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私に、さよならを ~ 第52話 ~

〈インペトゥス撃墜〉

イグニス「ぬううっ、馬鹿な!  この俺が、人間共に押し負けるなどと!」
コンターギオ「退くがいい、イグニス」
イグニス「そんなことが出来るか!  俺はあの人間を抹殺するんだよ!  でなきゃ、ラキが!」
コンターギオ「そのことも含め、考えがある。 ここは私に任せ、お前は退くのだ」
イグニス「ぬ、ううっ……!!」
(インペトゥスが撤退)
リム(リアナ)「アニキ、イグニスが!」
ジョッシュ「あれだけのことを言っておきながら、 グラキエースに拘っておきながら退くのか。 何故だ……?」

〈ウィオラーケウム撃墜〉

コンターギオ(この私を退けるか……!  ならば、あの策を使うしかあるまい)
コンターギオ(さらばだ、人間共。 ここがお前達の墓場となる。クククッ)
(ウィオラーケウムが撤退)
エイタ「メリオルエッセ機、基地から離脱していきます!」
テツヤ「見切りを付けたのか……!?」
ジョッシュ「チャンスだ……!  リム、ウェポン・ボックス・ハンガーを パージして、地下へ向かうぞ!」
リム(リアナ)「OK、アニキ!」
カイ「ジョッシュ!」
ジョッシュ「わかってます、無茶はしませんよ!」
(ウェポン・ボックス・ハンガーをパージして、エール・シュヴァリアーとブランシュネージュが出現)
ジョッシュ「行くぞ、リム!」
リム(リアナ)「うん!」
(エール・シュヴァリアーとブランシュネージュが撤退)

