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黒き迅雷 ~ 第22話 ~

《パリ 地球連邦軍 統合参謀本部》

[地球連邦軍 統合参謀本部]

(扉が開閉する)
ギャスパル「……ダニエル、 そろそろ君は、私の孫に嫌われて然るべきだな」
ダニエル「申し訳ありません、元帥……ご帰宅間際に」
ギャスパル「予約した店が閉まる前に、事が済めばいいがね」
ダニエル「トゥールダルジャンですか?」
ギャスパル「ああ、孫を初めて連れて行こうと思ってな。 もっとも、それどころの話ではあるまい?」
ダニエル「ええ……ジェイコブ中将経由の情報ですが、 マオ・インダストリーのオルレアン工場が インスペクターの襲撃を受けたそうです」
ギャスパル「では、シュタインベック大統領特別補佐官…… いや、今は特次副大統領殿か。 彼の忠告の信憑性が増したな」
ダニエル「ええ。まもなく、グラスマン大統領から ケースEが発令される見込みです」
ギャスパル「ほう……魔術師殿は賭けに出たか。 候補地に変更は?」
ダニエル「ありません。このパリも外れたままです」
ギャスパル「ふん…… 魔術師殿は魔法ではなく、“剣”を使うつもりか。 それも、我々の目の前で」
ダニエル「よろしいのですか?」
ギャスパル「余程自信があるのだろう。好きにさせろ」
ダニエル「しかし、それでは我が軍の立場が……」
ギャスパル「特次副大統領殿が手の内を見せてくれると言うのだ。 我らはエスプレッソでも飲みながら、 季節外れのクリスマスを楽しめばいい」
ダニエル「……わかりました。 では、全軍に非常警戒態勢命令を出します」
ギャスパル「万が一の事態に備え、策を講じておきたまえよ。 このパリを含めてな」
ダニエル「はっ」
ギャスパル「さて……店にキャンセルの連絡を 入れねばならんな」

《マオ・インダストリー オルレアン工場》

[マオ・インダストリー オルレアン工場(制御室)]

ギリアム「インスペクターの件は 私の方からジェイコブ中将を通じて、 統合参謀本部に伝えました」
カイ「そうか。 それで、全軍に警戒態勢命令が 出ればいいのだが……」
ギリアム「既に各方面軍に対し、発令されています」
カイ「ほう……対応が早いな。 インスペクター事件修羅の乱から 得た教訓が生かされたか」
ギリアム「それもありますが…… 今回は大統領側から情報が出ていたのです」
カイ「何だと……?」
ギリアム「おそらく、発信元は『GS』……。 そして、大統領筋は2週間ほど前から統合参謀本部に 対し、再襲撃の警告を行っていました」
カイ「『GS』が奴らの動きを掴んでいたと言うのか……」
ギリアム「詳細は不明ですが、政治的な取り引きが あったのではないかと考えています」
ギリアム南極事件の例を挙げればわかるように、 パイプは存在していました。現在もそれが 何らかの形でつながっているのかも知れません」
カイ「インスペクターが一枚岩でないことは 予測されていたが……政治の駆け引き材料に される方は、たまったものではないな」
ギリアム「ええ……」
カイ「それと、エクスバインの件だが…… 非公認の機体だからな、こちらでは引き取れん。 俺はクロガネに預けようと思っている」
ギリアム「なるほど…… それならば、敵の目からも隠せますね」
カイ「伊豆へ帰還する途中で、レーツェルと合流する。 あくまでも極秘だからな、上へ報告はせん。 そちら側での根回しを頼む」
ギリアム「わかりました」
カイ「それと……鋼龍戦隊とツェントル・プロジェクト、 黒い羽根付きに関する情報収集もな。 クロガネと合流したら、また連絡を入れる」
ギリアム「了解です。それでは」
(通信が切れる)
ゼオラ「カイ少佐…… またインスペクターとの戦争が始まるんですか?」
カイ「……おそらくな」
アラド「あいつら、前回で懲りてなかったんスかね」
カイ「考え方は二つある。 捲土重来を期しての再襲撃か…… 前任者との違いを提示するための手段か」
カイ「いずれにせよ、 今回はインスペクター事件のようにはいかんさ。 こちらも学習しているからな」
(扉が開閉する)
ユアン「カイ少佐」
カイ「常務、リンは何と?」
ユアン「エクスバインの件は一任するとのことです。 ハミル博士とオオミヤ博士にも同行してもらいます。 開発はクロガネ艦内や先方の拠点でも行えますから」
カイ「わかりました。 それと……彼女に地球へ降りるよう勧めましたか?」
ユアン「社長は……本社を守るために残ると。 ただ、ラーダ女史は近日中にエクスバイン用の パーツと共に地球へ向かわせるそうです」
カイ「なら、なるべく急がせて下さい。 ただし、事が起きた場合は月に留まるようにと」
ユアン「了解しました」
カイ「では……エクスバインの積み込み作業が完了次第、 ここを発ちます」

