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蒼光なき宇宙 宇宙ルート ~ 第30話 ~

[ハガネ ブリッジ]

テツヤ「操舵手、艦を安定させろ!  エイタ、重力異常の原因はわかったか!?」
エイタ「制御装置の故障ではなく、 緊急作動したものと思われます!」
テツヤ「何!?」
エイタ「艦周辺の空間に重力異常が…… いえ、違います! 宇宙です、宇宙空間!」
テツヤ「馬鹿なことを言うな! 俺達は地球にいたんだぞ!」
エイタ「外の映像をメイン・スクリーンに出します!」
(モニターオン)
テツヤ「!!」
エイタ「や、やっぱり……!!」
テツヤ「エイタ、現在位置を確認しろ!  アヅキはヒリュウ改との交信を!」
アヅキ「りょ、了解!」
テツヤ(いったい、何が起きたというんだ……!?)
エイタ「おかしいな、サテライト・リンクが使えない。 アヅキ、そっちはどうだ?」
アヅキ「こ、こちらも駄目です」
エイタMOSSにもつながりにくい…… 地球と月の位置から割り出すしかないか」
エイタ「いや、待てよ!? 何なんだ、これ!?  おかしいぜ!」
テツヤ「エイタ、明瞭に報告しろ!」
エイタ「か、艦長……地球が……地球がありません!  消えてしまっています!」
テツヤ「な、何だと!?」

[ハガネ 艦内(食堂)]

リュウセイ「地球が消えちまったって……マジなのか!?」
ロバート「正確に言えば、見えなくなった……かな。 月は軌道上にあるし、ラグランジュ・ポイントにも 異常は見当たらない」
カイ「……いったい、何が起きたのだ?」
ラトゥーニ「まだ推測段階に過ぎませんが…… ルイーナがバリアのような物で 地球を覆ってしまったようなのです」
カイ「バリア?」
ラトゥーニ「次元断層とも言える物です。 そのせいで、地球との交信は一切不可能…… 行き来も出来ないと思われます」
アヤ「それがルイーナの仕業だという根拠は?」
ロバート「この異常事態の前触れとなったESウェーブが 南極方面から広がったからさ」
ロバート「そして、それはハガネとヒリュウ改の間を 通過し、一気に外側へ膨張した。そのせいで、 俺達は宇宙に放り出されたのかも知れない」
リオ「じゃあ、地球は…… 地球は今、どうなっているんです?」
ロバート「多分、太陽の光が次元断層で遮断されて…… 暗闇に閉ざされているだろうな」
ヴィレッタ「その状態が続けば、大変なことになるわね」
アラド「な、何が起きるんスか?」
ヴィレッタ「まず、大気の循環に影響が出て……その次は海流」
カーク「そう。海洋が熱を蓄えているとは言え、 陸と海の寒暖差によって海岸部で激しい嵐が起きる」
ロバート「大雑把に言えば、地球へ入ってくるエネルギーは 可視光線、出て行くエネルギーは遠赤外線で……」
ロバート「その出入りが釣り合っているため、地球の気温は おおよそ保たれているんだが、そのバランスが 崩れれば……」
ロバート「スノーボールアース…… すなわち、全地球凍結もあり得るよ」
シャイン「そ、そんな……」
ゼオラ「氷河期が来るってことですか……?」
ロバート「すぐにそうなるってわけじゃないが…… 近々で深刻な問題となるのは、パワーラインだ」
ロバート「太陽の光がなく、気温が下がれば、 世界的規模で一斉に照明や暖房が使用される……」
ロバート「そうなったら、電力の需要過多で パワーラインがパンクしかねない」
ライ「その他に、心理的な悪影響も考えられますね。 異常事態が続けば、人の心は乱れ…… それは絶望へと変わる」
リュウセイ「じゃあ、ルイーナの思う壺じゃねえか」
ライ「ああ……世界は彼らが必要とする負の波動で 満たされることになる」
シャイン「私達は、これからどうなるのでしょうか……。 グライエン大統領閣下のお命を奪ってしまい…… そして、帰るべき処も見失って……」
ラトゥーニ「シャイン王女……」
(アラート)
リュウセイ「何だ!?」

[ハガネ ブリッジ]