〔戦域:地下格納庫内〕

(壁際にファービュラリスとストゥディウムがいる)
グラキエース「来る……ジョシュア・ラドクリフが……」
ウェントス「なら、コンターギオ達は……」
グラキエース「案ずるな。私があの人間達を葬る。 そのために私はここにいる」
ウェントス(いや、おそらく僕らは……)
(エール・シュヴァリアーとブランシュネージュが出現)
ジョッシュ「いたな、グラキエース」
グラキエース「私の中からも、この世界からもお前の存在を消す。 滅びを定められし者達よ、憎悪の中で屍を晒せ」
ジョッシュ(くっ……そうだ、グラキエース……お前のその心)
ジョッシュ(憎悪させ、恐怖させ、死をもたらすという意思は 純粋で明確なのに、悪意もなければ自らの生への 執着もない、その心)
ジョッシュ(それはおかしいんだ。だから、俺は……)
グラキエース(うっ……やめろ! 貴様の意識が私を圧迫する。 その戯れ言が私の機能を損なう。私はそのように 作られた者、破壊の体現者としてある者だ)
グラキエース(不都合なのは、貴様の存在だ。 おかしいのは、貴様が私の中にいることだ)
ジョッシュ(その、お前の中の俺を見ろ、グラキエース。 自分の心の歪さを見ろ)
ジョッシュ(俺と共感したお前の一部、 共有してしまったその意識の中で、 お前は解放を望んでいる)
ジョッシュ(それが俺の意思となって、 俺を動かしているんだ。それを見ろ)
グラキエース(黙るがいい……人間。 私が完全に壊れる前に、お前を殺してみせる)
(エール・シュヴァリアーに共振)
ジョッシュ(ぐ……う……!  ならば、滅びろ……死して、破滅の、王の…… くああっ……!)
リム(クリス)(リ、リアナ! お兄ちゃんが!!)
リム(リアナ)「え!?」
リム(クリス)(お兄ちゃんに呼びかけて! 早く!!)
リム(クリス)「アニキ、どうしたの!? しっかりして!!」
(エール・シュヴァリアーに共振)
ジョッシュ「ううっ! リム!?」
リム(リアナ)「アニキ、大丈夫!?」
ジョッシュ「あ、ああ……!」
ジョッシュ(くそ……あいつの意識が、俺を壊すのか……!  違う、そうじゃない! くっ、まだ共振が、 同調が強まっていく……!)
ジョッシュ(駄目だ、“破滅の王”が、ルイーナが いったい何なのか知るまで シュンパティアを切るわけには……!)
グラキエース(機能不全が強まっている……私は……私は……?)
(ファービュラリスに通信)
コンターギオ「やはり、駄目か……グラキエース」
グラキエース「……その……ようだ」
コンターギオ「ならば、今からそこを自爆させる。 お前達の死を以て、オフィチナスのエネルギーを 解放する。滅びて役に立て」
グラキエース「わかっ……た……」
コンターギオ「お前もだ、ウェントス。 “破滅の王”から授かった力で、 そこにいる人間達に死を与えよ」
ウェントス「………」
コンターギオ「では、さらばだ。 お前達に良き滅びがもたらされんことを」
(轟音)
ジョッシュ「何だ!? いったい何をしている!?」
グラキエース「………」
ジョッシュ「答えろ、グラキエース!」
グラキエース「……コンターギオ達は私が使えなくなったと判断した。 私達の死の波動を以て、このオフィチナスの エネルギーを破壊の力へ変える」
グラキエース「貴様達もろとも、私達は消えるのだ」
ジョッシュ「な、何だって!?」
リム(リアナ)「そんな! ウェントス!!」
ウェントス「もう僕にはどうすることも出来ない…… 僕はシステムに囚われているんだ」
ジョッシュ「くっ!  ヒリュウへ! こちらジョッシュ!  基地が自爆する! 直ちに離脱を!」
リム(リアナ)「本当に止められないの!?」
ウェントス「………」
カイ「こちらエレーブ1! 今からそちらへ行く!  自爆の阻止を……」
ジョッシュ「駄目です! いつ爆発するか、わからないんだ!  早く基地から脱出して下さい!」
カイ「お前達はどうする!?」
ジョッシュ「何とかしてみせます! 以上、通信終わり!」
グラキエース「……お前にはわかっているはずだ。 我らに死を、存在の消滅を恐れる心はない。 悲しみも怒りも憎しみも、我らにはない」
ジョッシュ「それは違う! お前達にも感情はあるはずだ!」
