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手負いの狼 ~ 第19話 ~

《パリ 地球連邦政府大統領府》

[地球連邦政府大統領府]

グライエン「デモン、か……」
ニブハル「はい。修羅の乱の最中にも 出現が確認された敵性体です」
ニブハル「LTR機構では妖人機と呼ばれ、 超機人の敵であるとされていますが…… 怪力乱神、魑魅魍魎の類ですな」
グライエン「ふん、次から次へと……。 この短期間によくもこれだけの事件が起きるものだ。 もはや、偶然という言葉では片付けられんな」
ニブハル「……何者かが仕組んだことだと?」
グライエン「そう思いたくもなるが……デモンの件を私の所まで 上げたということは、彼らが再び出現する 可能性が高いと見ているのだな?」
ニブハル「はい。 我々にとって新たな脅威になる可能性があります」
グライエン「そのための『GS』だ。 グランド・クリスマスの方はどうなっている?」
ニブハル「現在、シュタインベック特別補佐官が アイドネウス島で陣頭指揮を執っておられます」
ニブハル「機動兵器の試験や配備の進行度は予定通り。 部隊編成もまもなく終了します」
グライエン「構成員には、色々と裏があるようだが?」
ニブハル「連邦軍とは別系統の軍事組織…… それが『GS』のコンセプトではありますが、 このご時世です」
ニブハル「軍やDCとまったく関係のない人員を 集めるのは、至難の業……清濁併せ呑まねば、 優秀な人材を揃えることなど出来ません」
ニブハル「大統領…… ミッション・ハルパーを計画したあなたなら、 ご理解いただけると思いますが」
グライエン「………」
ニブハル「ご心配なく。 『GS』には、与えられた任務を 忠実に遂行する者達が揃っています」
グライエン「懸念しているのは、そこではない」
ニブハル「……ご指摘通り、経歴に瑕疵(かし)を持つ メンバーが幾人かおりますが……」
ニブハル「選考はシュタインベック特別補佐官と私で行いました。 大統領直轄部隊の名に傷を付けるような……現体制の 転覆を目論むような輩は選抜しておりません」
グライエン「……手綱は引き絞れるのだな?」
ニブハル「もちろんです。 さもなくば、大統領特別補佐官である 私達の立場も危うくなるのですから」
グライエン「『GS』メンバーの素性に探りを入れる者は 必ず出てくる。今という時に、スキャンダルで 議会の連中から足を引かれるわけにはいかん」
グライエン「金の流れについては、非常時ということで抑えが効く。 だが、『GS』がその全貌を現した時、 保守派や軍の連中は反発するだろう」
グライエン「となると、ツェントル・プロジェクトあたりは 格好の標的となる。反対派の追及を想定し、 手を打っておけ」
ニブハル「承知しております。 ですが、まもなく連邦の人民は喝采と共に 『GS』の存在を受け入れるでしょう」
グライエン「……例の件か。確かなのだろうな?」
ニブハル「ええ、信頼できる筋からの情報です」
グライエン「それを知っていて、何故、事前に抑えられん?」
ニブハル「かつての連邦政府が、 ビアン・ゾルダークの反乱を予期していながら、 それを未然に防げなかったように……」
ニブハル「向こうにも色々と都合があるようなのです」
グライエン「身内の不始末をこちらに押しつける気か」
ニブハル「彼らも一枚岩ではありませんから…… 我々にとっては、格好の機会かと」
グライエン「裏返せば、こちらを陥れる絶好の機会にもなる。 そこで、お前とシュタインベックの真意を 再度測るとしよう」
ニブハル「………」
グライエン「疑り深くなければ、務まらぬのでな」
ニブハル「私が提出した鋼龍戦隊の処遇案…… あれを保留されたのも、そのためですか?」
グライエン「彼らは故意に姿を消したわけではない。 それに、保険としてあの戦力は必要だ」
ニブハル「もう二度と戻ってこないかも知れませんよ?」
グライエン「とは言え、彼らの戦績は無視できん。 民間にもその存在は知れ渡っているのだからな」
グライエン「それ故に、『GS』は鮮烈なデビューを飾り、 鋼龍戦隊以上の実績を挙げねばならぬ。 だからこそ、私はお前達の賭けに乗ったのだ」
グライエン「我らには時間がない。 連邦軍以外の軍事組織の是非を問われ、大統領権限の 濫用を追及されてでも……」
グライエン「即時に行動できる特化戦力が必要だ。 地球人による地球圏の存続……異星人に対し、 確固たる主権を主張するためにはな」
ニブハル「その清濁を併せ呑む度量…… そして、慎重さと大胆さを併せ持つご決断…… 私はそれに心服し、あなたの補佐官を務めております」
ニブハル「『GS』……ガイアセイバーズは 軍や議会にその動きを制限されることなく 大統領の意のままに動き、地球圏を守護する剣」
ニブハル「来るべき時…… ガイアセイバーズがその力を示せば、 疑いを持つ者達の声など掻き消されましょう」
グライエン「ああ……そうあることを祈る」
ニブハル(グライエン・グラスマン…… やはり、素晴らしい人材ですね)

