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阿修羅の頂点(前編) ~ 第32話 ~

《地球近海 ヘルゲート》

[ヘルゲート 内部]

ラリアー「時流エンジンが完成した……?」
ラージ「ええ」
ティス「ちょっとぉ、いくら何でも早過ぎない?」
ラージ「あなた方の空間転移装置を応用したんですよ」
ティス「本当なの、デスピニス?」
デスピニス「ええ……私、横で見ていたから……」
ラリアー「とは言え、信じ難いですね」
ラージ「なら、あなた達で試してみて下さい。 それで嘘だとわかったら、僕を好きにしてもらって 構いませんよ」
ラリアー「あっさり裏切るんですね、自分の仲間を」
ラージ「あの人達は……ただ単に一緒にいただけ。 何かというと僕に疑いの目を向け、 僕の研究を利用しようとしていました」
ラージ「ここへ連れられて来て、せいせいしてますし…… 何より、時流エンジンが完成しました。 あなた達に感謝したいくらいですね」
ティス「あんた…… あたいがラウル達を殺せって言ったら、 殺すのかい?」
ラージ「彼らが僕の研究の邪魔をするのなら、ね」
ティス「………」
ラリアー「デュミナス様、どうしますか?」
デュミナス「………」
ラリアー「デュミナス様……?」
デュミナス「……私の戦機体に 時流エンジンを取り付けなさい。 保険にはなるでしょう」
ラージ「保険……?」
デュミナス「ティス、ラリアー……準備をなさい。 転空魔城へ赴きます」
ラリアー「え……?」
ティス「でも、まだゲートを開く『鍵』が…… それに、バルトールで人間を集めなきゃ……」
ラリアー「人間の思念集積体を作って、 『鍵』の補助にすると仰っていたじゃありませんか」
デュミナス「もう……いいのです」
ティス「ど、どういう意味なんです!?」
デュミナス「私はまた過ちを犯しました…… 転空魔城のことをもっと疑うべきだったのです……」
デュミナス「あれを見たことがなかっただけに…… 私は大きな過ちを……」
ラージ「………」
デュミナス「ティス、ラリアー……早く準備を。 私達が求めていた物は、転空魔城の中にあります」
ラリアー「……わかりました」
デスピニス「デュミナス様、私は……?」
デュミナス「あなたは、引き続き ラージ・モントーヤとミズホ・サイキの監視を。 必要とあれば、後で呼びます」
デュミナス「彼らを人質として使うために」
デスピニス「はい……」
ラージ「………」

《地球近海 転空魔城》

[転空魔城内 修羅王の間]

アルカイド「マグナスが敗れたか……」
アルティス「は……。 フォルカがヤルダバオトの神化に成功し、 彼とフェルナンドを……」
アルカイド「フッ…… そして、この修羅王の首級を獲る気か。 その意気や良し」
アルカイド「だが、彼奴では阿修羅の頂天に臨めぬ。 そして、先人達の歴史を否定する権利もない」
アルカイド「我が出陣しよう。 これ以上、地球人達の好きにさせるわけにはいかん」
アルティス「お待ちを。私が出ます」
アルカイド「………」
アルティス「修羅王様…… 私はフォルカだけでなく、あなたにも 修羅の未来を賭けているのです」
アルカイド「うぬも彼奴同様、修羅の新たな生き方を 模索しておるのではなかったか?」
アルティス「道は二つ。 修羅王様の覇道か、フォルカが言う道か…… それがこの戦いで決まるでしょう」
アルカイド「不思議な漢だ。 そのような考えを持ちながら、何故我の下におる?」
アルティス「私には……私の役目があるからです」
アルカイド「………」
アルティス「修羅を統べるには力が必要。 二千年にわたり、争覇の宴を繰り広げてきた 修羅達の認識が、そう易々と変わるとは思えませぬ」
アルティス「そして…… フォルカが私に打ち倒されるようであれば、 所詮そこまでの漢だったと言うこと」
アルカイド「わかった。 うぬは我の右腕……うぬがいなければ、 我は覇道を進めなかった」
アルカイド「閃光のアルティスよ…… フォルカめの首級を挙げ、我の下へ戻れ」
アルティス「御意。 この戦いに……我が命を懸けましょう」

