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黒い幽霊 リュウセイルート ~ 第37話 ~

[伊豆基地内]

ノーマン「…そろったようだな。 ではラドム博士、始めてくれ」
マリオン「エアロゲイターの目的… それは今のところ、『標本』の採取だと 思われましてよ」
ダイテツ「標本だと…?」
マリオン「そう。エアロゲイターは メテオ3EOTを始めとする禁断の果実と…」
マリオン「降伏勧告や 首都爆撃などという試練を与え…」
マリオン「『兵器』として 特異な進化を遂げた地球人を 標本として採取するつもりですわ」
ノーマン「では、エアロゲイターは 兵器としてより良い進化を遂げた 標本を手に入れるために…」
ノーマン「故意に我々の戦力を温存させ、 ホワイトスター攻撃の機会を与えているというのか」
ギリアム「ええ。おそらく、彼らは最終決戦で 一気にふるいをかけるつもりなのでしょう」
ノーマン「その戦いで生き残った者が 優秀な標本というわけか」
ダイテツ「エアロゲイターめ…。 どこまでも地球人を愚ろうするつもりか…!」
マリオン「とりあえず、 次なる標本の第一候補は…」
レフィーナ「私達のヒリュウ改と ハガネというわけですね」
マリオン「そのとおりでしてよ」
ショーン「ふむ… 彼らは我々という標本を採取して、 いったい何をするつもりなのでしょうなあ」
ショーン「いや、それよりも… 何故、はるばると地球まで標本を集めに来たのか…」
ショーン「わざわざ地球人を兵器として 進化させようとしているのかが疑問ですな」
レフィーナ「そうですね。 技術的にも軍事力的にも地球人より 彼らの方が上なのに…」
レフィーナ「どうしてエアロゲイターは 私達の地球に興味を持ったのでしょうか…?」
レイカー「………」
ギリアム「彼らの求める『何か』が…」
ギリアム「あるいは、彼らの恐れる『何か』が この地球にあるのかも知れませんね…」
ダイテツ「………」

[伊豆基地 ブリーフィングルーム]

サカエ「…対ホワイトスター攻略戦は 大きく4段階に分けられる」
サカエ「まず、フェイズ1では PTAM部隊と宙間戦闘機部隊で敵機を陽動し…」
サカエ「HOSジャマーでかく乱をかけ、 敵戦力の分散化を図る」
サカエ「次に、フェイズ2では 第2次防衛線上の戦艦からホワイトスターに向けて MAPWと…」
サカエ「MARVを搭載した核ミサイルを発射する」
ブリット(か、核も使うのか…!)
サカエ「フェイズ2が失敗に終わった場合、 艦隊は可能な限りホワイトスターに接近し…」
サカエ「ヒリュウ改の超重力衝撃砲、 ハガネのトロニウム・バスターキャノンなどで 一斉砲撃を仕掛ける」
サカエ「以上がフェイズ3だ」
イルム「それでも駄目だった場合は?」
サカエ「最終のフェイズ4へ移行…」
サカエ「要塞内部へPT特殊部隊… すなわち、お前達の部隊を内部へ 送り込んで中枢部を破壊する」
サカエ「…以上が、 対ホワイトスター攻略戦の概要だ」
キョウスケ「…了解」
エクセレン「…ってことは、 今回の作戦の大本命は私達ってことに なるかも知れないのよねえ?」
レオナ「本命というより鉄砲玉ですね」
カチーナ「望むところじゃないさ。 異星人との決着を人任せにする気もねえしよ」
キョウスケ「敵要塞内部の強行突破か… おれ向きの作戦だ」
タスク「こんな大勝負、滅多にねえ く~っ、燃えて来たぜ!」
ライ「レイカー司令、質問があります。 SRXの合体許可は出るのですか?」
レイカー「うむ。合体のタイミングは 現場の判断に任せる」
ライ「…最悪の場合は SRXのトロニウム・エンジンを 爆弾代わりにしろと?」
マサキ「おい、ちょっと待てよ。 それじゃ特攻じゃねえか!」
レイカー「…理解して欲しい。 次の作戦は我々にとって最後の対抗手段なのだ」
レイカー「ハガネとヒリュウ改、 そしてお前達の護衛で多数の犠牲も出るだろう」
レイカー「しかし、我々はいかなる手段を 使ってもこの戦いに勝たねばならん。 作戦失敗は、人類の滅亡を意味する」
マサキ「だがよ、 成功すればこの戦いは終わるんだろ?」
レイカー「ああ、そうだ」
マサキ「なら、やってやる。 もう人が死ぬのも、燃える街を 見るのも嫌だからな」
マサキ「俺達で、必ずホワイトスターを 破壊してやるぜ!」
リュウセイ「ああ…!」
キョウスケ「…どうやら、 今が全額賭けする時らしいな。 …いこう」
レイカー「…作戦開始時刻は明後日2300だ」
サカエ「ハガネとヒリュウ改は、 連邦軍宇宙艦隊が最終配置に つくまで…」
サカエ「敵の陽動をかねて、 L1宙域へ向かってもらう。 出航時刻は本日1830だ」
レイカー「なお、現時刻より今回の作戦名を 『オペレーションSRW』と呼称する」
レイカー「では、諸君の健闘を祈る。 以上、解散だ」
(扉が開閉する・レイカー、サカエが立ち去る)
ブリット「オペレーションSRW…」
タスク「なあ、SRWって何の略だ?」
ブリット「さあ…?」
エクセレン「ええっと、 Sはセクシーで、Rはロマンス、Wはウェポンよん」
ブリット「セ、セクシー・ロマンス・ウェポン?」
タスク「どんな武器だよ」
キョウスケ「誰が命名したんだ?  …しかし、決まっているなら 仕方あるまいが…」
ライ「…そんなことはないと思うが」
エクセレン「ノリの悪いことで」
タスク「…結局エクセレン少尉も 知らないってことッスね」
ブリット「じゃあ、何なんだろう?」
リュウセイ「ヘッ、 決まってるじゃねえか」
リュウセイ「SRWってのはな、 SUPER ROBOT WARSの略さ!」
タスク「おいおい、リュウセイ… いくら何でもそりゃねえだろ」
リュウセイ「ツ、ツッコミ厳しいねえ」

