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裏切りの銃口 ~ 第30話 ~

《地球連邦軍極東支部伊豆基地》

[伊豆基地 司令部]

サカエ「『オペレーションSRW』の 推定彼我戦力差は6:1です」
レイカー(実際にそれをどこまでくつがえせるか……)
レイカー「リオンシリーズの生産作業は?」
サカエ「現在、イスルギ重工の各工場において 急ピッチで進行中です」
サカエ「…EOT特別審議会の 横槍さえ入っていなければ、 リオンシリーズに合わせて…」
サカエ「相当数の量産型ゲシュペンストMk-IIを 生産出来ていたのですが…」
レイカー「…現状では、より多くの生産ラインが 確保出来るリオンの量産を優先させるしかない」
サカエ「…DCや統合軍の兵器が 我が方の戦力の中核を成すとは…皮肉な話です…」
レイカー(だが、ビアン博士やマイヤー総司令は 今のような事態を見越し…)
レイカー(マオ社より遥かに規模の大きい イスルギ重工にアーマードモジュールの 生産ラインを確保させていたのだろうな)
オペレーター「司令、 ハガネとヒリュウ改が当基地へ帰還しました」
レイカー「わかった。 直ちに修理と補給作業を開始せよ」

[SRX計画ラボ]

ジョナサン「やれやれ、 どの機体もボロボロじゃないか」
ロバート「DCとの決戦は かなり激しかったようですね」
ジョナサン「ああ…」
カーク「次の作戦まで時間がない。 全ラインを同時に稼働させ、 一気にオーバーホールを行おう」
イングラム「カーク… Rシリーズのプラスパーツの調整は 終わったのか?」
カーク「すぐにでも装着が可能だ」
イングラム「カザハラ博士、 “OOC”のシミュレーションの結果は?」
ジョナサン「可もなく不可もなく…と言った所かな」
イングラム「では、 すぐにプラスパーツの装着作業を始めてくれ。 2日後にOOCのテストを行う」
カーク「了解した」
ロバート(これで何もなければ、 リュウセイ達を休ませてやれるんだが…)

[伊豆下田海岸]