グラキエース「だが、私は死を恐れない」
ジョッシュ「ならば、何故、ここが自爆することを教えた!?  お前が何も言わなければ、俺やリム、鋼龍戦隊は 確実に消滅するのに!」
グラキエース「……!」
グラキエース(そうだ……何故、私は……?)
(エール・シュヴァリアーがファービュラリスに隣接)
グラキエース「! 何を!?」
ジョッシュ「お前をここから連れ出す!」
グラキエース「何故だ? お前は私を生かそうとしているのか?  どうしてそんなことをする?」
ジョッシュ「何かをしなくちゃいけないんだ!  親父が原因で始まったことなら、俺は!」
グラキエース「私は壊れてしまった…… お前の行動には何の意味もない」
ジョッシュ「意味ならある! お前の中の俺の意識から、 お前は別の生の可能性を知った!」
ジョッシュ「俺を動かしたのは、それを望んだお前の心だ!  だから、俺は!」
グラキエース「私はメリオルエッセ……それ以外の生き方などない。 お前は無駄なことをしているのだ」
ジョッシュ「無駄なものかよ!!」
リム(リアナ)「アニキッ!!」
ウェントス「……“破滅の王”の力が、僕に流れ込んでくる…… 僕を殺してくれ、二つの魂を持つ娘」
リム(リアナ)「えっ!?」
ウェントス「今、僕を殺せば、 爆発の規模を抑えられるかも知れない」
リム(クリス)(そ、そんなぁ!)
ウェントス「何をためらうことがある?  君達は、そのためにここへ来た。 さあ、早く。僕の存在を消してくれ」
リム(リアナ)「何故、そんなことを言うの!?  もう止められないんでしょ!? どうしてよ!?」
ウェントス(そうだ…… 何故、僕は彼女達の手による死を望んだ……?)
(ブランシュネージュがストゥディウムに隣接)
ウェントス「!」
リム(リアナ)「この子のシュンパティアで、あんたの呪縛を解く!」
ウェントス「僕が望むのは消えること。 それに、無理をすれば、システムがもたない」
ウェントス「生きて出られても、リアナ……君が呑み込まれ、 消えてしまうかも知れない」
リム(クリス)(ええっ!?)
リム(リアナ)「だけど、あたし達はあんたに死んで欲しくない!  死ぬことが救いだなんて、間違ってる!  あんたを助けたいの!」
ウェントス「何故? 何故、そう思う?」
リム(リアナ)「え!?」
ウェントス「……それは、僕と君達の共感によって 作り出された幻影。偽りの心、幻の想いだ」
ウェントス「その想いは、気持ちは……本当は存在しないもの なんだよ。考えてごらん。その想いの源は、 君達の中には存在しなかったはずだ」
リム(クリス)(で、でも、幻であっても 私はそう思ってるんだもの!  それは嘘なんかじゃない、私達の想いだわ!)
ウェントス「共有する僕の部分が生んだんだ。本物じゃない。 さあ、早く僕を殺してくれ。 君達が消えてしまう前に……」
リム(リアナ)「呪縛を解くって……言ったでしょうっ!!」
(ブランシュネージュに共振)
ウェントス「!?」
リム(リアナ)「あううっ! 頭が!!」
リム(クリス)(リ、リアナ!!)
リム(リアナ)「あ、あたしの心はあたしのもの!  本物かどうかなんて、問題じゃない!」
リム(リアナ)「それに、あんただって今はそう思ってる!  あたし達の中で、助けてって言ってる!!」
ウェントス「!!」
(ブランシュネージュとストゥディウムが震え、2機の間が光る)
ジョッシュ「な、何だ!? リム!!」
リム(リアナ)「ううう! あああーーーっ!!」
ウェントス「よせ! やめるんだ! 君が消えてしまう!」
(ブランシュネージュとストゥディウムの間の光が強くなる)
リム(クリス)(あああっ! リアナ! リアナァァァ!!)
リム(リアナ)「ク、クリス! あ、あたしは!!」
ウェントス「引き替えにするつもりか、自分の心を!?  駄目だ、そんなことをしては!!」
リム(クリス)(や、やめてぇ! リアナァァ!!)
リム(リアナ)(さ、さよなら……クリス……。 ごめん、アニキ…………)
リム(クリス)(リアナ、駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇ…………!!)
(ブランシュネージュとストゥディウムの間の光りが広がり、閃光)

