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闇の囁き ~ 第13話 ~

《神聖ラングラン王国 バランタイン州 クサカ市付近》

[クサカ市 カークス軍野営地付近]

セレーナ「ねえ、あれ……街の外れにあるのは カークス軍の野営じゃない?」
サフィーネ「そうね」
セレーナ「テリウス王子はあそこにいるの?」
サフィーネ「その可能性は高いけど……確証が欲しいわ」
セレーナ「じゃ、街に潜入する?」
エルマ「セレーナさん、サフィーネさん、頭を下げてください。 何者かがこっちへ近づいて来ます。おそらく、 カークス軍の見張りの兵士かと思われます」
セレーナ「何人?」
エルマ「一人です」
サフィーネ「ちょうどいいわ。捕まえて、情報を聞き出すわよ」
セレーナ「エルマの身長なら、草陰で相手からは見えないわね。 小動物を装って、上手く誘い出してくれる?」
エルマ「ラジャ。やってみます」

[クサカ市 カークス軍野営地付近]

兵士「ん? 何だ?」
エルマ「………」
兵士「動物……? いや、怪しいな!」
(速い足音)
エルマ「あっ!」
兵士「むっ!?」
エルマ(そんな、いきなり走って来るなんて!)
兵士「こ、これは……!!」
(エルマが三又のアームを出す)
エルマ(こうなったら、スタン・スティックで……!)
兵士「そ、そのボディライン! ギミック!  す、素晴らしい!!」
エルマ「え!?」
兵士「いったい、どこのロボットなんだ!?」
エルマ「じゃ、じゃあ……」
(エルマが頭のフードを開け、両手を上げる)
エルマ「これなら!?」
兵士「おおっ、そのシステムは!!」
(殴る)
兵士「ぐあっ!!」
(兵士が倒れる)
セレーナ「はいはい、後ろがガラ空きよ」
(エルマがフードを閉め、手を下げる)
エルマ「セレーナさん!」
セレーナ「いやはや、冗談で言ったことが本当に起きるなんてね」
エルマ「え、ええ……ボクも驚いてます……」
セレーナ「チカに大威張りで報告できるわね」
エルマ「や、やめて下さいよ!  あいつ、絶対にネタにしてきますから!」
サフィーネ「ふふっ、見事な色仕掛けだったわ。 さ、締め上げて情報を聞き出しましょう」

[クサカ市 カークス軍野営地付近]

