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ボランタリー・エージェント ~ 第24話 ~

[ペレグリン級 ブリッジ]

メキボス「ゾヴォークとは俺とガヤトの本国…… 複数の恒星間国家による共和連合でな」
メキボス「枢密院という重しの下で 色んな派閥がひしめき合っている」
メキボス「中でも特に大きいのは、ウォルガとゾガル…… あんた達には前者がインスペクター、後者が ゲストと言った方がわかり易いだろう」
アルバーダ「じゃあ、あんたはウォルガの人間ってわけか」
メキボス「いや、今は違う」
アルバーダ「どういうこった?」
メキボス「ま、順を追って話すさ。 ゾヴォークは昔から定期的に版図外の 生命居住可能領域を探索していてな……」
メキボス「そこに知的生命体が存在し、 かつ自分達より文明のレベルが低く、 未熟な種族だと判断した場合は……」
メキボス「この銀河系の秩序を維持するっていう 大義名分の下、将来的に共和連合へ 従属させるための下準備を秘密裏に行う」
アルバーダ「従属か……大国ならではのエゴだな」
メキボス「否定しねえよ、今はな」
アルバーダ「……それで?」
メキボス「枢密院の調査団が地球へ到達し、 色々と調べた結果、地球人の闘争心と 文明レベルに見合わない軍事技術が問題視された」
メキボス「他星技術の解析力と応用力が高く、 知性と力のバランスが取れていない 地球人を放置すれば……」
メキボス「いずれは星間共和連合の秩序を乱す 存在になると予測されたのさ」
サフィーネ「そんなことを一方的に決めつけられてもねぇ」
メキボス「地球と地球人を危険視する理由は他にもあってな。 俺達以外にちょっかいを出す連中もいたし、 面倒事になる前に予防策を講じることになった」
アルバーダ「地球の監視……いや、支配か」
メキボス「ああ。ゾガルの重鎮であるゼゼーナンは枢密院に 働きかけ、地球絡みの案件を自分達の派閥だけで 進めた。後々の利権を独占するためにな」
テリウス「利権って……どんな?」
メキボス「例えば、あんたが乗ってる魔装機、 そして魔装機神……それらに用いられている技術は 俺達にとっちゃ珍しくてな」
メキボス「戦争商人なんかに高く売れるのさ」
テリウス「へえ……」
メキボス「ゼゼーナンは 地球政府の上層部と水面下で交渉を行い……」
メキボス「ゾヴォーク側の技術提供という飴と、 侵略戦争の示唆という鞭を使って地球人を 手懐けようとしたが……」
メキボス「そこにいるシュウ・シラカワによって、 台無しにされちまったのさ」
シュウ「………」
メキボス「そのせいでゼゼーナンは手を引かざるを得なくなり、 今度はウォルガが俺と弟のウェンドロを 地球へ派遣した」
メキボス「その後のことは、あんたらも知ってるだろ?」
セレーナ「まあね」
メキボス「命からがら本国へ戻った俺を待っていたのは、 身内の冷たい仕打ちだった。連中は俺に全ての責任を 押し付け、派閥から放逐したのさ」
アルバーダ「ふん……同情なんざしねえぜ」
メキボス「ああ、因果応報って奴さ。 結局、俺とウェンドロも派閥の利益のために 利用されただけ……」
メキボス「地球人を野蛮人だと見下していたが、 俺達もろくなもんじゃねえ。枠組みの大きさこそ 違っても、身内でもめてるのは同じだし……」
メキボス「ウォルガとゾガル間のゴタゴタを 連合非加盟星である地球に持ち込んだからな」
セレーナ「二つの派閥が一致団結して攻め込んで来たら、 今頃地球は制圧されてたかもね」
メキボス「……俺は鋼龍戦隊と戦って、 ウェンドロやゼゼーナンが主張していたほど 地球人が未熟な種族じゃねえってことがわかった」
メキボス「そして、俺の報告を受けた枢密院は 地球人との接触方法を見直そうとしている」
シュウ「ほう……どのようにです?」
メキボス「地球との戦争を終わらせる。 俺はそのために舞い戻った…… 枢密院の特使としてな」
シュウ「上からの命令とは言え、ゼゼーナン卿が 素直に引き下がるとは思えませんね」
