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踊る揺籃(前編) ~ 第3話 ~

EPISODE 2.5
UNIFIED WISDOM

新西暦188年。

地球圏への武力干渉を行った異星人インスペクター……
地球連邦政府へ反旗を翻した軍事組織ノイエDC……
彼らと結託し、暗躍した特殊部隊シャドウミラー……
そして、謎の生体兵器群アインストシリーズ。

それらの主力は、地球連邦軍の万能戦闘母艦ハガネ、
ヒリュウ改、そしてクロガネの活躍によって壊滅した。

後に「インスペクター事件」と呼ばれることになる
一連の争乱は終結し、地球圏は平穏を取り戻そうとしていた。

地球連邦政府は、度重なる地球外知的生命体との戦闘を
教訓とし、地球連邦軍の組織改編・軍備増強を目的とする
「イージス計画」のさらなる強化を決定した。

その一環として、量産型ヒュッケバインMk-IIに次ぐ
新たな量産主力機の開発が各メーカーに依頼され、トライアルが
行われることになった。

だが、人々は気づいていなかった。
別世界からの侵略者が絶えていないことを……
彼らがインスペクター事件末期から行動を起こしていたことを。

新たな戦鐘は、今、打ち鳴らされようとしていた。

《イタリア地区 ブレッシア》

[トーチカ1 中央管制室]

ミタール「……ソウルゲイン復元プランの予算を?」
エリック「んむ。もうちぃっと増やせんかの」
ミタール「……」
エリック「転移装置は持っておらんが、 あれはなかなか優秀な特機での」
エリック「ワシらが作ろうとしておる 人型TEAの参考……そして、場合によっては 代わりになるかも知れんでの」
ミタール「知っての通り、我々の予算は限られている」
エリック「ん、まあ、 そこをスタインベックに掛け合ってくれんかの」
ミタール「……シュタインベックだ。 私は彼と会ったことがない。ニブハルが代理人だ」
エリック「なら、そのニブハルとやらにの」
ミタール「アースクレイドルから見つけ出した 例の物絡みで、予算追加を申し出たばかりだ。 難しいな」
エリック「ふむむ……ツェントル・プロジェクトは まだロクな成果物を出しとらんからの」
ミタール「他人事のように言うな」
ミタール「それに、“ヘッド”から採取した イェッツトセルによって、フラットフィッシュ・ プランは飛躍的に進歩している」
エリック「宇宙ひらめか。食ったら美味いかの。 美味かったら、売って儲けて、予算に当てるかの」
ミタール「戯れ言はいい。 ……ウェンディゴ・プランの一時凍結で浮く分を そちらに回す。それでいいな?」
エリック「んむ。金は天下の回し者じゃの」
ミタール「回り物だ。 ……ところで、例の男の様子は?」
エリック「どっちの方かの? 二人おるからの」
ミタール「ソウルゲインのパイロットだ」
エリック「そっちは至って健康じゃが、 相変わらずの眠り王子での」
ミタール「素性も素性だが、他にも怪しい点が多い」
エリック「怪しいだけじゃ片付かんがの。 あの機体損傷度で無傷。しかも、発見時は素っ裸。 ……男だったのが惜しいがの」
エリック「それに服はきちんと折り畳んでの、 膝の上に置いてあった。 怪しくも几帳面な男じゃの、ホッホッホ」
ミタール「ともかく、彼の監視を怠るな」
エリック「んむ」
(扉が開閉する・エリックが立ち去る)
ミタール(さて、次は……)
(扉が開閉する)
ドナ「お呼びでしょうか、ザパト博士」
ミタール「うむ。 ギャラガー主任、ウェンディゴ・プランは 一時凍結することにした」
ドナ「! 何故です!?」
ミタール「まともな結果が出ておらんからだ」
ドナ「ウェンディゴ1はともかく、2と3は……!」
ミタール「機体の方は、まあ及第点だがな。 制御システムに問題がある」
ドナ「……!」
ミタール「やはり、あれでは維持が面倒だ。 次期主力機トライアルには提出できんな」
ドナ「ならば、機会を下さい。 ウェンディゴ3の有用性を示す機会を……!」
ミタール「ツェントル・プロジェクトは、 リハビリテーションの場ではない」
ドナ「う……」
ミタール「落胆しなくてもいい。 ウェンディゴ・プランは中止するわけではない。 新たな担当者を迎え、見直しを図る」
ドナ「新たな担当者……? 誰なんです?」
ミタール「エルデ・ミッテだ。 君も知っているだろう?」
ドナ(あ、あのエルデがあたしの後任……!?  そんな……!)
ミタール「君はしばらく休暇を取りたまえ。 その間、新たな配属先を考えておく」
ドナ「……」
ドナ(このままじゃ、あたしは…… いえ、それよりも……)
ドナ(エルデなら、あの子を必要としない……。 ウェンディゴは残っても、あの子は……)