[SRX計画ラボ]

カーク「…どうしても、 ハガネに乗り込むというのだな?」
ロバート「ああ。ギリギリまで面倒を 見なきゃならない機体も多いし…」
ロバート「俺達の手がけたマシンが 人類の未来に何をもたらすのか… この目で確かめたいんだ」
カーク「では、私も行こう」
ロバート「いや…カークはここに残って、 カザハラ博士とEOTの解析を続けてくれ」
カーク「だが、お前一人では限界がある。 特にマリオンの機体は調整が難しいからな」
マリオン「失礼ですわね!  あなたに他人のことが言えまして!?」
マリオン「こうなったら、 私もヒリュウ改に乗りますわよ!」
カーク「マリオン、お前はここに残れ」
マリオン「それは私の台詞ですわ。 残るのはあなたの方でしてよ」
カーク「どういうことだ?」
マリオン「これ以上、あなたにMk-IIIと Mk-IIカスタムをいじられるのは 我慢が出来ませんし…」
マリオン「それに、EOTの解析は あなたとカザハラ博士に任せますわ。 メテオ3のこともありますしね」
カーク「相変わらず、 EOTには興味がないのだな」
マリオン「もちろんですわ」
マリオン「あんなものに頼らなくても、 ヒュッケバインやRシリーズ以上の 機体を作り上げて見せましてよ」
カーク「わかった…。 ただし、命だけは大事にな」
マリオン「…あなたがそのような台詞を言うと、 不思議な気持ちになりますわね」
カーク「…お前くらいにしか言わんがな」

[伊豆基地 格納庫]

イルム「もう出港まで時間がない。 早いとこ残りの機体を積んでくれ」
一般兵「了解です」
ジョナサン「イルム」
イルム「何の用だ、カザハラ博士?」
ジョナサン「おいおい、水くさいな。 こんな時だ…父さんと呼んでも構わんぞ」
イルム「うるせえ、クソ親父。 この忙しい時に何の用だよ?」
ジョナサン「…必ず生きて帰って来い。 お前達全員でな」
イルム「お、おい…何だよ。柄にもなく 神妙なことを言いやがって」
ジョナサン「お前が帰って来なければ、私は……」
イルム「親父…」
ジョナサン「私は、 お前のアドレスメモリーに載っていた 女性全員をお茶に誘うからな」
イルム「は!?」
ジョナサン「ちなみに本命はリンだ。 お前の浮気が元で、彼女と断絶状態だということは 知っているから」
イルム「何ィ!?」
ジョナサン「はっはっは、 心配するな。冗談だよ、冗談」
イルム「…あんたが言うと 冗談に聞こえないんだよ」
ジョナサン「それはともかく… 無事に帰って来るんだ。いいな?」
イルム「ああ、わかってる。 …留守番はしっかり頼むぜ、親父」

[伊豆基地 ブリーフィングルーム]

アヤ「リュウ…ここにいたの?」
リュウセイ「どうした、アヤ?  出撃まで、まだ時間はあるだろ?」
アヤ「…あなたに会わせたい人がいるの」
リュウセイ「俺に? この基地で?」

[伊豆基地内 病室]