エクセレン「リオちゃん、ガンバガンバ!」
リュウセイ「すげ~!  リューネ、めっちゃ速い!」
マサキ「あいつ、 水中モーターでも付けてんじゃねえのか?」
ブリット「いや、いくら何でもそんな…」
タスク「とか言ってる内に…」
ラトゥーニ「…勝負がついたみたい」
クスハ「二人とも、お疲れ様」
リューネ「…あたしの勝ちだね、リオ」
リオ「リューネにはかなわないなあ。 泳ぐの無茶苦茶速いんだもん。 オリンピックに出られるよ、きっと」
リューネ「小さい頃から、 親父に色々な特訓を受けさせられてたおかげだよ」
リオ「ふ~ん…だから運動神経がいいのね」
エクセレン「っていうか… 3時間しかお休みもらってないんだから、 のんびりすればいいのに」
エクセレン「ね~、ブリット君?」
ブリット「…クスハ、君は泳がないのか?」
クスハ「なんかリオとリューネに 圧倒されちゃって…」
エクセレン「ぐぬ……このナイスバディを無視?  ホントなら鼻血ビューなはずなのにぃ~」
タスク「ブリットはクスハの水着以外、 見えてないんスよ、きっと」
エクセレン「んん~、 キョウスケが付き合ってくれなかったから、 せめてブリット君に見せつけようと思ったのに」
タスク「俺がバッチリ見てるッス!  いや~、眼福眼福!」
リオ「…レオナがここにいなくて良かったわね」
シロ「いたら、ツッコまれてるニャ」
タスク「それでもいいから、 レオナちゃんの水着が見たかったなぁ…」
アヤ「ライもレオナも日焼けするのが 嫌だって言ってたものね…」
リオ「それにしても、 アヤ大尉とエクセレン少尉の水着って 大胆ですよね~」
アヤ「え? そ、そう?  ガーネットの見立てなんだけど…」
リオ「でも、実はそういうの趣味だったりして」
アヤ「どうして?」
リオ「ほら…制服はノースリーブ、 パイロットスーツもハイレグでしょ?」
アヤ「あ、あれは 私が頼んで作ってもらった物じゃないの。 それに、制服も上着があるのよ、実は」
エクセレン「何にせよ、その水着なら きっとイングラム少佐を悩殺できるわよん」
アヤ「そ、そうかしら?」
リュウセイ「でも、教官は動じなさそうだけどなぁ」
アヤ「………」
リュウセイ「ん? どうかしたか?」
アヤ「ううん、何でもないわ」
アヤ(リュウ…ごめんなさいね。 もう少ししたら、あなたに本当のことを…)
リューネ「ね、ね、マサキ! この水着、どう?」
マサキ「あ? 何でそんなこと俺に聞くんだ?」
クロ「マサキ、 もう少し気の利いたこと言えニャいの?」
マサキ「気の利いたことぉ?」
リューネ「ほら…可愛いなとか、似合ってるぜとかさ」
マサキ「…自分で言うなっての」
リューネ「ちょっと! 何なのよ、その反応!!  他に言うことないの!?」
マサキ「あ~わかったわかった。 うるせえな、ったく」
マサキ「いいか? 一度しか言わねえから、 耳の穴かっぽじってよく聞けよ」
リューネ「う…うん」
マサキ「よ~し…」
マサキ「可愛いな、似合ってるぜ」
リューネ「え? ホント?」
クロ(って、まんまニャ)
シロ(しかも、リューネは自分でネタふっといて、 真に受けちゃってるし)
ラトゥーニ「………」
タスク「でも、ラトゥーニが 俺達についてくるとは思わなかったなぁ」
ラトゥーニ「この水着…シャイン王女からもらったの。 眼鏡と一緒に…」
マサキ「なるほど、それでか」
エクセレン「ノンノン、マーサ。 ラトちゃんには水着を見せたい相手がいるのよん」
ラトゥーニ「そ、そんなこと…ないけど…」
マサキ「へ~、誰?」
リュウセイ「さあ…」
エクセレン(ど、どうしようもないわね~、 この鈍感君たちは)
リオ「例の服もそうだったけど、 ラトゥーニってフリルが似合うわよね」
リュウセイ「そうだなあ… 女の子のフィギュアみたいで可愛いよな」
ラトゥーニ「か、可愛い…?」
エクセレン「わお! リュウセイ君、今のナイス!  ランキングポイント、アップよん!」
リュウセイ「?」
クロ「でも、フィギュアって所が引っ掛かるニャ~」
ブリット「クスハも…その水着、似合ってるよ」
クスハ「ありがとう、ブリット君」
シロ「似合ってる大合戦になってきたニャ~」
エクセレン「まあ、初々しくていいんじゃなぁい?」
リュウセイ「そう言えば… ブリット、クスハ、例の大日本武士なんとかには 行ったのかよ?」
クスハ「ううん、まだなの」
ブリット「今日の休みがもっと長かったら、 行きたかったんだけど…」
リュウセイ「そうだな…。 俺もおふくろの見舞いに行こうと思ったんだけど… 3時間じゃ、ちょっとな」
アヤ「お母様と…連絡をとってるの?」
リュウセイ「PSLのこともあるから、たまにだけど。 でも、もうすぐ退院するんだ」
アヤ「そう…」
エクセレン「そろそろ時間ね。 名残惜しいけど、帰りましょっか」
リューネ「わかったよ」
アヤ「あ…リュウ、この後は…」
リュウセイ「SRXチームでミーティングだろ?  わかってるよ」

[伊豆基地 ブリーフィングルーム]