《ハワイ 連邦軍北米方面軍 ヒッカム基地》

[連邦軍ヒッカム基地 内部(医務室)]

ミタール「あまり(かんば)しくない結果だな、ヒューゴ・メディオ」
ヒューゴ「いくらあいつが不慣れとは言え、 TEエンジンの調子があれではな」
ミタール「調整込みでのテストだ。 それに、君の能力を見込んでパイロットに 任命したのだが」
ヒューゴ「よく言う。 あんたにとっちゃ、ちょうどいい素材が 転がり込んで来ただけの話だったんだろうが」
ミタール「素質や能力がない者を救ったりはせんよ。 それに、特別措置で少尉へ昇進させたのだ…… 感謝してもらいたいぐらいだな」
ヒューゴ「頼んだ覚えはない。 そもそも、俺があんな目に遭ったのは……」
ミタール「またその話を蒸し返すのか。 あれは事故だったと何度も説明したろう」
ヒューゴ「それで納得できるか……!  あんたのせいでクライウルブズは…… フォリアや俺の仲間達は……!」
ミタール「事故とは言え、責任は感じているのだよ。 だからこそ、軍医が見放した君を特別措置で助けた。 しかも、かなりの費用が掛かったのだ」
ヒューゴ「それでこのザマか。 要は俺に首輪をつけ、口を封じようとしたんだろうが。 完全に治療してしまえば、俺は……」
ミタール「君が疑いを持つのはやむを得ないが…… あの短期間で君をそこまで回復させた実績を 評価してもらいたいものだな」
ミタール「我々でなければ、君は救えなかった。 不服があるなら、他の医者の所へ行きたまえ」
ミタール「いや…… 君をこれ以上回復させられる医者がいるなら、 逆に紹介してもらいたいぐらいだ」
ヒューゴ「………」
ミタール「いいかね?  君はツェントル・プロジェクトの成果によって 命を救われたのだ」
ミタール「ならば、プロジェクトのために働いてもらうのは 当然のことだ」
ヒューゴ「それは、あんたの勝手な理屈だ」
ミタール「……どうも君はツェントル・プロジェクトを 誤解しているようだな。我々は地球圏を外敵から 防衛するための手段を模索しているのだよ」
ミタール「その中の一つが、 君達に与えたTEアブゾーバー試作6号機…… サーベラスだ」
ヒューゴ「……なら、イェッツトは?  あの疑似アインストは何だったんだ?」
ミタール「言わば、必要悪…… アインストのような存在を打ち倒すためのな」
ヒューゴ「何だと!?」
ミタール「研究には試行錯誤が付き物だ。 君達クライウルブズをそれに巻き込んで しまったことに対しては、申し訳なく思っている」
ミタール「それに加え、 ツェントル・プロジェクトの全てを 君に明かせぬこともな」
ヒューゴ「知られるとまずいことがあるからだろうが」
ミタール「ヒューゴ……君もアクア少尉のように、 素直に協力してもらえないものかね」
ミタール「今のツェントル・プロジェクトは、 ある止ん事無き御方の意志によって動いている」
ミタール「いずれ時が来れば、君は私達に協力していることを 誇りに思うだろう」
ヒューゴ「悪いが、そんなにめでたい頭じゃない。 俺の目的は一つ……」
ミタール「好きにすればいいと言ったはずだ。 ただし、君が何をやろうと、何を言おうと 徒労に終わる」
ミタール「それだけの権力を持った人物が、我々の上にいる。 そして、彼は地球人による地球圏の存続を 望んでいる……大義は、我らにあるのだよ」
ヒューゴ「………」
ミタール「今は耐えるべき時なのだ、ヒューゴ。 共に恩讐を乗り越え、忌まわしい過去を払拭し、 栄光を手に入れようではないか」
ヒューゴ「そんなことに興味はない」
ミタール「なら……私を殺せば、君の気は晴れるのか?」
ヒューゴ「……それが出来るのなら、とっくの昔にやっている」
ミタール「そう、君は愚かな人間ではない。 だからこそ、私に文句を言うものの、行動に出ない。 自ら死を選ぶこともない」
ヒューゴ(……その通りだ。 己の死から学び得ることは何もない……)
ヒューゴ(任務を成し遂げ、必ず生きて還る……)
ヒューゴ(それがアルベロ隊長の教えだった…… 俺が生き延びなければ、フォリア達の死は……)
ミタール「我々の関係は、ギブ・アンド・テイクなのだ。 君はTEアブゾーバーのデータを我々に提供し…… 私は君に生きる術を与える」
ミタール「さあ、薬を受け取りたまえ」
ヒューゴ「……いつもより量が多いな?」
ミタール「ああ、 君達には日本へ行ってもらうことになるからな」
ヒューゴ「日本?」
ミタール「うむ。 しばらくの間、伊豆基地の特殊戦技教導隊へ出向し、 サーベラスの実働データを取ってくれ」
ヒューゴ(伊豆の教導隊……カイ・キタムラ少佐の部隊か)
ミタール「それと、7号機がロールアウトし次第、伊豆へ送る。 そちらのテストもやってもらう」
ヒューゴ「7号機だと? そんな物が……」
ミタール「サーベラスとは違い、 特機タイプのTEアブゾーバーだ。 君達用の機体として、調整を行っている」
ミタール「名前はガルムレイド。 スペックデータは、機体と共に送る」
ヒューゴ「……5号機がメディウス・ロクス、 6号機がサーベラス、そして7号機ガルムレイド……」
ヒューゴ「メディウスのデータは参考用としてもらっているが、 TEアブゾーバーは全部で何機あるんだ?」
ミタール「それを知る必要はない。 また、他の者にサーベラスとガルムレイドを 操縦させてはならない」
ミタール「もっとも、その2機は 君達の専用機としてアジャストされているから、 他人が運用することは出来ないがね」
ヒューゴ「サーベラスとガルムレイドの情報は 先方に知られても問題ないんだな?」
ミタール「機体整備のこともある。構わんよ」
ミタール「ただし、君がプロジェクトにとって 不利になる行動を取れば……」
ヒューゴ「薬の手配は保証できない、だろう?」
ミタール「そういうことだ」
ヒューゴ(……今は耐えるべき時、か。 その言葉には賛同できる)
ヒューゴ(従ってやるさ、ミタール・ザパト。 今はな……!)

