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踊る揺籃(後編) ~ 第4話 ~

[廃工場内]

テロリスト「ドナ、ウェンディゴの準備は?」
ドナ「出来ているわ。 ただし、行動可能時間は30分よ」
テロリスト「その間に インジリスク基地を潰せるか?」
ドナ「ええ、後は好きになさい」
テロリスト「うむ。 我らは今日、ここで聖戦の狼煙を上げる」
テロリスト「そして、驕り、慢心し、 あろうことか偶像で争いを拡大する 連邦軍へ警告を与えるのだ」
(足音・テロリストが立ち去る)
ドナ(偶像で争いって…… 他人のことは言えないわよね)
カイ「……暴力に訴えるタイプには見えなかったがな」
ドナ「動かないで、カイ。 ……そうね、あたしにはテロる理由なんてないわね」
カイ「なら、彼らは?」
ドナ「直訳するとね、 PTAMが人型をしているのが 不遜ってことらしいわ」
ドナ「まあ、まともに聞かない方がいいわね。 彼らはイカ物扱いされてるグループだし」
ドナ「だからこそ、あたしの申し出を 受け入れてくれたのかも知れないけど」
カイ「君は?」
ドナ「あたしは関係ないわ。 神様なんていないってこと、知ってるし」
カイ「軍の研究所にいたと言ったな?」
ドナ「正確に言えば、 軍人ではなくて民間企業からの出向組よ」
ドナ「マン・マシーン・インターフェースの 研究開発部。今思えば、あの頃に聞いたことが あったのね……あなたの名前」
カイ「知っていて声をかけたんじゃなかったのか?」
ドナ「偶然よ、ホント。 あなたがこの基地に来ているなんて、 会うまでは知らなかったもの」
ドナ「でも、 資材強奪事件のことを気にしていたのは、さすがね。 ベテランの直感って奴かしら」
カイ(……やはり、あの事件は……)
カイ「こんなことをしたら、 君の所属機関が黙ってはいまい?」
ドナ「そうね。 けど、新しいパトロンに鞍替えするの。 で、その前に成果を見せる必要があってね」
カイ「……俺はこの後どうなるんだ?」
ドナ「逃走する時の人質になってもらうわ。 念のためにね」
(銃を構える)
ドナ「だから、余計な気を起こさないで。 奥さんと娘さんを泣かせたくはないわ」
カイ「彼らは偶像崇拝を憎んでいるのだろう?  そこの君の研究成果を使うのは構わないのか?」
(モーターが回転、動作音)
ドナ「PTでもAMでもないのよ、これは。 ちょっと歪で大きくなってしまったけど…… あたしの息子の身体なの」
ドナ「思った通り、自由に動かせて…… 軍隊が来ようが宇宙人が来ようが、 生き残れる頑丈な身体よ」
カイ「……たった1機で 基地を潰せると思っているのか?  それも30分で」
ドナ「その時間で出せる結果を見たいと 言われていてね。ターゲットは基地というより、 迎撃に出てくるPTよ」
ドナ「それに…… あまり長居すると逃げられなくなるし、 迎えの飛行機にも乗り遅れちゃうわ」
カイ「……」
ドナ「待っててね、カイ・キタムラ。 すぐ戻るわ」
(足音・ドナが立ち去る)
カイ「……」
カイ(さて……子供じゃないんだ、 このまま大人しく留守番をするわけにはいかんな)


第4話
踊る揺籃(後編)

〔戦域:インジリスク基地周辺〕

(北側にF-32シューヴェルトが2機、南側に量産型ヒュッケバインMk-IIが3機出撃済み)
オペレーター「ADATS12、13、沈黙!  アンノウン、第3警戒ラインを突破!」
ムスタファ「数は増えていないのか?」
オペレーター「はっ!  カウントは1のままです!」
ムスタファ「余程自信があると見える。 それとも、玉砕覚悟なのか……」
(アラート)
オペレーター「アンノウンをロスト!  ASRSの類を使用したと思われます!」
ムスタファ「この距離なら、 目視でも迎撃できる。ブラボー各機は カイ少佐の訓練の成果を見せよ」
連邦軍兵「はっ!」
オペレーター「タワーより キャラバン1、2。離陸を許可する。 上空よりブラボーを援護せよ」
連邦軍兵「キャラバン1、了解」
連邦軍兵「キャラバン2……」
(F-32シューヴェルトの側に爆煙)
オペレーター「!!」
連邦軍兵「ど、どこから 撃ってきやがった!?」
連邦軍兵「上か!?」
ムスタファ「キャラバンが狙われている!  離陸中止! 直ちに避難させろ!」
オペレーター「は、はい!」
(F-32シュヴェールトが撤退、アラート)
オペレーター「アンノウン、加速!  最終警戒ラインを突破します!」
(南東側にウェンディゴが出現)
連邦軍兵「何だ、ありゃ!?」
連邦軍兵「PTじゃない! 特機か!?」
???「………」
(ウェンディゴが北の側まで移動)
連邦軍兵「は、速い!」
連邦軍兵「見かけで判断するな!  攻撃開始!!」
(作戦目的表示)

