ユン「駄目です、艦長…。
ハドリー・バレーのセレネ基地、応答ありません」
レフィーナ「そうですか…」
ショーン「すでに制圧されたと見て間違いないですな」
リン「セレヴィス・シティの様子は？」
ユン「コロニー統合軍艦隊によって
包囲されていますが…攻撃は受けていないようです」
ショーン「ふむ。
今となっては、地球からの援軍も絶望的…。
我々は完全に孤立しましたな」
レフィーナ「…ええ……」
ショーン「さて、いかがなさいます？
このムーンクレイドルでほとぼりが
冷めるまで待ちますか？」
ショーン「それとも、
玉砕覚悟で統合軍本部があるエルピスへ
突撃致しますか？」
レフィーナ「…少し考えさせて下さい…」
（扉が開閉する・レフィーナが立ち去る）
ユン（レフィーナ……）
ショーン「………」
リン「ショーン少佐、少し言い過ぎでは？」
ショーン「わかっております。
しかし、指揮官に迷いがあっては、全体の士気に
影響致します」
ショーン「レフィーナ艦長には
そろそろ本当の意味での覚悟を決めて
もらいませんと…」
リン「彼女はまだ若い。
荷が重すぎると思うが…」
ショーン「私と前任の艦長、ダイテツ・ミナセ中佐が
かつて体験した航海は今以上の修羅場でした」
ショーン「それに…
所詮、ここは地球を目視出来る宙域…
言わば、玄関先のようなものです」
ショーン「太陽系外宙域で遭遇する危機に比べれば、
今の状況など生やさしいものですな」
リン（そうか…。
このヒリュウ改は元々、外宇宙探査計画で
建造された艦だったな）
ショーン「現状に耐えられぬのなら、
レフィーナ艦長はそれまでの人材だった…
ということです」
ショーン「代わりの人間を選び出すしかありませんな」
ユン「……！」
ユン「副長、自分は用事がありますので、
少し席を外します」
ショーン「は？ 任務中に何を…」
ユン「失礼します」
（扉が開閉する・ユンが立ち去る）
ショーン「ユン伍長…。やれやれ」
リン（フフ…そう仕向けておいて、
よく言う）
レフィーナ（…………）
レフィーナ（…今まで何とか
頑張って来たつもりだけど……）
レフィーナ（もう無理かも知れない…。
艦長を務めるのは……）
（扉が開閉する）
ユン「艦長…」
レフィーナ「あ、ユン伍長……。
ど、どうしたのです？」
ユン「艦長のことが気になって…」
レフィーナ「…二人だけの時は
そういう呼び方をしなくてもいいですよ」
レフィーナ「あなたは私より１つ年上ですし…
航宙士官学校の同期なんですから」
ユン「じゃあ、部下としてではなく、
同期生として言わせてもらいます」
ユン「つらいのはわかりますが…
逃げるのは卑怯ですよ？」
レフィーナ「……！」
ユン「確かに、この艦のクルーは、
自分やあなたを含めて大半が訓練生上がり…」
ユン「でも、
今まで何とか頑張って来たじゃないですか」
ユン「だから、ここまで来て…
つらいから、無理だからと言って逃げ出すのは
卑怯だと思います」
レフィーナ「………」
ユン「…では、任務に戻ります。
差し出がましいことを言って
申し訳ありませんでした、艦長」
（扉が開閉する・ユンが立ち去る）
レフィーナ「………」
ギリアム「…これがあのヒュッケバインの量産試作型。
実物を見るのは初めてだな」
ラーダ「常務、１号機は無事だったんですね？」
ユアン「うむ。２号機は統合軍へ渡したが…
この機体だけは何とかここへ運び込むことが出来た」
ラーダ「残りの３号機は…
連邦軍のトライアルに回したままですか？」
ユアン「ああ。今となっては無事かどうか…」
ギリアム「見たところ、
量産型ゲシュペンストＭｋ－IIのパーツが
多く使われているようですね」
ユアン「それを見破るとは…
さすがは元教導隊の方ですな」
ギリアム「…理由は量産を踏まえてのコストダウンと、
例の暴走事故ですね？」
ユアン「ええ……」
ラーダ「………」
ユアン「しかし、このＭｋ－IIはＭｋ－Iの
悲劇を繰り返さぬよう、慎重に検討を重ねて