[連邦軍ヒッカム基地 内部(個室)]

エルデ「そう……夢が叶ったのね、アクア」
アクア「ええ、まあ…… 完全に、というわけじゃないんですけど」
エルデ「どんな機体……と尋ねても、 機密事項なんでしょう?」
アクア「そうなんです。 ミッテ先生が連邦軍絡みの仕事をなさっていれば、 お耳に入ることがあるかも知れませんけど……」
エルデ「………」
アクア「ところで、先生はアビアノ基地を出られた後…… どこで、何をしておられるんです?」
エルデ「……機密事項、よ」
アクア「そ、そうですか。 気軽に連絡しちゃって、すみません……」
エルデ「いいのよ。 私もあなたの顔を見たいと思っていたから」
(アクアは照れつつ驚いている)
アクア「………」
エルデ「どうしたの? そんな顔して」
アクア「せ、先生からそういう言葉をもらえるなんて…… ちょっと驚きで……」
アクア「あ、いえ、とっても嬉しくて!」
エルデ「あなたは私の教え子の中でも優秀だったから…… こうやって慕ってくれるのは、嬉しいものよ」
アクア「あ、ありがとうございます!  実は、こちらから連絡するのは ご迷惑なんじゃないかと思っていて……」
エルデ「そんなことはないわよ」
アクア「良かった……」
エルデ「ところで、アクア…… 自分で選んだ道、後悔はしていないのね?」
アクア「はい。 相変わらず、父には理解してもらえませんけど……」
エルデ「家を飛び出さなければ、もっと別の…… 華やかな生き方を選ぶことも出来たのにね」
アクア「前にも言いましたが、カゴの中の鳥は嫌なんです。 自分自身の力で結果を出したいんです」
エルデ「そうだったわね」
アクア「じゃあ、ミッテ先生……そろそろ時間なので」
エルデ「アクア……最後に言っておくわ。 パイロットに必要とされるのは、いかなる時も冷静に 状況を分析し、あらゆる事態に対処できる能力……」
アクア「それを得られなければ、 死ぬことになる……ですよね。 覚えています、その言葉」
エルデ「………」
アクア「当分の間、先生には連絡できなくなりますが…… またどこかでお会いしたいです」
エルデ「そうね……その時を楽しみにしておくわ」