[転空魔城 内部]

メイシス「アルティス様、私もお供致します」
アルティス「いや、お前はここに残れ」
メイシス「何故です!?」
アルティス「私とフォルカ、そして地球人達との戦いに 手出しは無用……これは命令だ」
メイシス「し、しかし、私は!」
アルティス「メイシス……いや、メイ。 私の頼みを聞いてくれ」
メイシス「ア、アル……」
アルティス「そして、 この戦いの行く末を見届けるのだ」
メイシス「その後は……?」
アルティス「強き者に従え。フェルナンドと共に」
(メイシスは悲しそう)
メイシス「アル、あなた……」
アルティス「いいな、メイ。 私の言葉を……忘れるな」
(足音・アルティスが立ち去る)
メイシス「アル……」
(足音)
アリオン「……いいのかよ、あれで?」
メイシス「………」
アリオン「やぁれやれ、怒る気力もねえってか」
(メイシスは悲しそうなまま)
メイシス「貴様こそ……ここで何をしている?」
アリオン「そんな顔で言われたってねえ」
メイシス「………」
アリオン「フッ……俺は自由戦士だからな、 好きにやらせてもらうさ」

[転空魔城 中枢部]

ミザル「フン、彼奴らの足止めにはならなかったか。 まあいい、最低限の役目は果たしおったわ」
アルコ「マグナス様は、あなた様の右腕では……?」
ミザル「何を言っている?  私の右腕はここにあるぞ」
アルコ「………」
ミザル「いや、貴様こそが私の右腕だ。 悲願を達成した暁には、間者総頭として 取り立ててやろう。格を将軍級にしてな」
アルコ「こ、この俺が将軍……!?  修羅神に選ばれず、蔑まれてきたこの俺が……!?」
ミザル「そうだ…… マグナス同様、私の称号から一文字やろう。 『変震のアルコ』と名乗るがよい」
アルコ「変震……! あ、ありがたき幸せ!!」
ミザル「では、もう一働きしてもらうぞ……」


第32話
阿修羅の頂点(前編)

〔戦域:転空魔城内建物〕

(中央にハルパスが8機いる)
修羅兵「う、う、うひゃああ!  来るぅ、奴らが来るぞぉ!」
修羅兵「だ、駄目だぁ~!  く、く、食い止められねぇぇ~!!」
(ハルパスが全機爆発、ハガネ、ヒリュウ改、ヤルダバオトが出現、出撃準備)
フォルカ「あれが…… 修羅王と将軍達の居所だ」
(奥の建物を指す)
ショウコ「ショウコが捕まってた所……」
フォルカ「『奥の院』はその向こうにある」
レフィーナ「あそこが、 最後の関門と言うわけですね」
ゼンガー「残る将軍は2人…… そして、軍師ミザルと修羅王アルカイド」
リシュウ「絶界宝を破壊するには、 そやつらとの戦は避けられぬな」
テツヤ「各機、進軍開始!  修羅王の居所へ突撃せよ!」
(作戦目的表示)