イングラム「昨日、R-2とR-3の プラスパーツの調整が終了した」
イングラム「お前達には明日、中国の演習場で “パターンOOC”のテストをやってもらう」
リュウセイ「OOC?」
イングラム「通常は封印されている Rシリーズの特殊戦闘パターンだ」
ライ「………」
イングラム「それによってR-1、 R-2パワード、R-3パワードは合体し…」
イングラム特機タイプの機動兵器…SRXとなる」
リュウセイ「合体…SRX…!」
イングラム「そう。 トロニウム・エンジン、ゾル・オルハルコニウム、 T-LINKシステムを用いた武器の威力は絶大だ」
リュウセイ「……!」
イングラム「どうした?」
リュウセイ「教官… そのT-LINKシステムについて 聞きたいことがあるんだ」
イングラム「………」
アヤ(リュウ…)
リュウセイ「あれは、 操縦系やFCSの補助システムだって 聞いているけど…本当なのか?」
イングラム「何故、そんなことを聞く?」
リュウセイ「前にリョウトが言ってたんだ… T-LINKシステムを使うには、 特殊な能力がいるんじゃないかって」
イングラム「その根拠は?」
リュウセイ「クスハがグルンガスト弐式の パイロットに選ばれたことさ」
リュウセイ「あいつは俺やリョウトと違って、 バーニングPTをやってなかった」
リュウセイ「そして、 リオみたいにシミュレーター訓練を やってたわけでもねえ」
イングラム「クスハも 特別訓練プログラムをこなしたぞ」
リュウセイ「じゃあ、 なんで教官は看護兵だったあいつを 特機のパイロットにしようと思ったんだ?」
リュウセイ「もしかしたら… あいつがT-LINKシステムを使える能力を 持ってたからなんじゃねえか?」
イングラム「フッ…」
リュウセイ「な、何がおかしいんだよ?」
イングラム「いや、感心したのだ。 お前がそこまで考えるようになったことに」
リュウセイ「………」
イングラム「すまなかった、リュウセイ」
リュウセイ「え……」
イングラム「T-LINKシステムは SRX計画の中でも重要な機密事項でな…」
イングラム「OOCのテストを行うまでは、 お前達に教えるわけにはいかなかったのだ」
リュウセイ「………」
ライ「………」
イングラム「あのシステムの詳細については、 明日のテストが終わった後、教えてやる」
リュウセイ「だ、だったら、いいんだけど…」
ライ「…待って下さい」
アヤ「!」
イングラム「何だ、ライ?」
ライ「T-LINKシステムの詳細を知らぬまま、 OOCのテストを行っても大丈夫なのですか?」
イングラム「ああ。 現にリュウセイとアヤはシステム搭載機で 何度も実戦を経験している」
ライ「しかし…」
イングラム「むしろ、問題なのは トロニウム・エンジンの方だ」
イングラム「合体後の出力調整は オートで行われるが…」
イングラム「より効率的に戦闘を行うには、 状況に応じた補正が必要となる」
ライ「話題をすり替えないで下さい、少佐。 自分はT-LINKシステムについて 聞いているのです」
イングラム「…答えは同じだ。 明日のテスト後、説明を行う」
ライ「………」
ライ「…わかりました。では、明日に」
イングラム「…ライ、そしてリュウセイ。 お前達が俺の考えについて疑念を 持っているのはわかる」
イングラム「だが、これはSRX計画の性質上、 仕方のないことなのだ」
リュウセイ「わかったぜ、教官。 まず、OOCのテストを成功させろってんだろ?」
イングラム「そうだ。 俺はお前達なら出来ると信じている」
イングラム「俺が選抜したお前達なら、な」
リュウセイ「ああ…必ずやり遂げるさ」
イングラム「では、お前達は自分の機体の 最終点検に立ち会ってくれ」
ライ「…了解です」
リュウセイ「よし…行こうぜ、ライ」
(扉が開閉する・リュウセイ、ライが立ち去る)
アヤ「イングラム少佐…」
イングラム「何だ?」
アヤ「先程おっしゃったこと…信じていいんですね?」
イングラム「ああ… 約束通り、全てを彼らに話そう」
アヤ「ありがとうございます、少佐…」
イングラム「アヤ…OOCが成功するかどうかは、 お前にかかっている」
イングラム「お前がT-LINKシステムを フルドライブさせ、念動フィールドを展開しなければ… リュウセイとライに危険が及ぶ」
アヤ「わかっています…。 必ず成功させてみせます」
アヤ「母や妹の死を無駄にしないためにも…」
アヤ「そして、あなたのためにも全力を尽くします」
イングラム「それでいい。お前なら…出来る」
アヤ「はい……」