〈ウェンディゴとの初戦闘後〉

連邦軍兵「くっ!  奴め、まるで猿のような……!」
連邦軍兵「動きが読めん!  パターンで対応できんぞ!」
ドナTC-OSに頼りきっているようでは、 私の息子を捉えられないわ)
ドナ(さあ、トニー…… 思うがままに暴れなさい)
ドナ(そして、 あなたとウェンディゴの有用性を示すのよ)

〈2PP〉

オペレーター「ブラボー各機、 苦戦しています!」
ムスタファ「彼らでは対処しきれんか。 やむを得ん、カイ少佐に出撃要請を」
オペレーター「はっ! コールします!」
ムスタファ(こんな急場で彼に頼るのは 心苦しいが……)
オペレーター「司令、 少佐と連絡が取れません!」
ムスタファ「何? 基地内にいないのか?」
オペレーター「担当士官の話では、 外に出られたままだと……」
ムスタファ「捜させろ。 それと、少佐のゲシュペンストの 出撃準備を」
オペレーター「了解!」

〈3PP〉

(量産型ゲシュペンストMk-IIが出撃)
カイ「ゴースト1よりブラボー各機へ!  奴の相手は俺がする!」
連邦軍兵「カイ少佐!」
カイ「お前達はターゲットを牽制しろ!」
連邦軍兵「りょ、了解!」
ドナ「あの機体は……!  どうやら、彼を甘く見過ぎたようね」
ドナ「でも、旧式のゲシュペンストで ウェンディゴを倒すことは出来ないわ」
カイ「さて……これも決まり文句だが、 勝敗を決するのは機体の性能ではない。 それを示してやらねばな」
ドナ(残念ね、カイ。 あなたとはいい飲み友達になれたのに)
カイ「酔いも覚めた…… 遅れた分は取り戻す!」
(作戦目的表示)

〈初戦闘〉

[カイ]

カイ「気が引けるな、 他人の子供を叱りつけるのは……!」

〈5PP or ウェンディゴのHP30%以下〉

カイ「反応が速くなってきた……!  こちらのモーション・セレクトの 出掛かりを覚えて避けているのか?」
???「………」
カイ「ふん、 子供というものは本当に覚えが早い」
カイ「だがな、子供と大人の決定的な違い…… それは経験の量だ。データの移植など ではない、本物のな」
カイ「今から見せてやる…… 経験から生み出される物を」
カイ「モーション・セレクト、マニュアル。 トリガー用設定、ディレイ有り。 パターンJM4、リアルタイム・アレンジ」
(カイに『気合』)
カイ「PTは 伊達に人の形をしているわけではない。 その有用性と可能性を教えてやる!」

〈初戦闘〉

[カイ]

カイ「脳直のインターフェイスなら 反応も早いが、裏目にも出る……!」
カイ「抑圧処理を施されていても、 不意を突けば隙が生まれるはずだ!」

〈ウェンディゴ撃墜〉

???「……!!」
(カイ機がウェンディゴに隣接、機械音)
???「!?」
カイ「君が悪いわけではないだろうが、 俺も軍人だからな」
ドナ「トニー! 離れて!!」
???「マ……ママ……」
(ウェンディゴが爆発)
ドナ「ああっ……!!」
カイ「……あれは……!」
ドナ「ト、トニー……!!」
(カイ機がドナのいる崖付近へ移動)
カイ「ゴースト1よりタワーへ。 基地南西の崖上に容疑者発見」
ドナ「……」
カイ「抵抗力なし。 保安課による確保を要請する」
オペレーター「タワー、了解」
ドナ「う、うう……」
カイ「……聞こえるか、ドナ・ギャラガー」
ドナ「!」
カイ「ゲシュペンストの手の中を見ろ」
???「………」
ドナ「!! カイ、あなた……」
カイ「……軍人だからな。 無駄な人死には出せんよ」
ドナ「…………」

[インジリスク基地 司令部]

ムスタファ「ご苦労様でした、少佐。 おかげで助かりました」
カイ「いえ…… こちらこそ出撃が遅れて申し訳ありません」
ムスタファ「心苦しいのはこちらの方です。 少佐に出張ってもらうつもりは なかったのですが……」
カイ「務めでありますから」
ムスタファ「少佐の戦闘を見て、 パイロット達も学び得たことが多かったようです」
カイ「実戦に勝る訓練はありませんが…… 被害が最小限で済んで何よりです」
カイ「ところで、彼女は…… ドナ・ギャラガーは?」
ムスタファ「ご存じなのですか?」
カイ「こちらに来てから、知り合いました。 街のバーで」
ムスタファ「そうですか……。 彼女は今、尋問中です」
カイ「出来れば、彼女と面会したいのですが」
ムスタファ「……わかりました。いいでしょう」

