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南極の門 ~ 第27話 ~

《南極》

[南極 リ・テク マザー・ベース]

アクア「さっ、さささ、さむぅ~~~っ!」
ヒューゴ「その格好じゃ、寒くて当たり前だ。 さっさと防寒服を着ろ」
アクア「わ、わかってるわよ!  コックピットの中じゃ、着られなかったのよ!  DFCをやってたんだから!」
ヒューゴ「ごちゃごちゃ言ってないで、早くしろ。 凍傷になるぞ」
アクア「って言うか、あなたは平気なの?  手足がかじかまないなんて、鉄か何かで出来てるの?」
ヒューゴ「……!」
アクア「ど、どうしたの……? 気に障ること、言った?」
ヒューゴ「……いや、何でもない」
リム(クリス)「ヒューゴさん、アクアさん、こっちです」
アクア(あ、あの子も薄着で、よく大丈夫ね……若いから?)

[リ・テク マザー・ベース 内部(メインルーム)]

クリフォード「二人共、よく来てくれた」
ジョッシュ「ああ……ゲストとは遭遇せずに済んだよ」
リム(クリス)「うぅ~、寒かった。私、ココア淹れてくるね。 お兄ちゃんも飲むでしょ?」
ジョッシュ「濃くし過ぎるなよ。 ……で、親父は下に籠もりっぱなしなのか?」
クリフォード「そうだ、シュンパティア02を持ち込んでな。 門を開ける目処が付いたらしい」
ジョッシュ「門……親父がフォレースと呼んでた奴か。 いったい、どんな物なんだ?」
クリフォード「さあ…… 私はまだ最下層の奥に入ったことがないのでね」
ジョッシュ「奥?  もしかして、俺達が外へ行っている間に 発見されたのか?」
クリフォード「ああ。 だから、エール・シュヴァリアーが必要なんだ。 調査と……万一の時に備えとしてな」
ジョッシュ「ブランシュネージュは?  どうせ用意しているんだろう?」
クリフォード「……備えあれば憂いなしと言うからな」
ジョッシュ「誰が何と言おうと、リムをあれには……」
クリフォード「だが、ブランシュネージュは 彼女にしか動かせないのだ」
ジョッシュ「………」
(扉が開閉する)
リム(リアナ)「はい、ココア。ごめんね、アニキ。 クリスがちょっと入れ過ぎちゃったみたい」
ジョッシュ「だから言ったのに」
リム(リアナ)「他の人達の分も淹れようと思ってるんだけど…… クリフはどう?」
クリフォード「ああ、もらおう。私は濃い方が好みだ」
リム(リアナ)「そうだったね。ちょっと待ってて」
(扉が開閉する・リムが立ち去る)
クリフォード「ジョッシュ……彼女はまだあの調子か?  彼女達が、という意味だが」
ジョッシュ「ああ…… ここを離れれば、多少は変化があると思ったが」
クリフォード「どちらが本当のクリアーナなのか、 わからないままか……」
ジョッシュ「本人達は気にしていない。 まるで、最初からああだったように……」
ジョッシュ「だが、俺はそういうわけにはいかない。 親父のやったことが原因だと知って、 平気でいられるわけがない」
クリフォード「私がここへ来る前の話だ、詳細は知らんが……」
ジョッシュ「当事者はどいつもこいつも口を閉ざしている。 あいつらは信用できない。だから、俺は リムを連れて、ここから出たんだ……!」
クリフォード「ヒューゴ少尉達や鋼龍戦隊の人間には 彼女のことを説明したのか?」
ジョッシュ「いや……まだ気づかれていないからな。 クリスとリアナには口止めをしてある」
クリフォード「遅かれ早かれ、わかることだ。 怪しまれる前に言っておいた方がいい。 彼女達のためにもな」
ジョッシュ「………」

[リ・テク マザー・ベース 内部(ラウンジ)]