《地球連邦軍南欧方面軍 アビアノ基地》

[アビアノ基地 内部]

アクア「……ミッテ先生、よろしいですか?」
エルデ「どうしたの、アクア?」
アクア「先程の講義の内容に関して、質問があるんです」
エルデ「いいけど……少し待ってもらえるかしら」
(キー操作)
アクア「何ですか、それ?」
エルデ「覗き見はよくないわね、アクア」
アクア「す、すみません……」
エルデ「……これはね、戦闘用人工知能の仕様書よ」
アクア「! もしかして、機密事項……」
エルデ「……いえ。習性みたいなものよ」
アクア「パラシナプスがこんなに……。 それに、繋ぎ方がとても綺麗。 凄いですね、これ」
エルデ「あら、わかるの?」
アクア「だって、先生の教え子ですもの。 行動推測型……擬似人格アーキテクチャーですか?」
エルデ「それは秘密。 完成までにはかなりの時間がかかるしね」
アクア「そうなんですか……」
エルデ「でも、楽しいわよ。 どこまでいけるか……自分の力を試すのは」
エルデ「そして、自分で作り出した物を育てていくのは。 この“AI0”は私の子供みたいなものね」
アクア「エーアイゼロ……?  戦闘用人工知能の名前ですか?」
エルデ「ええ、そうよ」
アクア「……それにしても 先生って、本当に仕事が好きなんですね。 ちょっともったいないな」
エルデ「どういうこと?」
アクア「だって、先生は美人だから…… 同期の間じゃ、凄い人気なんですよ。 知らなかったでしょ?」
エルデ「興味がないわ。 今の私にとっては、このAI0が全てだもの」
アクア「じゃあ、私達生徒は……?」
エルデ「ふふ、どうかしらね。 それに、私はもうすぐ別の所へ行くから」
アクア「ええっ、そんな! どこへ!?」
エルデ「教えられないわ」
アクア「……そうですか……。 先生がいなくなったら、寂しいです……」
エルデ「……」
エルデ「……ところで、アクア。 あなた、本当にパーソナルトルーパーの パイロットになるつもり?」
アクア「はい。昔から憧れてましたし」
エルデ「ご両親は了承しているの?」
アクア「父とは大喧嘩。 まあ、軍に入るのも大反対でしたから……」
エルデ「仕方ないわね。 ケントルム家と言えば、政界でも有名な……」
アクア「先生、そのことは……」
エルデ「……」
アクア「……私、自分の手で 結果を出してみたいんです」
エルデ「どうして?」
アクア「もうカゴの中の鳥は嫌なんです。 自分で道を選んで、自身の力で生きていきたいんです」
エルデ「もったいないわね。 家から出ず、与えられた境遇を最大限に活かせば、 もっと色々なことが出来たでしょうに」
エルデ「それに、今より幸せになれるわ。 平穏無事な生活の中で」
アクア「ですから、それが嫌なんです」
エルデ「そう……。 じゃあ、これだけは覚えておきなさい」
エルデ「あなたは優秀な生徒だけど、 感情のコントロールが不得手なのが短所だわ」
エルデ「パイロットに必要とされるのは、 いかなる時も冷静に状況を分析し、 あらゆる事態に対処できる能力……」
エルデ「それを得られなければ、死ぬことになるわ」
アクア「覚えておきます、ミッテ先生……」

《地球連邦軍 インジリスク基地》

[インジリスク基地 内部]

カイ「……皆、揃ったな。 これより都市部戦闘を想定した 模擬戦闘訓練を開始する」
連邦軍兵「はっ!」
カイ「仮想敵性機は、俺のゲシュペンストだ。 お前達は任意のフォーメーションを組み、 10分以内に俺を撃墜しろ」
連邦軍兵「了解!」
カイ「では、PTシミュレーターへ乗り込め」


第3話
踊る揺籃(前編)