メキボス「だから、言うことを聞かせるために 取引材料を……奴の弱みを握ろうと考えたのさ」
テリウス「弱み?」
メキボス「ゼゼーナンには色々な疑惑があってな。 俺はその中にグランゾン絡みのものが あると睨んでいた」
アルバーダ「……!」
メキボス「で、シュウに会って確かめようと思ったんだが…… 色々と準備しなきゃならねえことがあって、 身動きが取れなくてな」
メキボス「だから、ゼゼーナン達が使った転移航路とは 別のルートの確保と、地球圏の情勢調査を兼ねて、 ガヤトを先に行かせ……シュウの行方を探させたのさ」
メキボス「後で俺がコンタクトを取るためにな」
アルバーダ「ヨン、お前は一人で地球へ来たのか?」
ヨン「はい、この艦に空間転移ユニットを連結して……。 それは今、地球圏から離れた宙域に隠してありますが」
アルバーダ「遠い星から一人でやって来て、潜入調査と捜索か…… よくよく考えてみれば、大変な任務だよな」
セレーナ「シュウが鋼龍戦隊と戦って、 一度死んだってことは知ってたの?」
ヨン「ええ、地球へ来てから……。 それで、どうしようかと思っていた矢先に ラ・ギアスへ召喚されてしまって……」
セレーナ「じゃあ、そこでシュウと出会ったことは、 ヨンにとってラッキーだったのね」
ヨン「ええ、まあ……その後が大変でしたが……」
メキボス「……ガヤトは、 俺がウォルガにいた頃からの優秀な部下でな。 放逐された後もついてきてくれた」
アルバーダ「インスペクター事件でも一緒だったのかよ?」
ヨン「いえ、あの時は本国にいました」
セレーナ「じゃあ、第3人型機動兵器開発実験隊は……」
メキボス「あの部隊は前大戦で俺の仲間と交戦し、敗れた。 その後、連中が使っていたこの艦と機体を押収し、 サンプルとして本国へ送ったのさ」
エルマ「それで、ヨンさんに……」
メキボス「そうだ。地球の軍籍と機体があれば、 潜入任務を遂行するのに便利だからな」
アルバーダ「じゃあ、バルトール事件に関わった話、 特命や極秘任務、アクセス・コードは捏造か」
ヨン「はい……偽りを述べて、すみませんでした……」
アルバーダ「まあ、任務だからな。 簡単にバレねえような細工を施したのは、 見事だったと言っておいてやるよ」
ヨン「い、いえ……」
アルバーダ「で、この艦とプファイルIII、グルンガスト弐式にも 何か細工をしているのか?」
ヨン「弐式には手を加えていませんが…… この艦の自動制御装置は、こちら側で付けた物です」
ヨン「また、プファイルIIIは未完成状態だったので、 残されていた設計図を基にして作り上げました」
シュウ「とは言え、ガン・スタブレーダーは ゾヴォーク製……グレイターキンの武装を 参考にした物なのではありませんか?」
ヨン「何故、それを……!」
シュウ「記憶が完全に戻った後、調べたのです。 上手くカムフラージュされていましたが…… それであなたの正体の見当が付きました」
メキボス「ふん、さすがだな。 だが、気づいてたんなら、さっさとガヤトを介して 一報を入れてもらいたかったぜ」
メキボス「こっちはずっと音信不通で、困ってたんだからな」
ヨン「申し訳ありません…… 私がラ・ギアスへ行ってしまったせいで……」
メキボス「ああ、まあ、それはお前の落ち度じゃねえ」
シュウ「……私にも都合がありましてね。 すぐに地上へ行くわけにはいかなかったのです」
メキボス「事情についてはガヤトから報告を受けたが…… そろそろ答えを聞かせてもらおうか」
シュウ「………」
シュウ「……そちらの意図はわかりました。 私はもっと直接的な方法を考えていたのですが……」
シュウ「今後の情況を鑑みれば、ゾヴォーク枢密院に 貸しを作っておいた方がいいでしょう」
シュウ「なので、メキボス……あなたに協力しますよ。 ゼゼーナン卿の陰謀についてもお教えしましょう」
メキボス「ああ、頼むぜ」
シュウ「あなたも御存知の通り、グランゾンには ゾヴォークから提供された技術が用いられ……」
シュウ「その心臓部には特異点…… つまり、ブラックホールが使用されています」