(メディカル・ルーム)

リム(リアナ)「う、うう……」
ジョッシュ「気がついたか、リム……」
リム(リアナ)「ア、アニキ……あたしは……」
ジョッシュ「……大丈夫だ……身体に問題はない……」
リム(リアナ)「で、でも、あの子が……あの子がいない……!」
アヤ「あの子……?」
ラトゥーニ「誰のこと……?」
クリフォード「リム……」
リム(リアナ)「クリス……お願い……返事をして……!」
リム(リアナ)「こ、こんなの嫌よ、クリス……!  ずっと、ずっと一緒だったのに……!」
ラトゥーニ「ずっと一緒……?」
ゼオラ「リム……クリスって、誰なの……!?」
ジョッシュ(もう……隠すことは出来ないか…… 説明をしなければ……彼らのことも…… 今の俺の想いも……)

(ヒリュウ改 艦長室)

レフィーナ「あの二人の様子は?」
ショーン「こちらの命令に逆らうこともなく、 大人しく身体検査を受けております」
ショーン「途中経過報告によりますと、 身体を構成している物質や一部の器官に相違点は あれど、構造は人間のそれとほぼ同じだそうです」
テツヤ「つまり、ハイブリッド・ヒューマン…… イデアラントに近しい存在だと?」
ショーン「そういうことでしょうな。ただ、メリオルエッセには 人間離れした風貌を持つ者もおりますし……何故、 そのようなばらつきがあるのかは不明ですが……」
ショーン「ドクターやラーダは、あの二人が 他のメリオルエッセより人間に近い存在であるが故に 精神を同調させたのではないかと推測しております」
レフィーナ「……機体の方は?」
ショーン「ドクトル・クリフやワン博士達が調査中です。 今の所、危険な兆候は見られないようですが……」
レフィーナ「……では、検査が終わり、リムが目を覚ましたら、 彼らを呼んで下さい」
レフィーナ「いったい、何があったのか…… そして、何故、彼らがジョッシュとリムを 助けたのか……話を聞きたいと思っています」

(ブリーフィング・ルーム)