アクア「まったく、もう……ヒューゴったら」
リム(クリス)「アクアさん、ココアいかがですか?」
アクア「ありがとう、いただくわ」
リム(クリス)「あの……ヒューゴさんと喧嘩したんですか?」
アクア「まあ、ちょっとね」
リム(クリス)「でも、喧嘩するほど仲がいいって言いますよね」
アクア「ただのパートナーよ、パートナー。 それに私、年下は好みじゃないし」
リム(クリス)「じゃあ、年上……カイ少佐とか?」
アクア「ええ、素敵だと思うわ。 リムは、どういう人がタイプなの?」
リム(クリス)「ええっと……優しい人、です」
アクア「スタンダードかつストレートな答えねぇ……」
リム(リアナ)(クリス、ココアが冷めちゃうよ?)
リム(クリス)「あっ、いけない!」

[リ・テク マザー・ベース 内部(メインルーム)]

クリフォード「……デモンのデータは見た。 あれがエール・シュヴァリアーを 狙ってくるとしたら……」
クリフォード「理由はシュンパティアか、 レース・アルカーナのどちらかだろうな」
ジョッシュ「未知の物同士で引き合うとでも?」
クリフォード「まあな。 場合によっては、謎を解く鍵に……」
(アラート)
ジョッシュ「!?」
クリフォード「警報……!  ファブラ・フォレースで何かあったようだな」
(回線を繋ごうとするが、雑音がする)
クリフォード「地下との回線がつながらん。 それに、高エネルギー反応が検出されている」
ジョッシュ「まさか、事故か……!?」
クリフォード「ジョッシュ、エール・シュヴァリアーで 様子を見に行ってくれ」
ジョッシュ「ああ、わかった」
クリフォード「ヒューゴ少尉達にも出動要請を出す。 充分に気をつけてくれ」


第27話
南極の門

【デモムービー『エール・シュヴァリアー起動』】

〔戦域:ファブラ・フォレース入口周辺〕

(南端にエール・シュヴァリアー、ヒューゴ機が出撃している)
ジョッシュ「ウォーミング・アップ、終了。 コンディション、オール・グリーン」
ジョッシュ「ヒューゴ少尉、あれが遺跡の入口です」
(ファブラ・フォレースの入口を指す)
ヒューゴ「外部に損傷はないようだな」
アクア「でも、地下のエネルギー反応は どんどん増大しているわ……!」
ジョッシュ「……クリフ、何かわかったことはあるか?」
クリフォード「ファブラ・フォレースを中心として広がる エネルギーの波紋……こんな現象は初めてだが、 強いて言えば……」
クリフォードアインストが転移出現した時の ESウェーブに似ている」
ジョッシュ「何だって……!」
クリフォード「似ているだけだ、アインストとは限らん。 ただし、それと同レベルの異常が起きていると 推測できるな」
アクア「けど、アインストは完全に消滅したんでしょう?」
ヒューゴ「純粋種はな。だが、痕跡は残っている。 エクセレン少尉のライン・ヴァイスリッター…… それに、レッド・オーガ」
ジョッシュ「インスペクター事件中、アインストは何度か ここを襲った。まさかとは思うが……」
ヒューゴ「奴らが遺跡の中へ 直接転移したことはあったのか?」
ジョッシュ「……いえ」
ヒューゴ「なら、関係ないかもな」
ジョッシュ「………」
ヒューゴ「いずれにせよ、 俺達が中に入って調べるしかないか」
ジョッシュ「すみません、身内のゴタゴタに巻き込んでしまって」
ヒューゴ「わけのわからんプロジェクトで 割を食うのは初めてじゃない。気にするな」
ジョッシュ「クリフ、これから下へ降りる。 マザー・ベースのスタッフの避難誘導と 親父達への呼びかけを頼む」
クリフォード「ああ、わかった」
(遺跡の入口を指す、轟音と共に振動)
アクア「熱源反応に振動……!  地下で爆発が起きてるわ!」
ヒューゴ「行くぞ、アクア、ジョッシュ!」
アクア「待って!  動体反応多数! 遺跡入口の奥よ!」
(スカルプルムが多数出現)
ヒューゴ「!!」
アクア「な、何、あれ!?」
ヒューゴ「アインストと雰囲気は似ているが、違う…… 妖機人か?」
アクア「ジョッシュ、何かわかる!?」
ジョッシュ「い、いえ、あんなものは…… 今までの調査で、形跡すら……!」
(エール・シュヴァリアーの周りに爆煙)
ヒューゴ「仕掛けて来たか!  アクア、鋼龍戦隊へ奴らの映像を送れ!」
アクア「わかったわ!」
ジョッシュ「くっ! 親父め、いったい何をやったんだ!?」
(作戦目的表示)

