ブライト「……それで、今後のことだが……」
(扉が開閉する)
アラン「遅れてすまない」
アムロ「アラン、万丈のほうはどうだ?」
アラン「なんとか立て直したというところだな。
組織力という点では
期待できないが、その分
マーチウィンドに集中して
バックアップできるだろう」
クワトロ「ほう、それは朗報だな」
ブライト「うむ。それで、現在の情勢だが、
かなり混乱している
いちおう地上の大部分は
ロームフェラの管理下にあり
難民キャンプの設立なども
行ってるが、サンクキングダムをはじめ
独力で復興を始める地域も
ではじめている」
クワトロ「ふむ、このままだと
無数の都市国家が
乱立することになるな……」
アムロ「ああ……徒党を組んで
略奪できるような連中もな
トレーズが予想した通りか……」
ブライト「そうだな。宇宙では一部コロニーで
OZの駐留部隊に対する
テロ活動が起こっているらしい。
そのOZだが、どうやら
完全に内乱状態に
なっているようだ」
アラン「ロームフェラ派とトレーズ派か。
しかしトレーズ派はそれほど数が
多いとも思えないが、長びくな。
もっともその方がこちらには
都合がよいわけだが……」
ブライト「トレーズ派にはスペシャルズ時代の
基礎を築いた連中が多い
OZの中でも選りすぐりが
集っていると見て間違いない
それに、防衛に徹しているからだろう」
アムロ「そういえばブライト、スウィートウォーター
から何かいってきてなかったか?」
ブライト「OZが大規模な作戦の準備を
しているらしいということだがな
詳しいことはわからんよ」
甲児「しっかしわかんねぇな。
なんだってトレーズの奴は
総帥から降ろされちまったんだ?」
忍「俺が知るかよ。ごちゃごちゃしたこと
考えんのは苦手なんだ
目の前の戦いに勝てば、
道は開ける」
亮「ことわざにいわく、
バカの耳に念仏」
忍「亮、てめぇ俺に
ケンカ売ってんのか!?」
ハヤト「それが悪口であるということは
わかるようだな」
エマ「おやめなさい! まったく」
銀鈴「もう、あなたたち、よくいつもいつも
同じことしててあきないわね」
甲児「あっ、銀鈴さん!
どこに行ってたんですか?」
銀鈴「うふふ、大作くんとデートしてたのよ」
甲児「えぇーっ!? そんなぁ」
シモーヌ「ウソに決まってるでしょ、バカね」
ルー「ほんと甲児ってしょうがないわね。
さやかに、いいつけるわよ」
甲児「な、なんだよ、
さやかさんは関係ないだろう」
銀鈴「まあそれはそれとして。
ちょっと調べものをしてたんだけど
面白いことがわかったのよ」
リョウ「面白いもの?」
銀鈴「そう。トレーズ・クシュリナーダの
居場所とかね」
亮「ほう、それは確かに面白いな」
ハヤト「なるほど、ロームフェラに逆らった
トレーズは幽閉されているというわけか」
銀鈴「ええ。だからあちこちで反乱を
起こしてるトレーズ派っていうのは
みんな自主的にそうしてるのよ。
組織だっていない分
士気はすごく高いわ」
甲児「へぇ、あんなカッコつけた野郎の
どこがそんなにいいんだ?」
シモーヌ「あんたよりはずーっとマシだわよ」
ルー「でも変ね。トレーズは
ロームフェラの幹部で
OZを作りあげてきた奴でしょ。
いったいどういう理由で
ロームフェラのやり方に
反対したのかしら」
ジュドー「そりゃ、あれだろ。なんかさ、
嫌な奴でもいたんじゃないの?」
エル「バカね。そんなことぐらいで
どうこうするもんでもないでしょ」
デビッド「ロアン、お前なにか知らないのか?」
ロアン「難しいな。トレーズは
自分の真意を
あまり見せる人間じゃなかったからね」
デュオ「じゃ、あれだ、
エレガントじゃなかったんだぜ、きっと」
ルー「何がよ? あんたも適当なこと
ばっかりいってんじゃないの!」
エイジ「だけど、気になるな。良くも悪くも
トレーズの影響力は無視できない」
デュオ「ああ、確かにな。居場所は
わかってるんだ。せっかくだから
直接ご対面というのはどうだい?」
アーク「そうだな……行ってみるか。あの男の
行動の理由も知りたいしな」
ブライト「そうか……わかった、許可しよう。
気になることではあるしな
だたし、行くのは少人数に
とどめておいてくれ
いざというときに動けなくては困る」
エイジ「わかりました」
アムロ「銀鈴のいっていた場所は
トレーズ派とロームフェラ派の
交戦区域だ。
気をつけた方がいい」
デュオ「ああ。そんじゃま、行ってくるぜ」
(トレーズ派とロームフェラ派が出現)
スペシャルズ「くそっ、待ちぶせされていたか。
しかも新型の投入とは恐れいる」
スペシャルズ「裏切り者どもめ、かかったな。
全機、散開して敵を叩け!」
(アーク、デュオ、エイジ、甲児出現、出撃選択・6機)
デュオ「ちっ、派手にやってやがるぜ」
甲児「トレーズがいるってのは、あそこか。
どうするんだよ」
エイジ「とりあえずロームフェラ派を叩こう。
話はそのあとだ」
アーク「了解!」
スペシャルズ「なに!? 奴ら、
マーチウィンドか!