《インド洋上(レイディバード)》

[輸送機 コックピット内]

ゼオラ「カイ少佐。まもなくレパン島上空です」
カイ「わかった。各員は機乗し、待機しろ」
アラド「えっ、どうしてッスか?  ラミアさんとラトが出てるのに……」
カイ「俺が敵ならば、荷物の受け渡し時を狙うからだ。 奴らが頭上から……しかも、空間転移してくる ことを忘れるな」
(警告シグナル)
ゼオラ「カイ少佐、センサーに感あり!  0時方向、レパン島上に動体反応多数!」
カイ「下だと? 各員、直ちに機乗! 出撃する!」


第22話
黒き迅雷

〔戦域:レパン島〕

(ラミア機、ラトゥーニ機、レイディバード2機が西端にいる)
ラミア「0時方向の動体反応、強まりやがってます。 数も増えまくりです」
ラトゥーニ「カイ少佐、これは水鳥島のケースと似ています」
カイ「何……!?」
(敵機が出現)
リム(クリス)「あ、あれは!」
リム(リアナ)(妖機人……どうしたこんな所に!?)
(他の味方機が出撃)
ゼオラ「ラトの読みが当たったわね……!」
ラトゥーニ「うん……」
カイ(やはり、妖機人は、 俺の部隊の何かを狙っていると見て 間違いないようだな)
カイ(そして、それはヒューゴ達かジョッシュ達…… そのいずれかか、両方である可能性が高い)
アクア「ねえ、ヒューゴ。 もしかして、妖機人は私達を狙っているんじゃ……」
ヒューゴ「だとしたら、連中は何故、 単独で伊豆へ向かっていた時に現れなかった?」
アクア「そうよね……私達に何かする気なら。 じゃあ、ジョッシュの方……?」
ジョッシュ「こっちも南極から伊豆までは単独行動でしたが」
アクア「なら、いったい……?」
ジョッシュ(いや、待て…… 南極を出る前も出た後も、エール・シュヴァリアーを 起動させていなかった)
ジョッシュ(だから、模擬戦の時に……?)
カイ「各機、攻撃開始!  妖機人を輸送機に近づけるなよ!」
(作戦目的表示)

〈3EP or 敵機全滅〉

???(蓬)「……あの時と同じだ、特に変化はない。 だが、あのお方が『鍵』の一つかも知れぬと 仰った以上は……」
???(蓬)「向吾者死、留吾者亡、亡神再妖、機人転生、 急々如律令……勅!」
(レイディバードの周りと、島の北側に敵機が出現)
アラド「おわっ、妖機人が増えた!!」
ラトゥーニ「今度は前触れなしに……!」
アクア「見て! リマ1とリマ2の周りにも!」
ゼオラ「いけない! 早く撃墜を!!」
(ゼオラ機に通信)
???(レーツェル)「その役目は、私に任せてもらおう」
ゼオラ「え!?」
(島の南端にアウセンザイターが出現)
レーツェル「撃て、トロンベよ!」
(アウセンザイターから砲撃、レイディバードの周りの妖機人が爆発)
アラド「来た、穴馬だ!!」
ゼオラ「レーツェルさん!」
レーツェル「フッ……久しぶりだな、諸君」
カイ「レーツェル、いい所に来てくれた」
レーツェル「この空域での戦闘を知り、トロンベで先行したのです。 後ほど、クロガネも来ます」
カイ「わかった。こちらの援護を頼む」
レーツェル「了解!」