カチーナ「何だと!? 本気か、ジョッシュ!?」
ジョッシュ「……ええ」
ミチル「せやかて、そいつらはメリオルエッセや!  ワイらの敵やぞ!」
ヤンロン「そう……人類に破滅をもたらそうとしている者だ」
ジョッシュ「それも、わかっています」
ヒューゴ「じゃあ、何故だ?」
ジョッシュ「俺は……俺とリムは、 グラキエースとウェントスのおかげでここにいます」
ジョッシュ「動けない俺達を助けてくれたのは…… この二人だったんです」
グラキエース「………」
ウェントス「………」
ヤンロン「だが、その話と彼らを迎え入れたいという 君の申し出は別問題だ」
カチーナ「そうだ……そいつらをどこかに閉じこめておくんなら まだしもよ」
グラキエース「……そうしてくれても、私は構わない。 私を殺したいのなら、そうして欲しい。 元々、私は消えるはずだったのだ」
ブリット「だったら…… 何故、ジョッシュとリムを助けたんだ?」
レオナ「そうよ……放っておくことも出来たはず」
グラキエース「わからない……私は、人ではないから」
レオナ「それが答え……?」
ミチル「何やねん、それ。 ジョッシュ、ホンマにこの女は……」
ジョッシュ「ルイーナ……メリオルエッセだ。それは間違いない。 だけど、俺は人間だと思ってる。戦いの中で、 シュンパティアを通してとは言え、同調した」
ジョッシュ「俺の中に彼女がいるように、彼女の中にも俺がいる」
グラキエース「………」
ジョッシュ「俺の心、人の心の欠片が 今はグラキエースの中にもあるんだ」
カイ「だから……共存できると言うのか」
ジョッシュ「……はい」
リシュウ「それがお主の素直な気持ちか…… 以前、言ったように」
レフィーナ「ですが、彼女が私達と一緒に…… ルイーナと戦うとは……」
ウェントス「……僕はもうこの世界のどこにも居場所がない…… ウンブラやコンターギオからも切り捨てられた……。 今、この場で殺されても、文句はない」
ウェントス「だけど、この命は彼女達がくれたもの……」
リム(リアナ)「ウェントス……」
レーツェル(彼女達……?)
ウェントス「……だから、僕もリムと…… あなた方といさせて欲しい」
ウェントス「それを許してもらえるのなら、 僕はこの命を、人のために捨てよう」
リシュウ「ふむ…… やはり、お主は生を求めておったようじゃの」
レフィーナ「グラキエース……あなたはどうなのです?」
グラキエース「今の私は“破滅の王”…… ペルフェクティオの影響下にない。 あの時、私の中の何かがさらに壊れた」
グラキエース「ジョシュア・ラドクリフと共にいても異常はない」
レフィーナ「………」
マサキ「さっき、てめえが言ったペル何たら…… “破滅の王”ってのは、いったい何なんだ?  どんな奴なんだよ?」
グラキエース「わからない。ペルフェクティオを見たことはない。 私が知っているのは、生命体の死と滅びを、 強い負の感情を力となし……」
グラキエース「全てに破滅をもたらすものであるということだけだ」
マサキ「全てって……てめえらメリオルエッセもか?」
グラキエース「そうだ。 ペルフェクティオのために動くことが 私達の存在理由だった」
グラキエース「だが、今の私は……」
ギリアム「……一つ聞きたい。 君達は、今でも自力でルイーナの結界を 突破することが出来るのか?」
グラキエース「ああ、私のファービュラリスには そのような機能が備えられている」
ウェントス「僕なら……あなた方を通すゲートを作れると思う」
テツヤ「レフィーナ大佐、これは……」
ギリアム「彼らがいれば、ルイーナとの戦いにおいて 文字通り突破口が見出せるのでは?」
レフィーナ「ええ。 グラキエース、ウェントス……あなた達の命を こちらで預からせてもらいます」
レフィーナ「私達に同行し、ルイーナを……“破滅の王”を 倒すために力を貸していただけませんか」
グラキエース「………」
ミチル「こ、こいつらを連れてくやて!?」
ヤンロン「本気ですか、レフィーナ大佐?」
レフィーナ「ええ。 “破滅の王”という強大な敵を打ち倒すために 手段を選んではいられません」
カチーナ「利用できるものは何でも利用する……ってことか」
レフィーナ「その通り。これは、リスクを承知した上での 鋼龍戦隊司令としての判断であり、決定事項です」
ウェントス「……僕を切り捨てた以上、 “破滅の王”の目覚めは遅れることになる。 だから、まだ時間はある」
ウェントス「先程も言った通り……僕はルイーナと戦おう。 人のために……僕を救ってくれたクリスのために」
リム(リアナ)「………」
アヤ(クリス……さっき、リムもその名を……。 もしかして、この子は……)
レフィーナ「グラキエース、あなたはどうなのです?」
グラキエース「私は戦うために生まれた。 だが、お前達との戦いの中で機能に異常が生じ、 最後に与えられた役目も果たせなかった」