エイタ「こちらへ接近中の艦隊は、 宇宙軍の軌道哨戒第3戦隊です」
アヅキ「我が方に対し、停船命令を出して来ています」
テツヤ「逆らえば、攻撃も辞さずということか……。 俺達は許されざる罪を背負っているからな」
エイタ「ですが、艦長! あれは……!」
テツヤ「……先方と接触する。各員、第一種戦闘配置」
エイタ「戦闘配置……!?」
テツヤ「念のためだ。 いざという時は急速離脱する。その準備をしておけ」


第30話
蒼光なき宇宙

〔戦域:宇宙空間〕

(ペリグリンが3艦暗礁空域近くにいて、東側にハガネがいる)
ハンフリー「こちらは地球連邦軍宇宙軍所属、 軌道哨戒第3戦隊司令、ハンフリー・イネス大佐だ。 応答せよ、ハガネ」
テツヤ「極東方面軍所属、第1独立特殊戦隊、 ハガネ艦長、テツヤ・オノデラ中佐であります」
エイタ「……ハンフリー・イネス大佐か。 こりゃ難儀しそうだ」
アヅキ「どんな方なんですか?」
エイタ「宇宙軍の中じゃ珍しい、地球上がりの艦長さ。 オペレーションSRWの激戦区だった S08フィールドの生き残りだ」
アヅキ「つまり、歴戦の勇士……」
エイタ「ああ。頭の方もガチガチの、な」
テツヤ「ハンフリー大佐、地球消失について 宇宙軍では何か情報を……」
ハンフリー「貴様が知る必要はない。 鋼龍戦隊に所属する全将兵は、本日1200を以て 軍籍を剥奪された」
テツヤ「……!」
ハンフリー「よって、貴様らがその艦を運用する行為は、 私的占有と見なされ、連邦政府及び連邦軍に 対する反逆となる」
ハンフリー「速やかに武装解除し、投降せよ。 なお、貴様らには大統領殺害の嫌疑も 掛けられている」
ハンフリー「こちらの指示に従わない場合、 当方には先制攻撃の権利が与えられると 理解されたし」
テツヤ「待って下さい、大佐!  大統領の件は濡れ衣です。 我々の意志ではありませんでした」
テツヤ「いえ、そんなことを議論している場合では ありません。地球が消失した今、その原因究明と 対策こそが……」
ハンフリー「軍籍なき者が憂えることではない」
テツヤ「!」
ハンフリー「武装解除を受け入れるか否か、即答せよ」
テツヤ(今そこにある危機より、 与えられた命令の遂行が重要だというのか。 いや、軍人である以上、そうあるべきだが……)
ハンフリー「即答しろと言ったぞ、中佐」
テツヤ「……受諾します」
ハンフリー「よろしい、これより接収要員を出す。 以後はその指示に従ってもらおう、中佐」
テツヤ「はっ」
エイタ「艦長……」
テツヤ「この状況下で、友軍と交戦するわけにはいかん」
エイタ「しかし、このままでは……」
テツヤ「こっちは規格外の機体揃いだ。 艦内でシーリングを行うとしても、 相当の時間が掛かる」
エイタ「確かに」
テツヤ「各員は戦闘配置のまま待機。全周警戒を厳となせ。 有事の際は、即時対応できるようにな」
エイタ「状況が動く、と?」
テツヤ「ああ……嫌な空気だ。 しかも、我々は動きを止めている。 敵にとっては、恰好の的だぞ」
エイタ「わかりました。 甲板長には丁寧に応対するよう申し伝えます。 時間を稼ぐためにも」
ハンフリー「……抵抗する素振りはないか。 あのダイテツ・ミナセの教え子にしては、素直だな」
オペレーター「正直言って、安心しました」
ハンフリー「何がだ?」
オペレーター「自分は、オペレーションSRWで鋼龍戦隊の 勇戦ぶりを目の当たりにしました」
オペレーター「彼らと交戦することになったら、 無事で済むとは思えません。 それも、この異常な状況下で……」
ハンフリー「貴様も喧伝の片棒を担ぐか。 L5戦役の勝利は、彼らの力だけで 得たものではないのだぞ」
オペレーター「はっ……」
ハンフリー「特定の部隊に優秀な兵器を集中させるという 歪な運用思想の結果、目立つ者が現れただけに 過ぎん」
ハンフリー「もっと作戦全体のバランスを考え、戦力を 配置しておけば、グレートアークが沈むことは…… ノーマン・スレイ提督が戦死されることはなかった」
ハンフリー「鋼龍戦隊もガイアセイバーズも、 ISA戦術の一面を極端に押し出した存在に過ぎん。 特に後者は、軍の管轄外であのような……」
(ハンフリー艦にアラート)
オペレーター「高熱源体多数接近! 3時方向、仰角05より まっすぐ! レンジ3……いえ、レンジ2に侵入!」
ハンフリー「真横から!? 速過ぎるぞ!」
オペレーター「高速ミサイルと目されます!  本艦への直撃コース!」
ハンフリー「回避しろ!」
オペレーター「ま、間に合いません!」
(ハンフリー艦に爆煙)
ハンフリー「ぐううっ!」
オペレーター「艦尾右舷フレーム476上部に被弾!  右舷主機、出力低下!」
エイタ「レパルス、被弾!  敵集団の識別終了! ルイーナです!」
テツヤ「何!?  地球が消失したのに……奴ら、どこから!?」
エイタ「宇宙にもルイーナが 存在していたんでしょうか……!?」
テツヤ「そんな報告は聞いていない……!  アヅキ、レパルスとの回線を開け!」