第19話
手負いの狼

〔戦域:海辺〕

(南端にサーベラスが出現)
アクア「ちょっと、ヒューゴ! どうして止まるのよ!」
ヒューゴ「このままだとエンジンに負担がかかる。 動力をバッテリーに切り換える」
アクア「駄目よ! TEエンジンを用いた長距離単独航行で、 ハワイから伊豆まで制限時間内に辿り着く…… それがザパト博士の命令なんだから!」
ヒューゴ「だが、もう2時間オーバーだ」
アクア「わ、私のせいだってのは、自覚してるわよ!  これじゃ、カイ少佐に合わせる顔がないし……」
ヒューゴ「あの人を知っているのか?」
アクア「うん、アビアノ基地で一度だけ会ったことがあるの。 サインをもらったわ。荷物の中に入れてある」
ヒューゴ(こいつ……意外にミーハーなんだな)
アクア「あの人、ってことは…… あなたも少佐と会ったことが?」
ヒューゴ「ああ。お前と同じく、アビアノでな」
アクア「じゃあ、私達…… あの基地ですれ違ってたかも知れないわね」
ヒューゴ「思い出話をしている場合じゃない」
アクア「そうよ!  これ以上遅れると評価に響いちゃう!」
ヒューゴ「俺は気にしない」
アクア「あなたはいいわよ、実績があるんだから。 でも、私は……」
ヒューゴ「評価が気になるなら、きちんと自分の仕事をこなせ。 出力がイエローゾーンすれすれじゃ、 いつ海に沈むかわからん」
アクア「うっ……そ、そうだけど、 私はナビゲーターでもあるのよ。指示に従って」
ヒューゴ「俺の判断より正確ならな」
アクア「またそんなことを言う!  何のために私がこの機体に同乗していると 思ってるの?」
ヒューゴ「俺のお目付役」
アクア「そうそう、ヒューゴってば、 ザパト博士に反抗的だから……」
アクア「って、違うわよ!  こんな超恥ずかしいスーツを我慢して着てるのは、 TEエンジンのDFCを行うためで……」
ヒューゴ「ああ、お前は出力調整に専念していればいい。 後のことは俺に任せろ」
アクア「わ、私はあなたのおまけじゃないわ!」
(サーベラスに警告シグナル)
アクア「ほら、こうやって所属不明機の接近を キャッチしたりして……」
アクア「え? 所属不明機?」
(マスカレオン・タイプCとマスカレオン・タイプNが出現)
アクア「あ、あの機体は……!?」
(サーベラスの周りに爆煙多数)
アクア「きゃああっ!!」
ヒューゴ「伊豆からの出迎えじゃないのは、確実だな。 口火を切ったのは向こうだ。応戦するぞ、アクア」
アクア「あ、あ、ああ……!」
ヒューゴ(そうか……こいつ、実戦は初めてか)
アクア「………」
ヒューゴ「しっかりしろ、アクア!  冷静に状況を分析し、対処できなきゃ やられるぞ!」
アクア「!!」
アクア(そ、そうよ……ミッテ先生の教え通りに……!)
アクア「DFC、バトルモード!  TEエンジン、出力調整…… くっ、イエローゾーンから出られない!」
アクア「そ、それに、 敵機の行動パターンも計算しなきゃ……!」
ヒューゴ「落ち着け。 お前はエンジンの出力調整だけを やっていればいい」
アクア「ほ、他の役目も果たしてみせるわよ!」
ヒューゴ(すくまなくなっただけマシか……ならば!)
ヒューゴ「イエローゾーンで構わん! 仕掛ける!」
アクア「えっ!? ちょ、ちょっと待ってよ!」
ヒューゴ「行くぞ!」
(作戦目的表示)