グラキエース「もう私の存在理由は消滅している。 そう、消えて然るべきなのだ」
ジョッシュ「グラキエース……」
グラキエース「だが、ジョシュア・ラドクリフやお前達が 私の存在を必要とするのであれば…… ルイーナと戦えと言うのなら、そうしよう」
レフィーナ「……わかりました。 なお、先程も述べた通り、彼らを同行させることは 私の判断であり、決定事項です」
レフィーナ「各員は了承するように。これは命令です」
カチーナ「命令と言われれば、あたしらは従うしかねえが……」
ヤンロン「大佐、僕は連邦軍の軍人ではなく、 あなたの部下でもありません」
レフィーナ「………」
テュッティ「ヤンロン、あなた……」
ヤンロン「地上での煩事に口を挟むのは、僕の本意ではないが…… 今回の件を黙って認めるわけにはいかない」
ヤンロン「獅子身中の虫、自ら獅子の肉を食う。 余外の虫に非ざるが如し……と言うからな」
ミオ「でも、この人達の力を借りる他に 南極の結界の中へ入る方法はないんじゃない?」
ヤンロン「それもわかっている。 だから、彼らが僕達に災いを成すと判断した場合は 然るべき手を打たせてもらう」
ミチル「ワイもや。コウタはともかく、ショウコはんに 妙なことしよったら、ただじゃ済まさんで」
グラキエース「……ここでも不要とされるのなら、 今度こそ消え行く運命に従うだけのことだ」
アリエイル(消え行く……運命……)
ウェントス「僕も……同じだ」
ヤンロン「……わかった。 今後、君達がどのような行動を取るか、 見せてもらおう」
レフィーナ「それでよろしいのですね、ヤンロン?」
ヤンロン「ええ」
レフィーナ「では、これで……」
ジョッシュ「いえ、大佐。 まだ話さなければならないことがあります」
リム(リアナ)「アニキ、あたしから言うよ……」
ジョッシュ「リム……」
リム(リアナ)「あたしが説明しなきゃ……」
ジョッシュ「……わかった」
レフィーナ「では、リム……お願いします」
リム(リアナ)「はい……皆さんには今まで黙っていたんですが…… クリアーナ・リムスカヤは、二人いるんです」
レフィーナ「!」
アラド「ええっ!?」
アクア「ど、どういうこと!?」
リム(リアナ)「あたしはリアナ……もう一人はクリス…… その二つの人格……魂が一つの身体に 同居しているんです」
ラーダ「つまり、二重人格ということ……?」
リム(リアナ)「そう思ってもらって構いません……。 あたしとクリスは、お互いを認識していて…… どちらも表に出ることが出来て……」
リム(リアナ)「南極にいた頃は、そうやって……。 ただ……知らない人には気味悪がられるから、 伊豆へ行く前に二人で相談して、普段はクリスが……」
リム(リアナ)「でも、ブランシュネージュに乗ることになって……。 あの子を操縦できるのは、あたしだけだから……」
アクア「じゃ、じゃあ……あれに乗って、 テンションが上がってるんじゃなくて……」
シャイン「リアナ……あなたが……?」
リム(リアナ)「………」
ゼオラ「普段、私達と接していたのはクリス……」
アラド「戦闘中におれ達と喋っていたのは、 リアナだってことか……」
レーツェル「彼女が……いや、彼女達がそうなった理由…… もしかして、シュンパティアと何か関係が?」
ジョッシュ「……その通りですが、詳細については 俺もクリフもわかりません。リアナとクリスも その時のことを覚えていないんです」
リム(リアナ)「それに……あたしとクリスのどっちが 本当のクリアーナ・リムスカヤなのか…… それもわからない……」
ラトゥーニ「………」
リム(リアナ)「でも、あたし達にとっては…… どっちが本物かなんて、どうでもいいことだった……」
ジョッシュ「真相を知っているのは、父と一部のリ・テクのみ……。 でも、あいつらはずっと口をつぐんでいた。 俺がいくら問い質しても答えなかった」
レーツェル「………」
カイ「だが、お前もシュンパティアに……」
ジョッシュ「いえ、俺と父は……。何故、妹だけがああなったか…… どうしてリアナにしかブランシュネージュを 扱うことが出来ないのか……その理由も不明です」
カイ「そうなのか……」
リム(リアナ)「………」
アヤ「リアナ…… あなた、さっき……クリスがいなくなったって……」
リム(リアナ)「え、ええ……あの子は消えてしまった……」
ウェントス「そう……僕とリアナを救うために……」
リム(リアナ)「だから……今はあたし一人…… あの子の声を聞くことは出来ない……」
ラーダ「二重人格……一心同体だと言うのなら、 彼女はあなたの中で眠っているんじゃ……?」
リム(リアナ)「いえ……クリスの心は…… あの子の魂は消えてしまったんです……。 もう……戻ってこない……」
ウェントス「………」