アヅキ「了解!」
テツヤ「ハンフリー司令、敵はルイーナです!  当方が迎撃しますので、そちらは離脱を!」
ハンフリー「指図は受けん。 混乱に乗じて逃亡する意図であろうが」
テツヤ「我々にはルイーナとの交戦経験があります!  せめて、迎撃の許可を!」
ハンフリー「出せん。 貴艦の戦力は、全て我が隊の管轄下にある。 勝手に運用することはまかりならん」
オペレーター「ミサイル第2波、本艦へ接近! 直撃コース!」
ハンフリー「! こちらの回避運動を読んでいるのか!?」
(ハンフリー艦に爆煙)
ハンフリー「ぬうおっ!!」
テツヤ「ハンフリー司令!」
エイタ「艦長、敵はレパルスに狙いを定めています!」
テツヤ「こちらのPT隊を出せ!  敵の目を引き付けさせるんだ!」
エイタ「ですが、それでは!」
テツヤ「連邦軍からも 反逆者の汚名を着せられることになる、か?」
エイタ「は、はい!」
テツヤ「ここは……敢えて着る!」
エイタ「!」
アヅキ「か、艦長……!」
テツヤ「反逆者であろうとも、 地球消失の謎を追うことは出来るし、 ルイーナやゲストとも戦える」
テツヤ「ならば、迷う必要はない…… そして、ここで終わるわけにはいかん。 各機を直ちに出撃させろ!」
(イング機、アリエイル機が出撃。出撃準備)
カイ「腹をくくったな、艦長。 思い切りの良さは、ダイテツ艦長に似てきたか」
イルム「同士討ちよりはマシですからね。 後々でモメそうだけど」
カイ「双方とも無事だったらな。 ……アリエイル、イング。状況が状況だ。 お前達の力を借りるぞ」
アリエイル「はい」
イング「了解です」
カイ「イング、お前にとって初の宙間戦闘だ。 慣れるまでは前線に出ず、ハガネの直掩に当たれ」
イング「いえ、お気遣いなく。もう馴染みました」
カイ(馴染んだ……? 適応能力の高さ故、か。 それに、この状況下でも冷静でいられるとはな)
カイ「なら、お前はアリエイルのバックアップを」
イング「了解」
イング(この感覚……身体が覚えている。 実践するのは初めてだが……いける)
カイ「エレーブ1より各機。 地球可視宙間での戦闘だが、見ての通りの状況だ」
カイ「地球が消失したという事実は、いったん切り離せ。 落ち着いて対処しろ」
イルム「大丈夫ですよ、少佐。 これまでの戦いで、異常な現象は 嫌というほど見てきましたからね」
アヤ「あまりにも非現実的なので、 かえって実感がないぐらいです」
カイ「そうか。 なら、第2MOの変更を忘れるな。 地球に設定したままだと自機の位置把握で混乱するぞ」
リオ「了解」
ゼオラ「アラド、聞いたわね。 ちゃんとMP設定を変えときなさいよ」
アラド「お、おう」
ラトゥーニ「シャイン王女も…… 太陽以外で、MOとして最適な恒星設定を転送します。 現戦域での調整済みです」
シャイン「わかりましたわ」
ラトゥーニ「王女、地球のこと、リクセントのこと…… 色々ご不安でしょうが、気をしっかり持って下さい。 私達が一緒にいますから」
シャイン「ありがとう、ラトゥーニ。 私、国へ帰るまで挫けませんわ」
オペレーター「司令、ハガネより艦載機が出撃しました!」
ハンフリー「奴らめ、命令に逆らうか!」
(ハンフリー艦にアラート)
オペレーター「敵機群、6時方向、仰角25! レンジ2に侵入!」
(西南にルイーナが出現)
ハンフリー「うぬっ! ここまで食い込まれるとは!」
テツヤ「司令、直ちに現戦域から離脱を!  我々が援護します!」
ハンフリー「貴様の指図は受けんと言ったはずだ!」
テツヤ「友軍を見殺しにするわけにはいきません!」
ハンフリー「……!」
テツヤ「この状況を切り抜けなければ、 我が方の戦力接収どころではないでしょう?」
ハンフリー「む……う……!」
テツヤ「そちらは直ちに離脱を。 この場は我々が引き受けます」
ハンフリー「やむを得ん……貴様らにルイーナ迎撃を命じる。 ただし、勝手な行動は許さんぞ」
テツヤ「了解です」
(ペレグリン3艦が北端まで移動し撤退)
エイタ「勝手な行動は許さないって…… いちいち確認を取れとでも言うんですかね」
テツヤ「戦場では臨機応変な対応が肝要だ。 現場の判断でいく。エイタ、防衛ラインを設定。 第3戦隊の動きもしっかり把握しておけ」
エイタ「了解」
テツヤ「それと、 現戦域からの離脱コースを何パターンか構築。 ただし、0時から3時方向は除外しろ」
エイタ「……なるほど、石頭の方には逃げないと?」
テツヤ「そういうことだ。 一芝居打つからな、スティーブンと 手はずを整えておけ」
エイタ「はっ」
テツヤ「各機へ伝達。敵機を第3艦隊へ到達させるな。 ここで食い止めろ」
アヅキ「了解」
エイタ「防衛ラインの設定、そっちに回したぞ」
アヅキ「確認しました。 スティール2より各機へ。敵機の防衛ライン突破を 阻止せよ」
(防衛ラインを示す)
カイ「エレーブ1より各機。 聞いての通りだ、防衛ラインを抜かせるなよ!」
(作戦目的表示)

