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死線上のハガネ ~ 第40話 ~

《地球近海(鋼龍戦隊)》

[ハガネ 戦隊司令公室]

(扉が開く)
ギント「ギント・キタウミ大佐、入ります」
マイルズ「……ああ」
ギャスパル「これで揃ったな?」
マイルズ「はっ」
ギント(ギャスパル・ギラン元帥閣下から直接か…… よほど重要な話のようだな)
ギャスパル「……君達に話しておく内容とは他でもない。 ラブルパイラへの対応についてだ」
マイルズ「明け渡しについてはまだ20時間以上も 猶予が残っていますが、その後についてですか?」
ギャスパル「うむ。 刻限になってもガディソードがラブルパイラを 引き渡さない場合、ある作戦を発動する」
ギャスパル「私の話の後、ヒリュウ改は直ちに アビアノ基地へ空間転移せよ」
レフィーナ「……私の艦は現在の任務から外されるのですか?」
ギャスパル「そうだ」
レフィーナ「……了解しました。 基地到着後はどのようにすれば良いのでしょう」
ギャスパル「アビアノ基地の地下には、特殊兵器の貯蔵庫があり、 すでに使用準備が開始されている」
ギャスパル「ヒリュウ改はそれを受領した後、 再び宇宙に上がり、ラブルパイラが合意事項を 遵守しなかった場合に備えるのだ」
レフィーナ「その特殊兵器とは……」
ギャスパル「致死性の化学兵器だ」
レフィーナ「!!」
ギント「………」
マイルズ「つまり、彼らに与えた猶予は、 致死的攻撃を準備するためのものだったと……?」
ギャスパル「向こうも同じような考えだろう。 無策のまま、タイムリミットを迎えるはずがない。 それに備え、ハガネには監視を続けてもらう」
レフィーナ「ラブルパイラにはガディソードの民間人がいます。 それでも化学兵器を使用するのでしょうか?」
ギャスパル「姿形が似ていると言えど、彼らは地球人に非ず。 つまり、連邦法の範疇外だ」
レフィーナ「し、しかし……」
ギャスパル「化学兵器を使用しても、法解釈における問題はない」
ギント「……元帥閣下。自分からも意見具申があります。 よろしいでしょうか」
ギャスパル「構わん」
ギント「我が戦隊にはガディソード人が3名、 協力者として加わっております」
ギント「また、非公式ではありますが、 フューリーの皇女の身柄も預かっております」
ギント「法解釈として、元帥閣下のお言葉は正しいと 考えますが……戦隊内には彼ら異星人を 僚友と考えている民間人パイロットがおります」
ギント「これ以後の戦いにおける士気を考慮するならば、 自分も化学兵器の使用については 慎重であるべきと考えます」
レフィーナ「……私も同意見です」
ギャスパル「ふむ……。 マイルズ准将、それが鋼龍戦隊の総意かね?」
マイルズ「………」
マイルズ「……ええ、艦長達と同意見であります」
レフィーナ「……!」
ギント(司令……)
ギャスパル「ほう、意外な返答だな」
マイルズ「情況を広く見渡した結果、そのように判断しました」
ギャスパル「だが、こちらは複数の手を打たねばならん。 作戦に変更はない」
ギャスパル「ただし……ガディソードが 刻限までにラブルパイラを明け渡してきた場合は 化学兵器を使用せずに済むだろう」
ギント(その可能性は低いだろうな)
ギャスパル「あるいは、ヘルルーガ・イズベルガを筆頭とする ラブルパイラ上層部の排除が叶えば……」
ギャスパル「他のガディソード人は大人しく投降するかも知れん。 諸君らが望むのであれば、威力偵察を許可しよう」
レフィーナ「!」
マイルズ「威力偵察……つまり、交戦が許されると?」
ギャスパル「向こうから先制攻撃を受けた場合に限るがな。 形式的とは言え、今は交渉のための休戦期間だ。 こちらから破ったという形にはしたくない」
マイルズ「………」
ギャスパル「ラブルパイラに対し、化学兵器を使うかどうかは 諸君らが出す結果次第となる」
マイルズ(ならば、空間転移によって敵要塞直近へ転移し、 奇襲を仕掛けるという手もあるが……)
マイルズ(それだと敵の十字砲火にさらされる危険性があり、 万が一のことがあった場合、即時再転移も出来ん)
マイルズ(空間転移は切り札として残しておくべきか)
ギャスパル「いずれにせよ、時間はない。 速やかな遂行を期待している。以上だ」
(通信が切れる)
マイルズ「聞いての通りだ、レフィーナ中佐。 ヒリュウ改はアビアノ基地に向かいたまえ」
レフィーナ「はっ……」
マイルズ「ただし、出発前に全ての機動兵器とパイロットを ハガネへ移乗させよ」
ギント「つまり、鋼龍戦隊の全戦力を以て ラブルパイラに攻め込むと?」
マイルズ「あくまで威力偵察だ。 ただし、向こうからの先制攻撃を期待した上でな」
ギント「司令……」
マイルズ「我らは統合参謀本部の期待以上の成果を 挙げねばならん。私に大口を叩いた以上、 やってもらうぞ、ギント艦長」
ギント「了解です」