看護士「ユキコ・ダテさん、 ここがあなたの新しい病室です」
看護士「先日までの病院と違って、 ここでは行動にかなりの制限と 監視を受けることになります」
ユキコ「はい…」
看護士「色々と不自由だとは思いますが これも軍規ですので」
ユキコ「いえ…こういう環境は慣れていますので…」
(扉が開閉する)
看護士「誰です?  この患者と許可なく面会することは 禁止されていますよ」
リュウセイ「許可なら、ちゃんともらってるぜ」
ユキコ「リュウ…!」
リュウセイ「おふくろ…」
リュウセイ「…安心したよ。 前より顔色が良くなったみたいだし」
ユキコ「………」
ユキコ「あなたの話を聞いたわ…」
リュウセイ「驚いた、だろ?」
ユキコ「それはあなたの方でしょう?」
リュウセイ「ああ…まあな」
ユキコ「…あなたか生まれる前、 私は日本特殊脳医学研究所という施設にいた…」
ユキコ「そして… そこでケンゾウ・コバヤシ博士の研究に 携わっていた」
リュウセイ「念動力の研究…だろ。アヤから聞いた」
ユキコ「ええ…。人は皆、思念を持っている。 でも、中には特殊な作用をもたらす強い念を 持った人間がいるの」
ユキコ「それが、かつての私…」
リュウセイ「………」
ユキコ「でも、今の私はその念を失ってしまった」
リュウセイ「じゃあ、 俺がT-LINKシステムを使えるのは…」
ユキコ「私の力が あなたに受け継がれたからかも知れない」
リュウセイ「………」
ユキコ「ごめんなさい、リュウ。 今まであなたにこのことを黙っていて… 本当にごめんなさい…」
リュウセイ「いや、おふくろは悪くねえ。 黙ってたのは、俺に余計な心配を させたくなかったからなんだろ?」
ユキコ「でも、あなたは…」
リュウセイ「きっかけはどうあれ、 今、俺は俺の意思で戦ってる」
リュウセイ「いや、むしろ念動力ってのを 持ってるからこそ戦えるんだ」
リュウセイ「そして、 今の俺にはやらなきゃならねえことがある。 俺の力を使って、やらなきゃならねえことがな」
ユキコ「………」
リュウセイ「それより…すまねえな、おふくろ。 上からの命令で、特脳研関係者には 監視がつけられることになったから…」
リュウセイ「もう少ししたら、 出られるようになるから…それまで待っていてくれ」
リュウセイ「俺…必ずおふくろの所へ戻ってくるから」
ユキコ(リュウ…あなたは… いえ、あなた達は…)
ユキコ「………」
ユキコ「…わかったわ、リュウ。 あなたやクスハちゃん…そして、あなたの お友達の帰りを待ってるわ…」
リュウセイ「ああ…行ってくるぜ、おふくろ」
ユキコ「行って…らっしゃい。リュウ…」

《自動惑星ネビーイーム》

[自動惑星ネビーイーム]

アタッド「レビ様…」
レビ「何だ、アタッド?」
アタッド「地球側の艦隊が、衛星軌道上のポイントへ 本格的に集結しつつあります」
アタッド「おそらく、降伏期限前に この自動惑星ネビーイームへ総攻撃を 仕掛けて来るつもりでしょうねえ」
レビ「フッ、 我らの望みどおりの選択をしたようだな。 ならば、クラス・ギボルの最終選考を始めよう…」
レビ「アタッド… ネビーイームを第3迎撃モードに。 さらに積層結界の準備を」
アタッド「はっ…」
レビ「イングラム、 ヒリュウ改とハガネの現在位置は?」
イングラム「その2艦は艦隊と別行動を取り、 月へ向かっている。おそらく、こちらを 陽動するつもりだろう」
レビ「彼らの仕上がり具合は?」
イングラム「もう一息といったところだな」
レビ「ならば、私自らが出るとしよう。 彼らと直に接してみたい」
アタッド「お待ちを。 レビ様には万が一の時に備え、ジュデッカの制御を していただかなければなりません」
レビ「万が一だと?  フッ、地球人の戦力ではネビーイームの積層結界を 破ることなど不可能だ」
レビ「例え、 それがヒリュウ改やハガネであろうとな」
アタッド(…とは言っても、大事な身体だからねえ。 不用心に連中と接触されるのも問題だし)
アタッド「誰か代わりの者を…」
イングラム「では、 ガルイン・メハベルを使おう」
アタッド「いいのかい?  あいつはこの間の戦闘が原因で、 不安定な状態に陥っているが…」
イングラム「古いサンプルだからな。 もう破棄してもいいだろう」
アタッド「けど、ガルインが回収されでもしたら、 こちら側の情報がもれることになるさね」
アタッド「もしかして、 それがあんたの目的かい…?」
イングラム「この自動惑星の 番人の交代時期が来た…ただそれだけのことだ」
アタッド「フン…。 あたしはあんたほど気前が良くないんでね。 見返りは用意させてもらうよ」
イングラム「………」
アタッド「レビ様、ズフィルードクリスタルの 復元精度を確かめるためにも、例の物を 使いたいのですが…」
レビ「いいだろう。お前に任せる」