〈3PP or 敵機を5機以上撃墜〉

(スカルプルムが出現)
アクア「また出て来た!」
ヒューゴ「チッ、このまま数が増えていったら……」
アクア「ヒューゴ、こちらへ接近して来る機体が!」
ヒューゴ「奴らの仲間か!?」
アクア「いえ、違うわ! これは……」
(西端にブランシュネージュが出現)
リム(リアナ)「お待たせ、アニキ! あたしも戦うよ!」
ジョッシュ「リム!?」
アクア「あの子があれに!?」
ジョッシュ「どういうことだ、クリフ!?」
クリフォード「万一の時の備えだと言っただろう」
ジョッシュ「だが、リムは実戦を経験していない!  無茶だ!」
クリフォード「システムとの同調は良好だ。 今の彼女なら……やれる」
ジョッシュ「わかっているはずだ!  これ以上、リムにシュンパティアを使わせたら……」
リム(リアナ)「アニキ、心配しないで。 この子はちゃんと動いてくれてるよ。 早く父さん達の所へ行かなきゃ!」
ジョッシュ「……!」
ジョッシュ「わかった……くれぐれも無茶はするなよ」
アクア(リム……何か感じが違う……。 それに、ジョッシュのことをアニキって……)
リム(クリス)(リアナ、頑張って!)
リム(リアナ)「ええ! あたしだって、やってみせるわ!」

〈6EP or 敵機を17機以上撃墜〉

(スカルプルムが出現)
リム(クリス)(リ、リアナ~! 中からどんどん出てくるよぉ!)
リム(リアナ)「これじゃ、下へ降りられない!」
ジョッシュ「くそっ、このままじゃ……!」
(エール・シュヴァリアーに通信)
???(フェリオ)「……聞こ……か、マザー……の諸君…… すぐに南極から……」
ジョッシュ「こ、この声は!」
リム(リアナ)「父さん!」
ジョッシュ「親父、応えろ!」
フェリオ「……ジョッシュか……何をしに来た……」
ジョッシュ「何を、だと!?  俺達を呼んだのは、あんただろ!?」
ジョッシュ「おまけに事故にまで巻き込んで!  助けに来てやったんだ、どこにいる!?」
フェリオ「ファブラ・フォレースが開いた…… やはり……私が思っていた通り……」
リム(リアナ)「父さん、どこなの!? 教えて!」
フェリオ「リ、リム……すまない……私は、もう……」
リム(リアナ)「どういうこと!? 父さん!」
フェリオ「早く……逃げろ…… まもなく、この南極は……」
ジョッシュ「南極がどうなるっていうんだ!?  下では何が起きてるんだ!?」
フェリオ「……すまん……お前達には…………」
(通信が切れる)
ジョッシュ「すまん、だと!?  今さら何を言ってる! それじゃ、まるで!」
リム(リアナ)「父さん! 父さん!!」
(遺跡の入口を指す、轟音と振動)
ヒューゴ「アクア、どうなってる!?」
アクア「地下で球状の高エネルギー体が膨張してる!  このままだと、私達も飲み込まれるわ!」
ヒューゴ「ここまでか……!  ジョッシュ、リム! 脱出するぞ!」
リム(リアナ)「でも、父さんが!!」
ジョッシュ「……俺が行く。 リム、お前はヒューゴ少尉達と脱出しろ!」
リム(リアナ)「そんな! アニキ一人だけで!」
ジョッシュ「中で何が起きてるか、調べる必要もある!  お前はヒューゴ少尉達と行け!」
(遺跡の上にウィオラーケウムが出現)
ジョッシュ「あれは!?」
???(コンターギオ)「クククッ、これが私の身体……私の器か……」
リム(リアナ)「こ、声が聞こえる……!!」
アクア「えっ!?」
???(コンターギオ)「このような姿が、負の感情……その波動を 励起するのだな?」
???(ウンブラ)「そう…… 彼らの知識や心象が我らの姿を作った」
???(コンターギオ)「この姿……なかなか気に入ったぞ、クククッ」
???(ウンブラ)「そして、あれがこの世界の知識所有者であり、 我らの糧となる“人”、“人間”…… 彼らは自らをそう呼ぶ」
???(コンターギオ)「人間……」
???(ウンブラ)「あそこには、鍵に触れた者もいるようね」
ジョッシュ「答えろ! お前達は何なんだ!?」
???(ウンブラ)「人間よ、新たな知識をその身に刻め。 我らは“ルイーナ”……」
???(ウンブラ)「お前達に恐怖や絶望を与え、破滅をもたらす者」
リム(クリス)(ル、ルイーナ……!?)
ジョッシュ「破滅をもたらすだと!?」
アクア「ジョッシュ !リム!  あなた達、誰と話しているの!?」
ジョッシュ「!?  聞こえないんですか、あいつらの声が!」
???(ウンブラ)「さあ……まずはこの氷の地を封印し、 次なる儀式に備えよう」
(北西、南東、中央に黒い光が落ちる)
リム(クリス)(な、何!?)
ジョッシュ「何をやっている!?」
ヒューゴ「ちっ、これ以上は!  ジョッシュ、リム! ここから脱出するぞ!」
リム(リアナ)「と、父さんを置いていくわけには!」
ジョッシュ「親父の奴、言いたいことだけ言って、 それで終わりだなんて! 勝手過ぎるんだよ!」
ヒューゴ「状況をよく見ろ!  それに、マザー・ベースの人間も 脱出させなきゃならない!」
ジョッシュ「……!」
ヒューゴ「俺達には、ここで見たことを報告する義務もある……!  力尽くでも連れて帰るぞ」
リム(リアナ)「うう……!」
ジョッシュ「りょ、了解……!」
ヒューゴ「よし、全速で後退する! 遅れるなよ!」
(ヒューゴ機、エール・シュヴァリアー、ブランシュネージュが高速で西端へ移動後、撤退)
???(コンターギオ)「クククッ、逃がさんぞ」
(スカルプルムが高速で西端へ移動)