作られた機体であり…」
ユアン「我が社の自信作です。
少し扱いずらいのが玉にキズですが」
ラーダ「常務、この機体…
出来ればヒリュウ改で使いたいのですが…」
ユアン「しかし、１号機には試作的に
例のシステムが取り付けられている。
…適格者はいるのかね？」
ラーダ「…素質を持った子はいます」
ラーダ「それに、通常時はリンクを切っておけば、
調整次第で私達でも使うことが可能です」
ユアン「わかった。
なら、社長に掛け合ってみよう。
もっとも、答えは決まっていると思うがね」
キョウスケ「………」
エクセレン「んふふ～、キョウスケ…
アルトちゃんのライバル機が気になってるご様子ね？」
キョウスケ「ああ。
ラドム博士が次期主力ＰＴの座を争っていた相手だ…」
キョウスケ「この目で見ておこうと思ってな」
エクセレン「…博士達、大丈夫かしら？」
キョウスケ「リシュウ顧問も一緒だ。
…無事を信じたいが…何とも、な」
ラッセル「皆さん、ここにいたんですか？」
エクセレン「あらん、どうしたの？ ラッセル君」
ラッセル「これからのことについて、
艦長から発表があるそうです」
キョウスケ「艦長から…？」
レフィーナ「…現在の状況は皆さんも
ご承知のとおりです」
レフィーナ「さらに、セレス基地やマオ社を
制圧された以上…本艦だけで統合軍を倒すことは
不可能です」
ショーン（………）
ギリアム（確かに、彼我戦力差は如何ともし難いが…）
カチーナ（まさか、
投降しようなんて言い出すんじゃねえだろうな…）
レフィーナ「…ですが、
私はこのままムーンクレイドルの中に
隠れ続けるつもりはありません」
レフィーナ「本艦の戦力で、
出来るだけのことをしようと思っています」
ギリアム「では、何をするというのです？」
レフィーナ「第三次防衛線上の
宇宙ステーション『コルムナ』を奪回します」
カチーナ「コルムナだぁ？
そんなもん奪い返して何になるってんだ？」
レフィーナ「あそこには
通信衛星の予備制御システムがあります」
レフィーナ「それとネットワームを併用すれば、
連邦軍の各種衛星の機能を復活させることが出来ます」
ギリアム「なるほど。
開戦当初、ＤＣや統合軍に奪われた通信衛星や
偵察衛星を奪回する…と？」
レフィーナ「はい。
そうすれば、地上の連邦軍は作戦行動を
取りやすくなりますので」
ショーン（…お見事、艦長。
それがベストの回答です。…成長なされましたな）
レフィーナ「ただし、
この作戦は無謀かつ非常に危険です」
レフィーナ「敵もコルムナの重要性を承知し、
強固な防衛網をしいているはずですから」
タスク「俺達だけで突撃かぁ…。
命がいくつあっても足りねえぜ」
ブリット「でも、
成功させれば、地上の戦況が好転するかも知れない」
タスク「ああ。ところで…」
タスク「ちょいちょい、エクセ姉さん。
…賭けねえッスか？」
エクセレン「何を？ 私のハート？
いやあねえ、お・ま・せ・さ・ん」
タスク「むしろいらねえッスよ！
作戦が上手くいくかどうかッスよ！」
キョウスケ「乗った。…問題あるまい。
いつも通りにやればな」
タスク「少尉も？ さ、参考までに…
どっちに賭けるんスか？」
キョウスケ「無論、分の悪い方だ」
タスク「や、やっぱり？
っちゃ～、こりゃヒデエ目に遭うこと
間違いなしだな」
キョウスケ「…どういう意味だ」
レフィーナ「ヴィレッタさん、ラーダさん…
あなた方はこのままムーンクレイドルに残って下さい」
ヴィレッタ「いえ、私達も行くわ。
戦力は少しでも多い方がいい」
ヴィレッタ「それに…私とラーダなら作戦目的に
適したネットワームを作成することも出来る」
レフィーナ「しかし、
あなた方は民間人です。これ以上は…」
ラーダ「構いませんわ、艦長。
この艦に愛着もありますし…」
ラーダ「まだ、みんなにヨガの素晴らしさを
伝えきれていませんもの」
エクセレン「伝えきられたら最期ね…」
ヴィレッタ「…ともかく、私達も作戦に参加するわ」