〈3PP〉

アクア「ヒューゴ、こっちへ接近してくる機体が!  数は5、識別は……!」
(教導隊の面々が出現)
ヒューゴ「伊豆の教導隊か!」
ラミア「カイ少佐、あれが出向者の新型機では?」
カイ「おそらくな」
アラド「もう一方は…… ラトがシュナーベルのテストをしてた時に ちょっかい出してきた奴と同機種だな」
ラトゥーニ「うん……」
ラミア「新型機の方は、まだこちらに詳細な情報が 来ていません。念のため、確認した方がいいのでは?」
カイ「うむ。 ……そこの青い機体! こちらは極東方面軍 特殊戦技教導隊、カイ・キタムラ少佐だ!」
カイ「速やかに所属と官姓名を明らかにせよ!」
ヒューゴ「……!」
アクア「どういうこと……!?  向こうは私達のことを聞いていないの!?」
ヒューゴ(ふん、ミタールがやりそうなことだ。 事前に下調べをされるのを嫌ったか)
ヒューゴ「こちらはツェントル・プロジェクト、 TEアブゾーバー試作6号機サーベラス。 パイロットは、ヒューゴ・メディオ少尉」
カイ「ツェントル・プロジェクト……!?  ヒューゴ・メディオだと!?」
ヒューゴ「……お久しぶりです、カイ少佐」
カイ「ウチへの出向者とは、お前のことだったのか……!」
ラミア(ヒューゴ・メディオ……アビアノで会った、 第3特殊作戦PT部隊クライウルブズの メンバーだったな)
ラミア(だが、あの隊はイェッツトとの戦闘で……)
アラド「ツェントル・プロジェクトって……」
ラトゥーニ「ヒリュウ改が遭遇した生体兵器フラットフィッシュ…… それに、ウェンディゴやイェッツトに関わっていたと 目される計画……」
カイ「ああ。 ギリアムから中断されたと聞いていたが……」
ゼオラ「また動き出した……?」
カイ「ともかく、この状況を切り抜ける。 その後で話を聞かせてもらうぞ、ヒューゴ少尉」
ヒューゴ「了解です」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

カイ「……終わったか。 では、ヒューゴ少尉……」
ラトゥーニ「高熱源体、海中より急速浮上! 数は1!」
カイ「敵の新手か!」
(南の島の北東端にメディウス・ロクスが出現)
ゼオラ「さっきの機体と違う!」
ラトゥーニ「……識別……該当データ、なし」
アラド「どこのどいつなんだ、いったい!?」
アクア「あれは……!」
ヒューゴ「試作5号機、メディウス・ロクス……」
カイ「ツェントル・プロジェクトの機体なのか?」
ヒューゴ「え、ええ……」
アクア「でも、どうしてこんな所に……?  もしかして、あれも教導隊へ?」
ヒューゴ「いや、ミタールから7号機の話は聞いていたが、 メディウスは……」
(メディウス・ロクスの目が光り、サーベラスに爆煙)
ヒューゴ「!!」
アクア「う、撃ってきた!?」
ヒューゴ「くっ、ミタールめ!  また仕組んだのか!? パイロットは誰だ!?」
???(アルベロ)「……とりあえず、 サーベラスを乗りこなしているようだな」
???(エルデ)「機体性能を引き出しているとは思えませんが……」
???(アルベロ)「メディウスの初戦の相手としては、充分だ。 それに、カイ・キタムラの教導隊もいる…… AI1に実戦の恐ろしさを教えるには、最適な状況だ」
???(エルデ)「恐ろしさ、ですか」
???(アルベロ)「あれはそういうことも学習できるのだろう?」
???(エルデ)「この子にそんな感情を学ばせる必要などありません。 あなたの子供はどうだったか知りませんが……」
???(アルベロ)「………」
???(エルデ)「ああ、あなたに子供の話をするのは 良くありませんでしたね」
カイ「……ヒューゴ少尉、 奴とのコンタクトは取れないのか?」
ヒューゴ「え、ええ……応答はありません」
カイ「ならば、警告して威嚇射撃を……」
(サーベラスに爆煙)
カイ「問答無用か! なら、力ずくで問い質すまで!  各機、メディウス・ロクスを行動不能にしろ!」
ラミア「了解でありんす」
アクア「ヒューゴ、いいの!?  このままじゃ、メディウスが!」
ヒューゴ「ここで死ぬ気はない! 俺達も行くぞ!」
???(アルベロ)「誘いに乗ったか」
???(エルデ)「データ収集を開始……戦闘はお任せします、少佐」
???(アルベロ)「了解した」
???(アルベロ)(ヒューゴ・メディオ……俺は鬼道に堕ちるぞ。 目的を果たすためにな……!)
(作戦目的表示)

