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ドール・マスター ~ 第24話 ~


第24話
ドール・マスター

〔戦域:海辺〕

(ハガネ、ヒリュウ改、キョウスケ機、エクセレン機は出撃済み、出撃準備)
???(ラミア)「………」
リュウセイ「宇宙用の 量産型ヴァルシオン……!  あいつが何でここに?」
ライ「ヘルゲートのプラントで バルトールと共に量産されて いるようだな」
リュウセイ「まさか、 あれにユルゲンが……!?」
ライ「彼はデュミナスに討たれた。 あり得んな」
リュウセイ「じゃあ、 パイロットは誰なんだよ?」
ライ「………」
キョウスケ「正解したところで、 戦闘が終わるわけじゃない。 ……いくぞ」
???(ラミア)「………」
(バルトールが多数出現)
カチーナ「チッ!  木偶人形共が湧いて出やがったか!」
ラーダ「あのヴァルシオン改が 新たなマスターコアなのか……」
ラーダ「それとも、 あれ自体も操り人形なのか」
???(ラミア)「………」
エクセレン「さて、と。 ……いつまでもにらめっこしてる わけにもいかないのよね」
キョウスケ「バルトール……か」
エクセレン「ほらほら、キョウスケ。 熱くなったりしちゃダメよ?」
キョウスケ「心配するな、エクセレン。 これは戦争だ。……もう割り切っている」
エクセレン(それを口にする時点で、 割り切れてないってことなんだけど…… 本人は気付いてないのよね……)
キョウスケ「やるぞ。 ……全機、叩き落す……!」
(作戦目的表示)

〈敵機10機撃墜〉

ラトゥーニ「……やっぱり、 あのバルトールのモーションは ラミア少尉のデータを基にしてる」
カイ「ラミアの命を奪った機体と ラミアに似た動きをする機体……」
カイ「デュミナスめ、 つまらん手を使ってくれる」
ラーダ「こっちの心の動揺を 狙ってのことでしょうけど……」
キョウスケ「……今さら、 そんな効果は狙っていないだろう。 優秀なモーションを使うのは当然の事だ」
エクセレン「正論よね。 ……なんか、ちょっとだけ引っかかるけど」
マイ「でも、あのヴァルシオンの中には 何かがいる……人の念とは違うけど、 それに近いものを感じる……」
コウタ「なら、あのガキ共か!?」
マイ「そこまではわからない……」
ライ「生体コアが 搭載されているとでも言うのか?」
カーラ「あり得るね。 子供の姿をした敵を送り込んでくる デュミナスだもん」
ラウル「誰かが乗せられてる可能性も あるってことか……」
アラド「前のおれ達みたいに……?」
キョウスケ「そこまでにしろ。 こんなことで集中力を欠いたら、 それこそ奴らの思うつぼだ」
キョウスケ「伏せたカードの内容を 想像しても始まらん。 ……開いてみればわかることだ」
キョウスケ「そう、 あのヴァルシオンを止めればな……!」