《北京(移動中・ヒリュウ改)》

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ショーン「艦長、本艦とハガネは 間もなく北京上空に差し掛かります」
レフィーナ「わかりました」
ユン「この辺りは 全く被害を受けてないんですね」
カチーナ「首都クラスの都市は 眼中になしってことかよ。 …普通、逆じゃねえか?」
ラッセル「日本でも大阪は被害を受けましたが、 東京は無事ですし…」
ラッセル「ホワイトスターに最も位置が近い スペースコロニーや月も、攻撃を受けていないと 聞いています」
ショーン「さらに、 軍の施設も支部クラスの基地は 未だに無傷ですからな」
カチーナ「奴らはあたし達を 生殺しにするつもりなのかよ?」
レフィーナ「いえ…。彼らは こちら側の戦力を消耗させないように しているのかも知れません」
ショーン「艦長のおっしゃることにも 一理ありますな」
ユン「どういうことなんです?」
ショーン「彼らは、その気になれば空間転移で 地球のどこにでも戦力を送り込むことが出来ます」
ショーン「にも関わらず、我々のような対抗戦力の 先鋒を潰しにかかって来ない…」
ショーン「これは手加減をされていると 考えてもいいでしょうな」
ユン「手加減? 何のためにです?」
ショーン「占領後のことを考え、 地球側の被害を最小限に 抑えようとしているためか…」
ショーン「あるいは、 我々との戦いを楽しむためか…」
ショーン「何にせよ、釈然としませんな」
レフィーナ「………」

[ハガネ ブリーフィングルーム]

アヤ「ヴァリアブル…? 何、それ?」
リュウセイ「ヴァリアブル・フォーメーション。 俺が考えた合体の時の合い言葉さ」
アヤ「やっぱりね…。 いかにもあなたが考え付きそうなことだわ」
ライ「ヴァ、ヴァリ…?  大尉、どういうことなんです?」
アヤ「私も詳しくはないんだけど… 日本のロボットアニメじゃね、 合体する時に声をかけるらしいのよ」
エクセレン「あ、それ…聞いたことがあるわ。 レッツ何々とか、パイル何々とかって 言うんでしょ?」
リュウセイ「そうそう。 …ちなみに、パイルなら合身な」
ライ「…掛け声など、ナンセンスだな」
リュウセイ「何だと!?  てめえにゃスパロボ魂ってモンがねえのかよ!」
ライ「ない」
リュウセイ「いや、そんな…あっさりと」
アヤ「はいはい、二人ともそこまでよ。 もうすぐで演習区域に着くから、準備よろしくね」
ライ「了解です」
(アラート)
アヤ「!?」

[ハガネ ブリッジ]

エイタ「敵機多数、 本艦上空に転移出現!」
テツヤ「敵の狙いは本艦なのか!?」
エイタ「いえ、違います!  北京市街地区へ降下しています!」
テツヤ「何っ…!」
ダイテツ「総員、第1種戦闘配置!  SRXチーム以外のPT部隊を出撃させろ!」
イングラム「艦長、我々も出撃します」
ダイテツ「だが、お前達の機体は…」
イングラム「分離状態なら、戦闘は可能です。 ただ、出撃までに少々時間がかかりますが…」
ダイテツ「いいだろう、任せる」


第30話
裏切りの銃口

〔戦域:北京市街〕

母艦出撃選択
ハガネ ヒリュウ改


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