「まあ、そう照れない照れない。 可愛い妹に抱きつかれて、嬉しかったでしょ?」
ラウル「馬鹿言うな。何の用だ?」
フィオナ「……エクサランス、スタンバイよ」
ラウル「……!  何かあったのか?」
フィオナ「何かあるかも知れないのよ」


第1話
蠢く影

〔戦域:平原〕

(レイディバードが南側にいる)
パイロット「ラージさん、こちらへ 近づいてくる機体をキャッチしました」
ラージ「テスラ研からの迎えですか?」
パイロット「それが、事前に連絡があった 機体とは違っていまして……」
ラージ「え?」
(量産型ゲシュペンストMk-IIが4機出現)
ラージ「ゲシュペンストMk-IIですね。 どこの所属なんです?」
パイロット「コードはピーターソン 基地のパーソナルトルーパーパーソナルトルーパー 部隊のものですが……」
連邦軍兵「こちらアレス1。 L349、応答せよ」
パイロット「こちらL349。どうぞ」
連邦軍兵「L349、我々が テスラ・ライヒ研究所まで誘導する」
パイロット「アレス1、事前に そのような連絡はなかったが……」
連邦軍兵「我々は テスラ研からの依頼を受けて ここへ来た。こちらの指示に従え」
パイロット「………」
ラージ「今、テスラ研とは 連絡が取れないのに?  ちょっと変ですね」
パイロット「もう一度、 テスラ研へ連絡を入れてみます」
(南西にF-28メッサーが2機出現)
ラージ「おや、あれは……」
連邦軍兵「L349、騙されるな!  そいつらは敵だ!」
ラージ「え?」
ミズホ「敵!?」
所属不明兵「チッ、余計なことを!」
(アレス1がF-28メッサーに近づき2機とも撃墜)
ミズホ「ああっ!!」
ラージ「………」
ミズホ「そ、そんな……!!」
パイロット「アレス1、 何の真似だ!?」
所属不明兵「お前達は 黙って我々についてくればいい。 従わぬ場合は攻撃する」
パイロット「なっ…!」
ラージ「どうやら、 連邦軍の人じゃないみたいですね。 おそらくはDCの残党…」
ラージ「そして、 目当てはエクサランス……ですか」
ミズホ「え!?」
ラージ「僕達を撃墜するつもりなら、 とっくにそうしているはずですしね」
ミズホ「………」
フィオナ「ラージ、ハッチを開けて!  エクサランスを出すわよ!」
ラージ「!」
ミズホ「フィ、フィオナさん!  あの人達と戦う気ですか!?」
フィオナ「ええ。ここでエクサランスを 奪われるわけにはいかない」
ラージ「ここはひとまず 彼らの指示に従うという 選択肢もありますが……」
フィオナ「その後、どうやって 逃げるって言うの?」
ラージ「………」
フィオナ「あたしが出て、 何とかあいつらを食い止める。 あなた達はここから一時離脱して」
ラウル「待て、フィオナ。俺も出る」
フィオナ「駄目よ。 あなたはラージ達と一緒に行って。 後で合流するから」
ラウル「予備扱いなんて御免だぜ。 それに、ここから逃げられても、 また同じような目に遭うかも知れない」
フィオナ「……二人で 力を合わせた方がいいってこと?」
ラウル「ああ。俺達、いつだって そうしてきただろ?」
フィオナ「………」
ラウル「それに、あいつらの目当てが エクサランスなら、機体を壊すような 真似はしないはずだ」
ラージ「楽観的過ぎる上に、 危険極まりない賭けですね」
ラウル「承知の上さ。 けど、俺も出れば、この場を 切り抜けられる確率が上がるだろ?」
ラージ「………」
フィオナ「わかったわ、ラウル。 二人で出ましょう」
ラウル「聞いての通りだ。 ラージ、ハッチを開けてくれ」
ラージ「まずは 目の前の問題を解決する…… ということですか」
ラウル「ああ。 でなきゃ、先に進めない」
ラージ「わかりました。 ……いいですね、ミズホ?」
ミズホ「……そんな……。 あたしは……」
フィオナ「ミズホ、 あなたの言いたいことはわかるわ。 でも、今はこうするしかないの」
ミズホ「………」
フィオナ「遅かれ早かれ、 直面しなきゃならない問題なのよ」
ミズホ「でも、あたし…… 本当は……」
フィオナ「わかってる。 でも、今の状況を切り抜けるには、 エクサランスを使うしかないの」
ミズホ「………」
ラウル(ミズホ……)
ミズホ「わかり……ました」
ラージ「……では、 ハッチを開放しますよ」
(エクサランス・ストライカーが2機出現)
ラウル「こちら2号機。 駆動系異常なし。 時粒子レベル100を維持」
フィオナ「こちら1号機。 パワーバランスOK」
ミズホ「か、各部アクチュエーター、 正常作動。そ、それと……」
フィオナ「落ち着いて、ミズホ」
ミズホ「は、はい。すみません」
フィオナ(あたしも 人のことは言えないけどね)
ミズホ「ET-OS、チェック…… FCS、RBモードに移行。 ラージさん、そちらは?」
ラージ「異状ありませんが……」
ラージ「ラウル、フィオナ。 エネルギー変換効率を 不用意に上げないでくださいよ」
フィオナ「わかってるわ」
ラウル「こっちも了解だ」
ミズホ「ラ、ラウルさん、フィオナさん…… 必ず戻ってきて下さい……」
フィオナ「ええ。父さん達から 受け継いだ研究を、こんな所で 終わらせるつもりはないもの」
ラウル「ああ。必ず戻る」
所属不明兵「奴ら、 エクサランスを出したか」
所属不明兵「どうします?」
所属不明兵「多少の損傷を与えても 構わん。仕掛けるぞ!」
所属不明兵「了解!」
フィオナ「来るわ…!  ラージ達はここから離脱して!」
ラージ「わかりました。 後で必ず合流して下さいよ…… あなた達二人で」
(レイディバードが南へ移動し撤退)
ラウル「……とんだテストに なっちまったな」
フィオナ「そうね。 望んでいた形じゃないけど…… 結果を出さなきゃ」
ラウル「ああ! 行くぞ!」
(作戦目的表示)