レフィーナ「すみません…」
ショーン「感謝致します。
これで艦内もより華やいで何よりですなあ」
レフィーナ「…副長？」
ショーン「…ゴホン。
では、早速出航準備に取りかかりましょう」
ラーダ「ブリット君、少しいいかしら？」
ブリット「す、すみません。
俺、体固いんでヨガはちょっと…」
ラーダ「あの…そんなに脅えた目をしなくても…」
（ヒリュウ改が出現）
ユン「艦体、クレイドルから離脱。
主機、補機ともに問題なし」
レフィーナ「わかりました」
ユアン「あの、レフィーナ艦長…
お願いしたいことがあるのですが…」
レフィーナ「何でしょう？」
ユアン「コルムナを奪回されましたら、
今からお送りするメールを転送して
頂きたいのですが…」
レフィーナ「機密文書ですか？」
ユアン「い、いえ…
そんな大層な物では。もちろん、
余裕があればで結構ですので…」
レフィーナ「わかりました」
リン「リオ宛か？
相変わらず心配性だな」
ユアン「社長こそ…
イルムガルト・カザハラ中尉へ
何も送らなくていいんですか？」
リン「な…？
そ、そんな必要はない」
エクセレン「わお！
もしかしてもしかすると…その人って
シャッチョーの恋人さん？」
ユアン「そうですよ」
リン「常務！」
ユアン「ただ、
イルム中尉が浮気をして…
今は断絶状態みたいですけど」
エクセレン「…わかりやすいわねえ」
キョウスケ「…エクセレン、
大事な協力者を怒らせるな」
ユアン「社長も冷たいですねえ…。
もう許してあげてもいいのでは？」
リン「駄目だ。
あの男は…甘やかすとつけ上がる」
ユアン（浮気と言っても…
ウチの女性社員とお茶を飲んで
いただけなのに…）
リン「では、レフィーナ艦長…
貴艦の幸運を祈る」
ユアン「ラーダ、ヴィレッタ…
君達も気をつけてな」
ヴィレッタ「ええ」
ラーダ「常務達も…ご無事で」
（アラート）
ユン「艦長、敵機が降下して来ます！」
レフィーナ「こちらの
動きに気づいたようですね…！」
（敵機が出現）
レフィーナ「各機、出撃して下さい！」
（出撃準備）
タスク「？
ブリットの奴はどうしたんだ？」
ラッセル「さあ…？
先程、ラーダさんと何か話していた
ようですけど」
タスク「そういや、姉さんもいねえな」
エクセレン「わお、
もしかして…戦場のロマンス中？」
カチーナ「あの二人が？ …想像できねえ。
折り曲げられてるだけじゃねえか？」
ラッセル「…そ、そうかも知れませんね…」
ショーン「敵の数と配置…。
波状攻撃を仕掛けてくるつもりかも
知れませんな」
レフィーナ「ええ。
ぐずぐずしていたら、ここから
脱出できなくなってしまいます」
レフィーナ「本艦はあと６分以内に…」
（離脱位置を指す）
レフィーナ「ここへ到達し、
この宙域から離脱します！」
キョウスケ「敵はヒリュウ改の行く手を
阻んでくるはずだ。
…おれ達で露払いをするぞ」
エクセレン「オッケ～！
んじゃ、行ってみましょか！」
（作戦目的表示）
レフィーナ「あと５分です！」
（敵機が出現）
ショーン「やはり、波状攻撃…。
増援はあれだけではないでしょうな」
レフィーナ「ＰＴは本艦の前方へ
回り、敵機を撃墜して下さい！」
レフィーナ「あと４分以内に
目標ポイントへの到達を！」
（敵機増援が出現）
タスク「チッ、まずいな。
この調子で敵の数が増えたら、
ヒリュウ改がやられちまうぜ」
キョウスケ「数の不利は承知だ。
…だが、押し切るしかあるまい…！」
レフィーナ「あと３分以内に
目標ポイントへの到達を！」
（敵機が出現）
ユン「敵艦出現！ 新型です！！」
レフィーナ「脱出ポイントを
囲まれた…！？」
ショーン「まずいですな。ここで
足止めを食らったら、さらなる
集中攻撃を受けることになります」
レフィーナ「くっ…！
なら、一気に敵艦を沈めなければ…」
（ハッチ解放）
ユン「艦長！
カタパルトから発進する機体が！」
レフィーナ「！」
（飛行音、ヒュッケバインＭｋ－IIが出現）