アルバーダ「……女スパイコンビの帰りが遅いな」
ヨン「情報収集に手間取っているんでしょうか」
モニカ「私も一緒に行った方が良かったのでは……」
アルバーダ「そりゃ、相手がカークス軍なら、 王女さんが聞きに行けば一発だろうけどさ。 あんたもテリウス王子と一緒に保護されちまうぜ」
モニカ「……そうですわね」
アルバーダ「ところで、シュウ。聞きてえことがあるんだが」
シュウ「何です?」
アルバーダ「あんたが言ってたゲストってのは、何なんだ?」
シュウ「おや、御存知なかったのですか?」
アルバーダ「ああ。こちとら、下っ端なんでな」
シュウ「ヨン、あなたも?」
ヨン「……え、ええ」
シュウ「やるほど。ゲスト関連の情報は、最高級レベルの 機密ですが……あなた達には知らされているのでは ないかと思っていたのですがね」
アルバーダ(ふん……鎌を掛けてきやがったな)
アルバーダ「生憎、本当に知らねえんだよ」
シュウ「ゲストとは、DC戦争以前から 地球連邦政府の一部高官達とコンタクトを 取っていた異星人のコードネームです」
シュウ「正式名称は、ゾヴォーク。 先だって地球圏を襲撃したインスペクターと 同一の存在であると言われていますが……」
シュウ「私は、ゲストとインスペクターは、 それぞれがゾヴォークの派閥の一つであり、 折り合いが悪いのではないかと考えています」
アルバーダ「……異星人も一枚岩じゃねえってことかい。 あんた、いったいどこでそんな情報を手に入れた?」
シュウ「南極ですよ」
アルバーダ「……!」
シュウ「あの地で行われた秘密会談……ゾヴォークの テイニクェット・ゼゼーナン筆頭書記官と……」
シュウEOT特別審議会のアルバート・グレイ大使の 会話を聞いて、ゲストとインスペクターの関係を 推測したのです」
シュウ「また、南極事件がきっかけとなって、 ゼゼーナン筆頭書記官の計画が停滞したため……」
シュウ「インスペクターのウェンドロが動いたと考えられます。 つまり、対抗派閥の失敗を好機と見なしたのでしょう」
ヨン(そんなことまで……。 マスター……やはり、シラカワ博士は 油断ならない人物です)
ヨン(だからこそ、慎重に事を進めないと……)
モニカ「……地上世界も色々と大変ですのね」
ガエン「俺達には関係のない話だ」
アルバーダ「シュウ、あんた…… 南極事件のことを思い出したんだな……?」
シュウ「ええ」
アルバーダ(当事者がしれっと言いやがって……。 例え、てめえがこっちのことを 仲間だと思っていたとしても、俺は……)
シュウ「もしや……あなたはあの時、 コーツランド基地にいたのですか?」
アルバーダ「いや……そういうわけじゃねえよ」
シュウ「………」
(羽音)
チカ「ご主人様、サフィーネ様達が戻って来ましたよ」
サフィーネ「お待たせしました、シュウ様」
シュウ「ご苦労様です。結果は?」
サフィーネ「エルマの色仕掛けで上手くいきましたわ」
ヨン「えっ!? それ、本当なんですか!?」
セレーナ「ええ、まさに瓢箪から駒って奴よ。 詳細はプライバシーを考慮して、伏せておくけど」
ガエン「無駄話はいい。テリウス王子の情報を聞かせろ」
セレーナ「はいはい。 王子様は、クサカ市郊外に駐留している カークス軍部隊に保護されてるわ」
チカ「じゃ、モニカ様の時と違って、 連れ出すのは楽かも知れませんねぇ」
セレーナ魔装機や警固兵は結構いるわよ。 それに、今日明日で別の所へ移送されるみたいだから、 急いだ方がいいわ」
シュウ「では、アルバーダとセレーナ、ヨン、ガエンは 囮となって、魔装機を野営から引き離して下さい」
シュウ「その間、私とサフィーネは隠形の術を使って、 テリウスの所へ行きます」
アルバーダ「……ああ、わかった」
モニカ「あの、シュウ様……私はどうすれば?」
シュウ「あなたはここで待機です。 今回はカークス軍……つまり、あなたの身内と 戦うことになりますからね」
モニカ「でも、シュウ様についていくと決めた時点で 覚悟していたことですわ」
シュウ「あなたが出れば、情況が混乱するおそれがあります。 事が済み次第、アルバーダ達と合流して 退路を確保して下さい」
モニカ「……わかりました」
サフィーネ「シュウ様は私がお守りするから、 あんたはちゃんとお留守番してなさいよ」
モニカ「あなたが一緒だと、かえって心配ですわ」
サフィーネ「ホホホ、何とでもおっしゃい。 私はシュウ様とデートを楽しんでくるから♥」
モニカ「まっ!」
セレーナ(やれやれ、この三角関係は収拾がつかなさそうねぇ)