くそっ、なぜここに。ええい、増援を
出せ! 奴らを迎撃しろ!」
(北西に敵機増援が出現)
スペシャルズ「マーチウィンドが我々を
援護してくれるというのか……?
よし、いけるぞ!」
スペシャルズ「よし、いけるぞ! レッドワン、
別働隊を率いて突入せよ!」
(山間部にエアリーズ、アッシマー×2、マラサイ×2が出現)
ヒイロ「了解した。これより攻撃を開始する」
デュオ「レッドワンって…………
お前、まさかヒイロか!?」
ヒイロ「……デュオ・マックスウェルか。
何しに来た」
デュオ「何しにってお前……
ちょっとトレーズに会いにな」
ヒイロ「トレーズに? そうか」
デュオ「それよりお前こそ、こんなところで何
やってんだよ!? ガンダムはどうした!?」
ヒイロ「お前には関係ない」
デュオ「おい、いくらお前でも
エアリーズじゃ無茶だぜ!?」
(トレーズ邸の前)
(全ての味方機が集結している)
セキュリティ「システム起動……ドアハ
ロックサセテイマス。姓名ヲ述ベヨ」
ヒイロ「……ヒイロ・ユイ」
デュオ「おいおい、大丈夫かよ」
甲児「いきなりレーザーでビビーッなんてのは
ごめんだぜ!?」
セキュリティ「声紋ヲ確認。ヒイロ・ユイ……
登録アリ。ロック解除」
(扉が開閉する)
エイジ「どうやら登録されていたらしいな……
どういうことだ」
ヒイロ「奴ならやりかねない」
(足音)
デュオ「おい、ちょっと待てって!」
???(トレーズ)「よく来てくれた
マーチウィンドの諸君
我が愛する平和の使者たちよ。
心から歓迎する」
ヒイロ「トレーズなのか」
トレーズ「問いただすまでもない。私を撃つのか
ヒイロ・ユイ? それもいいだろう
さぁ、撃ちたまえ」
ヒイロ「俺はお前の命に興味などない」
エイジ「トレーズ。俺たちはあんたに
聞きたいことがある。だからここへ来た」
トレーズ「聞きたいこと?」
甲児「そうだぜ。お前は
ロームフェラの幹部だ
OZの総帥として、
さんざんオレたちを苦しめた
なんでいまさらロームフェラに反抗して
こんなところに幽閉されるんだよ!?」
トレーズ「フッ、つまらぬことだ。君たちは
平和のことだけを考えていればよい
この地球圏の平和をな」
ヒイロ「俺は戦うことしか考えていない。
平和など
戦いが終わったあとの
結果でしかない」
トレーズ「では聞こう。君たちの敵とはなんだ?
異星人の帝国か? 私か?
OZか? ロームフェラ財団か?
それともそのすべてか?
ならばそれは“運命”と
同じ意味だ」
アーク「だから、何だ? それでも、今の
俺たちには戦い続けるしかないんだ」
トレーズ「だが、その戦いに決着はつかない。
そして今
君たちは自らの歩む道を
見失いかけている。違うかね?
それは私と同じなのだ。
私の戦いはすでに終わっている」
エイジ「それが、あんたが黙って
ここに幽閉されている理由か」
ヒイロ「終わってなどいない。今もお前のため
に大勢の兵士たちが死んでいる」
デュオ「そうだ。お前の戦いは
終わっちゃいない
そして俺たちの戦いも
まだ終わらせるわけにはいかないんだ」
トレーズ「…………私は戦いつづけることが
人間の存在意義だと
考えていた。だが、残念ながらそこに
答えを見い出すことができなかった
私の戦いは終わっている。だが
戦いという行為には
回答をみつけねばならないのかも
しれないな」
アーク「トレーズ! お前はいったい
何を考えている!?」
(爆音、震動)
甲児「うっ、なんだ?」
(通信)
エイジ「どうしたレイ!?」
レイ「アラームメッセージ。
敵対機多数接近中」
エイジ「敵の第2波か」
レイ「アラーム!