〔戦域:PTシミュレーター・マンハッタン隕石溝周辺〕

(量産型ゲシュペンストMk-II(カイ機)と量産型ヒュッケバインMk-IIが5機出現)
カイ「ゴースト1より各機へ。 セッティングを再確認」
連邦軍兵「オペレーション・ノーマル」
カイ「シミュレーターだからと言って、 油断するな。実戦と同じだと思え」
カイ「決まり文句だが、 これを軽んじる奴に成長はない」
連邦軍兵「了解!」
カイ「昨日の反省点を活かせよ。 俺を撃墜した者にはショーチューを おごる」
連邦軍兵「はっ!  今晩こそご馳走になります!」
カイ「その意気だ。 では、状況を開始する!」
(作戦目的表示)

〈2PP〉

カイ(ある程度ハンデを与えるとして…… はたして、何分保つか)

〈敵機全滅〉

カイ(……昨日より多少手応えはあった。 飲み込みは早い。パターンのアレンジも 巧い)
カイ(候補生として 選抜されただけのことはあるが……)
(撃墜した機体が復活)
カイ「今日はこれで上がりだ。 1900までにレポートをまとめ、 提出!」
カイ「加えて、明日の朝までに 今回の戦闘を踏まえた近接戦の モーションプランを3つ組んでこい!」
連邦軍兵「りょ、了解……!」

《トルコ地区 インジリスク》

[不明 (バー)]

(扉が開閉する)
カイ「ふうう……」
バーテンダー「いらっしゃいませ」
カイ「ショーチュー、出来るかい?」
バーテンダー「ええ。 ……ここの所、毎晩いらっしゃいますね。お一人で」
カイ「ああ……まあ、好きこのんで 一人なわけじゃないが」
ドナ「……」
カイ「……」
バーテンダー「あちらの女性も 毎晩通ってらっしゃるんですよ。 お声かけしましょうか?」
カイ「いや、結構。 端のボックス席に行くから、何か腹に入れる物を頼む」
バーテンダー「はい、承りました」
(バーテンダーが立ち去る)
カイ(さて…… レポートに目だけでも通しておかねば)
(キー操作)
カイ(……やはり、ムスタファ司令には悪いが…… ラミア達についていけるぐらいの技量を 持った者でなければな)
ドナ「そんな格好でバーに来て、仕事をするなんて…… ジャパニーズがワーカーホリックって、本当なのね」
カイ「………」
ドナ「お邪魔だったかしら?」
カイ「いや、そういうわけでは……」
ドナ「そう? 良かった。 ほら、この地区、信教の都合でお酒飲めない人が 多いじゃない?」
ドナ「さすがに一人で飲んでるの、飽きちゃって」
カイ「御旅行かね?」
ドナ「そうね……ここへ来て、もう一週間。 あなたは? 出張?」
カイ「ああ、日本からな」
ドナ「ドナ・ギャラガーよ。 ここで会ったのも何かの縁。よろしくね」
カイ「俺はカイ……カイ・キタムラだ」

《地球連邦軍 インジリスク基地》

[インジリスク基地 司令部]

ムスタファ「……二日酔いですか、少佐?」
カイ「いえ、そんなわけでは」
カイ(誰かと飲むのは久しぶりだったからな…… 少し飲み過ぎたかも知れん)
ムスタファ「それで…… 使い物になりそうですか、うちの若い連中は」
カイ「は……。 おそらく、モーションデータの追認試験を いくつか担当していただくことになるかと」
ムスタファ「教導隊の正隊員には力不足だと?」
カイ「いえ、まだ教習中でありますから、何とも……」
ムスタファ「ああ、いや、お気遣いなく。 彼らも見込みがあるからこそ、少佐につかせて 勉強させてはおりますが……」
ムスタファ「実戦経験は少なく、 さりとて古参組は機種変換訓練だけで 手一杯というのが実情ですからな」
ムスタファ「基幹システムの開発に用いるのは 力不足でしょう」
カイ「いえ、PT自体まだ新しい未分野に近しい 機械ですから。オペレーターの技能発掘も まだこれからの分野ですし……」
ムスタファ「ま、システム開発の バグフィックスのいくつかとは言え……」
ムスタファ「参加させていただけるというのは 若い者の良い励みになると考えておるのです」
ムスタファ「ただ……現在の教導隊の状況というのも 噂程度ですが、こんな田舎にも聞こえてきます。 何でも構成員は女子供だとか」
カイ「……」
ムスタファ「旧教導隊の一員である少佐が そのお目付役とは……いささか役不足というものでは ないかと余計な心配をすることもあります」
ムスタファ「それに、極東方面軍は トップがレイカーからケネス・ギャレットへ 代わったせいもあって、色々とやりにくいのでは?」
カイ「レイカー司令をご存じで?」
ムスタファ「数十年来の付き合いでしてな。 ともかく、少佐でしたら他の部署で管理者として 必要とされる所も多々あるでしょう」
カイ「いえ…… 可能な限り現場にいたしと思っておりまして。 無論、後進の教育を踏まえてのことですが」
ムスタファ「そうですか。 ま、何かお困りのことがあったら 相談に乗らせていただきますよ」
カイ「はっ……ありがとうございます」