第13話
闇の囁き

〔戦域:荒地〕

(カークス軍が出撃済み)
レスリー「所属不明機は、こちらへ真っ直ぐ 向かって来ております」
ラテル「ふん、4機で正面から来るとは 肝が据わった連中だ」
レスリー「ですが、タイミングが気になりますな」
ラテル「ああ、念には念を入れておくか。 ライオネス少尉は下がって、テリウス殿下の護衛を。 出立準備を急がせろ」
ミラ「了解です」
(西端の3機のブローウェルとガディフォールが撤退)
レスリー「アクロス少佐、目標が識別できました。 先日交戦した地上人の機体です」
ラテル「こちらでも確認した。 クリストフと一緒にいた連中だな」
(東端で出撃準備)
セレーナ「さっき、4機後退したわね。 もしかして、こっちの目論見に気づかれた?」
ヨン「テリウス王子を保護している部隊なら、 当然の行動だと思います。シラカワ博士も 想定しているでしょう」
セレーナ「でも、私達がシュウの一味だと知られたら、 ちょっと厄介かもね。本命が別行動中だってバレるし」
ヨン「既に気づかれている可能性は高いと思います。 何機かの挙動は、以前に交戦した部隊のそれと 似ている点がありますから」
セレーナ「ホントなの?」
エルマ「ボクの方でも照合していました。 ヨン少尉の言う通りです」
セレーナ(エルマと同時に気づくなんて、 やるじゃないの、ヨン)
ガエン「敵を追い込み過ぎたら、増援を呼ばれるかも知れん。 上手く陽動せねばならんな」
セレーナ「そうね、作戦をちょっと変えなきゃ。 どうする、アル?」
アルバーダ「………」
セレーナ「アル?」
アルバーダ「あ、ああ、何だ?」
セレーナ「指揮官殿に作戦変更を要請したんだけど?」
アルバーダ「そうか」
セレーナ(こんな時にぼうっとしてるなんて、らしくないわね。 やっぱり、シュウのことが引っ掛かってる?)
(セレーナ機に通信)
エルマ「セレーナさん、敵機から通信です!」
セレーナ「つないで」
ラテル「お前達、クリストフの一味だな。 あの男と紅蓮のサフィーネはどこだ?」
セレーナ「一味呼ばわりされるのは、ちょっと心外ね」
アルバーダ「……グランゾンとヴィゾールは 今頃、てめえらのねぐらを襲ってるぜ」
レスリー「何!?  アクロス少佐、すぐに引き返しましょう!」
ラテル「待て、素直に事実を教えるわけがないだろう。 多分、あれはブラフだ。グランゾンとウィーゾルは、 この近くに潜んでいるかも知れん」
レスリー「しかし……!」
ラテル「わかってる。このタイミングだ、連中の目的が テリウス殿下の拉致だということもあり得る。 ライオネス少尉に連絡し、警戒するよう伝えろ」
レスリー「はっ!」
セレーナ「ちょっと、アル。 本当のことを言ってどうすんの」
アルバーダ「指揮官が優秀な奴なら、引っ掛かるさ」
セレーナ「本当にそれだけ?」
アルバーダ「……ああ。 現に、奴らは後退する素振りを見せてねえだろ」
セレーナ(そうだけど、わざとシュウを追い込むためだと 思ったわよ……)
アルバーダ「みんな、聞いてくれ。まず、敵機を……」
(敵機との中央あたりのラインを指す)
アルバーダ「あのラインからこっち側に引き付ける。 その後、頃合いを見計らって、離脱するぞ」
アルバーダ「ただし、俺達自身があのラインの上に乗ったり、 向こう側に入って、敵機を落とすのはNGだ」
アルバーダ「手間取れは、こっちの目論見に気づかれる 可能性が高くなるからな……制限時間は6分だ。 いいな?」
セレーナ「OK!」
(作戦目的表示)

〈4PP〉

アルバーダ「みんな、あと3分だぞ!」

〈5PP〉

セレーナ「エルマ、残り時間は!?」
エルマ「あと2分です!」

〈6PP〉

アルバーダ「あと1分だ! 急げ!」

〈vs レスリー〉

[ガエン]

レスリー「邪教徒め、性懲りもなく現れるとは!」
ガエン「貴様と再び出会ったのは、単なる偶然だ」
レスリー「いや、悪を討てという天の思し召しなのです!」
ガエン(天……神だとでも?  だが、この男もそれを目の当たりに したことはあるまい)

[アルバーダ]

アルバーダ「どうした、今日はお得意のマジック・ショーを やってくれないのかよ?」
レスリー「む……!」
アルバーダ「そうか、シュウを警戒してんのか。 その判断は正しいと言っておいてやるぜ」

[セレーナ]

レスリー「善悪を判断できぬ地上人よ!  今度こそ正義の鉄槌を下してあげましょう!」
セレーナ「前もそんなこと言ってなかったっけ?  何にせよ、正義の押し売りはノーサンキューよ」

[ヨン]

レスリー「あなた達が何を企もうと、 我が正義の前では意味を成さないのです!」
ヨン(意味を成さないって…… シラカワ博士が潜入している頃合いなんだけど)

[撃墜]

レスリー「むううっ、ふ、不覚! いったん下がります!」
(レスリー機が撤退)

〈vs ラテル〉

[ガエン]

ラテル「部下のお前がいる以上、 クリストフが裏で動いていると 考えて良さそうだな」
ガエン「俺は、あの男の部下になった覚えはないがな」

[アルバーダ]

ラテル「何故、ここへ来た!?  お前達の狙いは、テリウス殿下なのか!?」
アルバーダ(優秀な指揮官だな。 だけど、もうちょい裏を読んだ方がいいぜ)
ラテル「カークス軍には、お前らと同じ連邦軍の者もいる!  我らに刃向かえば、同士討ちになりかねんぞ!」
アルバーダ「そいつは御免だが、 カークスに手を貸す理由はねえな!」

[セレーナ]

ラテル「今度は後れを取らんぞ、地上人!」
セレーナ(そうそう、その調子で がっちり食いついてきてよね)

[ヨン]

ラテル「悪いな、地上人! ここから先へは行かせんぞ!」
ヨン(……まだこちらの目論見を 確信したわけじゃないみたいね)

[撃墜]

ラテル「ええい、私としたことが! 一時後退する!」
(ラテル機が撤退)

状況選択

敵機が全機指定ラインを超えた
敵機全滅させた


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