敵対機レンジ1ニ侵入!」
(敵機増援が出現、屋敷に爆煙、震動)
トレーズ「そろそろ行きたまえ。そして、死ぬな。
戦って、行き続けるのだ
君は、君たちは死んではならない。
おぼえておきたまえ
君たちは、私を殺すまで
勝手に死ぬことを許可しない」
アーク「トレーズ!」
(爆音、震動)
甲児「うわっ、やばいぜ。
もうだめだ、脱出しよう!」
アーク「くっ……」
(速い足音)
トレーズ「ヒイロ・ユイ。君には
今後の生き方を示す
道しるべを用意した。使ってくれ。
名を、エピオンという」
ヒイロ「……いいだろうトレーズ」
(爆音、震動)
トレーズ「私には選択すべき未来は
存在しなかった。見せてくれたまえ
君たちの戦いを。この地球圏の
……君たちの未来を」
(エピオンが出現)
レイ「アラームメッセージ」
エイジ「どうした!?」
レイ「OZ輸送シャトル多数、
大気圏ニ突入
降下予想地点、
現在位置ヲ中心ニ
直径10Km以内」
エイジ「機動兵器の搭載機数は!?」
レイ「50プラスマイナス5ト推定。
生存確率30.7%
アラーム!」
甲児「なんだよおい!
どういうことだ、エイジ!?」
エイジ「OZの降下作戦だ。
みんな、撤退するんだ!
この様子だと、退路を断たれる」
デュオ「ちっ、しゃーねぇか。ここはいったん
引きあげようぜ……っておい、ヒイロ!」
ヒイロ「……好きにしろ。俺はやることがある」
(飛行音)
デュオ「あいつ、また行っちまいやがった」
甲児「オレたちも急ごうぜ」
デュオ「ああ、そうしよう」
ブライト「そうか、結局トレーズの真意は
わからなかったか」
甲児「ああ。なんだか
わけのわからないことばかりいってたぜ
おまけにOZの大軍が
降りてきやがってさ」
クワトロ「我々もそれは確認している。
OZの地球降下作戦が
開始されたのだ」
リョウ「さきほどいっていた
オペレーション・ノヴァ、ですね」
クワトロ「そうだ。連中はこれで
地上の各地を
完全に制圧するつもりでいる」
鉄也「そうなると、当然
このジャブローと俺たちも
最優先目標の1つだな」
アムロ「そう考えて間違いはないな。
だがそうなってくると、この基地を
占拠したことが有利に働く。
防衛は多少楽になる」
エイジ「そうですね。そう思います」
バスク「シュターゼン上級特尉、
いったいどういうことか
貴官は降下作戦に
参加していたはずだな」
エルリッヒ「は、申し訳ありません。
機体のトラブルで
作戦開始に間に合わず……」
バスク「なめるな!」
(殴る)
エルリッヒ「くっ……」
バスク「小細工をしおって。
貴様はこの作戦に
反対であったと聞いておるぞ。
トレーズ派のスパイではあるまいな」
エルリッヒ「違います。私はただ、トレーズ派と
いえど同じOZの兵士であると
いうこと、過剰な軍事力による
地上制圧は現在の状況では
逆効果ではないかと考えただけです
地球圏の
早期再建のためには……」
バスク「黙れ!」
(殴る)
バスク「貴様の意見など聞いておらん」
エルリッヒ「はっ……」
バスク「まあ、そんなことはどうでもよい。
貴様は第二次降下作戦に
参加してもらう。
目標はジャブローだ」
エルリッヒ「お待ちください、特佐!」
バスク「確か貴様は、地上に恋人が
おったな。命令を拒否するのは
かまわんが、その場合、女の
安全は保証されない。わかったな」
エルリッヒ「くっ……バスク・オム……あなたはッ!」
バスク「女を助けたければ、貴様が
役に立つということを、みせるのだな」
エルリッヒ(小を殺して大を生かす……
地球圏再建のためには
それしか方法はないのだと、私は
自分に言い聞かせ続けてきた
たとえ非難の対象となろうとも、
結果さえ得られれば
よいと思っていた。だが……
理念を持って生まれでたはずの
OZも、いまや過去の遺物に
すぎぬのか。私は……私はこんなものの
ために戦ってきたのではなかった
はずなのに)
エルリッヒ(……あの少年……彼は
私を笑うことだろう。
この愚かな私を。すまんアリンディーネ
私はみずからの愚かさの代償を
支払わねばならん……)
???(レディ・眼鏡なし)「トレーズ様……」
トレーズ「彼らは戦いぬくよ。
しかし時代はまだ動く
まだ役者はそろっていないのだ。
もっとも、私の望む役者が
あらわれないこともあり得ることだが……」
???(レディ)「その場合は、
どうされるおつもりなのですか?」
トレーズ「どうもしないよ。それに……
場合によっては今度こそ人類が
滅亡するはめになるかもしれない。
だが、このままでは
第3幕を開けるわけにはいかない。
いましばらくは待つとしよう。いいね」
???(レディ)「はい、トレーズ様の意のままに」