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[伊豆基地 内部]

ラーダ「……オルレアンから連絡が入りました。 改型は予定より4日遅れでロールアウトするそうです」
カイ「なら、慣らしはアルビノでやった方がいいな。 次期主力機トライアルへの当てつけと 取られるかも知れんが」
ラーダ「アピールは必要でしょう?  マオ・インダストリー側もそう受け止めてます」
カイ「確かに、マオはトライアルへ次世代機を 出せる状況ではないからな……」
カイ「で、残り2機の行き先は決まったのか?」
ラーダ「はい。 第3特殊作戦PT部隊クライウルブズだそうです」
カイ「ほう、アルベロ少佐の……」
ラーダ「今回の件…… カチーナが聞いたら、文句を言うでしょうね」
カイ「身内以外の意見も聞きたいのでな。 彼女には次を回すさ」
カイ「で……例の資材強奪事件については?」
ラーダ「新しい情報は入ってきていません」
カイ「そうか……」
ラーダ「やはり、気になりますか?」
カイ「ああ。 テロリストがただの資材を奪うわけがあるまい」
ラーダ「でも、管轄が違いますし……」
カイ「とは言え、妙に引っ掛かる」
カイ「それに、時期が時期だ。 トライアル関連で色々と物が動いているしな。 何かわかったら、連絡してくれ」
ラーダ「了解です。 それと……奥様へのお電話もお忘れなく」
カイ「ああ。仕事が一段落ついたらな」
ラーダ「後で奥様やミナちゃんに喜ばれそうな お土産のリストを送っておきますわ」
カイ「すまんな、頼む。 ……では、また連絡する」

《トルコ地区 インジリスク》

[不明 (バー)]

カイ(土産リストか…… ヨガ関連の物じゃないだろうな。 まあ、ミナは喜ぶかも知れんが)
ドナ「……こんばんは。 今の、奥さんへの電話かしら?」
カイ「いや……そういうわけでは」
ドナ「でも、それ……結婚指輪でしょう?」
カイ「ああ」
ドナ「お子さんは?」
カイ「4人……かな」
ドナ「かな、って……どういうこと?」
カイ「実の娘が1人と、 面倒を見ている子供が3人いてね」
ドナ「そう……娘さんは元気?」
カイ「ああ。 幸いカミさんに似てくれたんで、 恨まれないで済む」
ドナ「じゃ、寂しいでしょ」
カイ「いや、まあ……」
ドナ「あたしもね、息子がいるのよ。 結婚はしてないけどね」
カイ「それじゃ、今は子供1人で留守番?」
ドナ「ううん、連れてきてるのよ。 ちょっと目が離せない理由があるものだから」
カイ「何か病気……とか」
ドナ「ん……ええ、 いつぞやの宇宙人の空襲に巻き込まれてね」
ドナ「命は助かったんだけど……首から下がね。 そんな子の寝てる間にこんな所で くだ巻いてるんだから……」
ドナ「ロクな母親じゃないわよね」
カイ「息を抜ける時に抜かないと、 君に何かあったら困るのは息子さんだろう」
ドナ「ええ……」
カイ「君に出来ることはしているのだろう?  全部が全部、自分のせいだと考えない方がいい」
ドナ「そう……でもないのかも知れない。 宇宙人は軍の施設を中心に狙っていた……」
ドナ「私があの施設にいなければ、 あの子はあんな痛い思いをしなくて済んだのだわ」
カイ「君は……?」
(銃を構える)
カイ「!」
ドナ「確かに、出来ることはしておかないと 後で悔やむことになるわ。 ……ね、カイ・キタムラ少佐」
カイ「……」

『M950マシンガン』を入手した。
『スラッシュ・リッパー』を入手した。
『サーボモーター』を入手した。

『チョバムアーマー』を入手した。
『デュアルセンサー』を入手した。
『命中↑ クリティカル↓』を入手した。

『地形適応陸↑』を入手した。


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