〈ヴァルシオン改・タイプCFのHP50%以下〉

???(ラミア)「………」
エクセレン「駆動系に当たった?  動きが止まったけど……」
キョウスケ「油断するな。 何か仕掛けてくるかもしれな……」
(キョウスケ機に通信)
キョウスケ「む……通信だと?」
???(ラミア)「キョウスケ・ナンブ中尉…… エクセレン・ブロウニング少尉…… 聞こえますか?」
キョウスケ「……!」
エクセレン「えっ……!?」
ラミア「私です。 ラミア・ラヴレスです」
カイ「ラミア!?」
ゼオラ「ほ、本当に ラミア少尉なんですか!?」
ラミア「そうです、ゼオラ……。 私はW17……ラミア・ラヴレス」
アラド「W17って……!!」
キョウスケ「………」
ラミア「またあなた達とお会い出来て 嬉しいです」
リューネ「で、でも!  あの時、あんたは!!」
ラミア「………」
キョウスケ「……茶番はいい。 何者だ? お前は」
ラミア「私を忘れたのですか?  キョウスケ・ナンブ……」
キョウスケ「………」
ラミア「私は忘れていません。 あの時、あなたが私に 言ってくれたこと……」
ラミア「私の居場所を守るという言葉…… 今でもメモリーに残っています」
キョウスケ「……気は済んだか?」
ラミア「………」
キョウスケ「ラミアの姿を借り、 ラミアの声で喋る……」
キョウスケ「この手のパターンには もううんざりだ」
ラミア「姿を借りているのではありません。 私はW17……あなた達が知る ラミア・ラヴレスです」
ラトゥーニ「それを信じろと……?」
エクセレン「……指摘するのも不愉快ね」
アラド「それに、 ラミア少尉はもう自分のことを W17とは言わねえ!」
コウタ「修羅の中にも、ジャーダさん そっくりに化けた奴がいやがった!」
フォルカ(アルコのことか……)
コウタ「てめえも その類なんじゃねえのか!?」
ラミア「いえ、私はラミア・ラヴレスです」
キョウスケ「………」
ラミア「あの時、著しく損傷した私を デュミナス様が回収し…… 修復してくれたのです」
ラウル「デュミナス様……だって!?」
マサキ「ラミア!  あんた、あいつに操られてんのか!?」
ラミア「違います。 私には、あなた達と過ごした日々の 記憶も残っている……」
キョウスケ「ならば、何故戻ってこない?  ……そこにお前がいる意味は?」
ラミア「デュミナス様の下にいて、 私は改めて認識したのです」
ラミア「やはり、 私達は“規格外の存在”……」
ラミア「秩序を乱し、 過ちと混乱を起こす源になりかねません」
ライ「それで……排除すると?」
ラミア「ええ」
ヴィレッタ「言っていることは ユルゲン……いや、デュミナスと 同じだな」
ラミア「真理です」
カチーナ「何が真理だ、何が!!」
エクセレン「ラミアちゃん……もうやめて。 誰かにそんなことを言わされて…… もう見ていられない……」
ラミア「私は真実を語っているだけです」
ラミア「あなた達が そのマシンを捨てるのであれば、 開ける道もありましょう」
ラミア「しかし、 あなた達は戦い続ける……」
ラミア「守るべきものを守るために…… 世界を平穏へ導くために…… 未来のためにという題目を唱えながら」
ラミア「しかし、やっていることは あの修羅達と同じ。結果的には 秩序を乱す大きな要因となっています」
レーツェル「……一つ尋ねよう。 お前がいう秩序とは何だ?」
ラミア「………」
レーツェル「どうした? 何故、答えん?」
ラミア「秩序とは……過ちのない世界」
レーツェル「何……?」
ラミア「真実は……創造主が知っている」
ラッセル「そ、創造主……!?」
ラミア「デュミナス様が 答えを得るために…… 私はお前達を抹消する……」
タスク「おいおい、 言ってることが支離滅裂だぜ?」
ラミア「私は……」
キョウスケ「ラミア、すまん。 ……もう、ここまでにしよう」
キョウスケ「あの時、 お前を救えなかった……おれの不覚だ。 ……ここでカタを付ける」
ラーダ「待って!  彼女がラミア本人だという 可能性はゼロじゃないわ!」
キョウスケ「……!」
ラーダ「デュミナスが テクニティ・パイデスを作り出せる 技術を持っているのなら……」
ラーダ「ラミアを直したという話は、 あながち嘘じゃないのかも知れない」
キョウスケ「……それは、 身体を直したというだけの話だ」
ラージ「そうですね。彼女が わざわざ通信を入れてきた点から……」
ラージ「こちらの心の動揺を誘うという、 デュミナスの手口であることは明白です」
ラージ「むしろ、本人を乗せて 送り込んでくる可能性の方が 低いと思いますがね」
ラミア「私が本物か、偽物か…… それ自体に意味はない。 デュミナス様の真意がどこにあるか……」
ラミア「よく……考えることだ」
(ヴァルシオン改・タイプCFが撤退)
リューネ「転移した……!」
タスク「………」
タスク(何で あそこで退いたんだ……?)
ラージ(……敵ながら なかなか上手い手ですね)
ラージ(ラミア・ラヴレスが 人造人間であるだけに、可能性は フィフティ・フィフティ……)
ラウル「くそっ、デュミナスめ!  人の心を何だと思っているんだ!!」
イルム「何とも思ってないから、 ああいうことをやるんだろうよ」
エクセレン「キョウスケ、どうして……?  どうしてラミアちゃんは…… そっとしておいてもらえないの……?」
キョウスケ「………」

[不明 (ブリーフィングルーム)]