シュウ「しかし、このシステムの一部は ブラックボックス化されており、 詳細が不明な状態となっていました」
シュウ「それをいいことにゼゼーナン卿は 特異点の位相をずらし、剥き出しの特異点を 作り出す仕掛けを施していたのです」
メキボス「………」
ヨン「マスター、それは……!」
メキボス「ああ、わかってる」
シュウ「普通の特異点は時空を歪めるだけですが、 ある一定の位相を持たせることにより、 事象の発生確率の密度をも変化させられるのです」
エルマ「つまり、偶然が多発するんですね」
シュウ「そう……グランゾンが存在する限り、 地球では通常起こり得ない事件が多発し、 混乱が支配する……」
シュウ「そのような仕組みになっていたのですよ」
アルバーダ「な、何だって……!?」
シュウ「もっとも、中にはグランゾンとは関係なく 起きた事件もあったでしょう」
シュウ「また、並行世界との境界線が 曖昧になりつつある原因は、地球そのものに 内包されている可能性もあります」
ヨン「………」
シュウ「ともかく、ゼゼーナン卿は混乱を利用し、 地球の軍事技術を独占するつもりだったのでしょう」
シュウ「彼は、地球人が特異点のフェイズシフト理論を 解析できないと思っていたようですが…… 私を甘く見ていたのが、運の尽きでしたね」
メキボス「こいつは思っていた以上の大ネタだぜ。 ゼゼーナン本人にも話したんだな?」
シュウ「そうですが……彼は自分の部下に 私との話を聞かれないようにしていましたね」
メキボス「だろうな。 奴はタブーを犯した……そのことがバレたら、 自分の立場が危うくなるだけじゃ済まねえ」
メキボス「ガヤト、枢密院に報告しろ。 それで強制召還命令が出るだろうよ」
ヨン「わかりました」
(アラート)
サフィーネ「何なの?」
ヨン「レーダーに感あり。 複数のゼラニオ級が本艦の後方宙域を航行中です」
テリウス「僕達を見つけたのか……!?」
ヨン「いえ、こちらへ向かっているわけではありません」
アルバーダ「連中の針路から目的地を割り出せるか?」
ヨン「やってみます」
(キー操作、成功シグナル)
ヨン「いくつか候補が出ました。最も可能性が高いのは、 L4宙域のスペース・コロニー群です」
アルバーダ「!」
セレーナ「コロニー群には宇宙軍の主力がいるはずよね?」
エルマ「ええ。そのせいで、ゲストは本格的な攻撃を 仕掛けなかったのでは……」
メキボス「ゼゼーナンは初手でしくじったからな。 手広く攻めるのを止め、足場を固めるために 月の制圧を最優先させたんだろうよ」
セレーナ「で、いよいよコロニー群を攻めるってわけ?」
エルマ「それなら、 必勝を期して転移戦法を使うのでは……?」
メキボス「その前段階の陽動かも知れねえな」
シュウ「ともかく、見つけてしまった以上、 見過ごすわけにはいきません」
アルバーダ「出撃するってのかよ?」
シュウ「おや、意外そうですね」
アルバーダ「あんたのことだ、 自分には関係ないとか言い出すと思ってたぜ」
シュウ「これも私の目的の一環です。 ゲストの好きにさせるつもりはありませんから」
アルバーダ「そうかい。じゃあ、俺も付き合ってやらあ」
セレーナ「私も出るわ」
テリウス「……僕は遠慮しとくよ。面倒だし」
モニカ「シュウ様が出られるのよ。 そういうわけはにいかないでしょ」
テリウス「わ、わかったよ……」
ヨン「マスター、私も出撃します」
メキボス「ああ。 悪いが、俺は出られねえ。前にも言ったが、 俺が動いてるってことを知られたくねえからな」
アルバーダ「わかった。じゃあ、留守番を頼むぜ」
メキボス「それと……もし、人間の指揮官がいたら、 俺とガヤトのこと、陰謀の件は黙っておいてくれ」
サフィーネ「あら、どうして?」
メキボス「枢密院の決定が下るまで、 ゼゼーナンに余計な真似をされたくねえからさ」
メキボス「もっとも、もう根回しと揉み消しを 始めているかも知れねえがな」
シュウ「……わかりました」
メキボス「ガヤト、お前も素性を知らせねえようにな」
ヨン「はい、マスター」
シュウ「では、出撃しましょうか」