《グランド・クリスマス》

[グランド・クリスマス 基地内部(データ室)]

(扉が開閉する)
ドゥバン「……おれに何の用だ、エルデ・ミッテ」
エルデ「あなたにお伝えしたいことがありまして」
ドゥバン「内示があったMODEL-Xの件なら、断る。 おれにはアレス・ガイストがあるからな」
エルデ「やはり、拘りがあるようですね」
ドゥバン「……あれはいずれ、MODEL-Xをも 超える存在となる。おれがそうしてみせる」
エルデ「ですが、私達ではなく、上から指示されれば、 従わざるを得ないでしょう?」
ドゥバン「……試作機2機とアルベロ・エストを失った焦りか?」
エルデ「MODEL-Xがあれば、8号機と9号機など どうでもいいのです。私にとっては。 それに、アルベロの後釜は決まりました」
ドゥバン「ほう、何者だ?」
エルデ「ムラタという傭兵ですわ。 もっとも、彼はガンマの隊長となるだけで、 私達のプロジェクトには絡みませんが」
ドゥバン「……ならば、いったい何の話なのだ?」
エルデ「では、まず見ていただきたいものがあります」
(モニターオン)
ドゥバン「これは……何だ?」
エルデ「あなたに興味を持ち、 イデアラントのことを調べたのです」
エルデ「オヅヌ博士のシークレット・ファイル…… 入手し、プロテクトを解くのに苦労しましたわ」
ドゥバン「ば、馬鹿な……! 真実なのか……!?」
エルデ「その様子では……知らなかったようですね。 自分で自分の身体を調べてもいなかった……」
ドゥバン「信じられるか、こんなことを……!  何故、このおれが……イデアラントたるおれが……!」
エルデ「イデアラントだからこそ、ではありませんか?」
ドゥバン「黙れ! おれを誑かす気か!」
エルデ「では、自分で調べ、検証してみることですね。 時間の無駄でしょうけど」
ドゥバン「………」
エルデ「さて、ここからが本題です。 ドゥバン・オーグ……私と手を組みませんか?  私ならば、この問題を解決できますよ」
ドゥバン「ラズムナニウムでか……!?  そう言って、おれに何をする気だ……!?」
エルデ「あなたがMODEL-Xのパイロットに なってもらっては困るのです」
エルデ「とは言え、上からの命令は拒否できない。 私としても、ガイアセイバーズの援助なくして 研究は続けられない……」
エルデ「そこで、私達で結託し、あなたがMODEL-Xに 乗れなくなる理由を作るのです」
エルデ「例えば……私があなたのメンテナンスを行うとか。 アルテウル司令も事実は知っているでしょうから、 納得するはず」
ドゥバン「その手には乗らんぞ、エルデ・ミッテ……!  そもそも、ラズムナニウムが解決策になるという 保証もない……!」
ドゥバン「ならば、おれは! おれは何としても、あいつを!!」
(扉が開閉する・ドゥバンが立ち去る)
エルデ(……話には乗らなかったわね……。 もっとも、彼の言う通り、ラズムナニウムで 上手くいく保証はないのだけど……)
エルデ(アルベロの代わりとして使えるかと思ったけど…… いざとなれば、イデアラントの真実を ザパト博士に伝えればいいわ……)

《南極遺跡》

[南極遺跡 内部(玉座)]

イグニス「コンターギオ!  貴様、最初からああするつもりだったのか!?」
コンターギオ「最善の方法だと考えていたわけではない」
コンターギオ「もっとも、あの人間達を抹消できるのであれば、 壊れたメリオルエッセとオフィチナス一つなど 安い代償だとは思っていたがな」
イグニス「だが、奴らは生き残り、俺はラキを失った!」
ウンブラ「………」
コンターギオ「それが損失だと言うのなら、認めよう。 オフィチナスを失ったのは事実だからな」
コンターギオ「だが、後顧の憂いを断つという最低限の目的は 達成できたのだよ」
イグニス「後顧の憂いだと……!?」
コンターギオ「そうだ。 これで壊れたメリオルエッセが人間共と同調し、 我らに支障をもたらすことはなくなった」
コンターギオ「あの場にいた人間共も無傷ということはあるまい。 それに、オフィチナスはまた作ればいいのだよ、 クククッ」
イグニス「だが、ラキは……」
コンターギオ「何故、欠陥品にそこまで拘る?  時を同じくして生まれた存在だからか?」
イグニス「あの人間さえ消せば、あいつは……」
コンターギオ「ならば、務めを果たせ。“破滅の王”のために。 グラキエースを歪めたあの人間を お前の手で抹消するのだ」
イグニス「フン…… そんなこと、貴様に言われるまでもないぜ……!」
(足音・イグニスが立ち去る)
コンターギオ「……もしや、奴も機能不全に陥っているのか?」
ウンブラ「そうであれば……ウェントスやグラキエースと 同じ道を辿らせるだけのこと」
コンターギオ「そうだな、クククッ」
ウンブラ「だが、ウェントスの滅びによって “破滅の王”の目覚めが遅れるのは事実…… オフィチナスの建設を急げ、コンターギオ」
コンターギオ「わかっている。 世界と我らに良き滅びをもたらすために…… ククククッ」


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