《L1宙域(ハガネ)》

[ハガネ ブリッジ]

テツヤ「艦長、 本艦はL1宙域に到達しました」
ダイテツ「ホワイトスターの様子は?」
テツヤ「依然、動きはありません。 おそらく、地球軍側の出方を うかがっているものと思われます」
ダイテツ「そうか」
エイタ「それじゃ、わざわざ危険を冒して 陽動に出た意味がないですね」
ダイテツ「まだわからんぞ。 オペレーションSRWが発動するまで 油断は禁物だ」
(アラート)
テツヤ「動いたか!?」
エイタ「月のマオ・インダストリーから SOSを受信! エアロゲイターの攻撃を 受けているようです!」
テツヤ「何!?  今まではほとんど月へ攻撃を仕掛けて いなかったというのに…」
テツヤ「しかも、どうして ムーンクレイドルやセレネ基地を狙わず、 マオ社へ!?」
ダイテツ「奴らの陽動、あるいは罠…。 もしくは、単純にマオ社を壊滅させる気かも知れん」
タツヤ「確かに、 あの会社はPTの開発元ですが…」
ダイテツ「何にせよ、 現時点で動けるのはワシらぐらいだ。 大尉、最大戦速で月へ向かうぞ!」
テツヤ「了解!」

[ハガネ 格納庫]

ラーダ「えっ…?  マオ社がエアロゲイターの攻撃を 受けているですって…!?」
ラッセル「は、はい」
ギリアム「…まずいな。 社長達はムーンクレイドルから 本社へ戻っている頃合いだ」
リオ(…ってことは、父様も!?)
イルム(リン……!)
イルム「グルンガストを回せ! 出撃する!!」
リオ「あ、あたしも行きます!!」


第37話
黒い幽霊

〔戦域:マオ・インダストリー社周辺〕

リン「エアロゲイターめ、 何故今になってこんな所へ…?」
ユアン「社長、 これ以上は防ぎきれませんぞ!」
リン「全社員を早く地下シェルターへ 移動させろ。それから、連邦軍の 対応はどうなっている?」
ユアン「ヒリュウ改とハガネが こちらへ急行中とのことです」
リン「レフィーナ艦長やラーダ達が 来てくれるのか…!」
リン(それに、ハガネ……。 ならば、あの男も…)
リン「常務、使える機体はあるか?」
ユアン「機体って…。 まさか、社長自ら出撃なさる おつもりですか!?」
リン「ああ。まだ腕は さびつかせていないつもりだ」
ユアン「いけません。社長にもしもの ことがあったら我が社は…」
リン「ここで敵を防がなければ、 セレヴィス・シティに被害が及ぶ!」
ユアン「ふう…。うちの娘と同じで、 社長も頑固ですから…これ以上 言っても無駄でしょうねえ」
リン「フッ、すまないな。 それで、使える機体は?」
ユアン「追加生産した量産型 ゲシュペンストMk-IIは 全て連邦軍に納品済み……」
ユアン「ヒュッケバインMk-IIの 試作2号機はDC戦争中、統合軍に やむなく渡してしまいましたし…」
ユアン「3号機は 軍のトライアルに回ったまま。 あとの新型はまだ開発中…ううむ」
リン「ならば、 ヒュッケバイン008Lを使う」
ユアン「ま、まさか、008Lを!?」
リン「ああ。 確か、あれは起動可能な状態で 封印をしてあったはずだ」
ユアン「き、危険です!  社長は同型機の暴走事故を お忘れですか!?」
リン「ブラックホールエンジンはすでに 改修済だ。ここで時間を稼ぐには あれを使うしかないだろう?」
ユアン「む…。わ、わかりました…」
(ヒュッケバイン008Lが出撃)
リン「フフ…。 ヒュッケバインに乗るのは PTXチーム時代以来だな」
ユアン「社長、こちらからの エネルギーケーブルをパージします。 本体動力源の起動をお願いします」
リン「了解。ブラックホールキャノンの 準備も頼む」
ユアン「すでに使えるように してあります。どうかご武運を…」
リン「よし…。 ヒュッケバイン、起動する!」
(作戦目的表示)

〈2PP〉

リン「…様子見をしている敵がいる?  もしや、奴らは陽動部隊か?」

〈3PP〉

ユアン「社長! ヒリュウ改と ハガネが来てくれました!」
リン「!」
(イルム機が出撃、出撃準備)

Rシリーズが
出撃している 出撃していない


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