〈3PP or 敵機全滅〉

(建物の側にマルディクトが出現)
アルティス「………」
レーツェル「人馬の修羅神…… 閃光のアルティスだな」
ラーダ「たった1機で現れるなんて……」
カチーナ「ヘッ、いい度胸じゃねえか」
フィオナ「それだけの自信と実力が あるってことね!」
フォルカ「アルティス兄さん……!」
アルティス「フォルカ…… そして、地球人達よ。ここから先へ 往くことはまかりならぬ」
ゼンガー「それでも往くと言えば?」
アルティス「修羅王と閃光の名において、 お前達に制裁を下す」
ゼンガー「退けぬか?」
アルティス「退けぬ。 お前達にはお前達の理があるように…… 我らには我らの理がある」
マサキ「そいつを 俺達に押しつけようってのか!」
アルティス「何を言う…… 戦とは、理と理のぶつかり合い」
アルティス「相手の理が認められるなら、 争いなど起きん」
マサキ「つまり…… 認める気はねえってことだな?」
アルティス「そうだ。 お前達に修羅二千年の歴史を 否定させるわけにはいかん」
フォルカ「そんなものに拘ってどうなる?  俺達に必要なのは、過去ではなく……」
アルティス「そう、未来だ」
フォルカ「ならば、何故?」
アルティス「修羅を制するは剛…… 修羅の歴史がそれを証明している」
フォルカ「だが、 その結果、修羅界はどうなった!?」
アルティス「………」
アルティス「フォルカ…… 私が何故、修羅王様の下に ついているか、わかるか?」
フォルカ「………」
アルティス「アルカイド・ナアシュは 希代の修羅王……天級修羅神の 操者にもなられたお方」
アルティス「その拳は、剛力無双。 機神拳の源流、覇皇拳最強の漢…… 修羅を統べるに相応しい」
フォルカ「だが、奴も修羅界を 滅亡へ追い込んだ者の一人だ!」
アルティス「……二千年もの間、 争いを続けてきた修羅には、 剛の支配者が必要なのだ」
アルティス「そして…… 私はそれを助ける柔の者になろうとした」
フォルカ「……!」
アルティス「剛と柔…… その二つの結合によって、私は 修羅の新たな未来を見出そうとしたのだ」
リシュウ「柔だけで修羅を治めることは 出来んと言うことか……」
アルティス「お前達の世界もそうだろう?」
リシュウ「……否定は出来んの」
アルティス「フォルカ…… お前がお前の方法で修羅の未来を 切り開こうというのであれば……」
アルティス「私の屍を 乗り越えていくしかない」
フォルカ「………」
アルティス「私は、 私が目指す修羅の未来のために 命を懸けてお前達を打ち倒す」
フォルカ「兄さん……」
ゼンガー「フォルカ、あの男の決意は固い。 これ以上の問答は無用だ」
フォルカ「わかっている。 こちらも力の限りを尽くさねば、 閃光のアルティスを倒せん」
ショウコ「フォ、フォルカ…… 本当にお兄さんを……?  他の道はないの……!?」
フォルカ「あの漢は…… 手加減して勝てる相手じゃない」
ショウコ「で、でも!」
コウタ「甘い考えは捨てろ、ショウコ。 あいつは、何のためらいもなく 俺達を倒すぞ」
ショウコ「!」
コウタ「俺にはわかるぜ…… 見た目はああだが、奴の中じゃ 闘志がボーボーに燃えてやがる!」
ブリット「ああ……!  己の命と引きかえにしても、 俺達を打ち倒すつもりだ」
リシュウ「コウタとブリットの 言う通りじゃ。確固たる信念を持っておる 男は、滅法強い」
リシュウ「ワシらも 相応の覚悟をもって臨まねばならぬ」
ショウコ「………」
キョウスケ「ここまで来て、 退くわけにはいかん……。 後は突き進むのみ」
アルティス「来るがいい、 地球の修羅達よ……!」
アルティス「互いの未来を懸けて、 いざ勝負!」
フォルカ「行くぞ、兄さん!  いや、閃光のアルティス!」
(作戦目的表示)

〈vs アルティス〉

[レーツェル]

レーツェル「新たな道の礎となる気か、 閃光のアルティス……!」
アルティス「……そうだ。 戦の行く末がどうであれ、私は……」
レーツェル「その決意、しかと受け止めた。 が、我らも退くわけにはいかん」
アルティス「承知している。 互いの世界の命運をかけ、いざ勝負!」

[フォルカ]

アルティス「フォルカ!  持てる力の全てを見せてみろ!  お前のその覚悟と共に!」
フォルカ「言われるまでもない!  俺はあなたを討つ!  修羅の宿命ごと打ち砕く!」

[コウタ]