第24話
ボランタリー・エージェント

〔戦域:暗証宙域周辺〕

(北東端にゼラニオが4隻いる。西寄りのゼラニオにアラート)
セティ「……間違いない、グランゾンだわ。 シュウ・シラカワとまた遭遇するなんてね」
セティ「こちらを食い止めるつもりだとしたら…… 意外とお人好しなのかしら、彼」
(南端で出撃準備)
テリウス「やれやれ…… 義勇軍になるつもりはないんだけどな」
モニカ「テリウス、一度決めたことに ぶつくさ言わないの。男でしょう?」
テリウス「はいはい」
エルマ「セレーナさん、 敵艦から機動兵器が出て来ます!」
(ビュードリファーを含む敵機が出現)
セレーナ「ふ~ん、 割と本気で相手をしてくれるみたいね」
セティ「ゼラニオ級各艦は、 コロニー群へのコースを維持……」
(西端を指す)
セティ「速やかに現戦域より離脱しなさい」
バイオロイド兵「了解」
セティ「さて……聞こえるかしら、シュウ・シラカワ?」
シュウ「あなたは…… あの時、ゼゼーナン卿と一緒にいましたね」
アルバーダ「指揮官は人間か」
セティ「そうよ。私はジュスティヌ・シャフラワース…… セティでいいわ」
アルバーダ「ご丁寧にどうも。こっちも名乗ろうか?」
セティ「結構よ。ここで死ぬ者の名前に興味はないから」
セレーナ「あら、言ってくれるじゃない」
ヨン(ジュスティヌ・シャフラワース…… マスターのご友人……)
ヨン(それに、ビュードリファー…… もう仕上がっているの……?)
シュウ「それで、セティ……私に何か?」
セティ「ええ、聞きたいことがあってね。 あの時、うちのボスと何を話していたの?」
シュウ「あなた、問い掛ける相手を間違っていますよ」
サフィーネ「ボスに信用されてないのね。可哀想に」
セティ(……こっちも信用してないけどね)
セティ「答える気がないのなら、 腕ずくで聞き出してやるわ」
シュウ「フッ、私の口は固いですよ」
アルバーダ「……シュウ、あの女の相手は程々にな」
シュウ「わかっています。 最優先ターゲットはゼラニオ……戦域から 離脱される前に撃沈するか、推進部を破壊します」
シュウ「手間取るわけにはいきません。 10分以内に事を成し遂げますよ」
アルバーダ「ああ、わかったぜ」
(作戦目的表示)

〈9PP〉

シュウ「皆さん、あと2分です」

〈10PP〉

シュウ「皆さん、あと1分です。急いで下さい」

状況選択

ビュードリファーを撃墜した
ゼラニオを全機撃墜した


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