〈レイディバードが被弾〉

カイ「ぬうっ、輸送機が被弾したか!  各機、これ以上敵を近づけさせるな!」

〈敵機全滅〉

???(蓬)「進展なし、か。 今日の所は引き揚げるとしよう……」
アラド「……もう出てこないみてえだな、妖機人は」
ゼオラ「ええ……」
アラド「それにしても、ちょっかいを出してくる割には 雑魚っぽいのばかりだよな。テスラ研には 超機人が出て来たってのに……」
ラトゥーニ「もしかしたら、何かを調べているのかも……」
アラド「何かって、何だよ?」
ラトゥーニ「まだ確証は持てない……」
ジョッシュ「………」
レーツェル「……カイ少佐、良からぬ兆候のようですね」
カイ「ああ。妖機人、オルレアンでの一件…… また大きな戦いが始まる可能性が高いと思っている」
レーツェル「……同感です」
カイ「ところで、ゼンガー達の消息について、 そちらでは何か手掛かりを掴んだか?」
レーツェル「いえ……」
カイ「そうか……」
レーツェル「ですが、私は無事だと信じています。 鋼龍戦隊の面々も含めて」
アクア「ヒューゴ、あの人って……」
ヒューゴ「旧特殊戦技教導隊のメンバーであり、 元コロニー統合軍のトップエースだ」
アクア「ええっ!?  じゃあ、『黒い竜巻』のエルザム少佐なの!?」
レーツェル「今の私はエルザムではない。 レーツェル・ファインシュメッカーだ」
アクア「あっ、す、すみません!」
アクア「ちょっと、ヒューゴ! 別人じゃないの!  いい加減なこと教えないでよ!」
ヒューゴ「お前な……」
アラド(アクアさんって、案外……)
(アウセンザイターが海岸付近まで移動)
レーツェル「カイ少佐、 まもなく、こちらにクロガネが来ます。 よろしければ、着艦を」
カイ「了解した。 各機、リマ1とリマ2の護衛につけ」
(アウセンザイター以外の各機が輸送機の周りに移動。アウセンザイターに警告シグナル)
レーツェル「むっ、この反応は……!?」
【デモイベント『ジンライ登場』】
(島の北西端にジンライが出現)
ゼオラ「な、何、あれ!?」
ヒューゴ「サイズは特機……だが、あの姿は……」
リム(クリス)「あれよ、あれ! ほら、日本の……ええっと……」
リム(リアナ)(ニンジャ?)
リム(クリス)「そう、それそれ!」
カーク「あのカラーリング、フォルムはまるで……」
レーツェル「まさか……!」
(ジンライが高速でアウセンザイターに隣接)
レーツェル「!!」
(ジンライとアウセンザイターの間に爆煙、アウセンザイターが少し後退する)
レーツェル「ぬうっ!!」
ゼオラ「レーツェルさん!!」
アラド「あ、あの人に不意打ちを食らわせるなんて!」
レーツェル「くっ…… あの踏み込みの速さ、動きのしなやかさは!」
(ジンライからアウセンザイターに通信)
レーツェル「! 奴からメッセージが……!?」
カイ「あの機体のパイロットからか!?」
レーツェル「いえ、おそらく、あれは無人機…… そして、ターゲットは私のトロンベ…… アウセンザイター」
カイ「!」
レーツェル「少佐、私が単独であの機体を引き付けます。 援護を頼みます」
カイ「……わかった。 リマ1とリマ2は現空域から離脱し、クロガネと合流!  他の者はレーツェルを援護しろ!」
ラミア「了解」
(レイディバードが撤退、作戦目的表示)

〈vs S-ZLAI〉

[レーツェル]

レーツェル「もしや、あの機体を開発したのは……!?」

[カイ]

カイ「あのサイズにも関わらず、柔軟な動き……!  まるでダブルGではないか!」

[ラミア]

ラミア「機体構造やモーションの重心移動が似ている…… EG系、そして……ダブルGと」

[ラトゥーニ]

ラトゥーニ「特機サイズであれほどの動きを具現化できるのは、 ABMDシステム……そして、あのパーツ構成や モーションの重心移動から導き出される答えは……!」

[ジョッシュ]

ジョッシュ「黒いヒュッケバインもどきの次は 黒い忍者か……いったい何なんだ、お前達は!」

[HP20000以下]

アラド「忍者ロボの動きが止まった! 今なら!」
(ジンライが揺れる)
ラミア「様子がおかしい! 迂闊に近づくな!」
アラド「え!?」
(ジンライに爆煙後、撤退)
アラド「!!」
ジョッシュ「何だ!? センサーが!」
ヒューゴ「アクア! 何が起きてる!?」
アクア「きょ、強力なEAよ!  レーダーやセンサーが効かない!」
ヒューゴ「奴はどうなった!?」
ラミア「……もう姿を消している」
ヒューゴ「……!」
アラド「何て奴なんだ……」
カイ「もしかして、あの特機は……」
レーツェル「ジンライ……」
カイ「何?」
レーツェル「あれは、ダイナミック・ゼネラル・ガーディアンを 破壊するために作られた存在……」
カイ「お前……何を知っている?」
(東端にクロガネが出現)
クルト「レーツェル様、お迎えに上がりました」
レーツェル「ご苦労、艦長。 ……カイ少佐、話の続きはクロガネで」
カイ「ああ、わかった」