《パリ 地球連邦軍 統合参謀本部》

[地球連邦軍 統合参謀本部]

ギャスパル「まったく……南極事件の再来とでも言うか」
ダニエル「しかし、異星人絡みではないようです。 南磁軸極付近を中心として、不可視の半球状 エネルギー・フィールドが拡大しています」
ダニエル「このままでは、南極大陸そのものが それに覆われてしまう可能性があります」
ギャスパル「敵性体については? 最初に接触したのは誰だ?」
ダニエル「極東方面軍の特殊戦技教導隊に出向している テストパイロットです」
ダニエル「なお、この情報は鋼龍戦隊、極東方面軍司令部を 経由して伝達されました」
ギャスパル「鋼龍戦隊と特殊戦技教導隊か…… 相変わらず、その手の事件と縁のある連中だ」
ダニエル「敵性体は大まかに三つの集団に分かれ、アルファは チリ、ホーン岬方面へ向かって南極半島上を 移動中……」
ダニエル「サン・マルティン基地やロテラ基地が 襲撃を受け、沈黙しました」
ダニエル「なお、ブラボーはニュージーランド方面へ向かって ロス海上を、チャーリーはポインセット岬から 太平洋上へ移動中です」
ギャスパル「太平洋艦隊第3空母打撃群は、 グランド・クリスマスへ向かっている途中だったな?」
ダニエル「はっ、監視任務のために」
ギャスパル「南極方面へ急行させたまえ。 ニュージーランドとチリ、アルゼンチンの各部隊は?」
ダニエル「既に迎撃態勢に入っております。 また、パリを進発したガイアセイバーズ空戦母艦群が 南極方面へ転針したようです」
ギャスパル「ふん、働き者だな。 まさか、グラスマン大統領を乗せたまま 戦地へ赴くのではあるまいな?」
ダニエル「さすがに降艦させるでしょう」
ギャスパル「ガイアセイバーズが動いているのならば、 鋼龍戦隊も南極へ向かわせたまえ。 彼らの艦ならば、間に合うだろう」
ダニエル「対抗馬ということですか?」
ギャスパル「ああ……我々もアピールは必要だよ」


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