ゼオラ「ラミア少尉が生きていた……」
レオナ「でも、素直に喜べる状況ではなくてよ」
ゼオラ「それはわかっています……。 でも……」
ラージ「まだ彼女が生きていると 決まったわけではありませんよ」
ゼオラ「え……?」
ラウル「ラージ!」
ラージ「先程も言った通りです。 彼女が本物のラミア少尉だという確証はない……」
タスク「けど、偽物だという確証もねえだろうが」
ラージ「故に僕達は答えを出そうとする。 ラミア少尉を助けようとする……」
ラージ「そして、彼女が艦内に運び込まれた途端、 仕掛けられていた爆弾が爆発。 ……充分あり得る話です」
ユウキ「ラージ…… 彼女を救うべきではないと言いたいのか?」
ラージ「いえ……そういうわけではありません」
ラウル「じゃあ、何であんなことを!?」
ラージ「落ち着いて下さい。 デュミナスは、そういう激情を利用し、 事を有利に進めようとしているんです」
ラウル「う……!」
ラージ「それに、 先程のラミア少尉が本物かどうかはわかりません。 現時点で迂闊に彼女を救おうとするのは危険です」
ラージ「最悪の結果を招いた後で悔やんでも…… どうにもなりませんからね」
(扉が開閉する・ラージが立ち去る)
ラウル「おい、ラージ!」
タスク「何だよ、あいつ」
ユウキ「……だが、一理ある」
ユウキ「デュミナスは ヘルゲートで俺達が取った行動を見ていたはずだ。 それで今回の手を思いついたのだろう」
タスク「それにしちゃあ、詰めが甘いけどな」
ゼオラ「……どういうことなんです?」
タスク「あともう一押しすりゃ、 俺達にダメージを与えられたはずだ。 なのに、何であそこで消えちまった?」
ラウル「機体にトラブルがあったとか……」
タスク「それならそれで、さっきラージが 言ってたような手もあるはずだ」
ラウル「………」
タスク「何て言うかな~、デュミナスの言ってることや やっていることに穴があるんだよな」
レオナ「故意にではなくて?」
タスク「う~ん……俺の勘じゃ、そうじゃねえ」
ゼオラ「………」

[不明 (廊下)]

カチーナ「……で、どうすんだよ? キョウスケ」
キョウスケ「………」
キョウスケ「……あれがラミア本人だという 確証も、保証もない……」
キョウスケ「いや、むしろ…… “中身は別人”である可能性が高いでしょう」
カチーナ「ヘッ、新パターンだな。 ……だが、そうじゃねえ可能性だってあるぜ?」
キョウスケ「戦いの中で迷いが生じれば、 それは致命的なミスにつながる……。 ……ヘルゲートの時もそうでした」
カチーナ「おいおい、お前らしくねえな。 いつものイチバチはどうしたんだ?」
キョウスケ「………」
カチーナ「ま、かまわないけどよ。 ……そういうのは、カードをめくってみてから 考えてもいいんじゃねえか?」
キョウスケ「………」
カチーナ「迷いが生じれはミスが出る…… 今のお前がそうだぜ。 助けるのか、楽にしてやるのか……決めときな」
(扉が開閉する・カチーナが立ち去る)
エクセレン「ふふ…… カチーナ中尉なりの励ましなのかもね、あれって」
キョウスケ「……ああ。 だが、中尉の言っていることは的を射ている」
キョウスケ「助けるのか、楽にしてやるのか。 ……そうだな、その通りだ」
エクセレン「キョウスケ……」
キョウスケ「………」
キョウスケ「……おれはラミアを救えなかった。 その結果、あいつは……薄汚い企みの道具として、 また引きずり出された」
キョウスケ「……人形として」
エクセレン「そうよね…… もう……いいのよね、ラミアちゃん……」
キョウスケ「………」
キョウスケ「……エクセレン、おれは決めたぞ」
エクセレン「キョウスケ……?」
キョウスケ「……おれは……」

[不明 (格納庫)]