〈4PP or 敵機を12機以上撃墜〉

(ハガネにアラート)
エイタ「アンノウン接近! 2時方向、仰角30よりまっすぐ!  レンジ2に侵入! 数は1!」
テツヤ「ルイーナの新手か!?」
(南西の暗礁宙域にインペトゥスが出現)
???(イグニス)「壁になっているのは、あいつらか。 外の世界にも活きのいい奴がいるようだな、クククッ」
シャイン「な、何ですの!?」
リョウト「初めて見る機体だ…… もしかして、メリオルエッセなのか?」
???(イグニス)「奴らと接触しても、ノイズは走らん…… ここへ来るまでに交戦した あの人間とマシンが例外だというのか」
???(イグニス)「ならば……」
(インペトゥスから通信)
アヅキ「アンノウンが通常回線に割り込みを!」
イグニス「俺はイグニス……炎のメリオルエッセ。 恐怖と憎悪と共に、我が名を記憶に刻め!」
ラミア「やはり、メリオルエッセか」
アラド「す、すげえ眉毛……!」
イルム「こないだの奴より、見た目のインパクトがあるな」
リュウセイ「まるで特撮物の敵幹部みてえだ」
イグニス「貴様らの星は、闇で閉ざされた。 常夜の地を、空を、そしてこの虚空を 破滅の炎で照らしてやるよ!」
アリエイル「……これで三つの事柄が確定しましたね」
アラド「えっ、何スか!?」
アリエイル「まず一つめが……次元断層を発生させたのが ルイーナであること。二つめは、地球が 完全に消失したわけではないということ」
アリエイル「そして、三つめはルイーナの次元断層に 出入口があるということ」
アラド「そうか、 あのイグニスってのが、ここに来たんなら……」
ゼオラ「その逆、私達が地球に戻れる方法もあるってことね!」
ヴィレッタ「出来れば、 その情報を得るために彼を捕らえたいわね」
リュウセイ「うえっ、難易度高いな、それ」
ライ「この異常時だ、四の五の言っている場合か」
リュウセイ「わ、わかってるよ!」
カイ「ヴィレッタ大尉の言う通り、 地球消失に関する情報は必要だ」
カイ「各機、イグニス機のろ獲を念頭に置き、 攻撃を開始。ただし、こちら側に損害が 出るようであれば、ろ獲は断念する」
イグニス「来るがいい、人間共!  貴様らの負の感情、その波動を “破滅の王”の糧とする!」
(作戦目的表示)