キョウスケ「あれは…
ヒュッケバインＭｋ－II…！」
エクセレン「わお！ もしかして、
乗ってるのはブリット君！？」
キョウスケ「…もう使えるのか？」
ブリット「うっ…く…！
こいつ、押さえ込むだけで精一杯だ…」
ラーダ「テスラ・ドライブは
積んでいないけど、ヴァイス並の
機動力を持った機体よ」
ラーダ「だから、操縦はいつも以上に
細かく…。わかったわね？」
ブリット「は、はい…！」
エクセレン「へ？
ラーダさんも一緒なの？」
エクセレン「ちょ、ちょっと！
不純よ、ブリット君！
先生、そんなの許しませんよ！」
ブリット「え？
そ、そんなことを言われても…」
タスク「それよか、
ＰＴの狭いコックピットに、
どうやって二人も乗ってんだ？」
ラッセル「も、もしかして…」
ブリット「あ、あの…ラーダさん。
その姿勢で大丈夫…ですか？」
ラーダ「心配はいらないわ。
体の柔らかさには自信があるもの」
ブリット（み、見ててちょっと
怖いんだけど…そのポーズ…）
ラーダ「それより、ブリット君…。
精神を集中させなさい。
私も手伝ってあげるから」
ブリット「え？ 手伝うって…」
ラーダ「いいから、心の中で念じるの。
自分が機体と一体になるように…」
ラーダ「そして、感じ取りなさい。
敵の存在を…その動きを…」
ブリット「………」
（閃光・念動感応）
ブリット「！ 何だ、この感じ…？」
ヴィレッタ（…例の力が開化しつつ
あるようね）
ヴィレッタ（タイプＴＴを
ＡＴＸ計画へ送って正解だったわ）
ブリット「…何かに
手が届きそうな感覚…もしかして、
これが敵機の反応…？」
ラーダ「そう、
その感じを忘れないで。ブリット君」
ブリット「わかりました。行きます！」
レフィーナ「あと２分以内に
目標ポイントへの到達を！
急いで下さい！」
レフィーナ「あと１分しかありません！
早く目標ポイントへ！！」
（ヒリュウ改が離脱位置へ移動する）
ショーン「艦長、
本艦は目標ポイントへ到達しました」
レフィーナ「機関、最大戦速！
この宙域から離脱します！」
タスク「やるじゃねえか、ブリット」
ブリット「いや、ラーダさんがいてくれたおかげだよ」
カチーナ「ヘッ、ヒュッケバインには
気をつけた方がいいぜ、ブリット」
ブリット「どういう意味です？」
カチーナ「あいつの前の機体…
つまり、Ｍｋ－Iはな…」
カチーナ「初のＥＯＴ搭載型
パーソナルトルーパーだった」
タスク「ＥＯＴって…メテオ３から発見された、
異星人の超技術って奴ッスよね？」
カチーナ「そうさ」
カチーナ「そして、Ｍｋ－Iには
そいつを応用した『ブラックホール・エンジン』が
組み込まれていた」
ブリット「ブラックホール・エンジン……」
タスク「何かヤバそうな名前だな」
カチーナ「ああ。実際、ヤバかったのさ」
カチーナ「ヒュッケバインは機動実験中に
暴走事故を起こし…基地一つを吹っ飛ばしやがった」
ブリット「！」
カチーナ「テストパイロットは大ケガを
負っただけで済んだらしいが…」
カチーナ「その事故のせいで
ヒュッケバインについたアダ名が
『バニシング・トルーパー』…」
カチーナ「ま、Ｍｋ－IIにブラックホール・エンジンは
積まれてないようだが…」
カチーナ「用心することに越したことはねえぜ？」
ブリット「………」
カチーナ「ビビッちまったんなら、
このあたしか代わってやるぜ？
いわく付きの機体…面白えからな」
タスク「ああ、それなら吹っ飛んでもいいや」
カターナ「何か言ったか？ タスク。
…お前が消えてみるか？」
タスク「冗談です～ぅ」
ブリット「…カチーナ中尉、
自分はヒュッケバインＭｋ－IIを
使いこなしてみせます」
ブリット「これからの戦いを生き抜くために…！」
カチーナ「ヘッ、
それだけ根性が座ってんならいいだろう。
…ま、頑張りな」
ブリット「は、はい！」
『アポジモーター』を入手した。
『サーボモーター』を入手した。
『ビームコート』を入手した。