リョウト「R-1とART-1の連係攻撃、 上手くいったみたいだね」
リュウセイ「ああ。 名前は、天上天下念動連撃拳だ」
ライ「……またその手のネーミングか」
リュウセイ「じゃあ、お前なら何て名付けるんだよ?」
ライ「……」
ライ「…………」
ライ「…………………」
ライ「…………ギャラクシー・ファントム・ エクスプロージョン」
リュウセイ「おおっ!  お前にしちゃ、カッコいい名前じゃねえか!」
ライ「そ、そうか?」
リョウト(ライディース少尉、影響されてる……?)
リュウセイ「ところで、リョウト……色々とありがとな」
リョウト「ああ、モーション・パターンのこと?  ラトゥーニのアレンジの方が良かったみたいだね」
リュウセイ「いや、お前のアドバイスがあってのことさ。 それに、あいつにデータを渡してくれたの、 お前だろ?」
リョウト「うん……。 カーラに頼んでね、彼女に渡してもらったんだ」
リュウセイ「連撃拳が完成したおかげで、 俺達SRXチームのアタック・アビリティが 上がる……」
リュウセイ「見てろよ……!  ヘルゲートをブチ破って、 ラミア少尉を今度こそ助けるぜ」
ライ「お前は……あの彼女が本物だと?」
リュウセイ「その話をグダグダしててもしょうがねえ。 答えを出すには、ラミア少尉をあのヴァルシオンから 助け出さなきゃならねえだろ?」
リュウセイ「罠が仕掛けられていたって、 それを見つけたり、回避する方法はあるはずだ」
ライ「ああ……そうだな」

[ハガネ ブリッジ]

テツヤ「クロガネを別任務に回す?」
レーツェル「ああ。 先程、テスラ研にいるギリアムから要請があった」
テツヤ「その任務とは?」
レーツェル「敵の陽動だ。 修羅はともかく、デュミナスの手の者は 我々を集中的に狙っているようなのでな」
レーツェル「それに、 これから我々は単独で動くことになる。 後方支援の手段も確保しておかねばならない」
テツヤ「わかりました。 それで、あなたやゼンガー少佐達は?」
レーツェル「このままハガネに搭乗させていただく」
テツヤ「了解です。 では、テスラ研へ向かいましょう」

《地球近海 ヘルゲート》

[ヘルゲート 内部]

デュミナス「……ラミア・ラヴレスは 命令通りに動いたようですね」
ラリアー「ええ」
デュミナス「人格が元に戻るような様子は?」
ラリアー「ありませんが……あれでいいんでしょうか?  メモリーを残したままでは、何かのきっかけで 元に戻ってしまう恐れがあります」
ラリアー「いっそのこと、 完全に作り変えてしまった方が……」
デュミナス「それならば、彼女は必要ありません」
ラリアー「………」
デュミナス「ラリアー…… 私が何のために彼女を修復したのだと 思っているのです?」
ラリアー「彼らに精神的な動揺を与えるため……」
デュミナス「そうです。 彼らは必ずラミアを助けようとし…… 同じ過ちを犯します。そして……」
ラリアー「………」
ラリアー「……何だか可哀想な気がします……」
デュミナス(あなたの反応は当然……。 そう感じるよう調整を施しているのですから)

[ヘルゲート 内部]

デスピニス「デュミナス様の願いがかなうまで、 私達は死ぬわけにはいかないんです……。 あの方は、私達のお母さんですから……」
ラミア「……お母さん……」
デスピニス「私達が還るべき処へ還るために…… 私達を守って下さいね……」
ラミア「……還るべき処……守る……」
ラミア「……守る……」
(精神感応)
ラミア「!」
デスピニス「ラミア?」
ラミア「……セルフ・スキャン開始……」
ラミア「……メイン・サーキット…… セグメント3.5に異常……」
ラミア「……リペア・プログラム……」
(精神感応)
ラミア「!」
デスピニス「な、何が……!?」
ラミア「……リペア・プログラム……停止」
デスピニス「元に……戻った?」
ラミア「………………」
デスピニス「でも、今のは……もしかして……」

《地球近海 転空魔城》

[転空魔城 中枢部]

アルコ「……ミザル様」
ミザル「誰もここへ近づいておらぬだろうな?」
アルコ「はっ」
ミザル「では、お前はここで見張っていろ」
アルコ「承知致しました」

[転空魔城 中枢部]

(キー操作)
ミザル(……やはり、 ここの端末から『奥の院』の扉を 開くことは出来んか……)
ミザル(このままでは、ラチが明かん。 かと言って、修羅王様に踏み込まれては 元も子もない……)
ミザル(これ以上の解析は 本当にデュミナス達へ委ねるしかないか……)
(キー操作)
ミザル(またこの文字が出たか……)
ミザル(“ラディ・エス・ラディウス4”……)
ミザル(そして、“闇黒の叡智”…… この二つにいったいどのような意味が 隠されていると言うのだ……?)


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