〈vs ???(アルベロ)〉

[ヒューゴ]

???(アルベロ)(さあ、ヒューゴ…… サーベラスと甦ったお前の力を見せろ)
ヒューゴ「貴様は何者だ!?  何故、俺達に仕掛けてくる!?」
(戦闘)
ヒューゴ「! あの動き……!?」
???(アルベロ)「ふっ、やるな」
???(エルデ)「メディウスと戦える力は持っているようですね」
???(アルベロ)「誰が奴を育てたと思っている?」
???(エルデ)「余計な手心は禁物です。さもなくば……」
???(アルベロ)「お前に言われずとも、わかっている」
ヒューゴ「まさか……!?」
アクア「どうしたの、ヒューゴ!?」
ヒューゴ「いや、何でもない……!」

[カイ]

カイ「あの動き…… 乗っているのは、かなりの手練れだな」
???(アルベロ)(フッ、カイ・キタムラか……)

[HP20000以下]

(メディウス・ロクスにエラーシグナル)
???(エルデ)「! AI1に拒絶反応……!?」
???(アルベロ)「ふっ……ふはははは!」
???(エルデ)「何がおかしいのです?」
???(アルベロ)「奴は感じたのだろう、実戦の恐怖を」
???(エルデ)「そんなことはありません」
???(アルベロ)「まあいい、今日はここまでにしておこう。 詰め込み過ぎは、良くないからな」
???(エルデ)「はい……」
???(アルベロ)(ヒューゴ……あがいてみせろ、己の宿命に。 そうすれば、道が切り開かれるかも知れん)
???(アルベロ)(俺かお前か、あるいは双方の道が、な……)
(メディウス・ロクスが撤退)
アラド「あっ、メディウス何とかが!」
ヒューゴ「くっ、何てスピードなんだ……!」
アクア「当然よ…… あれにはTEエンジンが搭載されていないから、 出力は安定しているもの……」
ヒューゴ「…………」

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[伊豆基地 格納庫]

アクア「ねえ、ヒューゴ。 メディウス・ロクスのことだけど……」
ヒューゴ「わかっている。後でミタールに問い合わせる」
(足音)
ラミア「ヒューゴ・メディオ少尉、 アクア・ケントルム少尉……ようこそ、伊豆基地へ」
アクア「お久しぶりです、ラミア・ラヴレス少尉。 あの……私のこと、覚えていらっしゃいますか?」
ラミア「ああ…… アビアノで、カイ少佐と一緒にサインを書いた」
アクア「わあ、覚えていて下さったんですね!  感激です! 今も大切にしてます!」
ラミア「では、改めて特殊戦技教導隊のメンバーを 紹介しよう」
ゼオラ「ゼオラ・シュバイツァーです」
アラド「アラド・バランガです」
ラトゥーニ「ラトゥーニ・スゥボータです」
アクア(わ、若い……話には聞いてたけど……。 カイ少佐はともかく、ヒューゴは年下だし…… 私、平均年齢を上げちゃってるわね)
ゼオラ「あ、あの……アクア少尉…… 一つ聞いてよろしいでしょうか?」
アクア「何かしら?」
ゼオラ「寒くないんですか、その格好で……」
アクア(……来たわね、いつものツッコミが)
アラド「上半身はともかく、下半身は水着っていうか…… 目のやり場に困るっていうか……」
アクア「サーベラスに乗っていて、DFC…… ダイレクト・フィーリング・コントロールを 行うために肌を出す必要があってね」
アクア「言っておくけど、ずっと このDFCスーツを着てるわけじゃないから。 機体に搭乗してる時だけだから」
アラド「も、もしかして、ヒューゴ少尉も……!?」
ヒューゴ「いや、俺は操縦と戦闘担当だ。 サンバカーニバルじゃあるまいし、男女で こんな格好をしたら、物笑いの種になる」
アクア「わ、私だって、好きで この服を着てるわけじゃないのよ!」
ヒューゴ「だが、多少は慣れてきただろう?」
アクア「そうそう、このままお風呂に入れるし……」
アクア「って、違うわよっ!!」
アラド(……ノリがいいんだな、アクア少尉)
アクア(まさか、ラミア少尉以上に露出度の高い服を 着ることになるなんて、思ってなかったわよ……)
ラミア「……カイ少佐から出頭命令が出ている。 執務室まで案内する」
ヒューゴ「了解」
ラミア(……ヒューゴ・メディオ…… この反応……もしや、彼は……)
アクア「あ……すみません。 制服に着替えたいので、時間をいただけませんか?」
ラミア「了解した。ゼオラ、少尉を更衣室へ」
ゼオラ「わかりました」