〈初戦闘〉

[ラウル]

ラウル「お前達に エクサランスは渡さない!」

[フィオナ]

フィオナ「あたし達の研究の成果、 見せてあげるわ!」

〈敵機全滅〉

フィオナ「何とか切り抜けられた……。 ラウル、そっちは大丈夫?」
ラウル「ああ。 それにしても、こっちの方でも DC残党が動いていたなんてな……」
フィオナ「真実と報道は 違っているみたいね。 嫌な予感が当たってしまった……」
ラウル「テスラ研と通信が つながらないのは、もうDC残党に 制圧されているからなのかも……」
フィオナ「………」
ラウル「ラージ達と合流して、 これからどうするか考えよう」
フィオナ「……わかったわ」

[テスラ・ライヒ研究所]

所属不明兵「アクセル隊長、 リュケイオスの起動コードを入手しました」
アクセル「わかった。すぐに起動させてくれ。 連邦はおれ達の動きに気づいた……それに、 ヴィンデル達ももうすぐここへ来る、これがな」
所属不明兵「はっ」
(扉が開閉する・所属不明兵が立ち去る)
アクセル(……まさか本隊が敗れるとは、な。 やはり、おれもヨーロッパに残るべきだったか)
アクセル(本体を退けるほどの戦力…… おそらく、ウルブズが出張ってきたのだろう。 連邦軍特務鎮圧部隊…“奴”が)
アクセル(おれがいれば、奴を止められたかもしれん。 ベーオウルフ……おれ達の前に立ち塞がる孤狼。 最後まで……邪魔をするか)
(扉が開閉する)
W16「失礼します、アクセル隊長」
アクセル「……W16か。どうした?」
W16「ナンバーズ0番から10番までの 準備が整いました」
アクセル「W10まで…… ということは初期型のみを集めた先発隊か」
アクセル「……ん? 0番からということは、 あのW00も含まれているのか?」
W16「はい。レモン様からそのように言われています」
アクセル「……そうか。 W00……実戦投入も出来ないタイプを連れて行く 意味などないと思うがな」
アクセル「11番以降のナンバーズとして、 貴様はどう思う?」
W16「私はレモン様の指令を実行するだけです。 それ以外に疑問はありません」
アクセル「フッ、そうだったな。人形は人形か。 今の質問は忘れて構わん」
W16「はい。 それでアクセル隊長……すぐに転移させますか?」
アクセル「いや、まだだ。 そのレモンが先発隊をネバーランドに乗せると 言ってきた、これがな」
W16「………」
アクセル(貴重なトライロバイト級を 初期型の人形達のゆりかごにしようとは…… レモンの奴も過保護すぎる)
アクセル(親心、というやつなのかも知れんが)
W16「では、先発隊の転移は レモン様達が到着してからと言うことで?」
アクセル「そういうことだ。 レモン達が到着次第、すぐに積み込めるように 準備をしておけ」
W16「了解です。それと、もう一つ報告が。 エッジ隊がエクサランスの奪取に失敗しました」
アクセル「……連邦軍の邪魔が入ったのか?」
W16「そのようです。 加えて、エクサランスが実戦投入されたという 報告も入っています」
アクセル「実戦投入だと?  そこまで仕上がっていたということか。 ……そうなると、話が変わってくるな」
アクセル「おれが直接出る」
W16「隊長自ら? それでは……」
アクセル「機数はあまり割けない、 だがエクサランスは入手すべき…… となれば、少数精鋭でいくしかあるまい」
W16「…了解です。 隊長がそうおっしゃるならば」
アクセル「慣らしも兼ねて、ソウルゲインを使う。 そんなにはかからん。ここの守りは任せるぞ」
W16「はっ」
(扉が開閉する・W16が立ち去る)
アクセル(エクサランスか。時流エンジンはともかく、 あのフレーム換装システムには興味がある)
アクセル(ラーズやアシュセイヴァーに あれを応用できれば、機体の運用方法は 劇的に変わってくる……)
アクセル(それだけの価値はある。 もう時間は……残されていないのだからな、 こいつが)


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