〈vs イグニス〉

[リュウセイ]

リュウセイ「てめえらが地球を消したってんなら、 元通りにする方法も知ってんだろ!?」
イグニス「そうだとしても、 貴様らに教える必要などない。 ここで絶望し、死ね!」
リュウセイ「ヘッ、絶望なんてしてねえぜ。 てめえがここへ出て来たことで、 地球と行き来が出来るってわかったからな!」

[イルム]

イルム「地球を消し去るとは、 随分と凝った手品を見せてくれるじゃないか」
イグニス「クククッ、それだけでは済まんぞ。 貴様らは、さらなる惨劇を見ることになるのだ!」
イルム「フン、手品ってのは種があるもんだ。 お前らのショーが始まる前に、 それを明かしてやるぜ」

[カイ]

カイ「“破滅の王”とはいったい何者だ?  地球を閉じたのは、そいつの意志なのか?」
イグニス「その疑念が、さらなる恐怖を呼ぶ!  まだ教えられん……いや、知る必要はない!」

[ラミア]

イグニス「この俺を恐れ、憎むがいい!  貴様らの揺らぐ感情は波動となり、源力となる!」
ラミア「私には関係のない話だな。 感情の波動など出ているわけがない」
イグニス「む? そうか……貴様、作り物か!」
ラミア「メリオルエッセも似たような存在ではないのか?」
イグニス「フン、お前のような人形に用はない。 さっさと壊れろ!」

[アリエイル]

アリエイル「今のあなた達の戦力や行動から判断して、 不退転の決意を持っているとは思えない…… 増援はこれからも送り込まれてくるはず」
アリエイル「そして、その逆も。 つまり、次元断層は絶対的な障壁ではない……」
イグニス「フン、貴様らはもう戻れんよ!  ここで死ぬんだからな!」

[イング]

イグニス「さあ、貴様も己の弱さを呪え!  恐怖の声を上げろ!」
イング(恐怖はない。 宇宙での戦闘……初めてだが、身体が知っている)
イング(それが何故なのか…… 答えを知るためにも、ここで終わるわけにはいかない)

[HP30000以下]

イグニス「フン、こいつらもなかなかの手応えだな。 だが、どう足掻こうと……」
(インペトゥスに通信)
???(コンターギオ)「イグニス、そろそろ時間だぞ」
イグニス「邪魔をするな。いい獲物を見つけたんだ」
???(コンターギオ)「我らの本来の任務を忘れたか。 まだこちらへ出てきたばかりで戦力が足りんのだ。 戻って来い」
イグニス「弱気だな、お前一人で出来ないのか?」
???(コンターギオ)「早く足掛かりを作った方が 後々のためになるとわからんのか?  出来損ないか? クククッ」
イグニス「何だと……?」
???(コンターギオ)「違うと言うのなら、証明してみせよ」
イグニス「フン……」
リュウセイ「! あいつの動きが!」
アリエイル「今ならば、ろ獲が……!」
イグニス「……命拾いしたな、貴様ら。また会おう」
(インペトゥスが撤退、残っている敵機も撤退)
アリエイル「くっ、あの機動では!」
エイタ「敵機、高速で戦域外へ離脱!」
テツヤ「ルイーナめ、どこへ行くんだ……!?」
エイタ「蛇行していますが、 軌道要素から目的地の推測は可能かと」
テツヤ「よし、現戦域を離脱し、態勢を立て直す。 状況次第では、ルイーナを追撃する」
エイタ「了解。 離脱の方法は、こちらからの提案通りで よろしいですか?」
テツヤ「ああ、やってくれ」
エイタ「……アヅキ、各機に帰艦命令を。 上部メイン・マストと艦尾右舷フレーム400から 500付近に近づけさせるなよ」
アヅキ「了解。帰艦信号を出しました」
エイタ「その後は、上手く演技してくれよ」
アヅキ「自信はありませんが……何とかやってみます」
エイタ「頼むぜ。 ……砲雷長、航海長、機関長へ伝達。状況開始」
(ハガネ以外の味方機が全機撤退。ハガネに爆煙後、アラート)
アヅキ「ハガネよりレパルス!  機関部損傷! 操舵不能!  繰り返す、操舵不能!」
オペレーター「レパルスよりハガネ!  詳細な状況を知らされたし!」
アヅキ「通信装置も損傷、受信不良!」
テツヤ「……頃合いだな。 半速前進。蛇行しつつ、現戦域から離脱する!」
(ハガネが撤退、ペレグリン3隻が北端の暗礁宙域に出現)
オペレーター「ハガネ、戦域から離脱していきます」
ハンフリー「操舵不能、通信障害だと……?」
オペレーター「はっ。先程のルイーナとの戦闘で、 機関部を損傷したようです」
ハンフリー「……あんな芝居で私の目を 誤魔化せると思っているのか」
オペレーター「では、ハガネを追撃しますか?」
ハンフリー「こちらも損害を受けた。 この異常な状況下だ、戦隊の態勢立て直しを 最優先とする」
オペレーター「我々だけなら、 ルイーナを撃退できなかったかも知れませんね」
ハンフリー「何だ、貴様……連中の肩を持つか」
オペレーター「いえ、そういうわけでは」
ハンフリー「ふん……予算度外視の特機だの試験兵器だの、 あれだけ揃えていれば当然だ」
ハンフリー「それがアウト・オブ・コントロールの存在に なるなどと……許すわけにはいかん。非常時なら、 尚更だ。宇宙軍司令部に今回の件を報告しておけ」
オペレーター「はっ」
ハンフリー(もっとも、現状で戦うべき相手が何なのか…… 連中もそこだけは履き違えていなかったがな)