[クロガネ ブリーフィング・ルーム]

カイ「レーツェル、奴からのメッセージとは……?」
レーツェル「我はジンライ…… ダイナミック・ゼネラル・ガーディアンであり、 それを超える者」
レーツェル「我が目的は1号機と2号機の破壊……という 内容でした」
カイ「!」
アラド「あ、あいつも ダイナミック・ゼネラル・ガーディアンなんスか!?」
アクア「た、確かに見た目は似てたけど……」
ラトゥーニ「ダイゼンガーに用いられているABMDシステムが ジンライに搭載されているとしたら…… あの柔軟な動きに納得がいきます」
ラミア「ああ、重心移動もダブルGのそれに似ていた」
アラド「じゃ、じゃあ、本当に……」
レーツェル「元々、ビアン・ゾルダーク博士の構想では、 ダブルGは4機建造される予定だった」
レーツェル「だが、実際に作られたのはダイゼンガーと 私のアウセンザイターのみ……」
レーツェル「3号機と4号機はBフレームまで 組み上げられたものの、開発は中断。 その後、分解され……行方不明となった」
アクア「じゃあ、いったい誰があれを……?」
ジョッシュ「それに、どうしてアウセンザイターを狙うんです?  わざわざ、事前に告知までして……」
レーツェル「………」
カイ「ジンライ……だったな。 あれはダブルGの3号機と4号機、 どちらの仕様に近いのだ?」
レーツェル「3号機です」
カイ「では、ジンライを作り上げられる人物について 心当たりは?」
レーツェル「テスラ研のジョナサン・カザハラ博士、 そこにいるオオミヤ博士……」
ロバート「言っておくが、俺は関係ないぞ」
レーツェル「わかっている。 後は、エリック・ワン博士……」
ヒューゴ「エリック・ワンだと……!?」
レーツェル「君は彼を知っているのか?」
ヒューゴ「ええ……俺がクライウルブズにいた時、 ツェントル・プロジェクトのトーチカ1で 会ったことがあります」
レーツェル「ワン博士は、今もツェントル・プロジェクトに?」
ヒューゴ「それは……わかりません」
レーツェル「………」
カイ「他に心当たりは?」
レーツェル「キサブロー・アズマ博士、 そして……カオル・トオミネ博士です」
カーク「トオミネ博士か。 確か、彼はEOTI機関に所属していたな。 偏屈で有名な男だったよ」
レーツェル「そして、DCにも参加し…… 戦闘用AIの分野においては、 ビアン博士をも凌ぐと言われていた」
カイ「今、彼はどこに?」
レーツェル「ビアン博士と衝突し、DCから去った後、 行方知れずになっています」
カイ「衝突ということは…… もしや、ビアン博士に対抗心を持っていたのか?」
レーツェル「ええ……嫉妬心や執念と共に。 彼は、激しくビアン博士を憎んでいました」
カイ「お前は、トオミネ博士が本命だと考えているのだな」
レーツェル「……そうです」
ロバート「じゃあ、トオミネ博士が今頃になって ビアン博士への恨みを晴らすために……」
ロバート「彼の遺産であるダブルGの破壊を目論んだと?  しかも、3号機とも言える機体で?」
レーツェル「その可能性は高いが…… 腑に落ちない点が一つある」
カーク「ジンライに憎むべき対象である ダイナミック・ゼネラル・ガーディアンの 称号を与えたことか?」
レーツェル「ああ。 事前にメッセージを送りつけたことについては ある意味、彼らしいと思えるのだが……」
カイ「お前の考えが正しいとして、トオミネ博士は いったいどこであのような物を……」
レーツェル「候補はいくつか挙げられます。 イスルギ重工、ノイエDC残党、 ツェントル・プロジェクト……」
ヒューゴ「………」
レーツェル「そして、『GS』です。彼らはかつての アイドネウス島……グランド・クリスマスで 新兵器の開発と実験を行っていると聞いていますので」
レーツェル「それに、大統領直轄部隊である『GS』には、 かつてDCに参画していた私を討つ大義名分が あります」
カイ「………」
レーツェル「ともかく、妖機人やインスペクターのこともあります。 日本近海まで、クロガネでお送りしましょう」
カイ「ああ……頼む」

REPORT
機体『アシュセイヴァー』を入手しました。


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