ショウコ「アルティスさん!  あたしの話を聞いて!」
アルティス「……ショウコ・アズマか」
ショウコ「フォルカから教えて もらいました! あなたが立派な心を 持った優しい人だって!」
ショウコ「本当に こうするしかないんですか!?」
アルティス「ああ…… 我らは初手で過ちを犯してしまった」
アルティス「事態を収拾するには、 この戦いで決着をつけねばならん」
ショウコ「で、でも!」
コウタ「ショウコ……!  あいつは、あいつが背負ってるものの ために戦ってる!」
コウタ「そして、 それは俺達も同じなんだ!」

[撃墜]

(マルディクトが着地)
アルティス「う……ぐ……!  み、見事……!」
フォルカ「勝負は……ついた」
アルティス「あ、ああ…… 私の道は……閉ざされたようだ……」
アルティス「さあ、フォルカよ…… とどめを刺せ……」
フォルカ「………」
アルティス「それが出来ぬようでは…… 修羅王様に勝つことなど不可能……」
フォルカ「………」
ショウコ「フォ、フォルカ……」
フォルカ「兄さん…… 修羅は強者に従うのが定めだと 言っていたな?」
アルティス「そう……だ……」
フォルカ「ならば、俺は兄さんに命じる」
フォルカ「生きてくれ。 修羅の未来のために」
アルティス「………」
ショウコ「フォルカ……!」
フォルカ「俺には…… 俺の往く道には、兄さんが必要だ」
アルティス「私に…… 生き恥をさらせと……?」
フォルカ「そのような概念…… 修羅の掟など、俺が消し去る」
アルティス「………」
(東端にミロンガが出現)
リューネ「! ミロンガ!?」
ティス「このチャンス、逃がさないよ!」
ラウル「ティス!?」
ティス「死にな、アルティス!!」
(銃撃、マルディクトに爆煙、マルディクトが西端まで飛ばされる)
アルティス「うぐっ!!」
(ミロンガが西へ移動)
フォルカ「兄さん!!」
(ヤルダバオトがマルディクトの東側に隣接)
ティス「邪魔する気か!  ならば、貴様も!」
(銃撃、マルディクトがヤルダバオトの東側へ移動、マルディクトに爆煙)
アルティス「ぐあっ!!」
フォルカ「に、兄さん!?」
ティス「チッ!  だが、目的は果たしたぞ!」
(ミロンガが撤退)
フォルカ「兄さん!  何故、俺をかばった!?」
アルティス「お前は私に打ち勝った…… お前には、先へ往く権利がある……」
アルティス「それを…… 失わせる……わけには……」
フォルカ「だけど……だけど!!」
アルティス「これでいいのだ…… さあ、往け……フォルカ……」
アルティス「修羅の未来を…… お前達に……託す……」
フォルカ「兄さん!!」
アルティス「弟よ……また…… あの頃のように……過ごしたかった……」
アルティス「……すまぬ……メイ……」
(マルディクトが大爆発)
フォルカ「兄さん!  アルティス兄さぁぁぁぁぁぁん!!」
コウタ「そ、そんな……!!」
リシュウ「………」
ショウコ「う、ううう……」
ラウル「ティ、ティスめ……!!」
レーツェル「………」
アラド「何であいつがここに……?」
ゼオラ「それに、いつもの機体じゃなく ミロンガに乗って……」
フィオナ「狙いは あたし達じゃなかった……!」
キョウスケ「………」
ゼンガー「……往こう、修羅王の居所へ。 ここで立ち止まっている時間はない」
フォルカ「………」
ゼンガー「フォルカ」
フォルカ「ううう……う……」
ゼンガー「立ち上がらんかッ!  フォルカ・アルバークッ!!」
フォルカ「!」
ゼンガー「兄の言葉を忘れたかッ!  貴様は修羅の未来をその身に 託されたのだろうがッ!!」
フォルカ「………」
フォルカ「わかっ……た……。 往こう、修羅王の居所へ……!」
レフィーナ「各機、 フォーメーションを組み直して下さい」
レフィーナ「これより、 私達は修羅王の居所へ突入します……!」


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