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

カイ「艦長、ルイーナの行き先は?」
テツヤ「おそらく、ヘブンゲートだと思われます」
カイ「奴らめ、厄介な所に……」
アラド「ヘブンゲートって、何スか?」
ラトゥーニ「旧名はスカルヘッド…… 修羅の乱の時、私達が捕らえられていた所……」
アラド「あ~、あの宇宙プラントか……」
アリエイル「表向きはイスルギ重工が改修を行っていることに なっていますが……」
アリエイル「実際はガイアセイバーズの管轄下にあり、 宙間拠点として使用される予定です」
カイ「そこに部隊は駐留しているのか?」
アリエイル「その通りですが、セイバーではありません」
ラミア「ルイーナがヘブンゲートに向かっていると いうことは……彼らも宇宙空間での拠点を 必要としているのでございましょうか?」
カイ「そうだろうな。 それで、艦長……どうするつもりだ?」
テツヤ「連邦軍やガイアセイバーズから追われる身とは言え、 次元断層の突破方法を知り得ることが 急務だと思います」
テツヤ「意思疎通が可能なルイーナ…… メリオルエッセがヘブンゲートへ向かったのなら、 我々もそこへ行くべきかと」
カイ「だが、宇宙にはゲストもいる。 孤立無援の……辛い戦いになりかねないぞ」
テツヤ「かと言って、逃げ回るわけにはいきません。 軍籍を剥奪されても、我々に戦う力があるのなら……」
テツヤ「しかも、このような状況なら…… 外敵に対し使うべきかと」
カイ「フッ……指揮官にブレがなければ、 兵隊は存分に戦える。行こう、ヘブンゲートへ。 地球を取り戻す鍵を得るためにな」

《月軌道外宙域》

(ゲスト戦艦 ブリッジ)

ゼブ「いや、ま~ったく…… 想像以上の魔窟だ~ね、地球は」
セティ「事象の解析は出来ても、 いったいどんな装置であんなことを やってのけたのか、見当が付かないわ」
ゼブ「そ~れ以前に地球が消~えたら、 俺達が来た意味がなくな~い?」
セゼーナン「いや……かえって好都合ではないか」
ゼブ「え?」
ゼゼーナン「今の内に月を制圧するのだ。 現状では猿共もまともに対応できまい。 すぐに実行しろ」
セティ「了解しました」
ゼブ「南極から出~て来たアンノウンは ど~すんの? 宇宙にも現れるか~もね」
ゼゼーナン「無論、奴らも撃退する。 そのための拠点として、ヘブンゲートが必要だ。 そちらにも戦力を送り込め」
ゼブ「わ~かったよ」
ゼゼーナン(地球の消失は予想外の出来事だったが…… それを成し遂げたアンノウンのテクノロジーを 入手できれば、望外の成果物となろう……)


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