[インジリスク基地 内部]

ドナ「……立場が逆になっちゃったわね」
カイ「そう……だな」
ドナ「……」
カイ「短絡するタイプにも 見えなかったのだがな、君は。 ……わけを聞かせてくれないか」
ドナ「言ったでしょう?  ウェンディゴの有用性を示すためだと」
カイ「それ以外の理由だ」
ドナ「……そうね。 こうなった以上、私もトニーも ただでは済まないでしょうし……」
ドナ「今の内に話せることは話しておくわ。 あなたにね」
カイ「……」
ドナ「連邦軍内で進められている ツェントル・プロジェクト……知っているかしら?」
カイ「いや、何だ?」
ドナ「10年先を見越した量産型機動兵器の開発計画。 自律行動を行い、かつ限りなくメンテナンスフリーの 機体を開発することが目的なの」
カイ「……手入れ不要の無人兵器か。 夢のような話だな」
ドナ「だったら、“宇宙人の侵略”なんてのもそうよ。 数年前、人々はそんなものが現実になるとは 思ってなかった」
ドナDCの総帥、ビアン・ゾルダーク博士の 演説を聞いたって、信じられなかった人も 多いはず……」
ドナ「でも、L5戦役インスペクター事件によって パラダイム・シフトが起きた。そして、それは 連邦政府や連邦軍のお偉方も同じ」
ドナ「一部の人間は、PTやAM、特機じゃ いずれ頭打ちになると考えてるみたいよ」
カイ「……で、ツェントル・プロジェクトとやらが 始められたということか」
ドナ「ええ。 でも、先に頭打ちになったのは あたし達の方……」
ドナ「設定された目標が高いせいもあって、 なかなか成果が出せなくてね。 あたしは担当から外されることになったのよ」
カイ「それで……鞍替えを?」
ドナ「そうよ。 トニーのためにも、私はウェンディゴ・プランから 離れるわけにはいかなかった」
ドナ「でも……逆効果になっちゃったわね」
カイ「……」
カイ「……情報部に俺の戦友がいる。 君と君の息子の身柄は、彼に預けよう」
カイ「司法取引に応じれば、 君の罪はいくらか軽減されるはずだ」
ドナ「でも、今回の件は私個人の判断でやったこと」
ドナ「それに、ツェントル・プロジェクトは あなたの身内……連邦軍が進めている計画」
ドナ「私もその全てを知っているわけじゃない。 探りを入れても、真相を掴むことは出来ないわよ」
カイ「その言葉だけで十分だ」
ドナ「ふふ……待遇には期待しないでおくわ」
カイ「……」
ドナ「そうそう…… 肝心なことを言い忘れていたわ」
カイ「?」
ドナ「ありがとう、カイ。 トニーに必要だったのは、あの身体じゃなく……」
ドナ「私を止めてくれる人間だったのかもしれない」
カイ「……」
ドナ「……こんなこと言える立場じゃないけど…… 奥さんと娘さん達を大事にしてあげてね」
カイ「ああ……」

《イタリア地区 ブレッシア》

[トーチカ1 中央管制室]

ミタール「……というわけで、 前任者の身柄は情報部へ引き渡された」
エルデ「問題はないのですか?」
ミタール「情報漏洩への対策、 管理責任の追及については、 すでに手を打ってある」
ミタール「むしろ、我々は被害者なのだよ。 ドナ・ギャラガーによって、ウェンディゴを 1体失ってしまったのだからな」
エルデ(……自滅したわね、ドナ。 おかげで手間が省けたわ)
ミタール「それに、 ツェントル・プロジェクトは連邦軍にとって 不利益な物を作り出しているわけではない……」
ミタール「来たるべき星間戦争で 人類が生き残るための術を模索しているのだ。 プロジェクトを中止される謂われはない」
エルデ「……」
ミタール「だが、我々のスポンサーは 途中経過の成果物を必要としている。 ……慈善事業ではないのでね」
エルデ「それで、私が招へいされたと?」
ミタール「そうだ。 君にはウェンディゴ・プランを 受け継いでもらいたい」
エルデ「……概要書には目を通しました。 着眼点を強いて挙げれば、ウェンディゴ3の ボーン・フレーム……」
エルデ「マン・マシン・インターフェイス周りに 関しては、代替案を提示させていただきますわ」
ミタール「……自信は?」
エルデ「なければ、博士のお誘いに乗りません」
ミタール「良かろう。 君の好きなように進めるがいい」
エルデ「ありがとうございます。 つきましては、プラン名を変更させていただきます」
ミタール「何だ?」
エルデ「“AI1・プラン”……ですわ」

『M13ショットガン』を入手した。
『チャフグレネード』を入手した。
『リペアキット』を入手した。

『プロペラントタンク』を入手した。
『クリティカル↑ 射程↓』を入手した。
『地形適応海↑』を入手した。


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