(ハガネ ブリーフィング・ルーム)

ヒューゴ「……それで、ヒリュウ改は地球へ行ったのか?」
レオナ「ええ。先程、空間転移しました」
ヒューゴ「解せないな。 あの艦を余所に回す余裕があるとは思えないが」
リシュウ「ヒリュウ改にしか出来ない 重要な任務があるのかのう」
ラウル「でも、機動兵器を降ろしたんですよね。 それでいったい何を……」
イルム「そこまでだ。司令が来たぞ」
(扉が開く)

マイルズ「これより、ラブルパイラへの 威力偵察についてブリーフィングを行う」
マイルズ「現状は休戦中だが、こちらの索敵行動に対し、 先方が攻撃してくるならば、応戦する」
マイルズ「無論、威力偵察が一種の挑発である以上、 戦端が開かれるのを期待してのことだ」
(ざわめき)
マイルズ「静粛に。 統合参謀本部は、ガディソードが期限内に ラブルパイラを明け渡すと考えていない」
マイルズ「敵は用意周到な準備の下、 電撃作戦でクロスゲートを制圧した」
マイルズ「明け渡し要求に応じる気があれば、 最初からそのような真似はせんだろう」
マイルズ「そして、彼らはいつゼモン・モルターを発射し、 空間転移を行ってクロスゲートを持ち去るかわからん」
マイルズ「統合参謀本部は、 それを未然に防ぐ特殊兵器の準備を進めており、 ヒリュウ改はそれを受け取りに行った」
マイルズ「なお、その特殊兵器とは致死性の化学兵器である。 クロスゲートへ影響を及ぼさず、ラブルパイラ内を 迅速に制圧するための手段として選択された」
(ざわめき)

フェアリ「そ、そんな!」
ジーク「………」
アキミ「あ、あんまりですよ!  ラブルパイラには民間人もいるってのに!」
トウマ「いくら何でも酷過ぎますよ!」
アクセル「敵の非戦闘員の安否など、二の次だ。 それが軍というものだ」
ラウル「だ、だからって……」
トーヤ「戦う意志がない人達まで 巻き添えにするなんて……!」
ヒューゴ「……ヒリュウ改が選ばれた理由は、 空間転移装置か」
ラトゥーニ「化学兵器の移送時間を 可能な限り短縮するために……」
ジーク(ヘルルーガの狙いがわかった以上、 手段は選ばねえってことか。だが……)
サリー「ジーク……」
ジーク「化学兵器の使用を断行する気なら、 ガディソード人の俺達には黙ってるだろうよ。 妨害させねえためにな」
サリー「ということは……」
アケミ「まだ回避する余地はある……?」
トウマ「だけど、どうやって?」
ゼンガー「……早急に我らの手で 事を終わらせれば良いのだ」
リシュウ「うむ、ゼンガーの言う通りじゃの」
ラウル「で、でも、威力偵察なんですよね?」
ギリアム「化学兵器が到着する前に ラブルパイラが空間転移を行うおそれもある。 おそらく、今回の任務の真意は……」

マイルズ「……ブリーフィング終了後、 我が戦隊は直ちに威力偵察を行う」
マイルズ「先程も述べた通り、 ガディソードが攻撃を行えば、応戦……」
マイルズ「そのままラブルパイラへ突入し、 ヘルルーガ・イズベルガを打倒する」

ブリット「それって、要するに……」
リュウセイ「ヒリュウ改が戻ってくるまでに ガディソードとの戦争を終わらせろってことか」
アキミ「だったら、化学兵器は使われずに済む……?」
アヤ「そういうことでしょうね」
コウタ「だったら、速攻でやるっきゃねえな」

マイルズ「ガディソードの対応によっては、 全戦力を投入しての連戦となろう。 諸君らの奮戦に期待する。以上だ」

(ラウンジ)