[伊豆基地 内部(執務室)]

カイ「……TEアブゾーバー?」
アクア「はい。ツェントル・プロジェクトで開発された、 ターミナス・エナジーを動力として用いる 人型機動兵器の総称です」
カイ「概要を説明してくれ。 機密事項ということで、こちらは ほとんど何も聞かされていない」
カイ「今日の件も、ヒッカムから新型機が来るから、 迎えに行けと言われただけでな」
ヒューゴ「………」
アクア「わかりました。まず、ターミナス・エナジーとは、 ツェントル・プロジェクトのミタール・ザパト博士が 発見したエネルギーで……」
アクア「重力、電磁力、強い相互作用、弱い相互作用という 4つの力の他に、その存在が予言されていたものです」
アクア「理論上、どこにでも存在しているのですが…… その収集と応用は非常に困難だと言われていました」
アクア「そこで、それを可能にしたのが サーベラスに搭載されているTEエンジン…… ターミナス・エナジー・エンジンなのですが……」
アクア「完全な物となるには程遠く、 現時点では試作の域を超えていません」
アクア「そのため、出力が不安定で…… 電力を併用し、私がエンジン出力の調整担当として DFCスーツを着て乗り込まなければなりません」
カイ「なるほど……」
ラミア「そのTEエンジンが完全な物になれば…… 理論上、TEアブゾーバーの活動時間は 無限になるのだな?」
アクア「はい」
カイ「では、メディウス・ロクスについては?」
アクア「あれは、サーベラスと共に開発されていた TEアブゾーバーの試作5号機ですが、 TEエンジンは搭載されておりません」
アクア「その代わり、機体フレームや装甲に ラズムナニウムが使用されています」
カイ「何だ、それは?」
アクア「ラズムナニウムは、TEエンジンと同じく ザパト博士が開発した新素材で……」
アクア「一言で言えば、 自律的な再生機能を持った金属なのです」
ラミア「……まるで、マシンセルだな。 何か関連性があるのか?」
アクア「いえ、そのような話は聞いていませんが……」
ヒューゴ「………」
カイ「無限に活動可能な動力源と自己再生する素材…… ツェントル・プロジェクトの目的は、 メンテナンスフリーの機動兵器を作り上げることか」
ヒューゴ「……そうです」
カイ「以前にツェントル・プロジェクトと関わっていた ドナ・ギャラガーという女性は、同コンセプトで 無人機の開発を……」
カイ「10年先を見越した自律型量産機動兵器の 開発を行っていると言っていたがな」
アクア「初期の試作機は無人機だったと聞いていますが…… 私達はプロジェクトの全てを把握しているわけでは ありません」
アクア「試作7号機の存在も、つい最近知ったばかりで……」
カイ「では、メディウス・ロクスが 我々を襲撃したことについて、心当たりは?」
アクア「ありません……。 私の推測ですが、何者かによって 奪取された可能性が……」
カイ「それが事実として、何故、我々を…… いや、お前達を狙ってあの場に現れたのだ?」
ヒューゴ「……わかりません。 こちらにとっても不慮の事態でした。 後でザパト博士に問い合わせ、少佐に報告します」
カイ「了解した。 では、後で搬入される7号機の件も含め、 お前達の出向を承認する」
アクア「ありがとうございます。 しばらくの間ですが、お世話になります」
カイ「実は、お前達以外にも出向者がいてな。 明後日、こちらに到着する予定だ。 ウチのメンバー共々、よろしく頼む」
アクア「はっ」
カイ「ヒューゴ少尉、お前に話がある。 ラミアとアクアは外してくれ」
ラミア「了解でござんす」
アクア「それでは、失礼します」
(ラミアとアクアが立ち去る)
ヒューゴ「……自分もカイ少佐に お話したいことがありました」
カイ「だろうな。 あの後のクライウルブズの話は、 風の噂で聞いていたが……」
ヒューゴ「イェッツトとの戦闘で、生き残ったのは 自分とアルベロ・エスト少佐だけでした……」
カイ「お前のフィジカル・データを見たが…… そうなった理由は、やはり……」
ヒューゴ「その件についてですが……アクア少尉達には 伏せておいていただきたいのです」
カイ「余計な心配を掛けたくないからか?  ラミアはおそらく気づいているぞ」
ヒューゴ「だとしても…… 自分にとっては、忌むべき過去です。 それに、守秘義務もありますので」
カイ「……俺はツェントル・プロジェクトに対して、 良い印象を持っていない。メディウスの件が あろうとなかろうとな」
ヒューゴ「それは承知しているつもりですが…… 自分もツェントル・プロジェクトの 真相については、知らされておりません」
カイ「………」
ヒューゴ「ただ……自分はあのプロジェクトに対し、 疑問を感じております。そのことだけは、 少佐に覚えておいていただきたいのです」
カイ「だが、真相究明の協力は出来ないと?」
ヒューゴ「ええ……守秘義務がありますので」
カイ(何か弱みを握られているということか……)
カイ「わかった。 お前の身体のことは、ラミアにも口止めをしておく」
ヒューゴ「ありがとうございます」
カイ「最後に一つ聞く。 アルベロ・エスト少佐は……今、どこに?」
ヒューゴ「それは……自分にもわかりません」
カイ「そうか……では、以上だ」