シャナ=ミア「地球軍はガディソードに対して そのような策を……」
トーヤ「ああ。俺達はそうさせないように戦うつもりだ」
シャナ=ミア「………」
メルア「あの、シャナ=ミアさん、お顔の色が……」
カルヴィナ「当然でしょう。ラブルパイラに対して 非人道的な攻撃を厭わないなら、その次の標的は ガウ=ラ・フューリアかも知れない」
テニア「ええっ!?」
カティア「カルヴィナさん、 そうなると決まったわけじゃ……」
シャナ=ミア「地球を統べる方々が、地球の安全と利益を 第一に考えるのは当然でありましょう」
シャナ=ミア「私達フューリーとて、 グ=ランドンの行いを考えれば、 地球の方々に非難されても仕方ありません」
トーヤ「でも、そんなことを言い合ってたら、 不幸な連鎖が続くだけだ。 俺達の手で、それを断ち切らなきゃならない」
トーヤ「ガウ=ラ・フューリアには、 刻旅の杜で眠っている人が大勢いるんだ。 彼らのためにも、戦いを終わらせなきゃ……」
カルヴィナ(そして、あの船にはアル=ヴァンもいる……)
メルア「トーヤさんの言う通り、 私達にはフューリーやガディソードとの戦争を 終わらせる手段と時間が与えられていると思います」
テニア「そうだね。 ぎりぎりのとこだけど、やるしかないよ」
シャナ=ミア「ありがとうございます、皆さん」
シャナ=ミア(平和のためにヘルルーガ・イズベルガを 打倒しなければならないのなら、 その次は私がグ=ランドンを……)

(ハガネ 格納庫)

サリー「兄さん、ヘルルーガ達を止められれば、 きっと戦いは終わるよね……」
ジーク「その前にヴォート騎長が出てくるだろう。 あの人を突破しなきゃ、ラブルパイラには行けねえ」
フェアリ「ヴォートは事実を知った上で、 ヘルルーガに与している……」
フェアリ「あの人は地球ではなく、 ゴライクンルとむすびついた先に ガディソードの未来があると考えているのね」
ジーク「だが、そこにはヘルルーガの野望が絡んでる。 奴がクロスゲートを手に入れたら、 そいつはますます膨らむ」
ジーク「そして、ゴライクンルはそれを利用する気だ」
サリー「ヨンさんはゾヴォークと地球の間を 取り持とうとしているけど、あの人達は そうじゃないものね……」
ジーク「ヘルルーガとゴライクンルの組み合わせは最悪だ。 クロスゲートとラブルパイラを使って、 何をしでかすかわからねえ」
フェアリ「ええ……ゾヴォークにまで 争いの火種が蒔かれることになるかも知れない……」
フェアリ「そうなる前にここでヴォートを……ヘルルーガ達を 私達の手で止めるしかないわ」

《クロスゲート宙域》

[ラブルパイラ 中央管制室]

レジアーネ「ヘルルーガ様、 第3次防衛線に鋼龍戦隊のハガネが接近中です」
ヘルルーガ「ふん……偵察、または牽制か、あるいは……」
レジアーネ「まもなく空間転移の準備が整いますが…… 地球軍の中でも最強クラスの彼らが 本気で攻め込んでくるなら、少々厄介かと」
ヘルルーガ「裏切り者共が水先案内をする可能性もあるか」
レジアーネ「空間転移装置に万一のことが起きぬよう、 早めに連中を叩いておくべきでは?」
ヘルルーガ「うむ、 ゼモン・モルターの調整時間を稼ぐためにもな」
レジアーネ「では、私が出ますわ」
ヘルルーガ「いや、親衛隊は私の身辺にいてもらわねばならん。 ヴォート・ニコラウスを出撃させるのだ」
レジアーネ「しかし、あの男はフェアリ・クリビアを……」
ヘルルーガ「だからこそだ。戦いが長引けば、好都合だからな」
レジアーネ「なるほど……わかりましたわ」


第40話
死線上のハガネ

〔戦域:地球近海宙域〕

(東端にハガネが出現し、少し西へ移動する)
エイタ「ラブルパイラの予想射程圏内まで、あと5000」
ギント「強行偵察に見せかける。両舷前進原速。 空間転移シーケンスはフェイズ3終了後、キープ。 緊急時に備えよ」
テツヤ「了解。両舷前進原速。 空間転移シーケンスはフェイズ3終了後、キープ」
マイルズ「敵の様子は?」
テツヤ「ラブルパイラ周辺に機動部隊を展開していますが、 目立った動きはありません」
マイルズ「こちらの出方を窺っているのか……」
(ハガネにアラート)
エイタ「敵機動部隊の一部が移動開始!  現宙域を目指している模様!」
ギント「機動部隊各機、出撃。 ただし、命令あるまで攻撃を禁ずる」
テツヤ「はっ。機動部隊各機、出撃せよ!」

状況選択
スーパーソウルセイバーがFF換装で出撃し、ジークとサリーが
出撃している 出撃していない
スーパーソウルセイバーがGG換装で出撃し、ジークとサリーが
出撃している 出撃していない


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