[伊豆基地 内部(通路)]

(扉が開閉する)
ヒューゴ「……そこにいたのか、アクア」
アクア「一応、パートナーだもんね。待ってたの。 それに、私もザパト博士に聞きたいことがあるし」
ヒューゴ「ああ、今から連絡する」
アクア「……ねえ、カイ少佐と何の話をしてたの?」
ヒューゴ「お前には関係のないことだ」
アクア「あっ、そう。 まあ、その答えは想像してたけど」
ヒューゴ「……行くぞ」

[伊豆基地 内部(通信室)]

アクア「メディウスが強奪されたって…… 本当なんですか!?」
ミタール「ああ、こちらへの輸送中にな」
ヒューゴ「極秘で行っていたことだろう?  何故、それが外部に漏れた?」
ミタール「不明だ。内通者の可能性を踏まえ、 犯人の調査を行っているが…… 今の所、めぼしい手掛かりはない」
ヒューゴ「……あんたが仕組んだことじゃないのか?」
ミタール「そんなことをして、私に何のメリットがある?  メディウス・ロクスを失ったおかげで、 プロジェクトは停滞するのだぞ」
ヒューゴ「………」
ミタール「ともかく、メディウスがそちらに現れたのなら…… 犯人はサーベラスの奪取も目論んでいるかも知れん。 充分に気をつけてくれたまえ」
ヒューゴ「それ以前に、こちらへ運ばれる7号機…… ガルムレイドが危ないんじゃないのか?」
ミタール「今回の件を踏まえ、 連邦軍に厳重な護衛を依頼してある」
ヒューゴ「ほう……俺達のことは、教導隊に しっかり伝えていなかったくせに」
ミタール「事前連絡は行ったよ。 にも関わらず、話が通っていないのであれば…… 伊豆の方に問題があるのではないか?」
ヒューゴ(どうだかな)
ミタール「……では、君達の働きに期待している。 サーベラスとガルムレイドのより良い実働データが 得られんことを。以上だ」
(通信が切れる)
ヒューゴ「………」
ヒューゴ(今は……奴の出方を窺うしかないか……)

REPORT
強化パーツ『マルチセンサー』を入手しました。
強化パーツ『テスラ・ドライブ』を入手しました。
強化パーツ『スクリューモジュール』×2を入手しました。

REPORT
強化パーツ『カートリッジ』を入手しました。

REPORT
換装武器『G・レールガン』を入手しました。
換装武器『スパイダーネット』を入手しました。
換装武器『スピリットテイカー』を入手しました。

REPORT
換装パーツ『タイプC装備(量産型ゲシュペンストMk-II改)』を入手しました。
換装パーツ『タイプG装備(量産型ゲシュペンストMk-II改)』を入手しました。

REPORT
機体『F-32Vシュヴェールト改』を入手しました。
機体『量産型ヒュッケバインMk-II』を入手しました。
機体『ヴァイサーガ』を入手しました。


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